自走榴弾砲2S1 Gvozdikaで射撃するウクライナ軍兵士(2022年5月7日、ウクライナ・ハリコフ地方にて)。 REUTERS/Serhii Nuzhnenko
ウクライナでこれから何が起こるのか?ウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナ戦争に勝利するためにロシアの兵力の一部を追加動員すると発表したことは、開戦以来最も重要な変曲点の1つとなった。
プーチンは、ウクライナがハリコフ地方への攻勢に成功し、さらにロシア領ケルソンへの再攻勢を開始したことを受けて宣言した。同時にロシアは、ウクライナの大部分を併合する法的根拠となりうる占領地での住民投票を加速させると明らかにした。
これらの発表は、戦争の新たな局面を開くものであり、短期的にも長期的にも重要な意味を持つ。
ウクライナにおける短期的な影響
短期的には、動員は時間の経過とともに戦争に影響を与えるだろう。新しく訓練されたロシアの新兵や徴兵が前線に到着し、陣形に組み込まれるまで、ある程度の時間がかかる。訓練も意欲も不十分な人材の流入は、防衛線の薄い部分を安定させることはできても、それ自体で紛争のバランスを根本的に変えるはないだろう。ロシア軍の士気は、救援が近づいていることを知れば向上するだろう。しかし、戦争の終結を地平線上に押しやれば、長期戦を予期していなかった部隊には逆効果になりかねない。例えば、新たに動員されたロシア兵は、ウクライナで戦うより降伏や亡命を考えているとの指摘もある。
一方、今回の動員令は、ウクライナ、ロシア、そして世界の国々に対して、今後数ヶ月の行動を変える動機付けになる可能性もある。ウクライナにとって状況は明快で、今後数カ月はウクライナ軍の戦力が圧倒的に有利だが、ロシアが動員をかければ有利性は薄れる可能性がある。このため、ウクライナには、現在の有利なパワーバランスを可能な限り活用する強い動機がある。このため、ウクライナはロシアから領土を奪還するため、より積極的でリスクを許容するアプローチに傾くかもしれない。
欧米の間接参加者にとって、ロシアの動員は、モスクワが紛争に勝っているとは思っていないが、すぐにやめるつもりもないことを示すもと写る。このことは、紛争に伴う経済的混乱の期間と程度について難しい問題を提起しながらも、ウクライナ支援を継続する多くの人々の決意を再確認させるものである。
長期的な視点でのウクライナ
長期的に見れば、軍事的な動員がどのように行われるかは難しい。ロシアが戦闘力を回復し、攻撃作戦を展開できるようになるには、どの程度の時間がかかるのか。簡単に言えば、「わからない」だ。ロシアからの報告によると、ソ連崩壊後、荒廃していた訓練・動員体制が、この紛争の最初の数カ月でさらに悪化した可能性がある。ロシア軍は、前線での短期的な人員増強のために、訓練編成を共食いさせた可能性が高い。そうだとすると、最低限の訓練しか受けていない部隊が前線に到着し、多大な犠牲を出すことになる。
NATOのM270 MLRS。 Image Credit: Creative Commons.
また、ロシア軍は近代装備を大量に喪失しており、ロシアの産業はローテク軍需品を製造できても、戦車や航空機を損失分を補充できる十分な速度で製造する能力はないようだ。ロシアは戦力を十分に維持するため十分な装備を購入することができるだろうか。中国がこの紛争に大規模介入をしない限り、おそらく無理だろう。ロシアが購入したイラン製無人機はすでに戦争に影響を出しているが、量的にも効果的にも決定的なものになりそうもない。ロシアの固定翼機の損失は極端で、もはや前線への基本的な支援もできないほどである。
長期的視点で戦争を考えると、経済的な方程式も変化する。これまでのところ、ロシアも西側諸国も、有効な強制力を発揮できるほどの経済的損害を相手に与えていない。より長い目で見れば、ロシアの貧弱な経済が、欧米の競争相手のはるかに大きな経済を凌駕することができると考える根拠は皆無に近い。侵略のショックが薄れ、エナジーを武器にする(エナジー価格高騰を利用する)ロシアの能力も低下してきた。
プーチンは次に何をするのか?
プーチンは、ロシア国内の戦争支持率の低下を懸念してか、ロシアの軍事力の総動員を決断しなかった。プーチンの政治的直感を信じるべきだろう。動員は、すぐに戦争に勝てると思っていた政権にとって危険な動きであり、現在、抗議行動と軍事年齢層の男性の大量退去に直面している。
戦場では、ウクライナ軍が強くなる一方でロシア軍が弱くなっている基本的な問題を、モスクワが今回の動員で変えられるかどうかは明らかではない。■
The Russian Military Is Getting Weaker As Ukraine Grows Stronger
https://www.19fortyfive.com/2022/09/the-russian-military-is-getting-weaker-as-ukraine-grows-stronger/
A 19FortyFive Contributing Editor, Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005. He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph. D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns and Money.
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