全く新しい水上艦艇運用の姿を見ているのでしょうか。10万トンに及ぶような大型艦は過去の存在になり、小型艦が多数無人で運用されるのが将来の海軍となるのでしょうか。ただ、海上勤務の経験のない要員が陸上ですべてを運用するのではシーマンシップは消えてしまうと思うのですが。The War Zone記事からのご紹介です。
DARPA
試験艦ディファイアントDefiantは、ミサイルを搭載したドローン船として幅広い用途が期待できる
新しい無人水上艦のテスト計画が波紋を広げており、このプロジェクトを率いる企業は、実証艦を海に投入する時期を今年末に設定している。サーコSerco Inc.の試験船ディファイアントは、完全無人運用を前提に一から設計されている。最小限のメンテナンスで数カ月から数年にわたり自律航行が可能な同艦は、将来的にミサイル無人艇の艦隊を配備する道筋になると海軍が注目している。
ディファイアントは、国防高等研究計画局(DARPA)の人員不要艦(NOMARS)プログラムで調達されており、新しい中型無人水上艦(MUSV)プロトタイプとして実戦配備を目指すものだ。2022年、サーコはプライム・コントラクターとして、建造、試験、実証を行う総額6,850万ドル契約を獲得した。
A model of Defiant shown by Serco Inc. on the floor of the Navy League's Sea Air Space 2024. Joseph Trevithick
ディファイアントの詳細なスペックは未公表だが、DARPAによれば、210トンの中型USV設計だとある。DARPAが「クリーンシート艦船設計プロセス」と呼ぶものは、航行中の補給を含め、海上で完全に乗組員なしで行動し、長期間にわたって限定的なメンテナンスしか必要としない艦船で、サーコは無乗員にすることで生まれるスペースを活用する方法を業界パートナーと模索してきた。実証艦自体は、ワシントン州が拠点の造船会社ニコルス・ブラザーズ・ボート・ビルダーズが建造中だ。
DARPAは、テストベッドの具体的なミッションセットは明示していないが、"戦術的に有用な距離で大ペイロード"を運ぶことができるはずだと述べている。
例えば、Sea Air Space 2024で展示されたディファイアントの模型の前面に、アングル・ミサイル発射システムがあり、これは現在BAEシステムズがAdaptable Deck Launching System(ADL)として販売しているもののようだ。ADLは甲板上に設置されるアングル・ランチャーで、甲板下のスペースが限られた艦艇にMark 41垂直発射システム(VLS)に匹敵する能力を提供する。ADLの欠点は、発射セルを提供するために甲板上に大きな表面積を取ることである。しかし、ディファイアントでは乗組員を取り除くことによって利用可能な甲板スペースを最大化できことを考えると、これは論理的な組み合わせとなる。ADLはモジュール設計で、現在2、4、8セル構成で提供される。
Joseph Trevithick
BAE Systems' Adaptable Deck Launching System. BAE Systems
ADLを利用することは、ディファイアントが地対空ミサイル、対潜ロケット、対艦ミサイル、対地攻撃ミサイルなど、海軍の現在の在庫を含むさまざまな武器を発射できることを意味する。
なお、サーコはディファイアントの大型派生型「ドーントレス」の初期設計作業を終えている。Sea Air Space誌に掲載された同艦のモデルにADLS合計16セルが描かれている。
A model of Dauntless shown by Serco Inc. on the floor of the Navy League's Sea Air Space 2024. Joseph Trevithick
ミサイル搭載能力に加えて、サーコはディファイアントに別ペイロードの搭載も想定しており、無人機、電子戦、情報収集システム、通信設備、曳航式ソナーなどをコンテナ化して搭載する。
推進力に関しては、ディファイアントは、"船体の最適化による流体力学的効率 "を改善するというDARPAの要求に従い、分散型ハイブリッド発電、ポッド型推進器、大容量バッテリーを設定している。
全体として、この実証機の設計と低メンテナンスコスト(例えば、メンテナンスは小さなヨットヤードで行える)は、海軍のミッション時間あたりのコストを大幅に削減することを意図している、とNaval Newsは報じている。
サーコ担当者は、追加ミッションシステムを含まない実証艦の価格は約2500万ドルであることを確認した。
DARPAが以前から指摘しているように、3ヶ月に及ぶ海上試験が来年完了した後、実証艦は海軍に渡る可能性が高い。現在までDARPAの実験的な中型USVプログラムでは、MUSVのシーハンターとシーホークが海軍に移行している。
Medium displacement unmanned surface vessel Sea Hunter sails in formation during Rim of the Pacific (RIMPAC) July 28, 2022. U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Aleksandr Freute
国防総省は、有人運用装備と連携する攻撃プラットフォームとして、ディファイアントが海軍に提供できる潜在的なメリットを主張している。国防総省の2025会計年度予算要求では、「分散かつ永続的なUSVを可能にし、水上艦隊が敵対勢力を脅かすことを可能にし、空母のような大規模な海軍目標に対抗するため設計された高コストの武器システムへの投資を否定する」と述べている。NOMARSプログラムが成功すれば、"分散殺傷コンセプトが実行可能になる道筋"を作ることになる。"分散殺傷コンセプト"とは、小型艦船を大量保有し、各艦が低コスト・低価値でありながら、全体として大きな抑止力を発揮する構想だ。
さらに、大量建造が容易であるという点でも利点がある。Sercoの担当者が「Sea Air Space 2024」会場で述べているが、必要であれば鉄道工場などでの建造も考えられる。生産が容易なMUSVを手に入れることは、海軍にとって大きな後押しになる。中国のような敵対国との関係で、米国の艦船生産に深刻な懸念がある中でこの効果は大きい。
ディファイアントが今年後半に初めて海上に出る際が注目される。■
DARPA's Defiant Fully Uncrewed Demonstrator Ship Will Hit The Seas Later This Year
BYOLIVER PARKEN|PUBLISHED APR 11, 2024 3:23 PM EDT
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