イランの大規模攻撃が見事なまで迎撃されたのは、西側各国も協力した防衛技術がそこまで進歩していたことを意味し、攻撃力を相殺できるまでの効果を上げました。一方でかなり抑制された形のイスラエルの攻撃にもイランは効果的な防空ができず、テヘランは冷や汗の出る思いだったはずです。(イランは情報操作に大わらわの様相ですが) 西側にとっては今回実証された防空体制を多国間安全保障の切り札として今後どう展開していくかですね。1945記事の指摘を御覧ください。
イランによる無人機とミサイル攻撃に対するイスラエルの多国間防衛は、米国だけでなく欧州やアラブ諸国も参加した。ワシントンはこの教訓を他方面にも適用すべきだ
イランの無人機とミサイル攻撃に対するイスラエルの多国間防衛に米国だけでなく欧州やアラブ諸国も参加した。これは、ワシントンが他の複数の戦線に適用すべき教訓である。
イランと代理勢力がイスラエルに向けて発射したと推定される350発のミサイルと無人偵察機のうち、米中央軍司令部は、米欧の駆逐艦が無人偵察機80機と少なくとも6発の弾道ミサイルを撃墜したと発表した。 英国のリシ・スナック首相は、英国の戦闘機が「多数の無人機を撃墜した」と述べ、イスラエル国防軍は、フランスもイスラエルの防衛に貢献したことを確認した。
さらに印象的だったのは、アラブの主要国もイスラエルに協力したことだ。サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、イランの攻撃計画について情報を伝え、ヨルダン軍は、イスラエルに向かうイランの無人機数十機を領空内で撃墜したと伝えられている。
こうした行動はすべて、イランの攻撃が、イスラエルを破壊し、欧米諸国をこの地域から追い出し、スンニ派アラブ諸国を不安定化させることを含む、テヘランの影響力を国境外に拡大するための広範な努力の一環であることを、ワシントン、ヨーロッパの同盟国、湾岸諸国が認識しているからである。
全体像を認識し、それに従って対応したワシントンは、ガザでイスラエルをどれだけ支援するか、ロシアとの戦争でウクライナをさらに援助するかどうかを決定する際にも、同じ教訓を生かすべきだ。
ガザに関しては、米国の政策立案者は、イランが国家であると同時にテロリストの複合体であり、イスラム革命防衛隊(IRGC)を通じ、ガザのハマスやその他のグループ、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ反体制派、イラクの民兵組織、その他の地域のシーア派戦闘員など、「抵抗軸」のテロ組織に資金、装備、訓練を提供していることを理解すべきである。
テヘランは地域の覇権を求め、ワシントンと同盟国は抑止力を求めている。しかし、効果的な抑止政策には一貫性が求められる。
イランの直接攻撃からイスラエルを守るために多国間の防衛力を結集することで、ワシントンはユダヤ国家を支持する明確なメッセージを送った。しかし、イスラエルにラファへの侵攻とハマスの残りのインフラ破壊をしないよう圧力をかけ、ハマスの加担をほとんど無視して民間人の犠牲をイスラエルのせいにしたことで、ワシントンは、イランの直接攻撃に対して育もうとした抑止力そのものを損なっている。
たしかにイスラエルは、ガザでの民間人の犠牲を防ぐためにできることは何でもすべきだ。しかし、イスラエルを拘束するのか、それともハマス(ホロコースト以来最悪のユダヤ人攻撃で1,200人のイスラエル人を蛮行によって虐殺した)に対する対応を(できる限り)終わらせるのかを決めるにあたって、ワシントンは、テヘランがイスラエルの一挙手一投足を注視し、その決意を測り、それに応じて計画を立てていることを認識すべきである。
これに関連して、議会はウクライナとの戦争におけるロシアに対する米国の抑止力を弱めようとしている。
上院は2月、ウクライナ、イスラエル、インド太平洋地域の同盟国に対する950億ドルの追加援助を承認した。下院共和党内ではウクライナへの援助増額に大きな反対があるため、マイク・ジョンソン下院議長は、イスラエル、ウクライナ、インド太平洋への援助について下院で個別に採決を行うとしている。その結果、イスラエルへの援助は増えるが、ウクライナへの援助は増えない可能性がある。キーウが人員と弾薬不足に陥り、ロシアがさらなる領土を貪ることで利益を得ることになる。
しかし、この問題は切り離すことはできない。イスラエルもウクライナも自国民を守り、国境を確保するために戦っているのであり、アメリカはテヘランやモスクワのさらなる侵略を抑止しようとしている。
同時に、モスクワとテヘランはそれぞれの侵略行為を支援している。イランはウクライナで使用する無人機数千機をロシアに提供し、ロシアがより高性能な無人機を独自に開発するのを支援している。ロシアはイランに高度な戦闘機と防空技術を提供すると約束済みと伝えられており、これはイランが将来のイスラエルやアメリカからの攻撃から身を守るのに役立つだろう。
ロシアとイランは、中国との軍事、外交、経済的パートナーシップを強めており、米国が支持する自由主義秩序を覆し、米国主導の自由と民主主義に挑戦するとの願望で結ばれている。
テヘランでは、IRGCが組織するテロ集団が遠く離れた地で活動していることから、最高指導者のアリ・カメネイが米国の決意を測っている。モスクワでは、ウラジーミル・プーチンがウクライナ以外の旧ソビエト帝国の標的を見据えながら、米国の決意を測っている。北京では、独裁者習近平が中東とヨーロッパの戦場を注視し、台湾に圧力をかけ続けながら、米国の決意を測っている。
自由、安全な国境、法の支配のための戦いはグローバルなものであり、ワシントンは、ひとつの舞台での脅威への対応が、他の舞台での脅威を刺激したり抑止したりする効果があるを認識すべきである。■
By
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。