スキップしてメイン コンテンツに移動

米国の新規援助枠をウクライナはどう活用するのか。高性能だが高価な装備品に傾くとすぐ予算が底をつく。一方、ロシアは消耗戦をどうしのぐのか。ヒント北朝鮮、イラン

やっとウクライナの継戦能力確保に向けた予算手当で目処がつきましたが、まだまだ安堵できる状態ではないようです。また、米国に限界を感じ始めた欧州主要国も独自に援助策を模索しはじめました。消耗戦ではロシアとの根比べの様相となりそうですね。Defense One記事からのご紹介です



Getty Images 


ウクライナは米国の新たな援助をどう使うのか?


ロシアの優位性、米国の長期的支援に伴う不透明性、さらにキーウがめざす最終的な戦争終結構想の中で、それは危うい問題である


望の追加法案が下院で可決され、ウクライナの支持勢力は、ウクライナの劣勢と兵力不足の解消の可能性に少し安堵しているが、ロシアの優勢、米国の長期的支援が不確かな中でウクライナは最終的に戦争を終結につなげなければならない。 

 先週土曜日、下院は、ウクライナ向けに新しい武器と防衛装備の購入、およびキーウに送られた米国の武器の交換に資金を提供する追加支出法案を可決した。

 法案は、新しい武器を調達するウクライナ安全保障支援構想に137億ドルを追加する。また、国務省が運営する別個の武器獲得プログラムである対外軍事資金援助プログラムにも16億ドルを提供する。

 さらに134億ドルを、ウクライナに送られた米国製兵器の交換とウクライナ軍の訓練に充てられる。備蓄している米国製武器をウクライナに送ることを可能にする大統領権限(PDA)で議会が承認した120億ドルをカバーすることになる。PDAの権限には、今回の追加予算で認められた80億ドルと、以前に認められた39億ドルが含まれる。

 新しい補足措置の下でウクライナに提供される兵器の第一弾は10億ドルで、155mm砲弾、対戦車・対空ミサイル、長距離ロケット弾、負傷者の避難に役立つ装甲車などの弾薬が中心となる見込みだ。

 シンクタンクCSISのマーク・カンシアン上級顧問によれば、今回の援助は11月のアメリカ大統領選挙前に最後のものになる可能性が高いという。「政権は選挙直前に新たな支援物資を送ろうとはしないだろう」。

 前回の対ウクライナ支援策は2022年12月に可決された。下院議員は2023年12月に新たな支援策を提案したが、議会共和党の反対でストップした。

 特にドナルド・トランプがホワイトハウスに戻れば、ウクライナが新たな支援策を期待できるか不明となる。トランプは大統領在任中にキーウへの援助を差し止めたとして弾劾され、今年の選挙で共和党の次期候補と目される中、さらなる援助に反対し、新たな追加援助の機運が高まるにつれて態度を軟化させてきた。

 一方ウクライナは、優先事項が2つ競合していることに気づいている。

 シンクタンクRUSIのニック・レイノルズ研究員(陸戦)は、「この援助のどれだけを当面のニーズに充て、どれだけを2025年に向けたウクライナの支援に充てるかが問題だ」と語る。

 短期的には、ウクライナは2月にウクライナ東部の都市アディイフカを陥落され、ここ数週間で同地域でさらなる勝利を得たロシアの攻撃を撃退しなければならない。ロシアの進撃は、米国の軍事援助の減少によって可能になった部分もある。

 長期的には、ウクライナは全領土の奪回を求めている。しかし、ウクライナの国土で18%がロシアの支配下にあり、それは大規模な攻撃を開始することを意味する。昨夏のウクライナ南部への反攻作戦の失敗と2022年の同規模の反攻作戦でのウクライナの大きな損失は、今後の攻撃では兵士、装備、弾薬の面で十分な資金が必要であることを示唆している。

 カンシアンと、民主主義防衛財団の上級研究員で、以前は米軍欧州司令部の計画・政策・戦略担当副長官を務めていたマーク・モンゴメリー氏によれば、ウクライナは資金をさらに増やしたいと考えているかもしれない。

 米国が送り込む弾薬のほとんどは、155ミリ砲弾のように費用対効果が高いが、先進的な航空システムや対空システムがウクライナ向け資金を大量に食いつぶしてしまう可能性がある。

 例えば、米国はウクライナに、1基400万ドルと推定される非常に効果的なパトリオット・ミサイル迎撃ミサイルを供給している。「限られた予算では高価な兵器です」とモンゴメリーは言う。

 その代わりに、ウクライナは、ミサイル1発あたり137万ドルと推定される、より手頃な価格の国家先端地対空ミサイルシステム(NASAMS)を受け取ることができる、とカンシアンは言う。

 モンゴメリーによれば、もうひとつの解決策は、国防総省が「フランケンSAM」と呼ぶ、ソ連時代の防空システムでサイドワインダーのような米国の安価なミサイルを発射させるプログラムを推進することだという。

 ウクライナはまた、より高価なミサイルの何分の一かのコストでドローンを破壊するために、ジャミングや安価なミサイルや大砲の弾を使用する多種多様な対ドローン装備を受け取っている。

 モンゴメリーは、今後のアメリカのパッケージには、無誘導システムのような効果が実証済みの武器が含まれる可能性があると付け加えた。 米国はウクライナにエアロビロンメント製の浮遊弾を供給しており、「数千機」の無人機がウクライナで使用されているという。

 ヨーロッパからの支援もある。火曜日、英国防省は6億1900万ドルの防衛物資をウクライナに送る計画を発表した。チェコ主導の取り組みでは、ウクライナに150万発もの砲弾を購入しようとしており、EUの取り組みでは、今年末までに100万発の155mm砲弾がウクライナに送られる予定だ。

 レイノルズは、西側同盟国も武器移転の計画が立てやすくなったと指摘する。「ウクライナが直面している課題に対する認識はかなり高まっている」とレイノルズは言い、ロシアを打ち負かすための「手っ取り早く簡単な」解決策はないことを各国が認識している。

 CSISの新しい報告書によれば、ロシアも兵力供給の問題に直面している。ロシア国防省は、ウクライナで大きな利益を得るためには、2024年に口径152mmと122mmの砲弾が560万発必要だと見積もっている。しかし、ロシアの生産量は2024年にはやっと190万発に増加する予定だ。

 ロシアは少なくとも部分的には、北朝鮮とイランから武器を購入することで不足分を補える。北朝鮮は2023年8月から2024年2月の間に300万発の152mm弾をロシアに送った可能性がある。

 しかし、何があろうと、ロシアは少なくとも2025年初頭まで攻撃を続けるのに十分な工業能力を持っている可能性が高いと、CSISの報告書は結論付けている。

 「ロシアは、労働力不足から軍需調達分野における腐敗の定着まで、多くの弱点に直面しているにもかかわらず、(2024年の)戦争努力を継続するために、国内での武器生産と輸入多様化の努力を維持することができるだろう」。


How will Ukraine spend its new US aid? - Defense One

It’s a fraught question amid Russian gains, uncertain long-term U.S. support, and Kyiv’s eventual need to end the war.


BY SAM SKOVE

STAFF WRITER

APRIL 23, 2024 05:20 PM ET



コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...