米海軍の進める建造計画がことごとく遅れを生じています。こちらは予算問題ではなく、人材まで含めた産業基盤の原因のようですが、日本や韓国に海軍が関心を示しているのはてっとり早い解決策を希求しているためでしょうが、米国の産業構造そのものに手を入れないと建造計画が絵に描いた餅になってしまいます。USNI News記事からです。
Rendering of USS Constellation (FFG-62). Fincantieri Image
米海軍の新型誘導ミサイル・フリゲート艦の就役が最大3年遅れる可能性があることがUSNIニュースの取材で分かった。
ウィスコンシン州のフィンカンチエリ・マリネット・マリーンで建造中のコンステレーション(FFG-62)は、当初の引き渡し目標2026年が3年遅れて、2029年まで艦隊に引き渡されない可能性がある。
このプログラムの遅れは、カルロス・デル・トロ海軍長官が今年初めに命じた45日間の造船見直しの一環として明らかになった。フリゲート艦の遅れに加え、空母エンタープライズ(CVN-80)、コロンビア級弾道ミサイル原子力潜水艦の一号艦、ヴァージニア級攻撃型潜水艦の引き渡しの遅れも海軍が確認している。
プログラムの遅れの要因として、海軍は設計の成熟度、サプライチェーン、熟練労働者の確保の難しさなどの問題を挙げている。
海軍によると、将来のUSSディストリクト・オブ・コロンビア(SSBN-826)は、12ヶ月から16ヶ月の遅れに直面している。先月、USNI Newsは、海軍は、継続的なサプライヤーの問題により、同艦での1年の遅延の可能性を検討中と報じた。
エンタープライズは1年半から1年半の遅れに直面し、ブロックIVヴァージニア級攻撃型潜水艦は3年の遅れを検討している。ブロックVヴァージニア級潜水艦は大型の新型ヴァージニア・ペイロード・モジュールを搭載するが、現在は予定より2年遅れている。オースタルUSAが昨年建造契約を獲得した海軍の新型海洋監視船T-AGOS(X)の遅れは、同プログラムがいつ新規建造を開始するかによる。
アメリカ級強襲揚陸艦、サン・アントニオ級揚陸輸送ドック艦、アーレイ・バーク級駆逐艦、ジョン・ルイス級艦隊補給給油艦については、海軍の概要によれば、「契約は遅れている」が、「安定しており、プログラム主管の見積もりに沿っている」という。
コンステレーション級フリゲートFFG
デル・トロが45日間の造船見直しを発表する直前の1月、USNI Newsは、コンステレーション級フリゲート艦が、労働力の課題と設計の成熟度の問題のため、少なくとも1年遅れていると報じた。
火曜日に行われた記者懇談会で、海軍海洋システム本部(NAVSEA)のジェームス・ダウニー中将は、フリゲート艦の詳細設計は、イタリアとフランス海軍に就役しているフィンカンティエリ・マリネット・マリーンのFREMMをベースにしているが、まだ完成していないと記者団に語った。ダウニーによれば、今年中に詳細設計を完了させるのが目標であり、官営度は80%に近づいているという。
ダウニーは記者団に、「契約企業間で、契約の役割が数点変わりました。「設計を完了させることは、我々にとって非常に重要なことです。そのため、フィンカンティエリの設計部門と協力企業を、政府とのコラボレーション・センターで共同作業させることにしました」。
2022年8月、海軍がフィンカンティエリに最初のフリゲートの建造開始を許可したとき、当時無人・小型戦闘艦のプログラム執行役員だったケーシー・モトン少将は、詳細設計は80%強が完了したと語っていた。
マリネットでの建造の遅れの原因を尋ねられ、ダウニーは同造船所の仕事量の増加、雇用と維持の難しさ、そして現在同造船所で建造中の3つのプログラムの段階がまちまちであることを挙げた。同造船所は、サウジアラビアのマルチミッション水上戦闘艦と米海軍の新型フリゲート艦を建造する一方で、沿海域戦闘艦(LCS)の最終艦を仕上げつつある。
ダウニーは、マリネットがこれら3つのプログラムを建造していることで、LCSのみを建造していた時と比べて、マリネットの人員削減は「大きく異なっている」と述べた。
海軍は2020年、NAVSEAが開発した迅速な要求プロセスを用いて、フィンカンティエリ・マリネット・マリーンのFREMM設計を選定した。海軍はこのフリゲート艦の固定価格契約で同社に発注した。
コンステレーション級(FFG-62)は、故ジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)によるLCS計画への痛烈な批判の後に生まれた。マケインは一貫した不支持で、2016年にLCSを指名手配のポスターに載せたほどだが、海軍はLCSを削減し、代わりに誘導ミサイル・フリゲートを追求した。
海軍関係者がUSNI Newsに語ったところによると、この設計は長年使用されている軍艦をベースにしていたが、設計代理店のギブス&コックスは、欧州海軍より厳しい生存性基準など、NAVSEAの要件を満たすためにFREMMの設計を大幅に変更した。
ある時点で、コンステレーションの設計はオリジナルのFREMM設計と約85%の共通性を持っていたが、変更によって15%以下に低下したと、変更に詳しい人物はUSNI Newsに語った。
こうした変更により、ウィスコンシン州の造船所では、すでに課題となっていた労働力問題がさらに深刻になり、ブルーカラー・ホワイトカラー双方で採用難に陥っている。労働力不足に対処するため、海軍はマリネットに5,000万ドルを支給する。同造船所はこの資金で、ブルーカラーとホワイトカラーの両方にボーナスを支給し、マリネットにとどまるようインセンティブを与えている。
フィンカンティエリは現在、最初のフリゲート艦4隻の建造を請け負っている。先月発表された2025会計年度予算の説明文書によると、2隻目、3隻目、4隻目の納期は「検討中」とある。
コロンビア級SSBN
Stern section of the future District of Columbia headed to General Dynamic Electric Boat in 2024. GD Photo
コロンビア級プログラムの初号艦は、2027年10月に引き渡される予定だった。12カ月から16カ月の遅れにより、引き渡し日は2028年10月、あるいは2029年初頭となる可能性が出てきた。
海軍の調達担当ニコラス・ガーティンは、この遅れについて尋ねられ、「艦全体とすべてのモジュールの導入に関係している」と答えた。
ダウニーは、空母と潜水艦で共有されるものも含めて、一部部品は遅れているが、搭載されている技術は問題になっていないと述べた。潜水艦の推進システムで新技術となる永久磁石モーターpermanent magnet motorsは、遅れの「原動力」になっていないという。
核抑止力3本柱のうち、海の部分を再編成するこのプログラムは、オハイオ級潜水艦と1対1で置き換える必要があるため、極めて余裕が少ない中で運営されている。
コロンビア級の心臓部は複雑な電気システムで、オハイオ級より静粛性を高めることを目指している。
潜水艦の原子炉から出る蒸気を動力源とするタービンは、推進システムに機械的に接続されず、タービンから潜水艦内部の複雑な電気グリッドに電力を供給するため、艦内での機械的接続の数が減り、騒音が低減する。タービンの納入遅延が生産の課題になっているとUSNIニュースは報じたが、電気駆動システムの組み立ての進捗状況についてはほとんど語られていない。
HIIのニューポート・ニューズ造船がヴァージニア州で建造している艦首部分の建造も遅れの原因となっている。コロンビア計画では、主契約者であるジェネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボートが、コネチカット州グロトンにあるヤードと同州クオンセット・ポイントにある製造施設で艦体の中央部を組み立て、艦首部と艦尾部はニューポートニューズからニューイングランドに運搬され、そこで組み合わされる。しかし、ニューポートニューズはエレクトリック・ボートにセクションを供給するのが遅れている。
海軍は、オハイオの耐用年数を最大5隻で延長し、運用に余裕を持たせる計画を立てた。短時間の延長で、各艦の耐用年数は3年延長される。昨年、海軍関係者は、耐用年数の延長を行うかどうかについて最終決定を下すまで数年が必要だと述べていた。■
Constellation Frigate Delivery Delayed 3 Years, Says Navy - USNI News
MALLORY SHELBOURNE AND SAM LAGRONE
APRIL 2, 2024 5:11 PM - UPDATED: APRIL 3, 2024 3:09 PM
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