シリーズ 米軍各軍の最新状況③米陸軍
Defense One記事からのご紹介です。
2024年陸軍の現状
偵察ヘリコプター取得の中止は、俊敏性の新時代を告げるものかもしれない
新任の陸軍参謀総長が就任から半年で未来的なヘリコプターの調達計画を中止した。この決定は、陸軍の新たな優先事項を反映したものであり、敏捷性を重視する新時代を象徴するものかもしれない。
ランディ・ジョージ陸軍参謀総長Gen. Randy Georgeは、プログラム設計の誤りやコスト超過で頓挫したこれまでの数十億ドル規模のプログラムとは異なり、ウクライナで見られたような戦争の大きな変化に対応するため、浮遊弾薬や無人偵察機などの新しい技術を前提とする未来攻撃偵察機(FARA)を中止させた。
「戦場から、特にウクライナから、空中偵察が根本的に変わったことを学んでいる。各種無人システムや宇宙空間のセンサーや武器は、これまで以上にユビキタスで、より遠くまで届き、より安価だ」。
これは、世界的な対テロ戦争の方針から離れた陸軍の広範なシフトを反映している面が多い。
ウクライナや紅海を視野に入れながら、陸軍は、戦争の霧に明瞭さをもたらした最先端の、民生テクノロジーを活用することを、これまで以上に強く推し進めている。155ミリ砲弾から高性能ミサイルまで、より多くの軍需品の購入に励んでいる。
ウクライナの戦訓を訓練に反映
陸軍の変貌ぶりが一番出ているのは、カリフォーニア州のナショナル・トレーニング・センターとルイジアナ州の統合即応訓練センターという、最先端の訓練センターである。
両訓練センターで陸軍は対抗部隊(OPFOR)を編成し、訓練でローテーションしてくる部隊と対峙させている。どちらのOPFORも、ウクライナの教訓を急速に吸収し、安価で市販されている多種多様なツールによって優位性を追求している。
両センターに到着した陸軍部隊は、いつの間にか追跡されているかもしれない。砂漠や森林の中で、携帯電話が孤独なデジタルライトとして機能する。OPFORの安価なクアッドコプターが信号を拾い、模擬手榴弾を落とすかもしれない。
OPFORが射撃を控えた場合、ドローンを使って兵士を追跡し、商業衛星の映像やAIによる信号パターンの分析で司令部と他の基地とのつながりをマッピングすることができる。そして、強力なジャマーで基地を孤立させたり、模擬ミサイルで基地を破壊する。
ただし、ハイテクばかりではない。ウクライナ軍が直面する絶え間ない砲撃は、ローテク爆薬の重要性を再認識させた。そのため、両センターでは大砲を再重要視して訓練生を迎え、地中深く戦闘陣地を掘る重要性を再学習させている。
民生技術も導入する
ジョージは、OPFORをはじめとするハイテクを試行錯誤する部隊の活動を、陸軍全体にとっての道筋と見ている。民生技術の利用を拡大し、必要に応じ新装備を取り入れたり捨てたりする柔軟性を併せ持つことだ。
OPFORやナショナル・トレーニング・センターや統合即応訓練センターの兵士たちと会話し、「(無人機のように)我々がやっていることのいくつかを倍増させる」ことを参謀総長に確信させたと、彼は1月の本誌インタビューで語った。
その戦略の鍵となるのが、ジョージが「接触による変革」と呼ぶもので、新しい、民生技術を部隊に使わせ、現実的な訓練で試してもらうというものだ。
たとえば1月の演習では、陸軍が初めてATAK(アンドロイドベースの安価な地図・通信ソフト)を全面的に使用した。また、ウクライナ戦線ので使用されているスターリンク通信装置を陸軍部隊が配備することも、一般的になっている。
ジョージの計画は、陸軍が通常行っている装備の配備方法と一線を画すもので、一つのプラットフォームが何十万人もの兵士に配備されるまでに、大手業者が何年も争うことになる。しかしこのやりかたでは、雨の中で飛行するのに苦労するドローンを軍に提供することにもつながっている。
新しい装備戦略として、陸軍は今年、部隊用に市販の無人機を購入するために2500万ドルを要求している。長い調達プロセスを経て無人機を購入するのではなく、無人機の購入資金は「運用・保守」資金に分類される。
この指定により、無人機の取得が簡単になり、理論的には部隊指揮官が直接無人機を取得できるようになる。
主要な調達品の状況
陸軍の変革は、商業界からの安直な修正ばかりではない。
スターリンク端末やアンドロイド・ソフトウェアと並んで、陸軍はロボット工学、うろつき弾薬、対ドローン兵器、遠くを見通すスパイ技術、長距離ミサイルへの投資も計画している。
多くはまだ始まったばかりだが、陸軍は、よくある10年近くかかるプロセスではなく、1、2年でシステムを実戦配備する目標で迅速に動いている。
陸軍未来司令部のジェイムズ・レイニー司令官は昨年末、「低空ストーキング&ストライク兵器プログラムは、反復プロセスを経て、2024年に歩兵部隊にうろつき兵器を配備する予定だ」と述べた。
先週のAUSAグローバル・フォース会議で、陸軍がヘリコプター発射ドローンと呼ぶ様々なタイプが、来年度までに生産開始されると発表があった。
中距離ドローンもテストされており、2025会計年度には生産される予定だ。短距離ドローンは2025会計年度にテストされ、2026会計年度に生産され、長距離ドローンは2026会計年度にテストされ、2027会計年度に実戦投入される。
その他取り組みとして、ビジネスジェット機にスパイウェアを詰め込むことや、長距離情報収集に特化した新組織、長距離砲弾の開発がある。
ウクライナとロシアが1日あたり数万発の砲弾を使用し、台湾と中国の戦いを想定したウォーゲームではミサイルの必要性が高いことが示されているため、陸軍はハイテク・センサーと組み合わせる軍需品にも再度力を入れている。
陸軍の取り組みには、ウクライナ支援のための155ミリ砲弾の迅速な増産も含まれ、議会がウクライナ支援追加法案を可決すれば、月産10万発が約束されている。陸軍はまた、誘導多連装ロケット・システム(GMLRS)とペイトリオット対空ミサイルの生産を、複数年調達を通じて強化している。
また、新型ミサイルの稼働も始まっている。12月、陸軍は、旧式のGMLRSミサイルに代わる精密打撃ミサイルの最初のバッチを受け取った。
緊迫化する世界情勢の中で、これらの軍需品の多くは、工場から出荷されるとすぐに活躍の場を広げている。陸軍が購入を増やしているカヨーテ無人偵察機迎撃ミサイルは、すでに中東で敵無人偵察機を打ち落としており、155ミリ砲弾はウクライナに向かっている。
戦力構成の変更
ウクライナの教訓もあり、陸軍は部隊編成も変えている。ドローンの脅威と、将来の戦争でアメリカが制空権確保が保証されるわけではないという想定の両方に配慮して、新規対空ユニットを追加する計画もある。
兵力構造の再設計は、アメリカ国民で志願者が減っている現実も反映している。2月に発表された兵力の再設計は、494,000人の兵士を擁する陸軍として想定されながら、実際には445,000人しかいない兵力を合理化する。
同時に陸軍は、新たな広告や、新兵を別のキャリアパスとする試験的プログラムの開始、高齢の新兵をターゲットにした採用活動など、集中的な採用キャンペーンによって新兵採用を押し上げたい考えだ。
ジョージは2月、『スターズ・アンド・ストライプス』誌に、隊員確保は昨年の同時期より今のところ上昇していると語った。それでも、2024年第1四半期(10月1日から12月31日まで)の目標達成率は74%にすぎない。
これらの兵士は、陸軍の編成に必要な人員を確保するために重要なだけでなく、ジョージ参謀総長が望む兵士を中心に据えた陸軍革新の鍵でもある。陸軍がより有能で、技術中心の兵士を集めることができれば、陸軍は "接触ミッションの変革"に対するフィードバックをより多く得ることができる。
「(製品の)開発者と協力して、兵士たちから最高のイノベーションを得ようとしています」と、ジョージはこの記事でのインタビューで語った。「兵士たちは本当に革新的で、どうすればうまくいくかを考えてくれる」。■
The State of the Army 2024 - Defense One
The cancellation of a scout helicopter might signal a new era of agility.
STAFF WRITER
APRIL 8, 2024
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