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欧州共同保有空母構想が絶対に実現しない理由

ドイツ連邦軍の装備稼働状況がひどくなっているのはここ数年の話ですが改善の知らせが入ってきませんね。昨年はF-35導入を主張した空軍トップが事実上更迭させられましたが、シビリアンコントロールをいいことに国防に無理解むしろ嫌悪する頭でっかちの政治家がドイツ国防の弱体化を招いている気がします。国民の9割が自衛隊を支持、と日本の首相は喜んで発言していましたが、国会では半分近く、教職員では過半数以上が反対の姿勢では。指導者はその国の有権者の資質のあらわれとはよく行ったもので、国を滅ぼしかねなくなっても思考行動が変わらない人がトップに立てば悲劇そのものです。

Here's A Crazy Idea: A European Union Aircraft Carrier 

欧州連合の空母整備が正気の沙汰とは思えない理由

Why? We explain.

イツはひょっとしたらブレグジットへの復讐として英国商船隊を北大西洋で再び撃沈しようというのか。
でなければ、ドイツで頂上に立とうという政治家が航空母艦保有を欧州連合に求めたことは筋が通らない。
キリスト教民主同盟総裁アンネグレート・クランプ=カレンバウアーはアンゲラ・メルケル首相の後継者と目され、このたびヨーロッパ各国共同による空母建造を提唱し波紋を招いた。
「ドイツとフランスはすでに次世代の戦闘機開発で共同作業を始めている」とドイツ紙ディ・ベルトに寄稿し、「次のステップは象徴プロジェクトとして欧州共同保有の航空母艦一隻を建造し欧州連合の世界的な役割として平和と安全の護り手としての姿を示そうではないか」と述べた。
メルケルはこの構想に賛同しているようだ。「それだけの装備が欧州に生まれれば素晴らしい、喜んで実現たい」
皮肉にもクランプ=カレンバウアーはフランス大統領エマヌエル・マクロンの欧州統合強化提言は退けている。「欧州各国の主権を認めたままで欧州に超国家はありえない」とした。
それでも欧州共通防衛政策が生まれる余地は残っており、欧州安全保障理事会に英国も席を連ねている。欧州共同保有航空母艦も同様だ。
クランプ=カレンバウアーでさえ欧州空母構想を「象徴的存在」と述べている。空母一隻を整備する価値は陸上機材で届かない場所近くに移動航空基地として回航し運用することにある。これに関心を有するのはグローバルに権益を希求する一部諸国のみで米ロ中以外に欧州では英仏両国は空母を運用中だ。HMSクイーン・エリザベスは中国への警告として派遣される。フランスのシャルル・ド・ゴールならびに提案中の後継艦はフランスがまだ残す植民地への権益の存在を知らしめている。
だが欧州のその他国には軍艦を海外に定期派遣していない、海軍部隊が小規模、内陸国で海軍が不要の国もある。空母一隻ではロシアと東ヨーロッパ、北ヨーロッパ、バルト海での武力衝突に効果はたかがしれている。必要なのは防衛体制の整備であり、護衛艦船の建造でありバルト海地方でロシアの海空軍攻勢に耐えることであり、ロシアの極超音速ミサイルK-300Pバスティオンのような存在に対応することだ。米海軍でさえあれだけの予算や資源がありながらスーパー空母の生き残りを心配している。欧州が米フォード級空母(130億ドル)を超える戦力と残存性を備えた空母を設計建造できるとは思えない。
欧州の権益は地中海だ。2018年に英仏両国が米国に加わりシリア政府施設に空爆とミサイル攻撃を加えた。陸上基地機材はキプロスやイタリアから出撃した。欧州連合は地中海を渡って押し寄せる不法移民の流れを止めたいとする。空母を沿岸警備に投入すれば非常に高くつく。
.問題の本質は空母の効用ではなくヨーロッパは何を断念するかだ。ドイツ軍の稼働体制は劣悪でタイフーンジェット戦闘機は地上に待機し、艦船は出港できず陸軍部隊の装備はお粗末で冷戦時代の数分の一の戦力しかない。NATOでGDP比で2パーセント以上を国防予算に支出する加盟国は少ない。それだけ負担すれば空母、艦載機、護衛艦の建造予算は残らない。最大のロシア脅威はミサイルやサイバー戦だが空母では対応不能だ。
欧州空母が実現しても疑問が残る。どの国が指揮するのか。どこで建造し、どの国が建造するのか、どこの機材を搭載するのか。フランスは独自にラファールM艦載機を整備し、英国はF-35採用を決めている。空母はどこの指揮統制下に入り危険な任務に向かわされるのか。
.欧州各国で英本土上陸シーライオン作戦を再び実施するのでない限り空母建造は愚行だ。■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook .

コメント

  1. 当初から言われていた通りですね。今のドイツ軍の悲惨な稼働率や、主に陸空軍で対処できるウクライナ問題でさえ、ロシアのエネルギーに依存しているため強硬に出れないドイツでは、「空母を一隻作って何をするの?」と突っ込まれて終わるだけだと思います。何か、ドイツと欧州はメルケル政権時代より酷い惨状になりそうな気がしますが。。。
    下手すると、勝手なドイツの振る舞いに切れた欧州各国が反旗を翻して欧州大戦三たび、とかなるんじゃないのか?と危惧せざるを得ないくらい、現状の国民の怒りを理解していなさそう。

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  2. 欧州はEU官僚が貴族化してるなんて話も聞きますがどうなんでしょう?
    魔女狩り・ギロチン革命・ホロコーストと血なまぐさい歴史がある欧州ですが、その再来となってしまうのかどうなのか。

    地政学的に見ればヨーロッパは大きな半島でしかなく、半島国家は統一できないのは歴史が証明しています。

    EECから始まった統一ヨーロッパの社会実験の答えわせの時期に来ているのかもしれませんね。

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    1. 「統一ヨーロッパの社会実験の答えわせ」が欧州内だけで済むなら良いのですが、欧州各国には、俗に言うパンダハガーも多そうですから、「欧州の混乱+中国の進出+(ロシアの介入)」となると、非常に恐ろしい未来もあり得るかもしれません。中国はアジア方面でも工作を進めているようですし、欧州の不安定化が、政治、経済、軍事の全てで波乱要因にならないことを願っています。

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    2. 冷徹な見方をするならヨーロッパの不安定化が日本の国防上の国益になりえます。

      ヨーロッパが不安定化すればロシアは介入せざるを得ませんし、中国が野心を見せるなら、日本に振り分ける戦力が分散します。

      ヨーロッパの権益を取り合って中ロが対立すれば、極東方面での敵が潰しあってくれることにもなります。

      大陸が混乱するときに自国経営に専念出来る、というのが海洋国家の強みです。これを生かさない手はありません。

      生かさない手はないのですが、その覚悟が日本にあるのかは疑問てす。

      大陸の混乱に手を出すと必ず亡国の危機に見舞われてきた日本。(白村江しかり太平洋しかり)

      同じ過ちを起こさないか心配です。

      最悪はヨーロッパに介入した中ロの牽制に利用されることです。

      自国のためならまだしもヨーロッパの安定のために中ロと戦うなんてことになったら国が滅びますよ。

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  3. 政治が絡む達に安全保障だけで語れる話では無いですが、少なくとも独仏間でも既に方向性の違いが出ている様で、尚EUの存在意義も目的概念が複雑化する程統率力を失う正に現在進行中ですね。ドイツやフランスは米国の影響力を排したいつもりが結果として危機意識が強い東欧・北欧との米国の繋がりは深化するばかり。軍事に話を戻しますと既にドイツ陸海空軍で維持整備・改修が進まない有様で空母を誰が作り、管理し運用するのか。考えれば感情論以前の問題です、どうにもならない。製造の可能性としてはフランスが最も有力か、もし他国と共同事業ならタイフーンの二の舞か共通運用する概念(米国や英国の意志無しで)が確立出来るのか甚だ疑問です。
    問題は米国が対国家戦回帰まで数年以上の時間が掛かる訳ですが独仏取り分けドイツの揺らぎが抑止力に何処まで響くのか懸念されます。

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  4. ぼたんのちから2019年3月21日 13:24

    メルケルの後継者は、EUの空母保有、及び国連常任理事国入りの構想を見る限り、足が地に着いておらず、大きな混乱を招きそうだ。
    ただでさえ与党の支持率が低下する中で、このような混乱は政権交代を促進させるだろう。しかし、主導的な政党が存在しないから、短命な連立(=野合(失礼!))政権の交代が続く可能性が高いと考える。
    「ドイツのための選択肢(AfD)」が政権に就く可能性もある。AfDは極右と言われるが、実体は現政権に対し右翼的に反発した民族主義的色合いの濃い政党であるが、ナチスも初期には同じような傾向であったから、注意が必要なのだろう。
    ドイツの経済成長は低落傾向であり、ますます中国依存を強めるだろう。ファーウェイに対しても宥和的姿勢で臨むようだ。ファーウェイ機器使用の最大のリスクは、社会インフラに対する壊滅的サイバー攻撃であるが、ドイツは、自国が親中派であり、そのような攻撃を受けないと考えているのだろう。
    このように考えると、なんだか核攻撃を受けないと妄想する隣の国が、ドイツに似ている。

    返信削除
  5. 皆様のコメントには多々教えられるものがあり、感謝申し上げます。
    やっぱり皆様、今のドイツ政府に足元の国民を見ていない様な不安定さを感じる方が多いですね。欧州といい、中国といい、争いごとの多い国や地域は、もはや文化や民族の習性なのでしょうか。。。

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    返信
    1. ぼたんのちから2019年3月22日 21:47

      なぜ争うのかは、難しい問題です。様々な原因があります。
      過去2回の世界大戦の主戦場であった欧州を見ると、奥底に憎悪の連鎖があるようです。
      ジョージ フリードマンの「ヨーロッパ炎上 新・100年予測: 動乱の地政学」を読むと、今もって憎悪が引き摺られているようです。
      いわゆる西欧思想の根底にはこの憎悪があり、西欧思想はそれを昇華するための理想であるように思えます。EUは、この理想を基に作られているため、将来、理想は現実に向き合い、崩壊すると、個人的に推測します。
      悲しいことに、今や欧州では西欧思想のメッキがはがれ、憎悪がむき出しになりつつあり、将来、戦争が起きるかもしれません。
      他方、中国は多民族国家であり、漢民族でさえ多くの民族の集合体で、過去から争いが絶えません。争いを無くし、従属させるために絶対的権力が必要になったと、個人的に考えています。絶対的権力が揺らぐと争いが拡大するでしょう。
      以上は、あくまで個人的意見です。
      自分なりに考えて、主張を形作ることが最も大事です。

      削除

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