スキップしてメイン コンテンツに移動

★★世界いかなる場所にも24時間以内に展開する「ラピッド・ラプター」構想の持つ意味とは

F-22を制空戦闘機としてのみ見ているとこの記事の趣旨が理解できないと思います。たしかにシリア戦線で戦闘デビューしたラプターは当初こそ何ができるんだと揶揄されても仕方ない存在でしたが、戦術の改良と訓練により対地攻撃能力も開花させたのでしょうね。配備機数が少ないこともあり大量投入は不可能なので、初回に効果の高いパンチを敵にお見舞いすると言う構想のようです。



"Rapid Raptor": The Air Force Can Attack Anywhere with a Stealth F-22 in 24 Hours 米空軍は「ラピッド・ラプター」構想でF-22を24時間以内に世界の任意の場所へ派遣し攻撃する

March 13, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22RaptorF-22 RaptorMilitaryTechnologyWorld


空軍は「ラピッド・ラプター」でF-22の四機編隊の迅速派遣をめざす。文字通り世界いかなる場所にも24時間以内到達を目標とし、急速に展開する世界情勢に対応する。
構想自体は数年前から存在し、F-22の4機、乗員、C-17による支援、燃料、整備、兵装を迅速に世界各地に派遣し、高速攻撃、第一撃を実施するのが狙いと空軍関係者が述べる。
F-22の即応体制はひとえに新ソフトウェアの実現にかかっており、ソフトウェアを順次連続改良する「パイプライン」方式を目指している。
「ソフトウェアに古臭いルールを適用する余地はない。これまで違う形のソフトウェア開発が必要だ。F-22では従来型の調達方法を引き渡しまで継続する流れとして再編した」とウィリアム・ローパー空軍次官補(調達技術補給担当)が空軍協会主催のシンポジウムで語っている。
「迅速調達」でソフトウェアに重点を置く空軍はF-22で新型兵器二点を有効化した。機体、兵装、搭載方法やセンサーといったハードウェアすべてをソフトウェアで性能向上するのがF-22の基本設計思想だ。
2つの新兵器は既成装備の高性能版でAIM-9X空対空ミサイルとAIM 120-Dだ。
速いペースでソフトウェアを中心とする戦略の狙いは「ラピッド・ラプター」を強化し配備中のF-22部隊で最適の威力が発揮できるよう維持することにある。
F-22を「第一撃」兵器にする
第一攻撃手段にF-22ラプターを使う意義は大きいと専門家は見ており、ステルスと空対空戦闘技術で強固に防衛された敵領空で攻撃を仕掛けることが可能だからだ。
空からの攻撃が必要となる緊急事態の大部分でF-22が第一陣として攻撃力を発揮する想定で、敵空軍力の脅威を排除しステルスを生かし敵防空体制の破壊が期待される。これで「空の回廊」を作りその他機材に道を開く。F-22は高高度ステルス爆撃任務の想定はないが敵戦闘機さらに防空体制の破壊には最適である。
ラプターは第四世代機のF-15やF-18と運用する設計思想で空爆部隊に道を開くのみでなく搭載する長距離センサーで標的探知し第四世代機の攻撃を誘導する役目もある。
ラピッド・ラプター構想は空軍太平洋司令部がまず提唱し航空戦闘軍団(ACC)が世界規模に拡大したと空軍は説明している。
「ACCのラピッド・ラプター構想はPACAFの原案が戦域範囲だったのを世界規模に拡大したものだ」とACC広報係が昨年Warrior Mavenに伝えてきた。
ラピッド・ラプター構想の一環でACCがF-22をヨーロッパに前方配備したのは2015年と2016年のことだった。ヨーロッパでのラピッド・ラプターはペンタゴンのめざす拡大ヨーロッパ政策の一環として抑止力に重点をおく部隊を各地に配備しつつ同盟国間の「団結」「共同作戦体制」にむけ各種演習を展開するDoDとNATOの狙いと軌を一つにする。
ロシアの動向に対応する部隊として誇示する以外にこうした演習で「機動性」と迅速な展開配備を見せる戦略的な意味がある。
空軍関係者がラピッド・ラプターで特定国を狙う意図はないと慎重に説明するが、ヨーロッパ展開にはロシアとの緊張が厳として存在する以上、対抗措置として大きな意義がある。
また大国同士の大規模武力衝突に24時間以内に対応する以外にラピッド・ラプターには想定外の遠隔地や「厳しい」標的への対地攻撃の想定もある。
世界の任意の場所で攻撃の必要が突如発生すれば、F-22の小規模編隊が現地に向かう。ここで大事なのは近年の世界規模の戦闘環境を考えるとF-22による対地攻撃あるいは近接航空支援が重要度を増している点だ。
これまでF-22は速力、操縦性、ドッグファイトでの優位性から制空戦闘機として見られることが多かったが、イラク、アフガニスタンでの空対地攻撃の実績から同機の対地攻撃能力が強く認識されている。
F-22は近接航空支援でA-10にはなれないが、搭載20mm機関砲で対ISIS攻撃に投入されたと関係者が述べている。アフガニスタンでもタリバン施設の攻撃で実績をあげたという。
こうしたミッションを実行すべく、F-22は対地攻撃専門の共用直接攻撃爆弾GBU 32やGBU 39、小口径爆弾の運用も可能となっている。
Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.
Some background portions of this story first appeared last year.

This first appeared in Warrior Maven here.

コメント

  1. F-22は開発当初から、敵防空体制の強固な空域でも作戦を実行できる機材として作られたハズ。でも、ペンタゴンがF-22の情報が漏れるのを恐れて出し惜しみをしてしまったため、国内からも高価な費用をかけて作った意義を問われることになってしまったため、ここに来て役割を明確にしたのでは?と推測します。
    ただし、良くわからないのは、対地攻撃も十分可能なようにする為に、レーダー他のアビオニクスのソフトウェアだけを改良して対応できるのか、それともハードウェアも新型に変更する必要があるのかが記載されていないですね。最近のミサイルのシーカーは高性能ですが、スティルス機で武装はウェポンベイに内臓が基本と考えると、機体本体のレーダー他のハードウェアも改修した方が良さそうな気がしますが。。。(そうすると、限りなく日本のF-3開発に提案した機体に近くなりますが)
    まぁ、この先F-22が実戦投入される事例が増え、どのくらいの成果を上げられるのかが楽しみになりました。どのくらいの実力を見せてくれるのでしょうか?

    返信削除
  2. 上記の構想に従った攻撃の上で、空母機動部隊が沿岸に展開されたら、確かに為す術が無いですね。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...