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イスラエル独自の仕様、運用構想のF-35Iアディールはどこが違うのか

イスラエルで独自に発展する装備品が多いのは、もちろん同国の科学技術の基盤もありますが、開発時にイスラエルに必要な装備の機能を目的から考えて構築する思考力だと当方は見ています。日本にも参考となる事業は多いのですが、われわれが考え方から変えていかないと表面だけの模倣に終わりかねません。イスラエルとの協力もはじまっているとききますが、思考の面から良い影響を受けてわれわれ自身の思考を鍛えたいものです。


Stealth on Steroids: Meet Israel’s F-35I Adir (An F-35 Like No Other)

ステロイドステルス:イスラエルのF-35Iアディールは全く別のF-35だ

F-35I Adir—or “Mighty Ones”—will be the only F-35 variant to enter service heavily tailored to a foreign country’s specifications.
F-35Iアディール(「強者」)ほど使用国の要求仕様にあわせ大幅改修された例はない
March 17, 2019  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: IsraelF-35MilitaryTechnologyWorldWorld

2018年5月22日、イスラエル空軍司令官アミカム・ノーキンがF-35Iステルスを戦闘ミッション二例に投入したと発表した。F-35による初の実戦作戦だったのは確実だ。
イスラエルのF-35Iアディール(「強者」)ほど海外仕様にあわせ大幅改修された機体はない。カナダ向けCF-35で空中給油用プローブと氷結滑走路用のドローグパラシュート装着案があったがカナダ政府が導入を取り消し実現していない。
第4世代ジェット戦闘機のSu-30、F-15、F-16で輸出用改修は普通にあり、現地製のエイビオニクス、兵装を搭載したり改修で該当国の空軍の方針や戦略的状況を反映している。イスラエルでもF-15Iラアム(「雷電」)や複座F-16Iスーファの例がある。またイスラエルでは導入後も国内改修してきた。その例がF-15Aイーグルで爆弾投下能力を付与しイラクのオシラク原子炉を破壊した。
だがロッキード・マーティンは特定国仕様にあわせたF-35改修は受け付けていない。これに対しイスラエルは例外扱いを求めた。同国はF-35開発に参画していないが、50機を急いで発注し、自国に有利な購入条件の交渉を開始したのは同国内でF-35主翼ほか高性能ヘルメットが製造されることもある。さらに本格的整備施設がイスラエル航空工業内に設置された。
2017年12月にまず9機のF-35が第一線配備され、2018年は6機が加わった。同国は二個飛行隊を編成し、さらに25機追加で三番目の飛行隊も編成するオプションを有する。ただし最近の報道では第三飛行隊はF-15I追加調達を優先するため先送りとあり、ステルスより航続距離とペイロードを重視するようだ。イスラエルは初期製造分のF-35で一機あたり110百万ドルから125百万ドルと高額を支払っているが、そのうち85百万ドル程度に落ち着くといわれる。
イスラエルの第一陣19機はF-35Aが原型で、次に調達する31機はイスラエル製ハードウェアを搭載した真の意味のF-35Iになる。報道では全機をF-35Iと扱っているが、初期機材も後日イスラエルのオープンアーキテクチャ方式の指揮統制通信演算(C4)システムに改修される。
ライトニングの高性能機内コンピュータと地上の補給システムにはF-35運用国は手が出せない。F-35コンピュータのソースコードへのアクセスで改修を希望する向きが多いが、ロッキード・マーティンは自社営業方針並びに安全保障上の理由で完全アクセスを認めていない。
F-35Iではイスラエル製C4プログラムをロッキードの基本ソフトの「上で」走らせてこの問題を回避している。センサーからのデータを吸い上げ僚機と共有する機能がF-35の中核性能だ。イスラエルでは空軍と陸軍がデータリンクを共有しロケット発射位置や地対空ミサイル装備を追尾する機能が重要だ。
IDFでイスラエル製データリンクと防御用エイビオニクスのレーダージャミングポッドを活用できるようになった。関係者がAviation Weekに語ったところではIAFはF-35のレーダー断面積が小さい利点に「5年から10年」は敵が追随できないと見ている。ステルス機の探知方法はすでに存在しており、長距離赤外線センサー、電磁センサー、低帯域レーダーがありそれぞれ制約もあるものの、今後開発中の量子レーダーが加わるかもしれない。
そこでIDFは「プラグアンドプレイ」方式の防御対抗装備を柔軟に搭載したいとし、新型ジャミングポッドが開発されれば都度導入する。イスラエル企業のエルビットイスラエル航空宇宙工業がこうした新装備を開発中である。F-35の高度な「融合型」エイビオニクスによりソフトウェアにもプラグアンドプレイの利用を想定し、機体対応が必要となる。こうした追加装備は2020年以降に引き渡される後期型の機体下部や主翼前縁に搭載されるだろう。
イスラエルは外部燃料タンク二型式も開発中でF-35の航続距離を伸ばす。非ステルス425ガロン入り主翼下取り付けタンクをエルビット関連会社が開発し敵地に接近してから落下する想定だ。(取付用パイロンも放棄してステルス性を守るといわれる)またステルス性能が不要なミッションに使う。さらにIAIがロッキードと共同でボルト取り付け式の機体一体型燃料タンクを開発するとし、機体にかぶさるように装置しステルス性能や空力性能を劣化させないとする。
F-35I用にイスラエル開発の各種兵装搭載で認証が出る予定で機内兵装庫にパイソン-5短距離熱追尾空対空ミサイルやスパイスファミリーの滑空爆弾を搭載する。後者は電子光学、衛星、あるいは有人誘導で60マイルの有効射程がある。
F-35兵装で仕向地専用仕様はイスラエルに限ったことではない。英空軍・海軍向け機材はメテオ、ASM-132空対空ミサイルを、ノルウェイとオーストラリアではノルウェイ開発の対艦ミサイルの運用が可能となり、それぞれの任務で重要な機能を反映している。米国はNATO同盟国にB61核爆弾用に改修したF-35の採用を期待している。
イスラエルはアディールをどう使うのか
ノーキン司令官の発表でイスラエルの同機の活用構想が明らかになった。同国の潜在敵対勢力イラン、シリア、ヒズボラに同機が領空進入できるとわからせ、初弾が標的に落下するまで探知できないことも知らせた。
F-35は第4世代機と比べ飛行性能が凡庸との批判があり、ドッグファイトで不利と言われる。一方で同機支持派からはステルス、センサー、長距離ミサイルにより敵に接近せず強力防御された標的の攻撃に適した機材だとの意見が出ている。.
この攻撃能力特化がイスラエル空軍に意味がある。1948年以降、空対空戦闘ではほぼ敵なしだったが1973年のヨムキッパ戦争で地上防空装備により甚大な損害を喫した。それ以降のイスラエル軍機はレバノン、シリアを中心に敵SAM排除のため空爆に成功してきたが、2018年2月に10年ぶりに機体喪失が発生した。シリアのS-200ミサイルがF-16を撃墜したのだ。
ベンジャミン・ネタニヤフ首相は軍事力でイラン核開発を阻止すると公言し交渉による解決を一貫して退けてきた。イスラエルとしては米国による攻撃を期待するがF-35導入でイスラエルが空爆に踏み切る可能性がより現実的になった。
だがイスラエルが空爆しようとすればトルコ領空の横断が必要となり、あるいはヨルダン、シリアを通りイラク経由でイラン領空に侵入することになるが600マイルの距離がある。また標的施設はイラン国境線から内陸地にある。このため第4世代機では戦闘行動半径の制約で空中給油機を動員すれば空襲を知らせることになる。さらにイスラエル機がイラン防空網を打倒するには追加機材の投入も必要となる。
イスラエル機がトルコ領空に2007年侵入したのはシリア北部の原子炉攻撃の際のことだった。だが一回ならいざしらず外国領空を繰り返し侵犯するのは困難だ。そこでF-35がイラン防空体制を突破しその他国に探知されなければ攻撃部隊の規模を小さくできる。
イスラエルはF-35を追加調達し320機残るF-16の後継機種にする意向があるようで、まず最古参のF-16Aネッツを交替させるだろう。伝えられるところではイスラエルはF-35Bジャンプジェットの導入も検討しているらしい。F-35Bといえば小型空母や島しょ部からの運用を思い浮かべるがイスラエルの場合は分散配備で敵の基地攻撃による被害を避ける効果を期待する。だがF-35Bが空戦性能が劣りながら機体価格が高いためこの運用方法に疑問が残る。空軍より政界がF-35B導入に乗り気といわれる。
イスラエルには複座型F-35を求める声もあり、訓練用途意外に後席にウェポンシステム士官を乗せ精密誘導兵器運用をまかせパイロットには操縦に専念させたいとする。
イスラエルのアディール部隊は今後も見出しを飾るだろうが敵のレーダーには見えにくいはずだ。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring .

コメント

  1. 米国がイスラエルを特別扱いする理由の一つは、新型兵器の実戦データが取れるという利点があり、そして、効果があったイスラエル独自の兵器も、将来の米国製兵器にフィードバックされるからでしょう。実戦で使われない、スペックだけでは軍事兵器の価値が計れないだけに、兵器開発の難しさが感じられます。

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  2. イスラエル製といえばDisplayも欠かせない製造品目になっています。元々米国L3製でしたが、単価上昇のため途中からElbit製に切り替わっています。営業の賜物なのでしょう。

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