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F-35誕生の背景と今後の展望 

Jointとは三軍共通の意味なので当ブログでは一環して共用と訳しています。同じ発想でF-111が以前ありましたが構想どおりにならず、F-35でなぜ再び同じ道をたどるのかわからなかったわけです。(逆に海軍用機材に空軍が目をつけたF-4、構想だけに終わりましたがF-15を海軍用に改造する話もあり、共通機材の概念が間違っているわけではないようです)西側防衛をこの機体に任せていいのか、というのが当ブログの一環した疑問点です。みなさんはどう思いますか。ヤコブレフの基礎研究をうまくロッキードが利用したというのは本当かも知れませんね。

The Crazy Story of How the Stealth F-35 Fighter Was Born ステルスF-35誕生の不思議な経緯

Development and procurement of roughly 2,400 F-35s through 2037 is now estimated cost over $400 billion, roughly eight times the annual defense spending of Russia. 約2,400機のF-35の開発調達が2037年まで続き、総額4,000億ドル事業となる試算があり、これはロシア国防予算の8年分に相当する。
February 24, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35Yak-38RussiaStealth FighterU.S. Air Force

2019年に初の完全戦闘対応F-35ライトニングがブロックIIIFソフトウェアを搭載し就役する。構想から27年、350機超が引き渡された後での達成だ。ペンタゴン官僚組織の中で構想が生まれた直後から人類史上最高額の兵器体系になるまでの経緯をたどってみよう。
1980年代にペンタゴンは第4世代機の後継機はステルスと決めた。空軍の高性能戦術戦闘機競作から航空優勢戦闘機として十分な能力を有するF-22ラプターが生まれたが、海軍・海兵隊は独自のステルス機を求め、空軍は単発F-16多任務戦闘機を大量供用中だったが、ラプターは高額すぎ後継機になり得なかった。
こうして1992年に海軍と空軍はそれぞれのCALFとJASTを共用打撃戦闘機事業に統一した。目標は安価かつ単発で攻撃に主眼を置くステルス戦闘機として三軍で共用しコストを節約しつつ米同盟国へも輸出を目指すというものだった。この点でF-22と異なる機体をめざした。さらにJSFでは最先端デジタル技術と素材技術で効率を引き上げるねらいもあった。
三軍が使用する共通設計のため要求内容は当初から重荷となった。たとえば海軍向け「C」型は空母運用のため主翼が大型で降着装置が強化される。海兵隊はハリアー後継機のジャンプジェットを求め小型揚陸空母から運用可能な垂直離着陸能力VTOLを必要とした。
だがVTOL能力により機体は大型となりハリアーやYak-38のようなそれ以前のVTOL機は速度、ペイロード、航続距離いずれも通常型より劣っていた。さらにJSFとして共通性を求めるあまりその他のJSF各型も抗力を生むずんぐり形になってしまった。
ここでF-35の源をたどる物語はエリツィン時代のロシアへ奇怪な寄り道をする。ソ連崩壊で資金不足となったヤコヴレフは共同開発からYak-141ジャンプジェットの開発資金の確保に必死だった。同機はリフトファンを別個に設けながら超音速を狙っていた。1991年にロッキードはYak-141の3機と貴重なテストデータを総額4億ドル程度で入手した。
1996年にペンタゴンはボーイングロッキードにそれぞれ7.5億ドルで試作機を2機ずつ製作させ5年後にテスト飛行させた。ボーイングのXF-32は不格好でずんぐりとしたデルタ翼機で排気口を傾けて偏向推力を確保し垂直飛行を目指した。一方X-35はYak-141同様にリフトファンを用いながらリフトファンの回転軸は別に確保する技術的に複雑ながら高度な内容だった。
2001年、空軍はJSF選定で完成度が高いとしてF-35を採択すると発表した。国防総省は開発費用として調達が期待される各国、オーストラリア、カナダ、イスラエル、イタリア、日本、オランダ、ノルウェイ、韓国、トルコ、英国からも資金を確保した。F-35事業協力国には莫大な部品製造や整備作業の一部が与えられ、国産ミサイル統合等の特権が与えられた。
だが「完全新型」機の設計は簡単な部分でペンタゴンはライトニングに未完成かつ最先端技術を採用しようとしていた。モジュラーパネルにレーダー吸収素材を焼き込み機体表面としたのは一つの進歩だった。
新技術にヘルメット装着画像表示システム、オープン・アーキテクチャのミッションコンピュータでアップグレード対応を可能としたもの、高性能防御装置と多面的センサー(分散型開口システム)の組み合わせ、ステルス性のあるデータリンクで機体とセンサーデータをネットワークで結ぶこと、低探知性のAPG-81レーダーがある。地上では複座練習型を作らずフライトシミュレーターを使い、補給活動では整備記録を蓄積し予備部品調達を迅速にする狙いもあった。
新技術は実証ずみの基本設計に取り入れるのが妥当である。だがペンタゴはF-35のエイビオニクス、ソフトウェア、機体を並行開発させようとした。つまり「基本型」のF-35はなく、つねに進化していくことになる。このため一つの部門の遅延が他部門にも影響し新型技術の取り入れが遅れるとコストも超過した。
ライトニングの機体重量は2千ポンドも増え航続距離が犠牲になった。とくにF-35Bでこの影響が顕著となった。このため再設計で重量を削ろうとしたため構造問題がF-35B初期生産機材で見つかっている。
米会計検査院は早くも2006年に警鐘を鳴らし始めた。2009年になると費用超過の大きさからロバート・ゲイツ国防長官(当時)の厳しい目にさらされF-35事業の仕切り直しを図り事業中止の可能性も話題に登った。だがライトニングは中止できないほど大きな事業になっており、予算と開発力を他の事業から奪い取っていた。ゲイツはハイエンド機材のF-22を当初の500機生産から180機で終了させている。
F-35開発日程が5年程度遅れる中でペンタゴンは追加予算で旧型機の供用期間延長を図る必要に迫られた。一方で省内の試験評価部門は数百にのぼる不具合点を見つけ、酸素供給装置の不良、機関砲の射撃方向のずれ、突然のコンピュータ終了などだった。カナダがまずF-35発注を取り消した。
海兵隊が2015年に「初期作戦能力」を認定し、空軍が2016年にこれに続いたが要求性能を水増ししていた。海軍のF-35Cは2019年にIOC獲得の予定。
低率初期生産で機体価格は200百万ドルになった機体には重要な性能がついておらず、テスト機材として活用されてきた。こうした機体を実戦にまわすと高額の性能改修が必要となる。
では三型式運用で費用節約はどうなったか。実は三型式の共有部品は2割程度しかない。
2013年にF-35は再び批判にさらされた。航続距離が足りず速力も劣り、上昇限度が低く、操縦性、機内兵装搭載量がいずれも旧型機水準に達しないというのだ。F-35支持派はライトニングのステルス性能、長距離センサー能力、ミサイル発射性能に比べればこうした点は取るに足らないとした。理屈の上ではF-35パイロットは長距離で敵探知し短距離での空中戦闘を回避できる。
2,400機ものF-35を開発調達すると2037年までに推定4,000億ドルとなり、ロシア国防予算の8年分に相当する。2070年まで運用すれば1.1兆ドルが別に必要となるとの試算もある。
不良、遅延、低稼働率が更に加わったF-35だが2018年は一定の進歩を示した。F-35Aの機体単価は89百万ドルに下がり、イスラエルのF-35Iと海兵隊F-35Bが戦闘デビューした。ライトニングは空戦演習で強い性能を発揮している。ベルギーとシンガポールがF-35導入を決め、さらにギリシャ、インド、ポーランド、ルーマニア、スペインでの採用が期待視される。F-35Bジャンプジェットはイタリア、英国の空母でも供用中で、日本が空母航空戦力を再構築するきっかけになった。
同機を好きか嫌いかは別としても辛い開発過程から参考になる教訓や反面教師の側面もあるのは確かで、F-35がいまやしっかりとその存在を示しているのは確かだ。同機が成功するか、あるいはペンタゴンが求める航空戦の新しい姿の実現に失敗するかが数十年にわたり厳しく問われていくだろう。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Image: Wikimedia

コメント

  1. こうして振り返ると、空軍、海軍、海兵隊の求める能力に違いがありすぎるため、統合しようとすると非常に複雑な構造、制御が求められ、特にソフトウェアの負担は当初の予想を遙かに超える物になってしまったようですね。米国は過去にも空軍、海軍の機体を統合しようとして苦しんだ経験があるのに、やはり「コストを削減しよう、機材を統合すれば開発費の重複は避けられる」という誘惑には抗いがたいのでしょう。
    尤も、始めに各軍の要求する仕様をうまく統合できれば、大幅遅延は避けられたかもしれませんが、簡単そうでこれが実は難しい。戦闘機では無いが、例えば大規模なコンピュータシステム開発でも要求仕様をうまく統合できず、大炎上した事例はありますね(某メガバンクが統合する際に、各行の仕様をうまく纏めきれずに銀行のオンラインシステムが誤動作して大問題になった例はその典型ですが)。今後もより複雑で大規模なシステムが開発されるでしょうから、似たような事例は出てくるでしょう。
    そう考えると、軍用機の開発と言うより、複雑で大規模なシステムを如何に開発するかという、本物の技術力、開発力をどのようにして育成するかという、工業が重要な産業の日本にとっても考えるべき事例だと思います。

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