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新型機登場 ボーイングが有人機と共同運用が前提のATSをオーストラリア開発機として発表

なるほど今回発表の無人機では機体性能はともかく、オーストラリアで設計開発し民生モデルで今後グローバル営業して言うことに意味があるようです。ISRやEW任務以外にどこまでミッションが広がるのか、機体に拡張性がどのくらいあるのかに関心が行きがちですが、もっとビジネスモデルに注目しないといけませんね。
Aviation Week & Space Technology

Boeing Unveils 'Loyal Wingman' UAV Developed In Australia

ボーイングが「忠実なるウィングマン」UAVをオーストラリアで発表
Feb 26, 2019Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology
UAVs



ーイングがはじめてグローバル市場売り込みを狙う機材の国外開発に踏み切った。オーストラリアで技術開発した空軍力合同化システムAirpower Teaming System (ATS) は一見戦闘機のような形状の無人機で有人戦闘機や偵察機と一緒に運用する構想だ。
実寸大のモックアップATSがオーストラリア国際航空ショーで発表された。機体はボーイングオートノマスシステムズとファントムワークスのオーストラリア事業所が開発したもので実証機は来年に初飛行の予定。
ボーイングが自社開発した形だがオーストラリア空軍(RAAF)の予算も使っており、現地サプライヤーも参加しているATSはオーストラリアで生産し世界各国に売り込む構想だ。
ATSの狙いは有人機を補完しつつ費用は数分の一兎する経済性で将来の脅威に対抗することにある。だが海外開発のため米国仕様専用とせずに各国のニーズに柔軟対応することもできる。
実証機は「忠実なるウィングマン」高機能開発事業Loyal Wingman Advanced Development Programとして40百万豪ドル(28.5百万ドル)を4年間にわたりオーストラリア政府から得ており、ボーイングも62百万豪ドルを研究開発に投入している。
全長38フィートの機体はステルスを意識し、ラムダ型式の主翼、尖った空気取り入れ口、バタフライ状の尾翼があり、民生ターボファンエンジンを搭載する。型式は不明だが小型ビジネスジェット用のエンジンだろう。ATSは単独でも有人機と連携しても運用可能で人工知能で安全な距離を維持できる。
性能データは少ない。航続距離は2,000カイリで一緒に飛ぶ他の機材に追随出来る速力があり、オーストラリア空軍にはF/A-18E/Fスーパーホーネット戦闘機、EA-18Gグラウラー電子攻撃機、早期警戒機E-7Aウェッジテイル、P-8Aポセイドン哨戒機と全てボーイング製機材だ。
同無人機は低コスト、モジュラー構造で柔軟対応が可能で各種ミッション用に簡単に調整できる「スナップオン、スナップオフ」式のペイロードを特徴とするとボーイングオートノマスシステムズ副社長クリスティン・ロバートソンが説明している。まず情報収集監視偵察任務と電子戦任務を想定した機材とするという。
ATS設計のもととなったのは品質と数量のバランス、急速に変化する脅威への対応、有人機の高価格が各国の国防予算で圧力となっている顧客との話し合いだったという。「世界市場を見ると少ない費用で多くの性能を求めるのが普通です」(ロバートソン)
「世界各国は戦力効果の最大化と拡大を目指しています。自律運用装備と関連技術で一気に低価格と品質が実現し既存機材を補完する手段が実現します」とロバートソンは述べた。ボーイングは低コストの機体、装備を有人機と組ませて運用すると大きな優位性が生まれるとATSの利点を強調する。
UAV
ボーイングは2月27日、オーストラリア国際航空ショーでATSの実寸大模型を公開した。Credit: Boeing


「世界各国を見回して見ると民生製品と同じ方法での対応が必要とわかりました。オーストラリアとの連携に注目し、結果としてユニークな手法が実現したと思います』(ロバートソン)
ATSはオートノマスシステムズの商品の一部で同様にボーイング傘下のインスティチュの小型戦術無人機、リクイドロボティクスのウェイブグライダー無人海面機、ボーイング自体のエコーヴォイジャー大型潜航艇も他にある。さらにX-37B再使用可能宇宙機もあり、ファントムエキスプレス再使用可能打ち上げ機はDARPA向けに製造が進んでいる。ボーイングではQF-16標的機を米空軍向けに改装しMQ-25艦載無人給油機を米海軍向けに開発中だ。
ファントムワークスも類似機材の製造を手がけており、26.5フィート全長のX-45A無人戦闘航空機を2002年にDARPA・米空軍向けに飛行させており、制空任務の自律運航を実証している。さらに全翼機形状のX-45C/X-46Aがその後DARPA・米海軍向けに企画されたが2007年に中止となった。ボーイングは自社費用でファントム・レイ実証機を完成し2011年に初飛行させた。
ATSはこうした機材との類似性もある。またマクダネル・ダグラス提案の共用打撃戦闘機案にも似ているが、ボーイングは偶然の一致としている。技術関連はすべてオーストラリアで進められ、現在の形状に決まる前に案複数を検討したという。
「グローバルに対応する事が重要なのです。世界各地の知見を応用して自律運用装備が実現します』とロバートソンは述べ、「オーストラリアと組んでボーイングのATS設計を主導し、現地産業界の支援を受けました」という。サプライヤーにはBAEシステムズ・オーストラリアフェラエンジニアリングRUAGオーストラリアがある。
米国外ではオーストラリア事業がボーイングで最大規模で同国内の航空機製造関連企業大手の殆どを手中に入れている。旧国営航空機製造工場やホーカー・デ・ハビランドなどだ。「ボーイングで米国以外で新製品を開発するのは初めてのこと」とファントムワークスインターナショナル役員のシェーン・アーノットも認める。
ウェッジテイル早期警戒統制機はボーイング737を原型にRAAFと共同開発したものでその後韓国やトルコにも販路を広げ、英国も導入を有望視されている。共用直接攻撃爆弾の翼部分もボーイングがオーストラリア国防科学技術開発機構と共同開発したものだ。
「ATSは初めての新規設計開発案件」とアーノットは述べ、「なぜオーストラリアなのかですが、その一部にオーストラリア空軍との提携関係があります。また同国に当社がこれまで行った投資もあり、イノベーション熱が高まっている同国の状況も重要な要素です」という


Boeing ATS

アーノットはRAAFのジェリコプランに触れている。高度技術かつ急展開する外的脅威からオーストラリア防衛を図る構想だ。「ジェリコでは組織の変革を前提としておりATSもその一部になります」(アーノット) 構想の中心は「人が機械を操作して他の人と協力する体制から人と機械が協同作業する環境に変えること」とRAAFは述べている。
アーノットはオーストラリアの国防産業力整備計画にも触れており、オーストラリアの国防ニーズに産業界が対応可能にするのが目的だ。ここに国防輸出戦略が絡み、国内防衛需要だけでは維持できない産業力の活用を促す。その中に官民連携で輸出成約をめざすこともあり、国際競争力を強化しながら国内の防衛ニーズに応えることも目指す。ATSはこの中で技術革新を目指すニーズに答えながら政府が求める産業力強化にもつながる存在だ。
仮想戦闘実験室を使い、オーストラ要ら、英国、米国の軍と共同作業するなかでボーイングには「空中海洋両面で今後の大きな課題」が見え始めたとアーノットは認める。「将来の脅威が開発サイクルで意識されています」という。これから出てくる要求を待つのではなく、ATSのように開発の加速化により将来の脅威に今から対応するのだ。「RAAFやその他顧客から受けた刺激にボーイングは大きな関心を有しており一緒に実現に向かっていきます」(アーノット)
「オーストラリアとは経済的なR&Dを進める貴重な機会となりました」とロバートソンも言う。「量と質のバランス、低価格でより多くの性能を実現し、高度の脅威環境に対応することを自律機能で実現することにグローバル市場での将来が開けます」
面積は大きいが人口が少ないオーストラリアには広大な空域が広がりRAAFや各国は「飛行テストで試行錯誤しすばやく結果を学ぶ」機会がATS試作機で協同運用構想を試す中で生まれるとアーノットは見ている。「早く信頼しながら製品化を進められる利点が生まれます。自律運用性能が重要です」
「RAAFにとっては技術革新の機会となり単なる新型機ではありません」(アーノット)実験の機会でありオーストラリアには有人無人機の同時稼働の経験となる。「導入前に試すことになりますが意味のある機会となるでしょう。当社には次の目標があり、各国のニーズを満足できる製品に仕上げることです」
ATS試作機はオーストラリア国内で飛行し、有人機との同時運用で無人機と組ませる効果を実証すべく各種有人機を投入する。
「同じ基地から運用し他の機材の迷惑にならない速度で飛びます」とロバートソンは述べる。自律運用性能は「どの機材と組ませるかで変わります」とロバートソンは説明。「その一部に人が絡み、地上からの操作や随行機からの指示がでてきます。自律性とはアクションを前提とした知性と定義しています」
協同体制はテスト段階にとどまらない。「民生需要でもビジネスモデルにつながります」とロバートソンは見ている。「需要の兆しは世界各地に見つかります」とし、ATSを民間向けにオーストラリアで開発すれば米国が適用する武器輸出制限に抵触するリスクを回避できる。「柔軟対応で仕向地ごとに販売できればグローバル規模で成功できるはずです」(ロバートソン)
技術開発をオーストラリア現地で進めることでサプライヤーも大部分を現地化となっています」とアーノットは説明。「開かれた対応をしており、設計開発はグローバル企業としての当社の経験を利用しています。輸出面の要求内容についてはかねてから詳しいですから今後につながる事業の管理を正しく進められます」
ATS開発を国外で民生事業として行うことでボーイングには輸出案件で柔軟性を発揮できることになり、仕向地向け特化や「各国の事情に対応することが業績拡大につながることの実証」になるとロバートソンは見ている。「グローバル企業として当社は国造りの重要性は十分認識しています」という。
民生製品式のアプローチと現地プレゼンスを組み合わせることはオーストラリアに限定されたことではなく、その他製品も海外で完成させ輸出につなげることができるはずとロバートソンは先を見ている。「民生商品と同じアプローチを取り、ボーイングとして各国でこのモデルを使えばグローバルで規模拡大が可能です」ATSはボーイングとして初のグローバル開発の軍事装備品になりそうだ。■

Editor’s note: This article was updated to clarify the funding for the Loyal Wingman Advanced Development Program.

コメント

  1. この構想は「忠実なるウィングマン」を実現できるだけの人工知能を、どの位の精度で開発できるかがポイントになりそうですね。
    単に親機に付いて行き、親機の指示で指定された目標にミサイルを撃つくらいならば可能のように見えますが、例えば、相手の反撃をどのようにかわして反撃するのか、複数の子機を衝突しないように制御できるのか、もしも親機が撃墜されたら基地に戻るだけなのか、留まって更に攻撃するのか、AIの判断と親機や基地からの指示が相反した場合の優先順位をどうするかなど、素人目にも複雑でとても難しそうに見えます。
    尤も、これを実現できたら、民生用途などの幅広い分野にも応用できる可能性は高いですが、開発と試験の費用が巨額になりそうです。でも、どんどん開発を進められる環境は素直にうらやましく感じます。

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  2. ISRや電子戦以外でも空対艦ミサイルを搭載すれば対艦攻撃も可能と違うかな。そうなればF/A-18Eも空対空任務だけに就けるしパイロットの負担軽減にも繋がる。日本でも開発を検討すべき。

    返信削除
  3. 無人機も航続距離や搭載重量を考えて、有人戦闘機とあまりかわらない大きさ、価格が許されるならば、有人戦闘機と同じ行動を取れると思います。対艦攻撃はもちろん、スクランブル任務にも対応できるでしょう。
    但し、相手が無人機ならば多少無茶しても大丈夫と、中国あたりの愚かなパイロットが勝手に思い込んで、通信のジャミングや機関砲やミサイルを撃ってこないとも限らず、この場合の対処も懸念されるところです。打ち落として中身を解析しようとか、法治国家ではない人治国家の中国は、無茶をする可能性が高いですから。

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