スキップしてメイン コンテンツに移動

台湾が求める戦闘機増強にどう対応すべきか。トランプ政権はF-16販売を許可するのか

コメントは下にあります)

Trump Admin Will Reportedly Approve Sale Of New F-16s To Taiwan And China Will Absolutely Freak

トランプ政権が新規生産F-16の台湾向け販売認可に向かうとの報道あり、中国の発狂は必至

China has said sales of new F-16s to Taiwan is a "red line" issue for them and supposedly the Trump Administration is about to cross that line. 中国はF-16売却は「レッドライン」とするがトランプ政権はあえて踏み出す模様


BY TYLER ROGOWAYMARCH 22, 2019

TAIWAN GOVERNMENT
ルームバーグによればかねてから台湾が要請していた高性能型F-16ブロック70の60機販売をトランプ政権が承認する。売却が成立すれば台湾で現有のブロック20仕様のF-16A/Bの145機がF-16V仕様にアップグレードされる中で追加機材になる。中国はかねてから米国が新規製造の高性能F-16を台湾に売却すれば『レッドライン』を超えると警告してきた。案件が承認されれば、中国が怒リまくるのは必至だし、北朝鮮の核兵器放棄がゆきづまり、南シナ海で人工島運営の中、米中関係がさらに緊張しそうだ。
台湾の旧式F-16の性能改修はオバマ政権が台湾の新造F-16を購入希望を却下したための対策だ。改修で各機材は新造F-16とほぼ同様になり、AN/APG-83 SABRアクティブ電子スキャンアレイレーダー、コックピットディスプレイ更新、ミッションコンピュータ、共用ヘルメット搭載標的システム (JHMCS)、高性能防御装置、データリンク等々を導入する
LOCKHEED MARTIN

台湾で導入済みのF-16の共用年数が長くなっており、機体構造の改修も行う。これによりブロック70機体との相違はエンジン(推力29千ポンドから32千ポンド)、機体一体型燃料タンク、ならびに強化された機体構造のみとなる。総額53億ドル契約にはエンジン換装の検討も含む。いまのところF-16A/B型でエンジンの強化改修は行われていない。

米政府が売却対象装備一覧を以下のように公表している。
"The Taipei Economic and Cultural Representative Office in the United States has requested a retrofit of 145 F-16A/B aircraft that includes sale of: 176 Active Electronically Scanned Array (AESA) radars; 176 Embedded Global Positioning System Inertial Navigation Systems; 176 ALQ-213 Electronic Warfare Management systems; upgrade 82 ALQ-184 Electronic Countermeasures (ECM) pods to incorporate Digital Radio Frequency Memory (DRFM) technology or purchase new ECM pods (AN/ALQ-211(V)9 Airborne Integrated Defensive Electronic Warfare Suites (AIDEWS) with DRFM, or AN/ALQ-131 pods with DRFM); 86 tactical data link terminals; upgrade 28 electro-optical infrared targeting Sharpshooter pods; 26 AN/AAQ-33 SNIPER Targeting Systems or AN/AAQ-28 LITENING Targeting Systems; 128 Joint Helmet Mounted Cueing Systems; 128 Night Vision Goggles; 140 AIM-9X SIDEWINDER Missiles; 56 AIM-9X Captive Air Training Missiles; 5 AIM-9X Telemetry kits; 16 GBU-31V1 Joint Direct Attack Munitions (JDAMs) kits; 80 GBU-38 JDAM kits; Dual Mode/ Global Positioning System Laser-Guided Bombs (16 GBU-10 Enhanced PAVEWAY II or GBU-56 Laser JDAM, 80 GBU-12 Enhanced PAVEWAY II or GBU-54 Laser JDAM, 16 GBU-24 Enhanced PAVEWAY III); 64 CBU-105 Sensor Fused Weapons with Wind-Corrected Munition Dispensers (WDMD); 153 LAU-129 Launchers with missile interface; upgrade of 158 APX-113 Advanced Identification Friend or Foe Combined Interrogator Transponders; and HAVE GLASS II applications. Also included are: ammunition, alternate mission equipment, engineering and design study on replacing existing F100-PW-220 engines with F100-PW-229 engines, update of Modular Mission Computers, cockpit multifunction displays, communication equipment, Joint Mission Planning Systems, maintenance, construction, repair and return, aircraft tanker support, aircraft ferry services, aircraft and ground support equipment, spare and repair parts, publications and technical documentation, personnel training and training equipment, U.S. Government and contractor engineering, technical, and logistics support, test equipment, site surveys, and other related elements of logistics support."

台湾は2018年10月に改修型F-16(現在はF-16Vと呼称)の一号機を受領しており、改修は現地で国営航空宇宙工業開発公司(AIDC)が担当している。
View image on Twitter
First F-16V to be modified in Taiwan. 🇹🇼

台湾のヴァイパー改修の動きがあっても米中の地政学的対立は避けられた。だが台湾がF-16全機材を改修しさらに60機の新造F-16を導入すればまったくちがう様相となる。
LOCKHEED MARTIN
バーレイン向けブロック70のF-16想像図

トランプ政権誕生当時で台湾を同盟国として米国最大の貿易相手国の戦略的懸念との間の細い線上を進むやり方は完全に過去のものとなってしまった。一部にはトランプ政権の動きを歓迎する向きがある。他方でパキスタン向け武器販売規模にも及ばない台湾への武器引き渡し量は宥和策にほかならないとの指摘もある。また今回提案の武器取引が成立すれば米中台の微妙かつ複雑な地政学上の関係が荒れるだけではすまないと警告する向きもある。
同時に習近平主席が再統一の目標達成のため軍事力行使も排除しないと明確に発言している。台湾がこうした発言に敏感なのは中国の軍事力による包囲が日々強化していると感じているからだ。
台湾と米国は今年夏にも中国による統一の動きへの対応策を協議の予定で、この予定自体に北京は怒り狂っている。米国は軍事プレゼンスを同地区で強めており、台湾海峡で米軍艦の通航を繰り返している。
そこで米国が中国が言うレッドラインを踏みこえF-16販売を承認した場合に中国がどんな反応を示してくるか興味を惹かれるし、その結果から米中関係にどんな影響が出るかも関心事だ。
発注が成立すればロッキードの新設サウスカロライナF-16工場には大ニュースとなるのはまちがいない。同工場の生産ラインはフォートワースのラインを移転したもので、生産規模は縮小したが高効率を維持し、年間60機の製造能力があり今はバーレイン向け機材を生産している。
オバマ政権がF-16改修を承認してからドナルド・トランプが当選したが、当時台湾はF-35とくにB型の取得をめざしていた。短距離離陸垂直着陸性能が台湾の作戦構想に合い、大規模交戦の際に航空基地が中国の弾道ミサイル・巡航ミサイルの攻撃を浴びるのは必至だからだ。だが最終的に同機は開発段階が未成熟で台湾のニーズに合わないと判斷し、かつ取得・運用が高価なうえ、ワシントンの了承を得るのは至難の業と判斷した。そこで最新かつ最高性能のF-16の取得が再び台北の最大関心事になった。
台湾と中国が全面戦争に突入した場合、中国軍の強大な戦力に耐えられる戦闘機はあるのかとの疑問が出ている。だが一方で台湾に武器を手渡せば中国侵攻を招くとの声もある。米中貿易交渉が進む中で、トランプ政権がF-16売却を認可しても米中貿易協定の締結まで待つべき、あるいは何らかの大日程が終わるまで動くべきでないと考えるのが普通だろう。
そこでトランプ政権が高性能F-16の台湾売却を交渉で頑な態度の中国を屈服させる手段に使う可能性がある。だがそうだとしても、一度F-16売却を承認してから中国との事情から取り消すのではひどい前例を作ることになる。これでは貿易交渉のためなら米国は平気で友邦国を裏切る国になってしまう
TOSHIRO AOKI/WIKICOMMONS
Taiwanese F-16A taxiing.


もう一つ噂に上がっている選択肢がここに来て現実味を帯びてきた。AESAレーダー換装済みのF-15C/Dイーグル余剰機材のリースあるいは売却である。こうした機材では対地攻撃能力は限られるが空対空戦では最新型F-16を上回る性能がある。これが実現すれば台湾の空軍力はバランスがとれたものになる一方で中国に敗れる可能性も減る。同時に1米国は台湾に「防衛的性格」の兵器のみ売却できるとしている979年法に違反しない。
F-15C/Dは空対空ミサイル搭載量を増やす改修も可能で、一体型燃料タンク搭載もできる。これが実現すれば数の上で劣勢の台湾に理想的な機材になり、台湾海峡上空で待機できる。つまり改修型のF-15C/Dは台湾に最強の空対空戦闘機レーダーを入手し、長時間飛行、防空に有効に使える兵装運用能力を同時に実現してくれる機材になる。
USAF
F-15C.


F-15C/D余剰機材と言っても数は限られ、新型レーダー換装の機体は皆無だ。だがUSAFに新規製造F-15Xが導入されれば、余剰F-15C/D型を構造補強と技術改修を加えて台湾に売却すれば意味がある。
さらに海兵隊の余剰AV-8Bハリヤーを加えAESAレーダーへ換装の後台湾に渡せば、過酷な戦闘作戦環境で真価を発揮する。
ということで台湾向けの選択肢はたくさんあり、これまでより意味が大きくなっているものもある。
とはいえ、「台湾にもっと戦闘機を」との動きがこれから数週間のうちに大ニュースになりそうなのは明らかだ。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com

コメント F-15余剰機材といえば、航空自衛隊でデジタル改修に耐えられない旧型を米国に譲渡すると言う話がありましたよね。米国本土ではなく、米国経由で台湾に行く、としたらどうでしょうか。かつてF-104でも同様に台湾に渡った機体があったような。中国様に忠誠を誓う国会議員がこの動きを知ったらひっくり返りそうですが。中国が猛烈なネガティブキャンペーンを展開しそうですね。当方は「一つの中国」とは破綻した考え方で台湾は中国にあらずと考えていますので、台湾との国交回復を考えてもいいと思います。大陸とやりあうにはそれくらいのカードが合ってもいいと思うのですが。が皆さんはいかがですか。

コメント

  1. 私も日米の「台湾との国交回復」は良い策だと思います。いっそ、米軍基地を設ける(自衛隊も積極的に協力する)位の事をしないと、中国は益々図に乗ると思います。日本にとっても、中国に沖縄から台湾に続くルートを破られることは安全保障上の大きな問題になりますから、積極的に参加することは意義があると思います。
    また、「F-15余剰機材を台湾へ」の話で、私も「もしや自衛隊の退役するF-15C/Dかな」と思いました。尤もそれならF-15Xの新造機の方が安上がりでしょうが。
    本当は、F-35Bを売った方が抑止力にはなると思ってますが。

    返信削除
  2. 一つの中国などは、ただの詭弁です。周辺国では、唯一の親日国なので、大事にしないと。
    韓国などは、日本は仮装敵国扱いですから。
    国産しようとしている潜水艦に積極的に技術協力したり、未だにM48の代替に10式の輸出の提案など、できることは多いです。
    アメリカも、F-16輸出ではなく、オバマの時に没になったF-35B輸出にすればいいのにと考えています。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...