スキップしてメイン コンテンツに移動

戦力強化型ストライカー装甲車をヨーロッパに派遣しロシアへの抑止効果を狙う米陸軍

設計に拡張性があるのが利点のようですね。大量調達(ストライカーは4,500両近く生産)のメリットでしょうか。


Pentagon to Send Up-Gunned, Drone-Killing Strykers to Europe to Deter Russia

火力強化し無人機攻撃も可能なストライカー戦闘車両をヨーロッパへ送りロシアへの抑止効果を期待するペンタゴン
The US Army is arming its Stryker vehicle with attack drones, lasers, up-gunned cannons and anti-aircraft missiles
米陸軍はストライカーで無人機攻撃能力、レーザー、火力を強化し対空ミサイルの搭載もめざす




陸軍は米陸軍はストライカーで無人機攻撃能力、レーザー、砲塔を強化し対空ミサイルまでの搭載を2020年までに実現し、ヨーロッパに展開しロシアの「侵攻」を食い止めるべく国境防備体制を図りたいとする。

ロシアの脅威を前に米国は機動性と前方配備を重視した多機能装甲車両のヨーロッパ派遣を決定し、新型対空兵器を搭載させ「威力を増した」ストライカーが中心となる。

でたばかりのRAND報告書がこれまでロシアの脅威と動機について解説しており注目される。「ロシアの欧州における敵対行動」と題された報告書ではロシアの動向について説得力ある指摘が見つかる。

「2016年のロシア国内エリート層向け調査では82.3%が『現在の領土を拡張すること』がロシア国益につながると応え、2012年の43パーセント、2008年の64パーセントから増えている」

報告書の著者ラファエル・コーヘンとアンドリュー・レイディンは同時にロシアが「パラノイア」あるいはNATOの脅威を国境地帯で感じていると指摘。

「ロシアは一貫して脆弱に感じ防衛のあまり強硬な態度を時として示してきた....ロシア国境付近の小国が友好国として見られることは少ないのは敵勢力の前方基地になるとの恐れからだ」とし、プリンストン大教授スティーヴン・コトキンの見解を紹介している。

報告書にはロシアの関心地域の詳細が盛り込まれており、注目を集めるバルト海地区のみならず東ヨーロッパのスラブ語圏も含むとある。

この戦略構図を考慮すれば通常型のストライカーではヨーロッパ派遣に不十分な理由がわかる。派遣対象の車両には新型短距離防空兵器(SHORAD)としてヘルファイア、スティンガー、ジャヴェリンの各ミサイルでロシアを意識した防空能力を強化する。

中国あるいはロシアのヘリコプターや無人機がロケット、ミサイル、小火器で武装しており、SHORADはこの排除のため構想された。

これまでのストライカーに防空能力が欠けていたのでこれで解決する。またSHORAD兵器の搭載で無人機、ヘリコプター、低空飛行機、さらにミサイルも攻撃可能となる。陸軍の兵器開発部門では冷戦時に米軍はソ連脅威に直面し地上発射型対空兵器が当然ながら高優先順位を与えられていたがその後の15年は対戦闘員作戦に重心が移り能力が萎縮していたのだとする。

これによりSHORAD事業により30mm機関砲、攻撃型無人機、レーザー兵器を搭載し装甲戦闘車両を「大国間」対決想定に合う装備にする。
.
陸軍上層部によればSHORAD対応ストライカー試作車が今年製造され、その後144両を生産する。

現在のストライカーにM2 50口径機関銃が搭載されているが、新型30mm機関砲は射程が二倍で火力も強力になる。

ジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズの兵器開発部門ではストライカーに搭載する小型センサー兼攻撃用無人機のテストを続けている。砲塔部分から垂直発射する小型無人機はシュライク2の名称で敵標的を探知、捕捉、追尾する。ビデオデータリンクを介し攻撃用ミサイルと協同して探知した標的を攻撃する。この技術でセンサーと攻撃の連携機能が生まれ「ハンター・キラー」になるとGDは説明。

同時に陸軍開発部門はストライカーで移動式高エネルギーレーザー兵器の運用が重要になると見ており、5kw級レーザーのテストで無人機に命中させている。レーザー兵器にはKuバンド追尾レーダーを用い自律的に標的を捕捉しその他センサー装備が戦闘中に破損しても対応可能とする。レーザーにより静かな防御攻撃が実現し、敵に位置を知らせずに戦闘任務を展開できる戦術面の優位性がストライカーに実現するという。

装甲車両の支援対象の歩兵部隊には近接航空支援の敵脅威に対抗する為移動式防空装備が必要となる。ここでストライカーのSHORADが真価を発揮する。歩兵隊がスティンガーを携帯してもストライカーが発射するヘルファイアやスティンガーの威力には及ばない。機械化部隊の大規模交戦では前方配備の歩兵隊に装甲車両の支援が必要となる。

SHORADで移動式防空力をリアルタイムで実現するのが目的だ。大型で固定式の地上発射ミサイルでは困難な任務となる。
例えばペイトリオットミサイルは中距離弾道ミサイルの迎撃に適しており、移動式とはいえペイトリオットでは敵ヘリコプターや無人機から歩兵部隊を守る能力は不足している。

「展開力」「移動力」「遠征派遣能力」を試される事態が米陸軍の目指すストライカー投入戦略の根幹だ。その意味でウェストポイントの近代戦研究所が発表した論文が注目される。ロシアは広範囲に整備した鉄道網があり兵力展開を迅速に行えるとある。ストライカー旅団は時速60マイルで移動できロシアの展開に対抗できる。この能力を数年前にDragoon Rideで示しており、ストライカー部隊は東ヨーロッパで護送任務を展開しながらNATO同盟軍との共同作戦体制を誇示している。■

-- Kris Osborn is a Senior Fellow at The Lexington Institute - HERE
Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has a Masters in Comparative Literature from Columbia University.

コメント

  1. 島国で山が多く、道幅が狭い日本の道路事情では、大型装甲戦闘車両のような装備は移動するだけで困難になりそうですね。北海道のような平野部が広いところでは有用ですが。
    やっぱり、日本は小型戦車や航空装備、海上/海中装備が重要ですね。あとは衛星兵器(監視衛星含む)も充実する必要ありと思います。

    返信削除
  2. 何か強化されるか如く書かれていますが、本音は、通常の機甲部隊からストライカーへ変えて、予算削減が目的ではないかと。
    装輪装甲車としては、かなり普通なもので、通常の維持費が安いのがメリットです。
    色々、強化するように書かれていますが、30mmは搭載されるかもで、あとは、眉唾かな。そんなに予算がつくとは思えないです。
    日本のような、道路が整備されていて、大規模機甲戦が想定しにくい所こそ、有効でしょう。ただ、国産の装甲車は、かなり残念な出来です。安物買いの銭失い状態、と言ってもそんなに安くないんですけど。
    国産ありきではなく、費用対効果と性能を見て整備して欲しいです。
    コマツの新型は開発から無理やりだったのでやっぱり失敗で、とうとう、コマツは撤退。
    対抗だった、三菱のMAVの方が元々、良さげで共通化できるのですが、あとは、価格と三菱にやる気があるかですね。高そうなんですよね。
    ストライカーは海兵隊も使っているので、演習時は、国内でも走っていますので、この程度のサイズでは、大きな問題はないのではないでしょうか。


    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...