スキップしてメイン コンテンツに移動

ウクライナ戦争の疑問:戦闘機と爆撃機はどこにいるのか?(19fortyfive)―双方とも有人機の損失に耐えられず、飛び回るのは無人機とミサイルになっているのがウクライナ戦の前線上空の様相とのことです

 Russian Su-34 fighter-bomber. Image Credit: Creative Commons.

ロシアのSu-34戦闘爆撃機。 画像出典:クリエイティブ・コモンズ



ウクライナ戦争では、双方が戦闘機の使用を制限しており、あらためて近代的な防空システムの力を浮き彫りにした格好だ


-西側支援で強化されたウクライナの重層的な防空システムは、ロシアのジェット機をスタンドオフ運用するように追い込み、その有効性を低下させている

-同様に、ロシアの防空システムによりウクライナ軍は航空機を前線近くに配備できなくしている

-両国は、偵察と攻撃をドローンに大きく依存することで適応してきた。 ロシアはまた、ウクライナの迎撃ミサイルの備蓄を枯渇させようと、ウクライナにミサイルやドローンで大量に攻撃している。

-この紛争は、現代の戦争におけるドローンの優位性を強調している。


ウクライナで進行中の戦争は、現代戦において防空が果たす決定的な役割を強調している

ウクライナとロシアは、双方の航空機の使用を厳しく制限する強固な防空対策を展開しており、特にロシアが国境近くでも航空戦力を投射する能力に重大な影響を及ぼしている。


ウクライナは、西側の同盟国によって提供された機材を活用することで、ロシアのジェット機やヘリコプターの運用を制限している。

ハイリスクな空中環境の結果、ロシアの航空機の損失は驚異的なものとなっている。 Oryxは、オープンソース情報で双方の損失をカタログ化しているウェブサイトで、ロシアの航空機損失は286機とある。Oryxの数字によれば、ウクライナは173機の戦闘機を喪失した。この2つの数字の差は、ロシアの空軍力がウクライナ空軍よりもかなり大きいことが一因となっている。


ウクライナ戦争の初期


ウクライナ戦争の初期、ロシアは制空権を確立し、戦場を支配することを期待して、大量の戦闘機を配備した。

 しかし、ウクライナのソ連時代の防空能力、および西側の同盟国から提供された防空能力を迅速に動員し、展開する能力は、ロシアの航空機にとって重要な課題であったし、今もそうである。

 ウクライナの防空網により、ロシア軍機はウクライナの重層的な防空網の外側で飛行することを余儀なくされている。 これは事実上、戦闘機が地上部隊を支援したり、意図した目標から遠く離れた場所に弾薬を発射したりする能力を妨げ、作戦上の価値を低下させている。

 ウクライナにとっても、ロシアの防空網は同様に、特に前線に近い地域での空軍の投入を制限している。 両陣営とも、このような制約に対応するため、安価で消耗品の無人航空機を多用せざるを得なかった。

 ウクライナの空戦では、両陣営とも相手の上空を堂々と飛び回ることはできない。シンクタンク、ランド・コーポレーションの研究者の報告書によれば、「ウクライナの空戦では、両陣営とも、相手の上空を堂々と飛び回ることはできない。ロシアのヘリコプター・ガンシップは地上部隊に近接航空支援を提供しているが、戦局を逆転させるほどではない。 「その結果、双方は地上作戦を支援するために、大砲や神風ドローンに頼るようになっている。 攻撃作戦は、航空優勢がないために損なわれている」。

 防空は、有人戦闘機の有効性と殺傷力を低下させるにらみ合いの距離に追いやった。その結果、地上戦で数百メートルしか戦えないこともある。機動部隊の交戦距離は、武器システムの最大射程を下回ることもある。 戦車対戦車の小競り合いもある。

 エナジー含むウクライナの公共インフラの多くは、ウクライナの強固で重層的な防空の傘にもかかわらず、ロシアからの攻撃や脅威にさらされている。 そして、ウクライナの防空体制はドローンやミサイルの大半を何とか撃墜しているが、ロシアはそれを攻撃標的にしている。

 ロシア製弾薬の中には、何とか通過して重要インフラを攻撃するものもある。ロシアの滑空弾が使用される機会が増えている。

 ウクライナ国防省は昨年初め、Xで防空部隊の大活躍を発表した。   「ロシア軍機は落ち続けている。 「今朝、防空隊は東部方面で2機(Su-34戦闘爆撃機とSu-35戦闘機)を撃墜した。 この3日間で、ウクライナは6機のロシア機を撃墜した」。


海外でも国内でも


ウクライナの防空の有効性は、ロシアが自国内でも防衛態勢を強化することを促している。 ウクライナは、ますます洗練された長距離攻撃ドローンを開発し、ロシア本土の奥深くにある標的を攻撃するために活用している。 こうした攻撃は、エナジー施設や物流の拠点、さらには大規模な都市部までも標的にしており、安全なロシア本土というイメージを削いでいる。 こうした空爆に対抗するため、ロシアはウクライナの脅威を軽減することを期待して、重要なインフラやその他の価値の高い目標をカバーする防空壕を配備している。

 同時にロシアは、ウクライナの防空能力を弱めようとしている。 ロシア軍はミサイルやドローンによる攻撃を大量に行い、高度な巡航ミサイルと低コストの消耗型ドローンを組み合わせている。これらの攻撃には、ウクライナの防空システムを圧倒し、貴重な迎撃ミサイルを急速に消費させるようねらいのおとり目標が含まれており、ウクライナの備蓄弾薬を使い果たすことを目的としている。

 ウクライナの防空システムが有人プラットフォームを紛争空域外に押し出すことに成功したことで、ドローンの重要性が浮かび上がった。ドローンは安価で消耗品の攻撃兵器であると同時に、情報収集の役割を果たす重層的な防衛ネットワークの一部でもある。

 ウクライナでは、双方が戦闘機の有用性を制限する上で防空体制が非常に効果的であることが証明され、事実上、今日の戦場での膠着状態の一因となっている。 ウクライナでの経験は、次の戦争において間違いなく重要な要因となる。それは、現在飛行しているレガシーな有人プラットフォームではなく、無人航空機の有用性が増していることである。■


About the Author: Caleb Larson 

Caleb Larson is an American multiformat journalist based in Berlin, Germany. His work covers the intersection of conflict and society, focusing on American foreign policy and European security. He has reported from Germany, Russia, and the United States. Most recently, he covered the war in Ukraine, reporting extensively on the war’s shifting battle lines from Donbas and writing on the war’s civilian and humanitarian toll. Previously, he worked as a Defense Reporter for POLITICO Europe. You can follow his latest work on X.


Ukraine War Paradox: Where are the Fighters and Bombers?


By

Caleb Larson


https://www.19fortyfive.com/2025/01/ukraine-war-paradox-where-are-the-fighters-and-bombers/


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...