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米陸軍のTHAADが初の撃墜に成功(19fortyfive)―空軍基地の防空も含め、米陸軍がミサイル防衛の任にあたっていることの是非がこれから議論の種になりそうです。

 THAAD

THAAD. Image Credit: Department of Defense.


2024年12月26日、イスラエルに向けてフーシ派が発射した弾道ミサイルに対して米陸軍の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)システムが初の迎撃戦果を挙げた。

 これは、短距離および中距離弾道ミサイルに対抗するために設計された230億ドルの防衛システムで画期的な出来事となった。THAADの「ヒット・トゥ・キル」技術と先進的なAN/TPY-2レーダーが効果を発揮し、中東におけるミサイル防衛能力を強化した。

 世界的な緊張が高まる中、イラン、中国、ロシアなどが弾道ミサイルの兵器庫を拡充する中、THAADの迎撃成功は、米国および同盟国の防衛戦略におけるその重要な役割を浮き彫りにした。

 2024年12月26日、中東と紅海を監視するミサイル防衛レーダーが、音速の数倍もの速さでイスラエルに向かって飛ぶ物体を検知した。イエメンのフーシ派がイエメンとイスラエル間の700マイル以上の距離を越えて発射した中距離弾道ミサイル(MRBM)だった。

 フーシ派は、2023年10月6日に始まったイスラエルとハマスの間の戦争勃発以来、すでに数十発の中距離弾道ミサイル(MRBM)や長距離の自爆ドローン攻撃をイスラエルに対し行っている。これまでのところ、攻撃のほとんどは、イスラエルの多層的な防空システムと、中東に配備された米国の軍艦、戦闘機、および地上配備のパトリオットミサイルの組み合わせによって、すべて成功裏に探知・迎撃されてきた。

 イスラエル国内からの録画映像には、地面から突如現れた光の玉が上空の雲の中に消えていく様子が映し出されていた。動画の中の観測員は「これを18年間待っていた」とコメントしている。

 このコメントは、米国当局が、2009年に就役した終末高高度地域防空システム(THAAD)を使用し、米軍が敵ミサイルの迎撃に初めて成功したと報告した際には、納得のいくものだった。

 米軍以外のTHAADの戦闘デビューは、2022年1月17日、アラブ首長国連邦に輸出されたバッテリーが、アル・ダフラ空軍基地近くの石油施設に向かっていたフーシ派のMRBMを撃墜したときだった。

 米国がTHAADに投じた230億ドル(約2兆6000億円)以上の投資に見合うリターンは、通常ミサイル1~2発の迎撃にとどまる。

 しかし、地域紛争の激化、中・中距離弾道ミサイルの拡散、国際緊張の悪化により、2020年代半ばにはTHAADへの投資がこれまで以上に適切であるように見える。

 

THAADの仕組み

THAADのミサイル発射機は、米陸軍の95人によって運用されているが、米ミサイル防衛庁が訓練および維持をしている。これらの発射機は、通常攻撃または核攻撃に使用される短・中・中間距離弾道ミサイル(SRBM、MRBM、IRBM)による攻撃から、主要軍事基地およびその近隣の人口密集地を守ることを使命としている。

 過去10年間、このようなミサイル兵器は、イラン、フーシ派、ロシアによる通常弾頭を用いた戦闘で広範囲に使用されてきた。さらに長期的には、北朝鮮と中国も、東アジア全域の標的に向けた相当数の弾道ミサイル兵器を保有している。

 米陸軍は800基以上のTHAADミサイルの納入を受け、THAADバッテリー7隊を配備し、アラバマ州で8つ目のバッテリーの生産が進められている。これらのユニットのうち2つは、グアムと韓国に無期限で前方展開されている。3つ目のTHAADは、イランによるミサイル攻撃に備え、互換性のあるAN/TPY-2レーダーユニットとすでに配備されているペイトリオット・バッテリーに加わり、2024年10月にイスラエルに配備された。

 しかし、THAADは、高速かつ高高度を飛翔する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の迎撃用に設計されたものではないため、ICBMが到達する可能性のある米国の都市の国土防衛にはほとんど意味がない。

 米陸軍のTHAAD部隊はトラック搭載型のランチャー6基で構成されが、最大8基までサポートし、地理的範囲を拡大し、敵の攻撃に対する脆弱性を低減するために分散配置される。1つのランチャーを破壊しても、分散しているランチャーが機能する。

 THAAD バッテリーは強力な AN/TPY-2 長距離 X バンドレーダーを使用してターゲットを捕捉する。このシステムは、最大 1,900 マイル離れた高高度のターゲットを検出できる。検出された脅威に対処するために、戦術作戦センターがAN/TPY-2からの追跡データを利用して発射ソリューションを計算し、ランチャーに発射命令を出す。

 各ランチャーには、マッハ8、すなわち秒速1.5マイル以上の加速が可能な迎撃ミサイル8基が搭載される。1基1,200万ドル以上する1トン級のミサイルにはロケットブースターは付くが、爆発性の弾頭は搭載されていない。ロケットブースターを分離後、音速の何倍もの速度で飛来する標的ミサイルを赤外線画像シーカーで正確に捕捉し、命中させる。この「ヒット・トゥ・キル」迎撃ミサイルは、公式には最大高度60万フィート、最大距離125マイル離れた弾道ミサイルを迎撃できるとされている。

 バッテリーのコンポーネントは、航空輸送が容易なように設計されており、現地で発電機を使用する代替案に加えて、地域の電力網から電力を供給することも可能だ。

 大局的に見ると、THAADミサイル防衛システムは、中距離弾道ミサイル(SRBM)に対するPAC-3ミサイル防衛システムと、米国を小規模のICBM攻撃から守る国家レベルのGMDシステムの中間に位置する「中間」層防衛システムだ。海軍艦艇も、THAAD迎撃能力と同等またはそれを上回るSM-6・SM-3の弾道ミサイル迎撃ミサイルを配備している。

 一方、アラブ首長国連邦(UAE)はTHAADバッテリー2隊を運用しており、サウジアラビアは最大7隊を受け取る可能性がある。米国の同盟国もTHAADに類似したシステムを配備しており、特にイスラエルのアローミサイルファミリーは、現在ドイツが調達中である。韓国は2024年に就役したL-SAMを保有している。フランスは、2026年にSAMP/T防空砲兵隊に配備予定のAster 30 Block 2ミサイルを配備している。


弾道ミサイル防衛が重要さを増してきた理由

 中国とロシアは、米国がアジアおよびヨーロッパにTHAADを配備することに以前から抗議しており、このミサイルシステムは戦略核抑止力を弱体化させるのが目的だと主張している。ただし、米国の空軍力における優位性、そしてある程度は海軍力における優位性を相殺するために、中国、イラン、北朝鮮、ロシアが非核弾道ミサイルに大きな期待をしている。

 2024年秋には、ロシアが新型の通常弾頭中距離弾道ミサイル(IRBM)オレシュニクの戦闘実験を大々的に実施しました。プーチン大統領は、このミサイルはヨーロッパ全域の標的に対して精密攻撃を行えると発表しましたが、同IRBMは核兵器専用と見なされてきました。

 このような脅威を減殺することは不可欠であり、NATOとロシアの対立においては、米国のTHAADミサイル防衛システムが英国、イタリア、ドイツ、ポーランドの基地を保護するため緊急配備されることが予想される。逆に、東アジアで戦争が起こった場合は、THAADミサイル防衛システムがグアム、沖縄、日本列島に配備される可能性がある。ハワイ、シンガポール、オーストラリアも、状況によってはTHAADミサイル防衛システムの配備から恩恵を受ける可能性がある。

 ロシア、中国、北朝鮮、イランはいずれも、大気圏内でより広範囲に機動できる新型の極超音速滑空兵器を配備または試験しており、その軌道は予測が非常に難しく、追跡や迎撃がより困難になっている。

 これによりTHAADの迎撃効果を弱体化させる可能性がある。しかし、米国は対抗策も進めている。最近では、極超音速グライダーの追跡を支援する衛星ベースの下方指向センサーの配備や、THAADが使用するAN/TPY-2レーダーの高解像度窒化ガリウムフェーズド・アレイへのアップグレード、THAADを陸軍のIBCS防空ネットワークに統合する作業などがある。

 組織的には、THAADの維持管理はMDAから陸軍に移管される予定であるが、陸軍は移管に伴う補償的資金提供を求めている。

 いずれにしても、米国の将来の軍事的敵対勢力のほぼすべてが、大規模で改善された弾道ミサイル部隊(従来型および極超音速両方)を保有しており、厳密には非核紛争であっても、それらを惜しみなく使用してくるだろう。

 その意味で、将来の紛争で空から火の雨が降ってきた場合、THAADは米軍兵士や民間人の命を守るため極めて重要な役割を果たしそうだ。したがって、昨年12月のTHAAD迎撃は、多忙な運用キャリアの始まりを告げる最初のマイルストーンとなる可能性がある。■


About the Author: Sebastien A. Roblin

Sébastien Roblin writes on the technical, historical, and political aspects of international security and conflict for publications including The National Interest, NBC News, Forbes.com, War is Boring and 19FortyFive, where he is Defense-in-Depth editor.  He holds a Master’s degree from Georgetown University and served with the Peace Corps in China. You can follow his articles on Twitter.


The Army’s THAAD Missile Defense Batteries Just Scored Their First Kill

By

Sebastien Roblin

https://www.19fortyfive.com/2025/01/the-armys-thaad-missile-defense-batteries-just-scored-their-first-kill/


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