中国との戦争を想定して海上でミサイルを再装填するTransferrable Reload At-sea Method (TRAM)開発の原動力となった
(U.S. Navy)
米海軍の駆逐艦や巡洋艦は、イランが支援するフーシ派のミサイルやドローンとの戦闘が続く紅海を離れ、Mk41垂直発射システム(VLS)ミサイル・セルを再装填する必要があり、これが存在感の欠如と「現実的な課題」を引き起こしていると、カルロス・デル・トロ海軍長官は水曜日の水上海軍協会の年次会議で述べた。この課題は紅海での作戦だけでなく、特に広大な西太平洋での中国との将来的な戦争にも及ぶと長官は指摘した。
そのため、洋上で軍艦にミサイルを再装填するTRAM(Transferrable Reload At-sea Method)の開発継続は、有事の際に大型水上戦闘艦を駐留させ続けるため不可欠である、とデル・トロ長官は本誌も出席した会議で述べた。海軍の指導層は、現在進行中の紅海での戦闘を、第二次世界大戦以来で最も持続的な戦闘行為であるとしている。
「駆逐艦や巡洋艦、そして将来のフリゲートが再装填のため2週間も現場を空ける余裕はありません」とデル・トロは言う。「新技術で港内での再装填時間のために戦闘から撤退する必要はなくなり、前方プレゼンスを維持する能力を大幅に向上させる」。
TRAMは数年前から開発が進められており、10月には南カリフォーニア沖を航行中のタイコンデロガ級巡洋艦USSチョーシン(CG-65)に米軍輸送司令部のドライ貨物船USNSワシントン・チェンバーズ(T-AKE11)が接舷し、空のVLS武器コンテナを巡洋艦に移し替える実証に成功している。
10月、タイコンデロガ級巡洋艦USSチョーシン(CG-65)で、垂直発射システム(VLS)の武器コンテナを交換した。(U.S. Navy)10月に行われたTRAM(Transferrable Reload At-sea Method)実験で、ドライカーゴ・弾薬艦USNSワシントン・チェンバーズ(T-AKE11)(手前)から巡洋艦USSチョーシン(CG-65)へケーブル伝いに移動するミサイルキャニスター。 (U.S. Navy) Eric Osborne
艦の乗員はTRAMを使い、USSチョーシンのVLSモジュールに取り付けられたレールに沿ってミサイルキャニスターを移動させた。その後、キャニスターは傾けられ、TRAMのケーブルと滑車システムを介してVLSセルに降ろされた。
10月、TRAM(Transferrable Reload At-sea Method)の海上テストの一環として、空のミサイルキャニスターをケーブルでつないで巡洋艦USS Chosin(CG-65)に送る準備をする、ドライカーゴ・弾薬艦USNSワシントン・チェンバーズ(T-AKE11)の民間船員たち。. (U.S. Navy)
油圧で作動するTRAMは、航行しながらの補給で使用することができる。この補給は、2隻の艦船が並行移動しながら、補給艦から艦艇に物資を運ぶ定期的ではあるが過酷な作業である。昨年秋のテストは、国会議員たちが大きな関心を寄せていたこともあり、大いに期待されていた。その前の7月には、サンディエゴ郊外にある海軍水上戦センター・ポートフエニメ部門で桟橋を使った試験が行われ、こちらも成功した。 デル・トロ長官は試験後、TRAMは2〜3年後には実戦配備される予定だと述べた。しかし、今週の彼のコメントは、西太平洋に分散したアメリカ艦隊による中国との海上戦争では海上での再装填能力が必要であるという事実を補強している。
そのような紛争では、日本国内の海軍基地は中国によって遮断される可能性が高く、米艦船はグアムや南シナ海や東シナ海からさらに離れた場所での再装備を余儀なくされるだろう。陸上の弾薬補給拠点も、敵の格好の標的になる可能性が高い。また、米海軍の駆逐艦や巡洋艦は、空のミサイルセルのまま海戦地帯を通過すれば、少なくとも部分的に無防備になる可能性がある。
海上での再装填は、弾薬の再装填の輸送時間を短縮し、そのような艦船は、再装填が戦闘の中心からいくらか離れた場所で行われる可能性があるが、活動現場の比較的近くにとどまることができる。
軍艦が再装填のため戦闘現場を離れなければならないなら、「相手はパンチを使わずとも我々の艦隊を弱体化させるだろう」と、海軍大学校のジェームズ・ホームズ教授(海洋戦略)は2017年、当時のジョン・リチャードソン海軍作戦部長がTRAMとなる取り組みを発表した後、ネイビー・タイムズに語っていた。「再装填のため巡洋艦や駆逐艦を後方に回さなければならない状態が続けば、相手は艦隊からそれだけの戦闘力を奪っていることになる」。
巡洋艦USSチョーシン(CG-65)の乗員は、10月に行われた初の海上デモンストレーションでTRAMを使い、前方のMK 41垂直発射システム(VLS)上に空のミサイルキャニスターを移動させた。(U.S. Navy)
このような能力は冷戦終結以前には艦隊の一部であったが、ソ連が崩壊した後、廃れていった。1980年代、クレーンが再装填を支援するために巡洋艦に設置されたが、時間がかかり、危険な作業であったとアナリストはネイビー・タイムズに語った。
海軍アナリストで "Combat Fleets of the World "の著者エリック・ワートハイムは、ネイビー・タイムズにこう語っている。「非常に困難で、現実的でなかったので、必要性が薄れると、廃れていった」。
紅海で戦うアメリカの軍艦がどこに向かって弾薬を再装填しているのかはまだ不明であり、米海軍中央司令部関係者は木曜日、本誌に対して場所の確認を拒否した。再装填の可能性が高いのは、東地中海の戦略的な位置にあるギリシャのクレタ島にある、再装填機能を持つ海軍支援施設ソウダベイである。そのような航海は約1,900マイルを必要とし、艦艇はスエズ運河を経由し紅海から北に航行する必要がある。
バーレーンの海軍基地へは、およそ2,500マイルの航海が必要で、紅海から南下しバブ・エル・マンデブ海峡を通り、ホルムズ海峡の戦略的要衝を通過しなければならない。ディエゴ・ガルシアも同じ距離で、インド洋の奥深くにある。紅海に近いパートナー国で軍需物資を調達している艦があるとしても、はるかに限定的な能力だろう。
フーシ派は2023年10月以来、ミサイルや無人偵察機で、ほぼ毎日、船舶を攻撃している。しかし、同派はイスラエルとハマスの停戦が発効すれば攻撃を停止する意向を表明した。
紅海での海軍の任務が終わるとしても、海上での再装填能力の必要性は証明されている。海軍は紅海紛争で、なぜこの能力が必要な理由を学ぶことができた。■
Navy Warships Have To Leave Red Sea Fight For Weeks To Reload Their Missiles
Such a reality, and its implications for a war with China, are driving the development of the Transferrable Reload At-sea Method used to reload missiles underway.
かつてこのブログの記事にあったと思うが、ハリス太平洋軍司令官が退役する際に、VLSへのミサイル再充填の深刻な問題を指摘したが、解決策は、何も進歩していないように見える。今まで米海軍指導部は、何をやっていたのだ? 米海軍はバカなのか? そうは考えたくないが、米海軍には深刻な劣化があるようだ。だから何度も後継艦や改造等々について失敗するのだろう。
返信削除過去から艦船への補充は重要な問題であったはずである。砲弾や火薬、燃料が少ないのなら、新たな戦闘は困難であり、それは今でも変わらない。戦闘力を維持するには、兵站が最重要であることは鉄則だろう。そう考えると、やはり米海軍指導部は、ボケていて無能なのだ。
探知距離はより遠くなり、ミサイルの射程はより長くなって海は狭くなり、この記事のような補充方法は、広い海域で緊張状態にある場合、困難となるかもしれず、そうなればもっと遠くの海域か、基地に向かう必要がある。それに戦争となれば、素人ながら私なら、戦力の劣った戦闘艦より、弾薬運搬船や輸送船を最初に狙う。
上記のようなことを強く考慮しなければならないほど、現在の戦闘方法は変わってきていると思われる。ミサイルの欠乏が、その艦船の運の尽きになるようなことになっている。その結果、例えばPLAの繰り返される飽和攻撃に、イージス艦は容易に無力になり、それを防ぐために戦場から遠く離れることになるだろう。情けないことだ。
しかし、ミサイルをイージス艦だけに装備しなければならない理由はないはずだ。現在の進歩したリンクで、イージスも必要なく、ミサイルをコンテナ化し、搭載できる船があれば、対空・対艦・対地戦闘でイージス艦と部分的に同じ役割を果たせるだろう。このようなコンテナ船が打ち終わった後に、イージス艦による戦闘になれば、少しはタフな戦闘ができる。
だが、戦闘力を高めても指揮官が無能ならば、全ては無に帰すことになる。やれやれ!