新電子戦装備EPAWSSを搭載したF-15Eストライク・イーグルが前線部隊へ展開を開始(The War Zone)―これで供用期間を延長する期待がある一方、EXの調達機数が減るのでは米空軍は複雑な気持でしょうね。
Boeing (Screencap)
レイケンヒース英空軍基地の第48戦闘航空団は、新型イーグル・パッシブ/アクティブ・ウォーニング・サバイバビリティ・システム搭載機材の初の受領部隊となった
米空軍のF-15Eストライク・イーグルが、生存性を大きく向上させる新しいレーダー警告と電子戦スイートを装備して部隊に戻ってきた。AN/ALQ-250イーグル・パッシブ/アクティブ・ウォーニング・サバイバビリティ・システム(EPAWSS)は、F-15Eに電子戦の全面的なオーバーホールを提供するが、実用化までに長い時間がかかった。また、ストライク・イーグルの将来的な規模や、最終的に何機のジェット機がアップグレードを受けられるかについても不透明な部分があるが、同じシステムは新型戦闘機F-15EXイーグルIIにも搭載されている。
空軍は1月15日、EPAWSSを搭載した最初のF-15Eが、イギリスのレイケンヒースの第48戦闘航空団に引き渡されたと発表した。一方、ボーイングは、EPAWSSを開発したBAEシステムズからアップグレードを受けたF-15Eがテキサス州サンアントニオから出発する準備をしているビデオをソーシャルメディアで公開した。
「F-15のEPAWSSは、脅威システムを自律的に検知、識別、位置特定し、それらの脅威を拒否、劣化、破壊する能力でパイロットの状況認識を大幅に改善する」と空軍はメディアリリースで述べ、F-15E向けの当初の電子戦装備は、冷戦時代の脅威システムに対抗するため開発されたものだったと指摘した。
2025年1月15日、EPAWSSを装備して英国レイケンヒース基地に到着した米空軍F-15E。. U.S. Air Force Senior Airman Seleena Muhammad-Ali
「EPAWSSは、F-15EストライクイーグルとF-15EXイーグルIIの生存性と殺傷能力を大幅に向上させます。そして、最初の改良がレイケンヒース基地に展開する最前線の戦闘機に提供されることは、さらに重要なことです。「ここまで来るのに長い時間がかかりましたが、このシステムは21世紀の戦闘機部隊にとって不可欠なものです。このシステムは、最大の威力を有する戦闘機を現代の戦いに維持するだけでなく、大国間競争構想における驚異的な抑止力にもなる」。
アップグレードされたF-15Eでは、EPAWSSが古いAN/ALQ-135戦術電子戦システム(TEWS)に取って代わる。標準的なF-15Eの構成と比較して、EPAWSSでアップグレードされた機材は、強化された尾翼支持ビームを備えており、それぞれの先端には丸みを帯びた一対のアンテナフェアリングがある。
2020年、ネバダ州ネリス空軍基地での大規模テストイベント(LFTE)で給油するEPAWSS搭載のF-15E。 新システムに伴い再構成された尾翼支持ビームに注目。 U.S. Air Force/1st Lt Savanah Bray
電磁スペクトルをサンプリングし、脅威を識別し、優先順位をつけ、それに対し妨害リソースを割り当てる設計のEPAWSSについて、製造元が次のように説明している:
「パイロットと航空機に攻撃と防御の両方の電子戦オプションを提供するEPAWSSは、完全に統合されたレーダー警告、ジオロケーション、状況認識、自己防御ソリューションを提供し、信号が密集した競合環境および高度に競合する環境において、地表および空中からの脅威を検出し、打ち負かします。EPAWSSは、高度な電子的対抗手段を備えており、最新の統合防空システムへの深い侵入を可能とし、航空機乗組員を保護するための迅速な対応能力を提供します」。
運用面では、EPAWSSにより、ストライク・イーグルの乗員は、地上および空中からの無線周波数(RF)による脅威について、その種類や位置を含め、タイムリーかつ正確な警告を受けることができます。この強化された状況認識により、乗組員は脅威を回避、交戦、または無効化することができるようになります。EPAWSSは、防衛システムとして乗組員に脅威を警告するだけでなく、これらの脅威を攻撃的に標的化し、対抗策を採用したり、エフェクターの標的を提供したりすることができる。EPAWSSは、赤外線の脅威を検知して対抗するためにも使用できるが、F-15Eに現時点ではミサイル接近警告システム(MAWS)検知器が装備されていないようだ。
EPAWSSの登場には時間がかかったが、それがひどく必要とされていたことは間違いない。1970年代のアナログ技術に基づくTEWSは、少なくとも中国やロシアのようなハイエンド敵対国との紛争で遭遇するかもしれない脅威に直面すれば時代遅れになる長くと考えられてきた。
AN/ALQ-135が導入されて以来、1980年代後半にF-15Eが就役開始した時点で想定されていた性能をはるかに超えている地対空ミサイル(SAM)の普及を含め、防空能力は飛躍的に進歩した。今日、F-15Eが同格またはそれに近い敵との戦闘に臨む場合、非常に長い射程距離、アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)技術、対ジャミング能力、高度な機動性を提供する地上ベースの防空脅威に直面する可能性が非常に高い。 格下の敵対国でも、このクラスのシステムを実戦配備している場合がある。
2021年のロシア国防省のビデオに見られるロシアのS-500長距離防空システムの画面キャプチャ。進歩する防空脅威の典型、S-500は少なくとも300マイルの射程を持つといわれている。 Russian Defense Ministry
オープンアーキテクチャーによって、迅速かつ容易に更新できるようにEPAWSSは設計されている。新たな脅威に対処するための新機能を非常に迅速に追加することができる。
実際、ソフトウェアで定義されているため、将来的にはほぼリアルタイムで新たな脅威(これまでに検知されたことのない脅威も含む)に適応するように設定することも可能かもしれない。
その他の利点として、レガシー機器と比較して、メンテナンス需要の削減や高い信頼性が挙げられる。同時に、EPAWSSは完全デジタル化されたことで、従来より小型・軽量化されている。これにより、チャフやフレア対策用カートリッジの搭載数を増やすことができる。
2019年5月8日、カリフォーニア州エドワーズ空軍基地でのEPAWSSの第1段階試験中、ベネフィールド無響施設で天井から吊り下げられたF-15E。 U.S. Air Force/Ethan “Evac” Wagner
EPAWSSは「今日のコンピューティング、レシーバー、トランスミッター技術の利点を生かし、より迅速でスマートな脅威への対応と、パイロットへ実用的なよりよい情報を提供する」と、プロジェクト開発リーダーで第772試験飛行隊民間作戦部長エド・サバットは、このシステムに関する空軍の以前のプレスリリースで説明している。
将来的には、EPAWSSは協働戦闘機(CCA)ドローンと発射されたエフェクトの統合にとって不可欠なものとなり、最高の戦術的優位性を得るためにドローンをどこに配備すべきかについてインテリジェンスを提供する可能性もある。EPAWSSを搭載したF-15は、電磁的な戦場を遥かに見渡せるため、空中指揮官や「クォーターバック」の役割に適しており、吸い上げたデータをその他プラットフォームと共有できる。
EPAWSSがどのように機能し、どのような脅威を打ち破ることができるのか、その詳細については極秘のままである。
EPAWSSは、レイセオンAN/APG-82AESAレーダーを含む、F-15Eのためのいくつかの重要なアップグレードの一つでもある。また、以前に紹介したAN/ASQ-236ドラゴンズアイ・レーダー・ポッドなど、ニッチな能力も追加されている。新しい武器や武器構成も登場し、ストライク・イーグルの多用途性がさらに高まる。
テストスタンドに設置されたAN/APG-82 AESAレーダー。 Raytheon
EPAWSSは、空軍が将来戦いそうな競合空域環境でのF-15Eの生存性を確保するため基本的なものと考えられているが、将来のストライク・イーグルがどのようなるかは明らかではない。
昨年夏、F-15E部隊の半分以上を今後数年で廃棄処分するという空軍の計画を阻止しようとする議員の努力について報告した。空軍は、将来の近代化計画のためのリソースを確保するために、古いF-15Eを退役させる必要があると主張しているが、議員たちは、これが実現した場合、利用可能な戦術機数が減少することを懸念している。
現在、空軍は218機のF-15Eを保有している。うち119機は、約23,500ポンドの推力を発生するプラット・アンド・ホイットニー製F100-PW-220ターボファンエンジンを搭載している。残りの99機は、より強力なF100-PW-229を2基搭載しており、各エンジンの推力は29,000ポンドである。空軍は、-220エンジンを搭載したF-15Eを2028年度末までにすべて退役させることを望んでいた。
2024年5月2日、米中央軍責任地域上空で燃料を受け取り編隊に戻るレイケンヒース空軍第494戦闘飛行隊の米空軍のF-15E。U.S. Air Force Photo/Staff Sgt. Devin Rumbaugh
直近では、2024会計年度国防授権法により、空軍は2029会計年度末までに68機以上のF-15Eを退役させることが不可能になった。 以前は、99機のF-15E(F100-PW-229エンジンを搭載した機体)がEPAWSSを取得すると報告されていたが、新しい法律でその数が増える可能性がある。
2024年4月、F-15Eはイスラエルに向かう70機以上のイランの無人機を撃墜した。
EPAWSSは既存のF-15Eに後付けされる一方で、より先進的な新型のF-15EXイーグルIIにも、製造が進むにつれて装備されている。 しかし、F-15EXの機体数は、少なくとも144機という当初の計画から削減され、現在では98機にとどまる見込みである。F-15EXのEPAWSS能力は、コックピットの大型ディスプレイでさらに強化され、脅威の視覚化が向上している。
フロリダ州エグリン空軍基地でテストを受けるF-15EX。 Jamie Hunter Jamie Hunter
どれだけのF-15EがEPAWSSを受けるかはまだわからないが、新装備に改修され部隊に戻ってきたF-15Eは、空軍で最も需要の高い戦術的資産となるだろう。防空体制の脅威がますます多様化、複雑化し、予測不可能になる中、EPAWSSは、アップグレード機材と新造F-15EXが、今後何年にもわたり効果的であることを保証する。■
F-15E Strike Eagle With New EPAWSS Electronic Warfare Suite Heads To Frontline Unit
The 48th Fighter Wing at RAF Lakenheath in England is the first recipient of the sophisticated Eagle Passive/Active Warning Survivability System.
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