2013年11月2日土曜日

SR-71後継機種は極超音速SR-72、ただし配備は2030年代に

Exclusive: Skunk Works Reveals SR-71 Successor Plan

By Guy Norris guy.norris@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com November 01, 2013

ロッキードSR-71ブラックバードが米空軍から退いてほぼ20年、その間一貫して、同機の後継機種として新世代の高速機がいつあらわれるのか、が疑問だった。
  1. だが答えが表に出てきた。長年の沈黙を破りロッキード・マーティンのスカンクワークスが長年にわたり暖めてきた同社がいうところの手が届く価格の極超音速情報収集監視偵察(ISR)兼攻撃用機材開発計画が存在し、早ければ2018年にも実証機の飛行が予定されていることをAW&ST独占記事として明らかにできることとなった。SR-72の呼称で双発エンジンでマッハ6巡航飛行が可能な機体はSR-71の二倍の速度となる。さらにオプションで地上目標を攻撃することも可能。
  2. 米空軍の極超音速機開発ロードマップにより、SR-72は情報収集衛星、亜音速有人機、無人機でSR-71を代替する目論見だった機動性情報収能力の不足分を埋めるべく企画された機体だ。脅威となる対象が機動性を高める一方、一層高度な防空体制を整備する国が現れ、情報収集衛星の上空飛行予定が解明されて対策をとり、領空侵入は困難になっている現状がある。
  3. 高高度からマッハ6で侵入すれば、ロッキード・マーティンが「スィートスポット」と呼ぶ空気取り入れ式極超音速機として生存し帰還する可能性があるが、音速機では無理だ。さらに兵装を運べば敵目標を迅速に攻撃する能力が実現する。
  4. 今までもSR-71後継機の開発が極秘に進んでいるとの情報があったが、確たる証拠が出てこなかった。極秘開発の世界でははよくあることだ。高速ISR能力の軍事上の必要性に疑念をいだく向きは少数派でも、天文学的な開発コストを考えると構想実現は不可能と思われていた。
  5. だが、ロッキード・マーティンはその答えがあるという。「スカンクワークスはエアロジェットロケットダイン Aerojet Rocketdyne  と共同し過去7年間にわたり既製タービンとスクラムジェットを組み合わせマッハ6以上の速度を実現する技術を開発してきました。このアプローチでHTV-3Vができましたが、今回はそれ以上の性能を実現するため、高速タービンエンジンという課題に挑戦したわけです」と解説するの空気取り入れ式極超音速技術を担当するブラッド・リーランド Brad Leland, portfolio manager for air-breathing hypersonic technologies だ。彼が言及しているのは米空軍と国防先端技術研究開発庁(Darpa)が共同開発した再利用可能極超音速技術実証機のことで、2008年に中止になっている。
  6. 再利用可能極超音速機の構想はDarpaのファルコン計画の延長で生まれた。ファルコンは小型打ち上げ機、共通飛翔体 common aero vehicles (CAV) および極超音速巡航飛行体 hypersonic cruise vehicle (HCV) で構成し、ロッキード・マーティンに無動力の極超音速飛行テスト機体 hypersonic test vehicles (HTV) の製作予算を交付していた。
  7. だが開発途中で、2004年の宇宙開発計画再構築の余波を受けてNASAが極超音速飛行研究のほぼ全部を取りやめ、X-43Cコンバインサイクル推進実証機も中止になった。DarpaのHTV開発はそのため三番目の機体を追加し、HTV-3Xは滑走路からターボジェットで離陸し、スクラムジェットでマッハ6に加速し、地上に帰還する構想だった。
  8. HTV-3Xの次の実証機はブラックスイフトと呼称され結局実現しなかったが、その構想設計から「数点の成果が出ているが、公表を控えていた」とリーランドは説明する。
  9. 飛行制御システムでめどがついたことなど基礎ができたのでロッキード・マーティンは風洞テストで離陸速度を下げ、機体制御が可能なことを確認していた。
  10. .スカンクワークスの設計部門がタービンを利用したコンバインサイクル turbine-based combined cycle (TBCC) による実用的な推進システムを開発した。「ターボジェットからラムジェットに切り替え、その逆に戻す技術を開発したのです。テストを多数実施し、モード切替技術を実証しました。」とリーランドは回想する。スカンクワークスはTBCCの縮尺モデルで地上テストを実施し、小型高マッハ飛行可能なターボジェットと切り替え式ラムジェット/スクラムジェットを搭載し非対称形の空気取り入れ口と排気口を二つ備えていた。
  11. そのころ米空軍の研究本部では平行しHiSTED(高速タービンエンジン技術実証)が進められていたが、小型ターボジェットでマッハ4を実現する技術開発に失敗。そのためスカンクワークスは通常型タービンエンジンの限界マッハ2.5とラムジェット/スクラムジェットのマッハ3から3.5の間をどうつなぐかという課題に直面していた。
  12. HTV-3X終了後は研究がさらに進展するはずだったが、やがて退潮となったのはTBCCエンジンモデルが2009年ごろ完成したためだ。そこでロッキード・マーティンはエアロジェット・ロケットダインと「これは製作可能だろうか、何がまだ足りないのかを話し合い」その後7年間にわたる共同開発を続けてきた。
  13. 両社はついに設計上の突破口を開き、SR-71後継機種として意味ある極超音速機の開発が可能となった。「できあいの戦闘機用エンジンF100やF110を使い開発を始めました。ラムジェットを改良して離陸速度を遅くすることがこの機体の実現の鍵で、実用度を上げるとともに開発期間を短縮し、価格も低くできるわけです」(リーランド)「仮にHiSTEDエンジンが実現していても、ブラックスイフトが飛行に成功していたとしても、結局タービンの大型化が必要となっていたはずで、それだけで数十億ドルもかかっていたでしょう」
  14. .ロッキードは推力のつなぎをどう解決したかを明らかにしていないが、リーランドは「当社は他社ではできないことをめざします」とし、これ以上の詳細は口にできないという。ただし、構想案には大型の縮小モデルでのテスト実施段階まで技術が成熟化したものもあったと判明している。その際の検討課題は推力を増大させるために大量の低温空気流を確保することだった。他にも「ハイパーバーナー」としてアフターバーナー機能に加え加速するにつれラムジェットになる機構もエンジン出力増の方法として検討している。エアロジェットは今年に入りロケットダインを吸収合併しているが、ロケット補助動力つき排出機構でマッハ6までスムースな加速が可能と提案していた。
  15. .この推力補助案の詳細は不明だが、リーランドによれば推力切り替えを成功させる鍵は空気取り入れ口にあるという。ラムジェット用とタービン用それぞれの圧縮機を安定して並行に作動させるためだという。
  16. ロッキードは部品レベルの縮小テストを実施している。「次の段階はテストを終了し、実証に移ること」とリーランドは解説する。「実証の準備は進行中で2018年に実証機の飛行を開始するだろう。これにより実機の製作とテストが始まることになる。現時点で必要な技術は開発済みだ。ただ極超音速飛行にはいつもお金がかかりすぎる、大規模技術かつ珍奇だという固定観念が障害になっていますね」
  17. 2018年目標は高速打撃兵器 high-speed strike weapon (HSSW) と呼ぶ米空軍とDarpaによる極超音速ミサイル開発計画の工程表から決められたもの。「今からでも重要な実証項目を試すことができますが、HSSWが実現すれば極超音速技術への疑問も一段落し、信頼性が確立されますね」(リーランド) これまでもX-51Aウェイブライダーのような成功例もあったが、リーランドは「極超音速飛行はまだ眉唾ものと見られています」と認める。
  18. 目標設定は空軍の極超音速機開発ロードマップとも一致しており、2020年までに極超音速攻撃兵器を、敵地侵入可能で地域全域を対象とするISR機材を2030年までに開発する内容になっている。高速飛行可能なISR/攻撃機で不可欠な性能要求はなんと言っても生存性であり、通信・航法衛星の援助なくても生存し、防空体制の整った領空に侵入する能力だ。TBCCによる推力があれば空軍は当初マッハ4と設定していた目標を自ら引き上げることができる。現在は最低でもマッハ5以上の巡航速度ならびに通常滑走路からの運用が要求されていると思われる。
  19. SR-72実現への道のりはまず有人操縦も選択可能な飛行実験機flight research vehicle (FRV)からはじまるだろう。同機は全長 60 ft.でエンジンは一基だが、実寸大で仕様どおりの推力を持つ。「実験機はF-22ほどの大きさでマッハ6を数分間持続できるはずです」(リーランド) そのあとにSR-72として作戦能力のある機体開発へすすみ、双発無人機で全長は 100ft.超。「ほぼSR-71と同じ大きさで航続距離も同じでうが、スピードは二倍になります」 FRVの登場は2018年で飛行開始は2023年となる。「その直後にSR-72が飛行開始し、2030年配備となるでしょう」
  20. スカンクワークスの技術・高性能システムズ担当副社長アル・ロミグ Al Romig, Skunk Works engineering and advanced systems vice president  によるとスピードはステルス性につながるという。これには極超音速機の探知性を減らすという大きな課題があってのことだ。空気取り入れ口が大型になり、空力特性の要求からSR-72ではステルス性能を実現できる形状にはなりにくい。機体表面にはレーダー波吸収剤を塗布するとしても鋭い機体形状全体で熱からの保護が必要なことからステルス性に相反する条件となる。
  21. ナセルが長いことはHTV-3Xで採用したコンバインサイクルエンジンが機体全長にわたり搭載されていること、ならびに一体型ターボラムジェットの空気取り入れ口がついていることを意味するのだろう。「実験機とHTV-3Xの比較では抗力を抑えるためにタービンを小型化していることです」とリーランドは言い、「戦闘機用エンジンを使うので加速はきびきびして、性能に世湯を持たせる改良を加えています。また空気取り入れ口と排気口を共通化していることはとても重要で空気取り入れ口での漏出による抗力および排気口の抗力が相当な量になるためです」
  22. 空力特性で見れば機体前部は高速度での空気圧縮用の取り入れ口を重視した形状に見えるが、X-51Aウェイブライダーの特徴は見られない。「当社はウェイブライダーの機体形状を踏襲するつもりはありません」とリーランドは言う。「ウェイブライダーは巡航飛行中に燃料をほぼ全部燃やして加速する必要がありました。加速だけで燃料を全部消費するのではなく、もっと効率の良い機体でないと巡航飛行の維持ができません。結局離着陸が困難で、燃料積載量を犠牲にして亜音速での抗力が大きい機体になってしまいます」
  23. 機体で目を引くのは機体ほぼ半分を占めるデルタ翼と一体化されていることだ。これにより安定性を確保するとともに高揚力と高い巡航速度を実現するのだろう。エンジン空気取り入れ口の外側で前縁角が胴体と平行処理され、背後に台形の主翼がつけられている。ジグザグにした主翼の角度は低速飛行時に役立つ渦流揚力を確保するためだろう。
  24. SR-72に攻撃能力を持たせることも念頭にある。「長距離ISR任務に加えてミサイル発射の役割も想定しています」(リーランド) マッハ6飛行中に発射すればブースターは不要となり、ミサイルは大幅に重量が軽減される。またSR-72では機動性の高い目標の捕捉、攻撃が可能だ。「SR-71でさえ、速度はマッハ3でも同機の接近がわかる時間的余裕がありましたが、マッハ6となると移動目標を隠す時間的余裕はなく、文字通り回避不可能なISR機になります」
  25. 「SR-72の存在を公表することができるのはHSSW開発が進展しているからです」とリーランドは言う。太平洋へ軸足を移す戦略ので高速ISR機材構想は「弾みがついてきた」という。「極超音速機開発ロードマップではミサイルからはじめることになっていますが、現在は重要な技術実証の時期です」とリーランドは言う。つまり、推進手段の技術要素をひとつずつテストしていることを意味して、実寸大のFRVの評価につながるのだろう。
  26. 「自社資金を投入してやっと大型縮尺機によるテストまできましたが、資金投入規模を大幅に増やす段階に入ったわけです。空軍とDarpaが次の段階に向けた予算を手当てする可能性は相当あります」とリーランドは話しており、FRVが完成すれば開発費用の全体額がスカンクワークスに把握できるようになるという。
  27. 高速飛行可能なISR機がすでに存在しているとの噂にはリーランドは否定的だ。「SR-71が引退して20年近くなりますが、もし後継機があるのであれば相当巧妙にその存在が隠匿されていることになりますよね」■
コメント ISR、無人機、極超音速飛行と今すぐにもほしい技術要素の詰まった構想ですね。



2013年10月29日火曜日

新型爆撃機構想に名乗りを挙げないノースロップ・グラマンの目論見は何か


Northrop Grumman Mum On Bomber Bid

By Bill Sweetman william.sweetman@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com October 25, 2013
Credit: USAF

ノースロップ・グラマンは米空軍向け長距離打撃機構想の爆撃機型提案に参加するのか態度をはっきりさせていない。
  1. ボーイングロッキード・マーティンからは先に両社がチームを組み契約獲得を目指すとの発表があり、ボーイングが主契約社となるとしている。
  2. 「ノースロップ・グラマンは長距離打撃機爆撃機型は国家安全保障、米空軍の戦力投射の双方で不可欠な存在と見ております」と同社は声明を発表。「当社として他社の事業取り組み姿勢についてコメントはいたしませんし、現時点で同構想にこれ以上のコメントもしません」
  3. 同社のこの構えは驚きの反応を呼んでいる。なぜならノースロップはこれまで10年間以上にわたり空軍向け次期爆撃機の製造を現行のB-2開発の知見をもとに実施すると公言してきたからだ。同社はこの文脈で先月の空軍協会大会でもB-2開発の経緯を紹介する図書を公開している。ただ、同社は空軍向け空中給油機選定でもエアバスA330長年にわたり相当額を投資した挙句に最後になって辞退している。
  4. 仮に同社が競作に参加しないこととなるとペンタゴンは微妙な立場になり、総額600億ドルの案件を単独企業の指名契約にまかせることになり、特に議会から詮索を招くことは必至だ。
  5. 業界筋にはノースロップ・グラマンはペンタゴンに圧力をかけて予算規模を増やそうとしているのではと見る向きがある。ペンタゴンでは固定価格制を取らない開発対象分野は政府から見てリスクありと判定される範囲に限定されるとしており、奨励金は目で見える成果を対象にし、紙の上での達成報告は相手にしないとする。ペンタゴン交換は「あるべきコスト」の考えで開発を監督するとし、開発室への予算提供を管理するという。
  6. もうひとつの見方としてノースロップ・グラマンは一部報道にあるようにロッキード・マーティンがLRSーB仕様の実証機を製作中とすれば、自社の立場を見極めようとしているのかもしれない。これと同じことがステルス機開発の初期にもあり、ノースロップが1979年に後にB-2となる機体の開発参入を断ったのは要求性能がロッキードに有利になっていないことが確認できないためとしていた。当時ロッキードはハブブルーステルス試作機をすでに飛行させており、F-117契約も獲得していた。■


2013年10月26日土曜日

ボーイングがロッキード・マーティンと共同で新型爆撃機開発に名乗りを上げる


Boeing And Lockheed Martin Team On New Bomber

By Bill Sweetman william.sweetman@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com October 25, 2013
Credit: Boeing

ボーイングロッキード・マーティンは10月25日合同発表をおこない、米空軍向け長距離打撃爆撃機 Long-Range Strike Bomber (LRS-B) に共同して開発することを明らかにした。ボーイングが主契約社となり、ロッキード・マーティンが共同開発先となる。
  1. LRS-Bとは高性能ステルス長距離爆撃機を80から100機米空軍に納入する構想で初期作戦能力獲得を2024年ないし26年に設定し、機体価格の上限を550百万ドルにする。
  2. 今回の進展を見ると、2007年以来はじまっていたとされる極秘プロジェクトが順調に進展していることがわかる。両社が最初に制作しようとしていた時点では次世代爆撃機 Next-Generation Bomber (NGB) 計画と呼称され、2018年の実戦化をめざしていた。だがNGBは2009年に前年の金融危機の余波をうけ取りやめとなっている。空軍はLRS-B開発の裁量を2011年初頭を得て、その際に作戦能力の諸元は若干低くすることで単価目標を下げている。
  3. LRS-BはLRSファミリーの一部となる点でNGBと異なるのが特徴で、長距離ステルス無人機、新型巡航ミサイルと一体で運用される。しかし、NGBもリスク回避のため並行して継続されていると業界筋は証言しており、ロッキード・マーティンのスカンクワークスが飛行実証機を作成しているという。
  4. 2011年に空軍を退役したマーク・シャックルフォード中将Lt. Gen. Mark Shackelfordは当時調達担当空軍次官補室に軍事代表として勤務しており、9月の空軍協会大会でリスク軽減さくとしての契約がLRS-Bの中核となる5分野で交付されており、競作に参加する各社は要求水準を上回る性能を実現することができると発言。政府筋から「リスク低減」契約とは実は相当の規模であるとの示唆をAviation Weekは受けている。「リスクヘッジの対象は2025年に機体を納入できなくなるリスクで、現時点でもう一歩で飛行させることができなければ、結局時限は絵に描いた餅になるからね」
  5. ボーイングが主導的立場に立つことで同社のあまり知られていないがずっと開発してきたステルス技術が大きな進歩をとげていたことが判明した。ロッキード・マーティンはステルス機で蓄積したステルス機の知見を持ち込むとともにPolecat UAV試作機での空力特性技術も盛り込む。ノースロップ・グラマンがLRS-Bの競合先になるだろう。■


2013年10月20日日曜日

KF-X 韓国による採用をまだ断念しないボーイングのねらいはF-15使用国へ性能改修の売り込みにあるのか


Boeing Sees Possible Split Fighter Buy For Korea

By Amy Butler
Source: Aerospace Daily & Defense Report

aviationweek.com October 11, 2013

韓国により選定対象からいったんはずれたボーイングF-15サイレントイーグルで痛手を受けたボーイングだが再入札では期待値を下げ、一部採用が実現すれば上々と考えている。

  1. ボーイング防衛宇宙安全保障部門 Boeing Defense, Space and Security のデニス・ムレンバーグ社長 Dennis Muilenburg によると同社は今もサイレントイーグル開発に費用を支出しており、韓国のF-Xフェイズ3に再提案するという。当初案では60機導入し、F-4、F-5の代替機材とする内容だった。ボーイングは韓国とイスラエルを念頭にサイレントイーグルを開発したもののイスラエルは同機に目もくれずF-35を選定してしまった。
  2. 韓国政府は国防調達計画庁による勧告を無効としサイレントイーグル導入案を白紙に戻している。同国の求める予算規模(8.3兆ウォン、77億ドル)でサイレントイーグルが唯一の選択肢であった。ユーロファイターのタイフーンは資格外となり、ロッキード・マーティンのF-35は予算超過だった。
  3. ムレンバーグによれば韓国はサイレントイーグルと他機種を分割購入するのではないかという。他機種がF-35になるで能性が高い。「今回実行が遅れている調達は60機の同時導入ですが、予算制約があり、日程が厳しい一方で高度技術導入をめざすのであれば分割調達がいいのではないでしょうか」と Aviation Week主催の円卓会議(10月10日)で語っている。韓国の希望は新型戦闘機を2016年に就役させることで、F-35では最初からその日程では実現が危ぶまれていた。
  4. ムレンバーグはさらに同社提案は価格保証をしつつ韓国が求める性能がすばやく実現できるという。「第五世代戦闘機という用語はロッキード・マーティンに都合のよいことば」という。言及しているのはF-35のことであり、「全方位ステルス性能に議論が傾いていますが、ステルス性能重視のあまり性能が犠牲となっていない当社の機体について話をしたいですね」という。サイレントイーグルは全方位ステルス性能がないが、前面ステルス性を最適化しており、ペイロード、速度でF-35より優位だというのだ。
  5. 韓国内にF-35を推す声が強いのは明らかで、韓国空軍の元空将15名が連名でF-35採用を求める公開書簡を出していた。
  6. そこでボーイングの韓国戦略はオーストラリア事例と類似してくる。F-35を待つオーストラリアに同社はF/A-18追加購入させることに成功している。
  7. j時間逼迫を強調するのが同国向け営業戦略の一部で同社製品を導入すれば早ければ2015年12月には実戦運用能力が手に入ると主張する。
  8. 一方でムレンバーグはサイレントイーグルのパッケージにならったF-15の性能改修が同機運用中の各国から関心を集めていると発言。改修内容でデジタル式電子戦能力やレーダーの導入が可能となり、その場合はステルス性を意識した一体型兵装庫他は不要だという。■

2013年10月6日日曜日

米政府機能ダウンで国防産業でも生産ストップへ

Government Shutdown Puts Aerospace Jobs At Risk

By Joseph C. Anselmo janselmo@aviationweek.com, Michael Bruno michael.bruno@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com October 03, 2013

米政府の機能停止がこれ以上続くと、数千人単位で航空宇宙産業従業員が一時的に仕事ができなくなるかもしれない。.
  1. シコルスキーエアクラフトは10月7日に自社の三工場合計2,000名の従業員を自宅待機にする。国防契約管理庁(DCMA)の監督官が工場駐在できないためだ。監督官は工場内の生産を監督承認する役目を果たす。親会社のユナイテッドテクノロジーズは同様に傘下のプラット&ホイットニーでも2,000名を自宅待機措置とする可能性があるとしている。
  2. そのほかの国防産業企業も同様な措置をとろうとしている。「このままだと国防総省の契約事務に影響が出て数千名単位で自宅待機を迫られる会員会社が続出します」と航空宇宙産業協会 Aerospace Industries Association会長マリオン・ブレイキーがチャック・ヘイゲル国防長官宛書簡で警告している。
  3. ブレイキーが気にしているのはDCMAの関与なしには進めない契約案件が多いことだ。「現場監督、承認手続きがないと生産工程も止まります。数日のうちに、多くの会員企業で生産を止める以外に選択肢がなくなり、従業員を無期限に自宅待機させることになります。政府によ指導監督と支払いがない限り」
  4. 10月4日までにロッキード・マーティン他も自宅待機の準備に入っており、同社は10月7日より3,000名の従業員を自宅待機にすると発表している。同社CEOマリリン・ヒューソンは「今後政府による監督作業の停止が長引けば、当社のみならず協力企業も影響を受け、自宅待機扱いや契約行為の停止で影響を受ける社員の数は増える見込み」としている。

2013年10月4日金曜日

米陸軍向け次期汎用ヘリ競作にカレムが可変速度式ティルトローター機で参入

Karem Unveils Variable-Speed Tiltrotor For U.S. Army JMR Demo

By Graham Warwick graham.warwick@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviatonweek.com October 02, 2013
Credit: Karem Aircraft
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カレムエアクラフト Karem Aircraft が米陸軍の求める多用途回転翼機 Joint Multi Role 構想にティルトローター機で参画する。共用多用途機技術実証の第一段階契約を交付された。
  1. JMRとは陸軍が企画中の将来型垂直離陸輸送機Future Vertical Lift (FVL)の一部でまず中型機を開発し、現行のシコルスキーUH-60ブラックホーク多用途ヘリの後継機とし、その後ボーイングAH-64 アパッチ攻撃ヘリの後継機種とさせる構想で、実現を2030年代中ごろとしている。
  2. 陸軍の航空ミサイル研究開発技術司令部が技術投資契約 technology investment agreements (TIAs) をAVXエアクラフトベル・ヘリコプター、カレム、シコルシキー・ボーイング合同事業体とそれぞれ締結している。
  3. JMR構想に参入するカレムはTR36TD実証機を最適速度制御型optimum-speed tiltrotor (OSTR) のティルトローター機として設計中で、同機は直径36フィートの可変速度ローター二基を既存のターボシャフトエンジンで駆動させる。
  4. これに対してベルは「第三世代型テイルトローター機V-280ヴァラーの設計をしており、AVXは同軸ローターを抱くテッドファンと組み合わせたヘリコプターを開発中、さらにシコルスキーは同軸固定ローターと推進用プロペラを組み合わせた機構の機体を開発する。
  5. JMRの技術実証は巡航速度最低 230 kt.wを求めており、これは通常型ヘリコプターより50%早い。カレムによるとTR36D生産型は水平飛行で 360 kt.が可能だという。ベルV-289の巡航速度は280-kt.でAVXとシコルスキー・ボーイングは各230 kt.をめざしている。
  6. 四社に交付済みのTIAでは9ヶ月以内に一次設計完了を求め、その後陸軍が各設計を審査し、二社に機体製造させ2017年に実証機の初飛行を実現させるもの
  7. カレムによれば可変速度式OSTR機で実現する長所に機体重量、駆動機構、空力特性、推進効率に加え高速度があるという。TS36TDには「十分な」ホバリング性能、上昇率、操縦性、飛行距離で他の垂直離着陸機よりも優れた性能が実現すると同社は説明。
  8. またOSTRは機構の複雑度を減らし、安全性で優れ、保守点検を簡略化し、総費用を下げることが可能という。
  9. 数々の発明で知られるエイブ・カレム Abe Karem はプレデター無人機の原形を設計したほか、(現在はボーイングの)A180ハミングバード長時間飛行可能無人ヘリコプターで速度最適化ローターを採用している。2004年に起業したのが現在のカレムエアクラフト社。
  10. 2005年から2010年にかけてカレムは200,000 lb. 超の各種OSTR仕様を陸軍の共用大型ヘリ開発資金により検討している。そのうちTR75は直径75フィートの可変速度式ローター複数を使い、ロッキード・マーティンが共同参画して陸軍向け大型ヘリ開発を進めていたが、同計画が資金不足で棚上げになっている。
  11. 同社は自社資金で民間向けOSTR種を90席のエアロコミューター AeroCommuter と180席ノエアロトレインAeroTrain の二機開発中だ。■

2013年10月3日木曜日

トム・クランシー急逝

   
Tom Clancy Dies at 66
By: US Naval Institute Staff
                        
Wednesday, October 2, 2013
                                                 

テクノスリラー小説の生みの親にして米海軍協会が始めて刊行した小説の著者が火曜日死去した。
  1. トム・クランシーがバルティモアの病院で死去したと、クランシーのかつてのリサーチャー、共著者ジョン・グレシャム John Gresham がUSNIニュースに2日明らかにした。享年66歳。
  2. 「五六年前にトムは心臓発作に襲われ、バイパス手術を受けていた」とグレシャムは説明。「今回は発作の再発ではないだろう」
  3. クランシーは保険代理店をメリーランド州カルヴェント郡で営む傍ら、軍事史、特に技術面で精通するようになった。保険の顧客には原子力潜水艦で艦長を務めたあと、カルヴェントクリフ原子力発電所に勤務するものが多く、保険を勧誘しながら元艦長たちの知識から海軍艦船内で原子炉が作動する原理を学び、米海軍の原子力ミサイル潜水艦に弾道弾を搭載する意義を理解するに至った。また冷戦たけなわでもありソ連の軍事施設の知識も蓄えていった。
  4. クランシーが米海軍協会 U.S. Naval Institute との関係を作ったのは保険営業をしながら同協会紀要 Proceedings 編集者フレッド・レインボウFred Rainbowに投稿原稿を送ったのがきっかけだった。
  5. 「はじめて顔合わせをした際はクランシーは編集部に電話をかけてきて編集者に手渡ししたい投稿があると言っていた」とレインボウは回想する。
  6. 編集部はクランシーとの面会に抵抗があったが、数回にわたり電話が入り結局招きいれ、投稿へ通常の謝礼を支払っている。
  7. 「その小切手は結局現金化されていません。クランシーのオフィスで額に入れて保存してあるのです。著作物で支払いを受けたのははじめてだったのですね」(レインボウ)
  8. 次にクランシーは紀要に二回目の投稿をする。海軍のホーバークラフト艇から核ミサイルを発射する提案だった。「三番目が『レッドオクトーバーを追えThe Hunt for Red October』でした」
  9. レッドオクトーバーはソ連のミサイル潜水艦で艦長が米国への亡命を企て巧妙に策略を立てるというスリラー小説だった。出版した海軍協会出版会はこれまで小説の類は刊行した前例がなかったが、この駆け出し小説家にチャンスを与えることとした。
  10. 同書は1984年に出版され、好意的な書評を得た。しかし、本当に評判となったのは当時の大統領ロナルド・レーガンが同書を手にしている写真が出回ってからだ。感想を聞かれたレーガンが「一度読み始めたら止まらないunputdown-able」うえに「完璧な冒険談perfect yarn」と答えている。
  11. 同書は1990年に映画化され、ショーン・コネリーがソ連艦長マルコ・ラミウスを、アレック・ボールドウィンがジャック・ライアンを演じ、ライアンはその後のクランシー作品で繰り返し登場する人物になる。映画ではライアンが冒頭に海軍協会紀要(対潜水艦戦特集)をスーツケースにしまい、ジッパーを閉じるシーンがある。
  12. クランシー作品の成功でスティーブン・クーンツの『イントルーダーのフライト Flight of the Intruder』(映画題名は『イントル-ダー怒りの翼』)が1986年に出版され、これも成功作となった。
  13. 「テクノスリラーという分野を築きクランシーは出版界を変貌させました」と評価するのは海軍協会出版の「世界の艦船ガイド」著者のエリック・ウエルセイムEric Wertheimだ。「アメリカ人の軍事観そのものを変えたといっていいでしょう。アメリカ国民を軍につなげる大きな力を発揮したのです」■


2013年10月2日水曜日

ドイツ・フランスがA400M合同訓練の実施で合意

       

延々と開発に手間取っていたA400M戦略輸送機ですがやっとフランス空軍に一号機が納入されました。また、独仏での同機合同訓練はやがて合同運用につながるでしょう。欧州ではかつての列強が今や共同運用をするほどの一体化を実現していますが、翻って東アジア(西太平洋)で日本は孤高の存在ですね。欧州並みになるのにあと何年かかるのでしょうかね。

Germany, France To Embark On Joint A400M Training

By Anthony Osborne
Source: Aerospace Daily & Defense Report
aviationweek,com October 01, 2013
Credit: Airbus

フランス、ドイツ両国の空軍がエアバスA400輸送機の合同訓練で合意した。

9月30日にエアバスがフランス空軍向けA400M1号機引き渡しており、両国空軍は合同整備要員訓練をドイツのヴンストルフ基地で2015年夏から実施すると発表した。一方、乗員訓練、兵站ミッション訓練も実施される。戦術ミッション想定の乗員訓練はA400M訓練センター(フランス、オルレアン空軍基地)で2014年から行い、ドイツ空軍要員向けは2018年から開始となる。

両国は同輸送機導入でこれまで以上の相互運用、業務標準化を模索しており、フランス国防調達庁DGAによると欧州空輸司令部European Air Transport Command (EATC) 下の国際部会で、「運用手順を定め、合同訓練内容を開発する」作業が進んでいるという。

英国もフランス空軍と提携関係を樹立しており、英空軍要員がオルレアンでA400M各国向け就役作業チームMultinational Entry into Service Team (MEST) に派遣されている。フランス空軍は逆に英国に要員を派遣しロッキードC-130J操縦でグラスコックピット体験を積ませている。

仏独共同のA400M訓練はオルレアンでフランス空軍参謀総長デニス・メルシエ将軍 Gen. Denis Mercier とドイツ空軍参謀総長カール・ムリナー将軍Gen. Karl Müllnerが署名した。

両国はすでにユーロコプターEC665タイガー攻撃ヘリのパイロット、技術要員訓練を合同で実施している。
             
   
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2013年10月1日火曜日

航空自衛隊E-767の性能改修に向けた動き

Japan eyes $950 million upgrade to E-767 fleet


Flightglobal September 30,2013

日本がボーイングE-767 の性能向上で情報開示を請求している。これは同国が運用する空中早期警戒機4機の改修作業950百万ドル相当にむけたもの。
  1. 米国防安全保障協力庁 (DSCA) がウェブ上で明らかにしたもので、日本向けミッションコンピュータ性能改修 mission computing upgrade (MCU) として電子支援システムを4系統、AN/UPX-40新世代敵味方識別装置 Next Generation Identify Friend or Foe (NGIFF) を8基、同じく8基のレイセオン製AN/APX-119敵味方識別トランスポンダーおよびレイセオン製KIV-77暗号化コンピュータ4基を搭載する。
  2. 主契約社はボーイング統合防衛システムズで、米国の海外軍事販売(FMS) 制度を利用する。
  3. 「その他として支援試験装置の提供、予備修理部品、人員訓練、訓練機材、技術文書、米政府および契約企業による技術支援、機材据付・点検など関連分野でのサポートが含まれる」とDSCAは説明。
  4. 今回の改修で日本のAEW&C能力だけでなく、米軍との共同作戦能力も向上する。■