2012年8月17日金曜日

イージス艦の性能改修で日米間の協議が進んでいます

US, Japan Said Discussing Missile-defense Ship Upgrades
aviationweek.com August 16, 2012

米国と日本は日本が運用中の駆逐艦二隻のシステムアップグレードにより弾道ミサイル防衛体制の強化を協議中と国防総省との大手契約企業幹部が15日に明らかにした。
  1. あたご級誘導ミサイル駆逐艦の改修は米海軍艦船と同じ弾道ミサイル防衛能力を整備するものと、ロッキード・マーティンで海軍向け事業を統括するニック・ブッチNick Bucciが表現した。
  2. 北朝鮮の核開発と弾道ミサイル実験に脅威を感じる日本はミサイル防衛のすべての局面で米国の最大のパートナーとして注目される存在だ。
  3. 米国の現在の年間支出は全部で100億ドル程度で、北朝鮮とイランへの懸念を反映した形になっている。
  4. Lロッキード・マーティンが提供しているイージスシステムの構成はレーダー、コンピューター多数、ソフトウェア、ディスプレイ、兵器発射装置および兵器そのもので水上、空中、水中の脅威に対応するものだ。
  5. イージスシステムはルーマニア、ポーランド両国の陸上で2015年めどで配備される予定で、欧州をイランなどの弾道ミサイルの脅威から防衛するとともに、米国艦船も増強される予定だ。
  6. 日本は2003年にこんごう級駆逐艦4隻にレイセオン製スタンダードミサイル-3迎撃ミサイルを搭載し弾道ミサイルを撃破する能力を整備する決定をしている。
  7. 今回の協議の中心は海上自衛隊のあたごとあしがら二隻のイージスシステムの性能向上によりこんごう級を超える性能の実現にあると、ブッチは電話取材に答えた。
  8. 今回の想定対象はイージスシステムのレーダー情報を処理する新しい頭脳となるコンピューターであり、弾道ミサイルとあわせ他の空中攻撃を撃退する能力である。
  9. この近代化であたごとあしがらはSM-3ミサイルの発射能力が装備される。こんごう級の各艦には別個に性能改修が必要だ。
  10. 今回とりあげられているSM-3は正確にはブロックII-Aと呼ばれ、オバマ大統領提唱のNATO欧州向けミサイル防衛ロードマップで言及されている重要な構成部分である。
  11. 同ミサイルではロケット推進部が大型化され、弾頭部分も高性能になっていることから防御範囲が広がっていると見られる。弾頭部分は目標と衝突するように設計されている。同ミサイルの開発は2018年配備開始に向けてレイセオンと三菱重工業が順調に進めている。
  12. 二国間の研究開発の基礎となっているのが米日間の覚書で北朝鮮が突発的に発射したテポドン1号(1998年8月31日)が日本列島を横断して着水したことだ。
  13. ブッチによると韓国も保有するイージス艦三隻の改修の打診を米海軍入れたという。ただし、米国防総省並びに海軍から日本または韓国向けのプログラムについてコメントはまだ出ていない。
  14. なお米海軍の弾道ミサイル防衛能力があるイージス艦は2011年度末の24隻から2018年には36隻に増強される予定だ。■

コメント 日 本の海上自衛隊では相変わらず9000トンクラスのイージス艦でも護衛艦の名称を使っていますが、ここは原文のデストロイヤーを駆逐艦として使わせてもら いました。DDGとしている以上、駆逐艦という名称がぴったりくるのですが、まだしっくりこないものを海上自衛隊は感じているのでしょうか。ひょっとして こんなことがまだタブーになって頭の中を支配しているのでしょうか。

2012年8月16日木曜日

イラン戦を一ヶ月以上、都市住民500名死亡と想定するイスラエル

Possible War With Iran Could Be Month-long Affair: Israel Minister

By Reuters
August 15, 2012
イラン攻撃が実行されれば作戦は一ヶ月にわたり、戦線は多方面に拡大し、イスラエルの各都市にミサイル攻撃が加えられ、市民の犠牲は500人を超えるとイスラエルの民間防衛担当大臣が取材に回答していることが明らかになった。
  1. 「慌てふためく余地はありません。イスラエル国内はかつてないほどの準備をすすめています」とマタン・ヴィルナイMatan Vilnai(退役将軍、まもなく駐北京大使として赴任予定)は日刊紙マーリフに語っている。
  2. 取材は各メディアがイスラエルによるイラン核施設攻撃のタイミングが米大統領選挙前になると報道しているのと同時期に行われた。
  3. イスラエルがイラン攻撃を実施する必然性があるのかとの問には「ここで論議している余裕はない」としながらもヴィルナイは「米国は我が国の最大の友邦国であり実施の際は両国で協調する必要がある」と語っている。
  4. エフド・バラク国防相Defence Minister Ehud Barakと同じようにヴィルナイもイランはイスラエル各都市を数百基のミサイルで攻撃し、死者は500名ほどになると発言している。イランは攻撃を受ければ即座に強力な報復を行うと公言している。
  5. 「死者はこれ以上になるかも、以下になるかもしれませんが、これが専門家の助言による最も実現性のあるシナリオです」
  6. 「この想定は戦闘が30日間つづき、多方面で攻撃を受けるというものです」とし、イランが支援するヒズボラがレバノン、パレスチナからイスラエルにミサイルを発射する想定をほのめかしている。
  7. イスラエルが構築したミサイル防衛体制で一斉発射されたミサイルの一部は迎撃されると見られ、民間防衛演習も定期的に行われており、ミサイル攻撃を想定している。
  8. ヴィルナイは攻撃が一ヶ月に及んだ場合の経済効果について、とくに商業中心地であるテルアビブが長距離ミサイル攻撃を受けた場合のイスラエル経済の行方については発言していない。
  9. テルアビブはガザ渓谷を巡る三週間戦争(2008年-2009年)、34日間に渡るヒズボラとの戦闘(2006年)でもミサイル攻撃を受けていないが、湾岸戦争(1991年)でイラクからのスカッドミサイル攻撃の対象だった。
  10. 日本国民が地震の発生可能性を受け入れるのと同様に、イスラエルに住む全員はミサイルが国内に落下する想定を当たり前に思っておかねばならないのです」
  11. ヴィルナイは8月末に異動し、後任はアブラハム・ディヒターAvraham Dichter(前イスラエル国内情報機関Shin Betの長官)だという。

コメント  この数日イスラエルからの報道が気になりますが、日本は相変わらず関心が示し切れていないようですね。イスラエルのショッピングセンターではガスマスクが 飛ぶように売れているらしいですが。それにしても国家の安寧秩序のためには市民500名の犠牲は受け入れられると公言できるところが政治家(政治屋ではこ れは無理)としてすばらしいところですね。(当たり前の話なのですが) 日本がおかしいのでしょうかね。なお、攻撃のタイミングとしてシリア情勢の行方も中止しておく必要がありますね。

2012年8月15日水曜日

【緊急】イスラエルのイラン空爆は間近に迫っているのか:事態の変化に注視が必要だが、日本の視点は大丈夫か

まず、イスラエル国内の報道の論調は開戦間近というものですが....

Israel Media Talk Of Imminent Iran War Push


aviationweek.com August 10, 2012

イスラエル首相・国防相はそろってイラン核施設攻撃を11月の米大統領選挙前に実行したいと考えているが、内閣、軍内部で支持がまだ得られていない、とイスラエルで報道があった。

  1. 同国で最大の購読者を誇るイディオト・アハロノトYedioth Ahronoth の記事は観測高まる中で掲載されており、政府内外のリーク情報からも、イラン攻撃は迫っており、たとえ米国との関係を損なっても実施されるとしている。
  2. 「ベ ンジャミン・ネタニヤフ首相Benjamin Netanyahuとエフド・バラク国防相Ehud Barak次第でイスラエルによるイラン核施設攻撃は秋にも実施されよう。11月の大統領選挙までになる」とイディオト紙は報道しているが、国防相の発言 は引用していない。首相府はコメントを拒否している。
  3. イディオトによると閣内で即座攻撃案は反対にあったとのことで、軍も作戦内容から戦術戦略面で難易度が高いことから反対しているという。
  4. 「過去の実績から首相と国防相は尊敬を集め、これが今までは多くの軍事上の決断につながっていたが、今やその威光は消えている」と同紙は伝える。「人も変わるが、状況の現実そのものがこれまでと異なっているのである」
  5. イスラエルはこれまでも宿敵を攻撃すると脅かしをかけ、特にイランの核開発を決定的な脅威とみなし、限定軍事攻撃の機会を伺ってきた。米国はこれに対しイスラエルに外交手段に注力するように説得してきた。
  6. イスラエル、米国はそろって両国間の意見の相違をなるべく見せないようにしてきたが、とくに米国は軍事力行使は最後の手段だと公言してきた。
  7. ロイターによる世論調査(3月)ではアメリカ人の多数は軍事行動を支持し、それが米国政府あるいはイスラエル政府によるものでも同じだとしたが、イランが核兵器を開発しているという証拠がある場合に限るとし、その結果ガソリン価格が上昇しても受け入れると回答している。
  8. た だし、11月の再選をねらうバラク・オバマ大統領はイスラエルによる一方的な行動は時期尚早として歓迎しない。大統領はネタニヤフ首相の不満をおさえるべ く政府トップ高官を派遣している。これに対し共和党のミット・ロムニー候補はネタニヤフの旧友であり、イスラエルの安全保障を協力に擁護する立場で、自身 も先月エルサレムを訪問している。
  9. 前出のイディオト記事では出所をあきらかにせずイスラエル、米国の政府顧問は共通して11月以前に攻撃を敢行するとオバマに不利となりロムニー当選の可能性を増す結果になると考えていると報じている。
  10. イディオトによるとイスラエルによるイラン攻撃の目的はエスカレーションを狙い、米軍部隊の介入をひきおこすことだという。ただし、バラク国防相はこの点で懐疑的だという。「同相は米国は参戦せず、逆に全力で戦闘の回避に出てくるだろう」と見ている。
  11. ネタニヤフ首相は明らかに米国の外交政策の干渉を受けたくないのは明白で米国内の超党派によるイスラエル支援に感謝しつつ、自国の安全には自国で責任を果たすと主張している。
  12. リベラルな有力紙ハアレツHaaretzはネタニヤフ政権内部の匿名の関係者の声として中東地域で唯一の核保有国と言われる同国には1967年の中東戦争前夜にイランから現在以上の脅威に直面していたとの指摘があると報じる。この見方が国内で支持を広めているようだ。
  13. 8 月10日付の大衆紙マアリフMaarivによる世論調査ではイスラエル国民の41%がイランには非軍事手段では圧力をかけられないと信じ、これに対し外交 手段の有効性を信じるのは22%に過ぎない。その一方で39%はイラン問題は米国他世界主要国に任せるべきと考えており、35%は最後の手段としてのイス ラエル単独攻撃を支持するとしているが、後者は前回の調査では22%だったので増加が注目される。■


これに対し米国の見方は「イスラエルはイラン攻撃を決断していない」

Israel Hasn't Decided On Iran Strike: Pentagon

aviationweek.com August 14, 2012

米 国はイスラエルがイラン原子力施設攻撃の決定を下しているとは見ていないとレオン・パネッタ国防長官が8月14日に発言した。これはイスラエル高官の発言 で金融市場が緊張したことを受けてのこと。パネッタ国防長官はイスラエルを2週間前に訪問しており、軍事行動はあくまで「最後の手段」であり、制裁はらび に外交圧力が功を奏するまでまだ時間があると報道陣に語った。
  1. この発言は攻撃の可能性をしきりに強調しているイスラエルと対照的で、在米イスラエル大使は8月13日にCNNに軍事行動を回避する可能性は「どんどん小さくなっている」と発言。同大使はイスラエルの考えるタイミングはワシントンよりも早く動いていると指摘している。
  2. イスラエル側の発言へのコメントを求められたパネッタ長官は「この時点でイスラエルがイラン攻撃を決定したとは思っていない」と発言。「外交交渉の余地は未だある」
  3. イランからは核開発はあくまで平和目的であり仮に攻撃を受ければ広範囲の反撃をすると警告が出ている。
  4. イスラエル金融市場は8月13日にイラン開戦を巡る議論の高まりを受け大幅安となった。ただし翌日に反撥している。
  5. マー ティン・デンプシー統合参謀本部議長General Martin Dempseyからはイスラエルによる空爆でイラン核開発の破壊は不可能であり、単に遅らせるだけだと警告が出ている。「イスラエル軍の装備について全て 把握しているわけではないが、破壊は不可能でせいぜい核開発を遅らせることしかできないと言っておくのが適当だと思う」■

コメント  きな臭くなって来ました。イスラエルが相当の閉塞感を感じていることは明らかです。ただし、相当な防御を施されていると言われるイランの核施設を一撃にし て破壊することはイスラエル空軍と言えども困難でしょうし、統合防空体制を打破するためにも電子戦の支援が必要となるとイスラエル単独攻撃は可能性が少な いのではないでしょうか。前哨戦としてサイバー攻撃、ISR活動が強化されるはずですが、こればかりは報道機関では把握のしようがありませんね。

米陸軍のLEMV監視飛行船が飛行試験を開始しました


Army’s LEMV Surveillance Airship Begins Flight Tests


aviationweek.com August 13, 2012


.米空軍は監視偵察用の飛行船開発を断念したが、米陸軍は独自に計画を進めており、ノースロップ・グラマン長時間飛行多用途情報収集機材Long Endurance Multi-Intelligence Vehicle (LEMV) が初飛行を8月7日に完了した。
  1. 同 機はハイブリッド飛行船で全長300フィート、初飛行では有人で90分間マクガイア・ディックス・レイクハースト共用基地(ニュージャージー州)からの飛 行に成功した。「初回飛行では発進と回収の安全性を確認することが第一で、次に飛行制御系の作動確認を目的にした」と宇宙ミサイル防衛軍団/陸軍戦略司令 部が発表。
  2. 「初飛行では耐空性テストと実証が目標であり、システムレベルでの作動確認が加わっていた。全ての点で目標は達成されている。追加して有人飛行が機体の点検のあとで予定されている」(陸軍)
  3. ノースロップ・グラマンが総額154百万ドルでLEMV開発の契約を調印したのは2010年6月で初飛行はその後12ないし13ヶ月後の予定だった。同飛行船はテスト終了後はアフガニスタンで運用される。
  4. LEMVは高度2万フィートで21日間連続運用でき、16kwの発電容量があり、ペイロード2,500ポンドの各種センサーを稼働させる。英国のHybrid Air Vehiclesが飛行船のメーカーとして同契約を下請参加している。
空軍はブルーデビル2監視用飛行船を5月に契約先のMAV6の業務内容が期待以下という理由で開発中止している。

2012年8月14日火曜日

イスラエルのEW技術がF-35運用各国に大きな利益をもたらす

Israel, U.S. Agree To $450 Million In F-35 EW Work

August 06, 2012
総 額450百万ドルでイスラエルとロッキード・マーティンが合意したイスラエル開発の電子戦(EW)装備をF-35搭載の承認はイスラエルの計画する19機 27.5億ドルの第一期導入に道を開くことになり、中東における防衛協力の大きな柱となる。だがそれ以外の意味もある。
  1. 長く待たれていた今回の合意でステルス性能の技術的経済的な制約を認めたうえで、高性能レーダーの出現でJSFのステルス性を長期間確保する必要性があらためて浮き彫りになった。
  2. F- 35導入の決め手はステルス性能のはずだが、それだけで歴史上最大規模の装備調達に加わるわけではない。レーダー断面積が小さいことは隙間的な能力だが、 新型レーダーの開発でその重要性が減少する。中国、インド、ロシアがそれぞれ自国開発に乗り出してステルス機の弱点に気づきはじめている。
  3. 「ステルスによる防御能力は5年10年は有効でしょうが、機体は30年40年稼動しますから、EW能力は簡単に高度化できるようにしておくことが必要です」(イスラエル空軍IAFのある関係者が本誌に)
  4. も うひとつの重要な観点は費用だ。「イスラエルにとってF-35が装備の中にないことは考えられないです。生産機数が増えて単価が下がればF-35はF- 16の後継機となります。」(上記イスラエル空軍関係者) たしかにF-35の現在価格は高価だが、イスラエルは維持が高くつく老朽機を処分したいと考え ている。イスラエルは実質的に米国の援助を受けているのだが。
  5. 「旧式機の保守点検での追加費用発生分は米国の軍事援助では手当てされません。そのためF-35調達が遅れるとそれだけ国防予算の負担が増え、その他にまわす余裕がへります」
  6. 2008 年の最初の合意内容では75機152億ドル(約1.2兆円)調達のオプションがあり、第二飛行隊を複数年度調達で整備することが盛り込まれていたが、この オプションは他の国防装備調達案と比較検討されている。だがイスラエルに追加飛行隊の本体価格は第一飛行隊より低くなるとの連絡が入っている。
  7. 今 回の最新合意によりイスラエルは自国生産の無線 ・データリンク他を自国購入分のF-35に装備することが可能になった。オリジナルではステルス性のある データリンクはF-35のミッションシステムで不可欠な部分とされ、データ通信はF-35編隊内あるいはF-35と特殊な通信連絡機間だけとされてきた。 F-35用にハリスHarris Corporationが開発した多機能高性能データリンクMultifunction Advanced Data Link (MADL)により探知されにくいリンクが実現し、F-35編隊内およびMADLを装備した指揮命令系統間で通信が可能となる。MADLはアンテナ6本で 機体周辺を球状にカバーし、Kuナローバンド波形を「デイジーチェーン」方式で使用する。つまり先頭機が志向性のある信号を二番機に送り、二番機が三番機 に、と続けるのだ。
  8. こ の方式だと波形が探知されす、傍受されにくくなるので、敵の信号傍受情報活動sigintやEW活動から自由になる。今のところこの装備はF-35だけだ が、米軍のステルス機全体に装備されていく。ロッキード・マーティンF-22やノースロップ・グラマンB-2が想定される。MADLはF-35の通信・航 法識別(CNI) ミッションシステムの一部であるのでイスラエルはMADLの供与を期待でき、イスラエル空軍はデータリンクを米軍と共有する始めての海外軍事組織となる。 ただし、MADLだけに依存するとイスラエルのF-35は友軍内のほかの機材と共同作戦が実施できないので、別の解決策が必要だ。
  9. こ れまでステルス部隊はミッションの独自性を求めており、最高度の柔軟性でこそ各機のステルス性能が発揮できると主張してきた。ステルス機、非ステルス機の 協同運用の必要性およびF-35を近接航空支援に投入する想定が米海兵隊に特に強いことから同機にLink-16のような通常装備の搭載が求められること になった。
  10. 最 近のテストでもF-35 でLink-16が使用されており、まもなく可変形式メッセージVariable Message Format (VMF)のテストもはじます。VMFは西側で広く近接航空支援ミッションで使用されている。今回の合意でイスラエルは自国製のデータリンク通信装置の搭 載に道が開けた。
  11. I イスラエルは絶えず海外調達の機体には自国製システムを付加すると主張してきた。米国製戦闘機ではこのような性能向上の中心はEWシステムズ、指揮命令通 信コンピュータ、データリンク、およびイスラエル製兵装の組み合わせが中心だった。このようなイスラエルによる改修は輸出にもつながり、たとえばライトニ ング高性能目標捕捉ポッドは米空軍・海兵隊にも採用されており、F-16、F-15、AV-8B、A-10、F/A-18、B-52の各機に搭載されてい る。
  12. た だしイスラエルのEWを巡る今回の合意内容は簡単に決着しなかった。JSFでは戦域固有の脅威ライブラリーやジャミング・対抗措置技術のレパートリーを元 にシステムの更新を頻繁に行う想定であり、この点で従来型のEWシステムズとは異なる。これまでもEWでは性能改修が行われているが、その他のエイビオニ クスとは関係なく実施されていたので、この改修は可能だった。
  13. こ れがF-35では主要エイビオニクス装備はすべて統合され一体化されているので、システムの一部に手をいれることはすべての関連システムに影響が出るの だ。異なる国籍の空軍がそれぞれ異なる型式のエイビオニクスを使用していると統合作業が非常に複雑になるばかりか非経済的だ。
  14. そ こでF-35のエイビオニクスの構造設計ではこの問題を統合のレベルを2つに分けることで解決。各国は高レベルにアクセスが可能で、使用国特化のサービス 内容、ライブラリー、改修を行うことができ、これは同機のソフトウェア改修スケジュールとは別箇に行うことができる。これに対し低レベルは米国の共用機開 発室の管理対象でアクセスはロッキード・マーティンに限られる。低レベルでは飛行性能およびミッションで不可欠な機能を制御する。同時に機体の低視認性能 とも関連しており、米国が精力的に自国管理を主張している領域だ。
  15. 中 核となるエイビオニクスを新システムで交換することで統合の根底部に触ることは考えにくく、実施すればF-35運用国のすべてが長期間のテストを求めら れ、開発のメリットがないからだ。そこでイスラエル空軍はこれとは違うアプローチを考えた。いわゆる統合モジュラーエイビオニクスintegrated modular avionics (IMA)である。この考え方はイスラエル黒帽研究開発局が長年かけて練り出したもので、現在試験的な搭載が進行中だ。
  16. 階 層は三段構造で新しいアプリケーションを統合していく。統一ハードウェアは協力な汎用プロセッサーgeneral-purpose processor (GPP) と大容量メモリーバンクで形成し、開発メーカーにはソフトウェア開発キットのようにデバイスと機能のライブラリーが利用できる。共通のハードウェアは各型 に適合化され、共通のデバイスや機能を作動させることが可能なので開発メーカーは新しいアプリケーションを異なる型式の機体に同時に提供する異なる。これ はこれまで特定の型式に特定のアプリケーションを開発していたのと対照的。アプリケーションはイスラエル空軍の認証を受ける必要があるが、各型式に問題な く適合し、保守点検が容易になる他アップグレードも長期間に渡り可能だ。
  17. 「ね らっているのは開発メーカー各社のセンサー類、アプリケーションソフトウェアをハードウェアの種類を問わず作動させることです。これにより機体の型式を問 わなくてもよく、統合試験コストを削減できます。」(イスラエル空軍のエイビオニクス部門長)イスラエル空軍はこのコンセプトを現有また将来の戦闘機、輸 送機、ヘリコプター、UAVに採用する予定だ。とくにUAVでは余分なスペースが無く、電力供給余力も少ないので課題となろう。処理能力を高めて、メモ リー領域も拡大することでIMAは中核エイビオニクス装置の負荷を緩和することが可能だ。イスラエル空軍がとくに期待しているのはソフトウェアによる無 線、情報融合、作戦立案の各機能での応用だ。
  18. イ スラエル空軍はIMAを費用対効果の高い手段として既存機種の性能向上を期待しているが、F-35へも新しい可能性を提供できるし、既存の中核エイビオニ クス装置に干渉せずにこれは可能だ。GPPでIMAを共通ハードウェアとすると運用各国に大きな利点が生まれる。サードパーティーのアプリケーショ ン開発メーカーが画期的な新アプリケーションをF-35に提供する道がひらける。スマートフォンのアプリと同じアプローチだ。
  19. . 国営イスラエル航空宇宙工業Israel Aerospace Industriesが今回のEW開発に加わる公算が高く、同社はすでに同機の主翼生産を始めようとしている。エルビットシステムズElbit Systemsの子会社エリスラElisraはイスラエル空軍にEW装備の提供を広く行なっているが、これも参画するだろう。エルビットはロックウェルコ リンズとの合弁事業体で高性能ヘルメットをF-35用に生産している。■


2012年8月13日月曜日

X-51A三回目の極超音速飛行は8月中に実施予定

Third X-51A Hypersonic Test Targeted For Mid-August

By Guy Norris
aviationweek.com August 06, 2012

米空軍関係者によるとマッハ5以上の飛行を狙うX-51A極超音速実証機のおそらく最後の実験が8月14日に設定されているという。
  1. X- 51Aは「極超音速飛行への重要な次のステップ」だと空軍研究所航空宇宙システムズのダグ・バウワーズ所長Doug Bowersは初回のX-51Aの実績が成功失敗入り交じっていたが技術開発には貴重な成果出会ったと語る。「X-51は初回飛行ではほぼ成功したと言っ てよい。第二回目はB-52からの引き離しに失敗し、三番目ではインレットが途中で止まってしまった。毎回のフライトで学ぶものが多いが、飛行させなけれ ばわからないことが多いのも事実だ」
  2. X- 51Aの最新状況だが、ハードウェア、ソフトウェアで変更されており、前回3月5日の飛行がマッハ5をめざしながらわずか9.5秒で終了してしまったこと から想定される対策をこうじている。二回目のフライトは2011年6月13日に搭載するプラットアンドホイットニー・ロケットダインRocketdyne SJX61-2エンジンがエチレンからJP-7への燃料切り替えに失敗したことで終了している。エチレンはスクラムジェット始動に使用し、JP-7は高速 度飛行の持続に使われる。
  3. X- 51はマッハ6.5までの極超音速飛行を空気吸い込み式で一定時間持続することの実証として想定され、2010年3月5日の初飛行ではマッハ4.88を記 録。マッハ5までも達しなかったが同機が210秒の動力飛行中で143秒をスクラムジェットで飛行したことは以前のスクラムジェット機よりも長い時間記録 で技術上の成功とみなされた。
  4. 四号機はボーイングのパームデール工場(カリフォルニア州)で完成まであと一歩のところに来ているが、飛行テストの予算が確保されていない。■


2012年8月12日日曜日

大統領専用機材更新の検討はじまる---ただし運用は2020年代からか

Pentagon Envisions New Air Force One Presidential Jet

bloomberg.com By Tony Capaccio - Aug 11, 2012 4:23 AM GMT+0900
Pablo Martinez Monsivais/AP Photo
President Barack Obama leaves Air Force One at Orlando International Airport on Aug. 2, 2012, in Orlando, Fla.

ペンタゴンは2022年以降の導入前提で大統領専用機の後継機種の検討および購入計画を開始した。
  1. 国 防次官(調達担当)フランク・ケンドールFrank Kendall ,Undersecretary of Defense for Acquisition が「調達決定」メモに署名したできるようなった更新業務室を立ち上げ、あわせてマリーン・ワン大統領専用ヘリコプターの次期機種も2020年より前に稼動 開始する想定で検討できるようなった。
  2. 第一段階は市場動向分析と大統領専用機材に必要な性能要求の評価を完成させることだと国防総省関係者は匿名を条件で話した。上記メモが未公表のためだ。その後をうけて統合参謀本部が性能諸元を決定する。
  3. この手順は航空機メーカー、エンジンメーカーには朗報で、ロッキーと・マーティン、ボーイング、ジェネラルエレクトリック、ユナイテッドテクノロジーズが期待をかけるだろう。
  4. ペンタゴンは一号機に7.57億ドル、ヘリコプター後継機種には18.4億ドルをそれぞれ2017年度まで相当として計上しており、実際の予算執行は2015年度以降が大部分となるという。
  5. 新 型エアフォースワンの引渡しは特殊装備技術の改修を待って2019年以降になるとペンタゴンは30年間の運用計画で想定。一方、新型大統領専用ヘリコプ ターは現行機種が35年間も稼動している中でも稼動開始は2020年まで待たねばならない。専用機は2023年から運用開始となる。
  6. ケンドール国防次官から空軍へは各メーカーへの企画案提出を2015年、開発契約交付を2016年の想定で計画を作成するよう指示している。
  7. 空軍による分析で調達戦略の基礎が出来上がり、現行の大統領専用機VC-25合計2機のメーカーであるボーイングからの単独調達とするべきか、オープンな競争提案とすべきかの決断も含まれる。なお、計画案のメモでは調達機数を指定してない。
  8. 現在稼働中のボーイング747-200Bの一号機は1990年9月から大統領輸送業務を開始しており、空軍によると機体寿命は30年の想定だ。
  9. ロ バート・ゲイツ国防長官(当時)は2010年の下院証言で現行機の更新の必要性を認めており「新型専用機の必要性は明白」と発言し、「予算を確保してお り、2011年に新型エアフォースワンの検討をはじめられる。今後数年間で予算を増額する方向で動いている」としていた。
  10. 空軍は2009年に市場調査によりエアフォースワン後継機を開発・生産する「技術蓄積、能力および経験を有する供給源となるのはどこかを把握する」とオバマ大統領就任前に発表していた。
  11. T調査結果ではVC-25を新型機で更新するのが「費用対効果が現行機を改修するよりも優れている」とし、「2017年度中の」一号機引渡しを想定していた。
  12. 一 方ヘリコプターではゲイツ長官(当時)がVH-71調達案をキャンセルしたのを受けて新規計画となる。VH-91はコスト上昇と日程遅延が原因で頓挫した が、ロッキード・マーティンが受注していた。キャンセル時点で同ヘリの予算規模は130億ドルで、当初の61億ドルを大幅に超過していた。また総合日程は 少なくとも24ヶ月の遅れを生じていた。バラク・オバマ大統領は2009年に同計画を「調達プロセスが制御不能になった例」と言及し、新型ヘリは必要ない としていた。現行のマリーンワンで「完璧に十分だ」とホワイトハウスの予算検討会で発言している。
  13. ケンドール次官からは空軍に詳細計画レベルで調達戦略を作る指示がでている。目標は2013年度内に次期ヘリコプターの提案を業界にもとめることで、開発契約を2014年に結ぶことだが、調達機数は正式には未定だ。■


2012年8月10日金曜日

高性能有人戦闘機の必要性 アフガニスタン、イラクの例外に論調を脱線させないために何を考えるべきか

誤 解される向きもありましょうが、当ブログでは有人戦闘機の存在を否定しているのではないのです。無人機やEWの出現はあっても、有人戦闘機は制空権確保に 必要な装備であることに変わりありません。その思いを同じくする論文がAir Force Assn.機関誌に出ていましたのでやや長文ですがご紹介しましょう。                                          
       
Air Force Magazine Vol. 95, No. 8     August 2012        

    Aberrations in Iraq and Afghanistan    

                                    By Daniel L. Haulman   
                
                       
最近10年間の戦役で空軍は制空権を確保するために戦う必要が一回もなかった。これは正常な状態ではない。
            
  • 空 中での戦闘は米国が参戦した主要戦で20世紀の大きな特徴だった。1918年以来の米国の空軍力は勝利を次々におさめ、1999年まで米国による総撃墜機 数は17,500機であり、第一次大戦624機、第二次大戦15,800機、朝鮮894機、ベトナム137機と言う内訳だ。
  • これが1990年代のイラク、セルビアでは数は少なくなったが、それでもイラクで39機、セルビアで9機を撃墜している。
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    1991年、米空軍戦闘機が炎上中の油田を飛行中。イラク陸軍がクウェートから撤退する中で放火したもの。砂漠の嵐作戦で米空軍は37機を撃墜しつつ損失はゼロだった。(USAF photo)

    • ただし21世紀になり、空中戦そのものが消えている。21世紀に米国が関与したイラク、アフガニスタンでエースは輩出していない。空中戦の勝利そのものに気づくことがなかった。
    • 双方の戦闘で空軍力は大きな役割をはたしたが、制空権を巡る戦闘はそこに含まれていない。空中戦そのものが発生していない。
    • そこで21世紀になり空中戦の時代は終わったと主張する向き、高額な制空戦闘機や高度に訓練を受けるパイロットはもう不要だとの主張が出てきた。
    • なぜアフガニスタンとイラクで空中戦が大きな役目を果たしていないのか。むしろこの二例が異常なのである。将来の戦争では再び米国は制空権確保のため戦うことが必要となり、制空権を最初は確保できないかもしれない。

    【アフガニスタン】
    1. 最 初の例外がアフガニスタンだった。2001年10月7日、不朽の自由作戦がタリバン政権を対象に開始された。空中にまともな相手がいなかった。当時のアフ ガニスタン空軍は小規模で、あまりに小規模のためジェーン航空年鑑に1999年から2002年まで記載がない状態だった。
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      アラスカ演習でのF-22。空中戦が最近発生していないため、有人機が必要なのかと言う疑問が出ているが.....
      (USAF photo by SrA. Garrett Hothan)


    2. また自国内に航空産業がないアフガニスタンは旧ソ連に航空機供給を依存していた。1980年代ゲリラ戦士が地対空ミサイルの扱いになれてきたためソ連は航空機運用で注意を喚起していた。
    3. 90年代を通じアフガニスタンでの重点は各勢力間の地上戦に終始した。旧アフガニスタン空軍の剰余機材は部族間で分配され、整備部品は不足し、飛行訓練がとくに成約を受けていた。
    4. 1996年までにタリバン勢力が最北部除く国内を平定したが残存アフガン空軍はあまりにも非力だった。当時の推測ではMig-21とSu-22各8機と輸送機わずか、ヘリコプター12機だった。大部分の機体は稼動できない状態であり、パイロットも数名のみだった。
    5. そこで米軍の作戦立案ではアフガン空軍を対抗勢力として一度も真剣に考慮する必要がなかった。イラクで「飛行禁止地帯」を維持する活動を日常的に展開していたのと比べると雲泥の差だ。
    6. ただし、アフガニスタンでもタリバンが航空機に爆発物を搭載した自爆飛行を米軍基地に実施するのではと危惧もあったので、当初から磐石の制空権確保が必須と計画立案上で認識されていた。
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      F-16で飛行前点検をするゲーリー・ノース大佐(当時)、1999年。機体の緑色の星は大佐が撃墜したイラク空軍MiG-25を示す。イラク南北に設定した飛行禁止区域の遵守を求めた南部の監視作戦にて。
      (DOD photo)


      1. 作戦の第一波で攻撃対象となった合計31箇所にはタリバン側の空軍基地、空港があり、Mig-21およびSu-22の運用基地二箇所は使用不可能とされた。
      2. 第一夜でアフガニスタンの防空網は崩壊し、その後7日間に渡り米空軍は残存アフガン機材をしらみつぶしに破壊していった。
      3. ペンタゴンからタリバン配下の空軍勢力が消滅したとの発表が出たのが10月25日で、アフガン空軍はその数週間前に消滅していた。
      4. 多国籍軍に対抗すべく発進したタリバン側の航空機は皆無で、米側には撃墜する対象がなかった。タリバン側には発進可能な機材は限られており、その機材も開戦後数時間あるいは数分間で破壊されていた。
      5. タリバン防空体制の破壊は徹底的で、米国は作戦初期から低速、低高度飛行のヘリコプター、輸送機、ガンシップ、無人機を心配なく運用できた。こういう機材は敵が有効な空軍力を保有していればきわめて脆弱な存在だ。

      【イラクの事例】
      二番目の例外事象はその17か月後のイラクで発生している。
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      空軍の撃墜・被撃墜比率は戦役により大きく異なる。ベトナム戦争で厳しい経験をした米空軍はその後は合計48機を撃墜し、被撃墜ゼロとしている。

      1. ブッ シュ大統領がサダム・フセイン政権の打倒をねらい開戦したが、イラク空域に侵入する米空軍パイロットは開戦当初はイラク空軍がアフガン空軍と同程度の不活 発な状態にあるのか知る由もなかった。事実、それをさかのぼる12年前にはイラク空軍は地域内でも有数の実力を誇る存在であった。
      2. イ ラク空軍は1980年から88年までイラン・イラク戦争を戦い、90年代初期には南西アジア最大規模の空軍で、固定翼機700機以上を保有していた。ソ連 からはMig-29、フランスからはミラージュF1が主要機材だった。イラクは空軍基地の整備をおこない、滑走路も拡充し、さらに航空機シェルターも強化 した。
      3. この強力なイラク空軍が米空軍という丸鋸にかけられたのだ。
      4. 砂 漠の嵐作戦(1991年1月17日ー2月28日)で米空軍はイラク空軍37機を撃墜している。その他米空軍と同盟軍は254機を地上で破壊している。F- 111やF-117はレーザーおよびテレビ誘導爆弾でシェルター内の機体141機を使用不能にしている他、113機を地上で破壊した。
      5. イランへ逃亡した期待も含めるとイラクは固定翼407機を喪失し、これは開戦前の戦力の半分以上にあたる。
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        アメリカ軍要員が地中に隠されていたイラク空軍のMiG-25をアルタカダム基地で掘り起こしている。イラクは攻撃による破壊を避けるべく機材を埋めていた。これはその一機。 (DOD photo)

        1. こ の破壊の影響は長く続いた。かつての強力なイラク空軍は戦闘部隊として機能できなくなり、2003年の戦争ではイラク空軍機は一機も米軍、同盟軍に攻撃を 挑んでいない。制空権の完全な確保により政権転覆と言う所期の目的が迅速に実現し、米軍・同盟軍がバグダッドに進軍するまでに一ヶ月未満だった。
        2. さらに90年代にも米国はイラク空軍力の弱体化を認識していたが、当時はイラク北部と南部に飛行禁止区域を設定し、その履行に米軍;同盟国軍があたっていた。
        3. サダムはこれに対しまれだったが米軍に挑戦をいどむ事例もあった。
        4. 1992年終わりごろと93年早々に米空軍F-16 のパイロットは高性能中距離空対空ミサイルで少なくとも二機のイラク機が飛行禁止区域を無視した段階で撃墜している。
        5. 1996 年にはイラク陸軍が北部飛行禁止区域下を進軍しクルド人の都市イルビルを占拠した。このため米軍は砂漠の打撃作戦を開始し、B-52から巡航ミサイル13 発をイルビル市内の軍事拠点に発射している。防空レーダー施設もここに入っていた。北部飛行禁止地帯での攻勢の結果、南部の飛行禁止地帯も北緯32度から 33度に拡大され、イラク空軍が訓練に使用できる空域が狭まった。
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          アフガニスタンのバグラム飛行場で放置されるMiG-21の残骸。不朽の自由作戦ではアフガン空軍の妨害を考慮することなく作戦立案できた米空軍であったが....
          (DOD photo)


        6. イ ラクの交戦能力にはもうひとつ制約条件があった。80年代末にサダムはソ連製戦闘機をユーゴスラビアに供与したが、国連による経済制裁発令により機材の回 収が不可能になった。1995年に国連安保理はイラク向け制裁の延長を可決し、イラク空軍機の機体部品は入手困難となり、作戦可能機はさらに減った。
        7. クーデターを恐れるあまりサダムは軍首脳部を追放し、空軍上層部も含まれていた。サダムは腹心の部下による軍の執行を望んでいた。そのため、イラク空軍には再興のための指導力が不在だった。
        8. サダムが国連査察を1998年に拒んだことで米国・同盟軍の空爆が実施され、砂漠の狐作戦で米英空軍はタリル空軍基地を爆撃しイラクが練習機を改造して遠隔操縦機にしていた機体複数を破壊した。遠隔操縦機は化学兵器あるいは生物兵器の搭載を想定していたと思われる。
        9. これでイラク空軍の残存勢力はさらに弱体化し、2002年には合計267機しか残っておらず、戦闘機はそのうち124機になっていた。戦闘行動がすぐに取れる機材はその一部だけだった。
        10. 米軍がイラク侵攻を開始した2003年にイラク空軍は姿を現していない。同盟軍の航空部隊、地上部隊は空からの抵抗を受けることなく行動を展開した。
        11. イラク空軍の不在を受けて米空軍は本来脆弱性の高い機材を投入した。A-10やAC-130ガンシップであり、各機は撃墜される心配なく飛行した。

          2005年撮影のイラク空軍基地にはMiG-27,MiG-25が使用不能状態で写っている。バグダッド進軍の舞台にイラクは一度も航空攻撃を試みていない。
          (DOD photo)



          【それでも新鋭高性能戦闘機は必要である】
          1. さ て、アフガンとイラクの両戦闘が始まってから技術進歩はめざましく遠隔操作無人機で敵を捕捉、攻撃できるようになり、地上の目標が移動中でもこれは可能 だ。ネヴァダ州の地上にいるパイロットが地球の反対側のイラクやアフガニスタンの目標を空爆している。このことから有人戦闘機はもはや不要だと主張する誘 惑に駆られる向きもあろう。
          2. しかし、遠隔操縦無人機は比較的低速であり、その撃墜は容易だ。高速で武装が充実し、防弾装備もある有人戦闘機なら簡単に無人機を撃墜できるが、その逆は無理だ。
          3. 将来の戦闘では敵側はいっそう強力な空軍力をもっているはずで、それはアフガニスタンやイラクの例ではない。中国、ロシアはそれぞれ第五世代戦闘機にステルス技術を組み合わせて開発中だ。
          4. 高度技術を運用する敵空軍が米国の制空権を脅かすだろう。空自体が戦場と化し、戦闘機が直接対決する事態が来る。
          5. 敵方が優越性を獲得すれば、戦闘の行方は直ちに変わる。空の支配は近代戦での勝利の必須条件だ。強力な敵戦闘機部隊は米空軍力の対抗を受けなければ我が方の輸送機、ヘリコプター、ISR機材、無人機を撃破する。
          6. 最新鋭戦闘機の価格は著しく高価に写るが、高性能新鋭機が不足した状態で戦争が勃発すれば、その代償はもっと高価なものになるのである。


          ダ ニエル・L・ハウルマンは空軍歴史研究局の歴史研究員である。三冊の著書がありそのひとつがOne Hundred Years of Flight: USAF Chronology of Significant Air and Space Events, 1903-2002(米空軍戦闘史)である。その他空軍関係の出版物にも多数寄稿している。

          ど うでしょうか。きわめてまっとうな主張であると思いますが。問題はF-35が①本当に高性能機なのか ②機体コストの上昇で誰も必要な機数を確保できなく なるのではないか ③F-35のため2000年以降貴重な時間がまともな新型戦闘機開発に資源を投入できなかった ④そのため西側防衛体制を危うくする可 能性を同機が持っていること がどうしても気になるのですが。ご意見をおきかせください。