2011年4月16日土曜日

米海軍が高出力レーザー兵器を艦艇に搭載する

HPM, High-Energy Lasers To Arm U.S. Warships aviationweek.com Apr 12, 201 米海軍は指向エネルギー兵器を火砲と併用してこれまでよりも効果的な艦船防御を実現する。  今後の計画では高出力マイクロウェーブ(HPM)で対電子攻撃あるいは高エネルギーレーザーへの対抗手段とする構想だ。標的には敵の防空手段や対艦巡航ミサイルが想定されている。そのほかのオプションはHPM装備を無人機や小型ミサイルに搭載する。実現の鍵となるのは主要部品の小型化が今後どれだけ進展するかだ。  期間15ヶ月で出力10kwのレーザーを艦上のMk83砲(25mm)に搭載する。この併用でも人員一名で運用できる。レーザー光線の導波器は砲の左側に設置し、レーザー発生器は下部にある。レーザーは出力変換と冷却装置を含む。  Mk83の電気光学式、赤外線式射撃管制システムは10Km以内の標的に使用する。その後の照準は光学式に切り替わりレーザーの有効範囲は8Kmである。  「この距離でもボートに何人乗っているのか、武装しているのか、どんな武器をもっているのかがわかります」(メーカーBAE幹部)「その後は低出力で緑色レーザーで視力を着続けないモードに切り替え、3から4キロメートルで照射します」  情勢が敵対的にエスカレートすれば「弾薬、ロケット弾などに照準します。ゴムボートであれば確実に穴が開きます。」  効果が出るまでの照射時間は距離と材質により異なるが、2秒から数十分の一秒だ。照準装置によりレーザーは目標の3mm以内に命中する。  「10kwクラスのシステムですと将来はUAVも標的にすることができると思います」(同幹部)「さらに100kw超であれば対艦ミサイル、巡航ミサイルからの防衛に利用できるでしょう。まず初期段階の能力でも実際の艦に導して運用コンセプトを理解していただき、通常型の運動性兵器をどこまで補完できるのかを実感してもらおうという狙いです」  BAEシステムズは電子攻撃機能を付加したHPM兵装を構想している。正確な周波数の幅を選べばHPMは電子攻撃手段となり、敵の小舟艇のエンジンをかなりの距離から停止させることができる 。  HPMには精度があまり必要ない。HPMを一度照射すれば10隻から30隻のボートを目標にでき、そのうちの50%から75%のエンジンを停止させれば、残りはレーザーあるいは運動性兵器(火砲)で片付けることになろう。

MDA ミサイル早期警戒衛星の新しい方向性

MDA Drops Target-Acquisition From Next Sats
aviationweek.com Apr 14, 2011

コロラド・スプリングス発 米国ミサイル防衛庁(MDA)は目標捕捉センサーを今後開発する新型ミサイル追跡衛星に搭載しない予定。これはシステムの合理化および予算節約のため。
次世代宇宙配備ミサイル追跡システムは現在実証中のノースロップグラマン製宇宙追跡監視システム(STSS)よりも簡易な構成になるとMDAは説明している。
今回の決定はジョンズホプキンス大学応用物理研究所(APL)の提言を受けた形で、APLはこれから開発する精密追跡宇宙システム(PTSS)の設計開発で中心的な存在。
軌道上のノースロップグラマン衛星は二機で以前あった宇宙配備赤外線低軌道探知システムから生まれたもので、目標捕捉および追跡用の各センサーを搭載している。この二つで弾道ミサイルの発射を「誕生から死まで」探知する能力を実証済みだ。捕捉センサーはミサイルの高温排気を探知する設計で、追跡センサーは弾道飛行の中間段階で低温の弾道先端部を追跡することができる。
PTSSにMDAは目標捕捉センサーを搭載し、追跡能力だけの衛星とする設計を採用する。この理由は衛星の構造を簡略化し、リスク低減と製造費用の節約となるためだ。
PTSSではセンサーの操作制御にネットワーク機能が加わる。STSSでは衛星搭載の目標捕捉センサーにより自動的に探査を開始するところが、PTSSは静止軌道上のミサイル警戒衛星からの信号により目標の探査を開始するのだろう。STSS衛星も今後のPTSS衛星もともに低軌道周回衛星である。
今回の仕様は一部業界関係者には驚きを持って受け止められた。ペンタゴンはコスト節減の意味ではむしろ既存衛星の設計をもとにSTSS宇宙機を調達するとみられていたためだ。
今回の決定でノースロップグラマンによるSTSS衛星の安易なコピー版売り込みの方向性は否定されることになる。
APLの調査研究で最終仕様が決まることになるが、3月にMDAはAPLとともにPTSSのシステム要求内容検討を行なっている。
APLから6社に再委託契約が示され、最終設計の内容を構成することになるが、調達・生産計画は未確定だ。この6社とはロッキード・マーティンボーイング、ノースロップグラマン、レイセオン、ボールエアロスペース、オービタルサイエンシズの各社。.
最終的にMDAが期待するのは9機ないし12機の衛星調達契約を2014年度予算で取り交わすことだ。PTSS予算で2012年度予算に要求しているのは今後5年分で12億ドルほど。

2011年4月12日火曜日

米空軍新型爆撃機の開発状況は秘密に覆われています

USAF Bomber Gets Tight Numbers
aviationweek.com Apr 11, 2011

秘匿性と遅延が米空軍の新型爆撃機開発で合言葉になってきた。予算は大幅に支出しているのだが、新型爆撃機が実戦化となるのは2020年代半ばより早くなる可能性はないと空軍は見ている。ペンタゴンでは同計画は極秘扱いであり、有人型となる選択肢もあり核兵器運用能力もある、とだけ説明があるだけだ。

ゲイツ国防長官が明らかにしたのは同機調達数が80から100機になり、一機5億ドルという二つの数字だけだ。長官はB-2 と同じ機体は望まれていない、と空軍高官が最近漏らしている。
計画の長期化でリスク回避と共用打撃戦闘機JSFの開発が遅れていることから予算の肥大化を防ぐ効果が期待される。年間予算は2016年まで平均10億ドルを下回る規模と予測される。その年になるとJSF予算が減少する見込みだ。
技術面でひとつ確実に開発が進んでいる要素は極度低視認性(ELO)と前例のない空力特性の組み合わせだ。この技術は新型爆撃機以外に開発中の長距離攻撃兵器体系二機種にも応用される。ひとつが電子攻撃(AEA)に特化した無人機であり、もうひとつが長距離侵攻型情報収集監視偵察(ISR)任務のUAVだ。
このうちELO特性の機体でジャミングを行うAEAはステルス性を補助する重要な要素だ。ネットワーク機能でレーダーでステルス機を探知する能力が向上しているが、これをジャミングで妨害することができる。将来はELO機が探知されないように妨害することが期待される。当面はこの機能はロッキード・マーティンRQ-170センティネルUAVで実現する。.
侵攻型ISR機には長距離飛行能力とELOの組み合わせが必要で、これが2007年から2008年にノースロップグラマンに交付されたアクセス制限プログラム(SAP)の最終形であろう。ここで重要なのが後退翼で薄膜気流をどう維持するかという要素だ。これにより全翼機型UAVで連続32時間の監視飛行が可能となるとノースロップグラマン技術レポートが解説している。
このSAPが実現するのであれば、空軍があえてグローバルホークのブロック40調達を拡大しようとしていないかの説明がつく。
侵攻型長距離ISR機は将来の長距離攻撃兵力に目標補足能力を提供するのでなくてはならない存在だ。今後配備されるのはグローバルストライクミサイル(亜音速巡航ミサイルで航空機、潜水艦から発射可能)あるいは極超音速ミサイルだろう。逆に見ると米空軍が焦点を当てる新型爆撃機の性能を狭めることで以前の次世代爆撃機(NGB)のミッション追加による費用上昇問題の再発を防止できる。
具体的には新型爆撃機はNGBよりも機体寸法は小さくなるだろう。機体を大きくして補足されやすくする必要はないし、機体に装着するセンサー類も長距離探知かつ同時捕捉能力を省いて開口面積を小さくできる。総合すると新型爆撃機は現行のB-2の半分程度の機体となるだろう。
さらに空軍が新型爆撃機に織り込もうとする新技術にAdvent(適応性多様性エンジン技術)とHeete(高効率組み込み式ターボファンエンジン)がある。このうち後者は巡航飛行での効率性の実現と指向性エネルギー兵器用の電力供給を目的にしており、現在の低視認性亜音速エンジンよりも燃料消費効率を35%向上しようというもの。
新型爆撃機のR&D費用を押し上げる要因がSAPのステータスとなっていることで関係する人員はすべて事前身元調査の対象であり、情報は細分化されていることで効率性は犠牲になっている。計算上はSAP区分となっていることでコストは2割増しとなる。
そうする理由はELO技術の機微性にあり、米国が歴史上もっとも大規模かつ成功している諜報活動の対象となっているためである。その背景に中国の存在があるのは言うまでもない。

2011年4月10日日曜日

エアシーバトル構想の対象は中国だ

AirSea Battle Concept Is Focused On China
aviationweek.com Apr 8, 2011

ゲイツ国防長官はそれを21世紀のアメリカの軍事抑止力を形成するものと表現している。海軍作戦部長はそれによりパラダイムが変わると発言している。
1. ここで話題になっているのは新しいエアシーバトル構想AirSea Battle conceptであり、空軍、海軍関係者が具体化しようとしているもの。
2. 米空軍、海軍双方が長期計画では中国に焦点を当てているのは公然の秘密だ。そこに進行中の技術革新が加わる。例えば無人戦闘航空機システム(UCAS)があるが、予算問題のため研究開発にくわえ調達まで制約がある中、中国の脅威に対抗するために新兵器の開発が急速に進むとは見られていない。そこで台頭するエアーシーバトル構想では既存体系を方向性を変えて使用し、ネットワークの活用で敵の侵入を阻止する・地域確保(A2/AD)環境下で作戦に制約がつかないことを確保する方策を求める。
3. 戦略予算評価センター(CSBA、本部ワシントン)がこのエアシーバトル構想についてより詳しい解説をしている。このCSBAでかつてアナリストをしていたロバート・ワークは海軍次官であり、他にも現政権で重要な役職につくアナリストが多い。同センターの報告書では「エアシーバトルは軍事作戦の指導原則だが、それだけでは戦闘に勝利することはできないし、そう理解されるべきではない。また、特定のシナリオとして例えば台湾の防衛の目的で利用されるべきでもない。むしろ、西太平洋地域における通常兵力のバランスを受け入れられる形に維持するための軍事作戦の条件を設定することに利用されるべき構想である」としている。
4. つまり中国との戦闘を想定しているのではなく、太平洋の西側における安定性を維持するための軍事バランスを維持するのを目的としている。これは中国の成長発展に対応するとともに中国の戦略・政策意図に透明性が欠如していることにも対応するものだ。ではCSBAはエアシーにどんな具体的内容を想定しているのか。
5. ● 空軍による宇宙空間作戦で中国人民解放軍(PLA)の宇宙配備海洋偵察衛星システムを利用不可能とする。また同システムにより対艦弾道ミサイルの照準設定を不可能とする。この目的で空軍がX-37B軌道上実験機を開発しているのかは不明だが、ヘリテージ財団によると中国国内では同機への懸念が広がっているという。
6. ●空軍のジョイントスターズ(共用監視目標攻撃レーダーシステム)機が1月にネットワーク活用兵器体系の実証実験に成功したとの発表があった。そこでは移動する艦艇を同機が追跡し、AGM-154C滑空爆弾がボーイングF/A-18E/Fから投下され同艦に命中している。
7. ● 海軍のイージス艦に弾道ミサイル防衛(BMD)機能を与えることで米空軍の先方配備基地に対空防衛を提供することができる。海上配備のBMD任務により米海軍の艦隊構成も変化し、DDG-1000クラスの開発よりもBMDに特化した既存バーク級駆逐艦の配備を優先することになる。
8. ●長距離侵攻による攻撃でPLAの地上配備長距離海上偵察能力(例 水平線の先を監視するレーダー)や対艦ミサイル基地を破壊する。あわせて潜水艦からの攻撃でPLAの統合防空システムを破壊し、空軍による攻撃に道を開く。


コメント AirSea Battleとは海軍と空軍の統合運用で既存兵力を有効に使おうということのようですね。それにしても内容は中国には大変刺激的なもののようです。その狙いは抑止力とともに中国の方向転換を狙おうというものではないでしょうか。当然、ここまで公開しているということは中国も対応策を作ることを想定しているということなので、ここでは公開できない内容が別にあるのでしょう。

2011年3月29日火曜日

危険が隠れるリビア航空作戦の実情

Libya Has Advanced Russian SAMs
aviationweek.com Mar 28, 2011


リビアに飛行禁止区域を設定することは国連安全保障委員会決議第1793号の実施としてさほど困難な課題とは当初見られていなかったが、実は軍事上、政治上大きな危険をはらんでいる。

1. リビアが秘密のうちに高性能地対空ミサイル(SAM)を配備してたことが判明している。SA-24NATOコード名グリンチである。この存在により各国部隊は航空作戦の実施にむけて電子戦能力をフルに活用することが求められている。またこのミサイルは低空を飛行する救難、医療等の同国再建ミッションがはじまると大きな脅威となる。また同ミサイルが武器闇市場に流れてリビアへの外国勢力の関与を好ましく思わない勢力の手に落ちる可能性もある。
2. 同ミサイルには妨害を排除する能力があるといわれ、その存在自体が米国および各国の軍事アナリストを驚かしている。国連武器登録はじめ公式にはリビアに SA-24の売却はないということになっていたため。開戦当初からテレビ画面でSA-24の画像が流れていたが、これまで情報機関は公式にその存在を確認していなかった
3. SA-24またはイグラSはSA-18グラウズまたはイグラの改良型で性能、破壊力、妨害対抗能力ともに改良されている。有効射程距離は6000メートルで最大高度3,500メートルといわれる。
4. SA-24が携帯対空ミサイルとして利用されている可能性あるいは統合防空システムの一部となっている可能性があるが、同ミサイルが実際にどれだけ柔軟な運用が可能かは判明していない。
5. これに対してペンタゴンはEA-18Gグラウラーをリビアに投入した。イタリアもレーダー探知能力を持つトーネードECRを運用している。
6. まだ残っている長距離SAMはレーダー誘導式のSA-6(高度7Kmまで有効)とSA-8(同5Km)だが、携帯式SAMはまだ相当数残っていると見られる。レーダー誘導能力、データリンク、通信能力は電子攻撃により低下しており、ジャミングとサイバー攻撃が展開されていると米国関係者は明かしている。そうなると有視界方式誘導兵器、赤外線誘導兵器が今後の脅威として残る。その中でも赤外線誘導のSA-24が最大の脅威となる。
7. 電子攻撃と情報戦は海軍のグラウラーが担当しており、空軍もEC-130 コンパスコールとRC-135リベットジョイントを投入中。またEP-3と改造型P-3も加わっており、EC-130Jコマンドがメディア向け放送他情報作戦を実施中。英国も高性能情報収集用機材センチネルR1地上偵察機、ニムロッドR1情報収集機を派遣している。各機の活動によりリビアのSA-2ガイドライン、SA-3ゴア、SA-9ガモンといったSAMの配備場所を把握し、160発のトマホーク巡航ミサイル、数発のストームシャドー巡航ミサイルに精密目標データを提供した。米関係者は固定式陣地への攻撃は成功と評価し、英空軍はリビアの航空勢力は事実上崩壊したと見ている。
8. 携帯型SAMの販売譲渡は本来国連の武器台帳に登録されるべきだが、実際はそうなっておらず、報告の欠如は国際法上も違法行為ではない。
9. 写真でミサイルの存在が明らかになったことで、問題はだれがいつリビアに販売したのかという点だ。SA-24がテロリストや闇市場に流出することも懸念される。
10. 攻撃が一段落した後の政治的な微調整も必要だ。フランスと英国は国連の枠組みを通じて飛行禁止区域の設定を求めたが、フランスはベンガジ近くの攻撃で戦端を切ったものの物資輸送は米国が大部分実施した。フランスは再度国際共同体制に復帰し主導権を握る動きを示している。ドイツは後方支援に徹し、NATOの武器禁輸実施には参加していない。カタールのミラージュ2000は先週から運用開始になった。今回の作戦で長期間にわたる行動をとる際に各国間のひずみがあることが露呈している。
11. 攻撃にはB-2爆撃機(ミズーリ州ホワイトマン基地所属第509爆撃飛行隊)、F-15E(レイクンヒース英空軍基地より第492および494戦闘飛行隊)、F-16CJワイルドウィーゼル(ドイツ・スパンダーレム基地480戦闘飛行隊)が参加。
12. 英国は潜水艦発射トマホーク巡航ミサイルとトーネードGR4からストームシャドー巡航ミサイルを発射して戦闘に加わった。その後、トーネードはペイブウェイ IVレーザーGPS誘導爆弾とブリムストーン 兵装に切り替え直接攻撃に従事。またラプター偵察ポッドも使用。またユーロファイター・タイフーンが初の実戦参加をしている。
13. フランスはミラージュ2000とラファールを運用。また、シャルル・ドゴール原子力空母から偵察飛行と飛行禁止措置の実施に航空機を発進させている。フランス軍機はスカルプEG巡航ミサイル、AASM空対地モジュラー兵器とGBU-12精密誘導爆弾を搭載。そのほかの同盟国も参画方法を模索中でノルウェー、オランダはそれぞれ自軍のF-16 を待機させており、カナダとスペインはそれぞれF-18を参加させる。スウェーデンもJAS39グリペンを6機ないし8機投入する可能性がある。
14. これまで同盟国側機材で唯一喪失となったのはF-15Eで飛行中に機材のトラブルが発生したもの。パイロットと兵装システム士官は救出されている。リビア空軍を脱落したMiG-23が一機ベンガジ郊外で撃墜されたが、これは味方の対空砲火によるもの。このほかリビア空軍のG-2ガレグ練習機が撃墜されている。

2011年3月28日月曜日

強化される米陸軍無人機のセンサー性能

More Eyes For Army UAVs




aviationweek.com Mar 25, 2011

1. 米陸軍はジェネラルアトミックスのMQ-1Cグレイイーグル無人機を今春にテスト機とし、搭載する多機能センサーを地上要員または別機の搭乗員から操作可能かを試す。
2. トライクロップスTriclopsの名称のこのシステムにはセンサーを左右の主翼下部に追加している。これにあわせて機体にセンサーが搭載されているので三つになる。トライクロップスはすs出に実験室では作動が確認されているが、実際の飛行でも効果が証明されると、陸軍は早ければ12月にも同機をアフガニスタンに投入し実戦環境でテストする。
3. トライクロップスの中核部分は送受信兼用のデータリンクソフトウェアで、Kutta Tech(本社フェニックス)が開発した地上歩兵あるいは機内搭乗員にビデオ端末One System Remote Video Terminal (OSRVT)により無人機のセンサーを操作するとともに、電気光学あるいは赤外線カメラやレーザー照準機も操作し、自動飛行制御で無人機の飛行も継続させられるもの。現状のOSRVTは受信だけのシステムでUAVからのビデオ信号をモニターするものだが、搭載するセンサーの操作はできない。これに対し送受信兼用ビデオ端末では特殊形式のケーブルとアンテナが必要でグラフィックユーザーインターフェースにより操作者はタッチスクリーンで任意の方向にセンサーを向けることができる。地上ステーションからなら搭載するセンサー三つを同時に制御できる。
4. 追加のセンサーは左右の主翼中央部の強化部分に搭載される。テスト用のトライクロップスにはレイセオンのAN/AAS-53共用センサーペイロードが使われる。MQ-1Cは陸軍が少数機をイラク、アフガニスタンでこれまで運用している。
5. トライクロップスの運用成績がアフガニスタンで効果的と認められると、次に同じシステムを陸軍が運用する無人機三形式に搭載するアンがある。MQ-1C、中高度を飛行するMQ-5Bハンター(ノースロップグラマン製)、RQ-7Bシャドー(AAI製)だ。グレイイーグルの飛行高度は15千から20千フィートだが、ハンターは8千から10フィートで、シャドーは6千から8千フィートであり、それぞれフルモーションのビデオ情報を得ることができる。
6. トライクロップスの飛行テストはまずジェネラルアトミックスの社有施設で開始され、陸軍も有人機無人機の組み合わせ運用の効率性を検証してからアフ、ガニスタンに送付する予定だ。陸軍は有人無人システム統合能力 Manned/Unmanned System Integration Capability (Music)演習を9月に予定しており、AH-64DアパッチブロックIII攻撃ヘリからグレイイーグルを操作する。
7. Music ではあわせて統合地上コントロールステーションUniversal Ground Control Station (UGCS)の実証を行い、シャドー、ハンター、グレイイーグルの各型を同じオペレーターで操作できることを確認する。UGCSの実戦配備は2012年を目標にしており、2016年までに陸軍のUAV各型操作装備の標準形となる。Music演習に参加する地上兵士にはハンドヘルド型のUGCSの操作実証を担当する予定だ。
8. 米陸軍の無人機担当部門がトライクロップスの飛行実証にこぎつけたのは記録的な短時間のほぼ一年で、これが可能だったのは各メーカーが自社資金を投入してきたためだ。
(写真は上からMQ-1Cグレイイーグル、MQ-5Bハンター、RQ-7Bシャドー)

2011年3月27日日曜日

バイオ燃料でF-22スーパークルーズに成功

(米空軍の広報資料からのニュースです)

3/23/2011 - EDWARDS AIR FORCE BASE, Calif. (AFNS) -.


F-22ラプターが合成燃料(カメリナ抽出)と従来型燃料の混合燃料(混合比50/50)で3月18日にスーパークルーズ飛行に成功した。411戦闘試験飛行隊が実施した。空軍はF-22を先行事例として選び、今後戦闘機角型にバイオ燃料の使用を広げる。

今回のテストの大きな目標はバイオ燃料がF-22の兵装システムに適合しているかの確認であった。飛行の各段階で操作性、性能等を点検した。

テストに使用されたF-22は高度4万フィートでのスーパークルーズでマッハ1.5に達している。
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空軍の目標は2016年に航空燃料需要の50%を代替燃料とすることで、その原料を国内調達に頼ることとしている。

カメリナ抽出の合成燃料はHRJと呼ばれる水素処理再生可能ジェット燃料と分類される。HRJは各種植物油あるいは動物脂肪から生成される。

戦闘機以外では2月にC-17グローブマスターIIIがHRJバイオ燃料による無制限の飛行運用を空軍が認証している。

2011年3月21日月曜日

日本上空のグローバルホーク・U-2が震災被害の情報提供に活躍中

Guam Global Hawks Surveying Earthquake Damage
aviationweek. com Mar 18, 2011

1. 東北・関東大震災後の被害状況把握のため画像情報収集ミッションに投入されているのは米空軍のグローバルホークでも新型のブロック30が2機である。
2. グローバルホーク海外運用の地区は通算4つとなった。太平洋、イラク・アフガニスタン、欧州およびメキシコ・南米だ。さらにリビア情勢の情報収集にイタリアのシニョレラ海軍航空基地にもブロック30の部隊を投入する交渉が進行中だ。
3. 日本上空で運用中の二機はアンダーセン空軍基地(グアム)を基地としており、烏山基地(韓国)~飛行するU-2とあわせて飛行している。
4. 飛行中の機体はブロック30Iが正しい名称で、高性能合成センサー装置(EISS)を装備し、地表の広範囲な情報を集めることができる。画像情報はデジタル送信され処理される。U-2は光学カメラを搭載し、高画像広範囲の地表画像を撮影できる。ただし、カメラはフィルム式で、現像処理にはビール空軍基地(カリフォルニア州)へ送付した後に解析される。
5. 各機の投入で地震津波被害の様相以外に福島第一原発の危機進行状況の把握にも役立つ。
6. グローバルホークのEISSが同発電所の赤外線画像を撮影し、地上の作業部隊に原子炉付近で高温の箇所を示している。グローバルホークの飛行高度は放射性物質が浮遊する空中よりも相当の距離があるが、万一機体が汚染された場合に備え空軍には除染作業を準備している。
7. アリダフラ航空基地(アラブ首長国連邦)で運用中のグローバルホークは高高度飛行によりイラク、アフガニスタンを中心にこれまで10年近く支援を提供している。空軍向けブロック10が3機、海軍のブロック10は単独機だが海洋監視ソフトを搭載、ブロック20の2機には戦場空中通信ノード送信機能が付いている。
8. 海外運用の頻度が増していることから、空軍はブロック20/30機の初期作戦能力テスト・評価の完了に向けた努力を続けており、昨年発生したコスト上昇による遅れを取り戻そうとしている。

2011年3月20日日曜日

グローバルホークはBAMSへ進化する 米海軍の配備案明らかに

U.S. Navy Details Basing Plans For BAMS


aviationweek.com Mar 14, 2011

米海軍は広域海洋監視(BAMS)仕様の無人機(UAS)の初期作戦能力獲得を2015年遅くまでに実現し、ペルシャ湾に配備する見込みだ。

1. BAMSは第五艦隊に配備する、とディシュマン海軍大佐(BAMS計画主任)は語る。
2. 第五艦隊司令部はバーレンにあるが、米海軍は周辺諸国にUAS配備の交渉をしている。アデン湾で海賊問題が今後も続くと、UASの運用も想定される。
3. 中東以外には米本土西海岸、東海岸にそれぞれ配備される他、シシリーとグアムが想定されている。グアムからは米空軍がグローバルホークを運用中だ。イタリア政府はシシリーの使用を了承していると同大佐は語る。
4. BAMS-UASはグアムからアジア太平洋地区をカバーする航続距離があるが、経済運行の視点からは600ないし900海里の半径での運用が望ましいという。
5. 海外購入者がグアム基地を利用できるのか、という問いに同大佐は「もちろんだ。同盟国が米海軍の補完をしてくれるなら、米海軍施設の利用は可能。」と答えている。
6. アジア太平洋でBAMS導入の可能性が最も高いのはオーストラリア。同国はBAMS共同開発に参画したものの途中で脱退している。米海軍はオーストラリアとデータ交換協定を結んでいる。
7. 業界関係者によると日本はグローバルホークを購入してからBAMSを導入すると見られている。海上自衛隊は目下のところ川崎P-1国産海洋哨戒機の配備に中心をおいている。
8. オーストラリアについてディシュマン大佐はノースロップグラマンの製造能力と米海軍の要求機数からみて海外向けの機体の生産開始は2015年以降となりそう。オーストラリアが早期に機体取得を希望するのなら決定を早くしてほしい、と同大佐は話す。

2011年3月13日日曜日

韓国もグローバルホーク導入へ

South Korea To Buy Global Hawk
aviationweek.com Mar 11, 2011

韓国は米国よりグローバルホーク導入の合意を得た。

1. 購入契約締結は早ければ今年中に実施となり、合計4機となる。グローバルホークが購入を許可されるのはブロック30Iバージョンで電子光学赤外線システムを追加されている。
2. 韓国は信号情報傍受機能も希望しているが、米国は空中情報収集ペイロードの販売には慎重で今回の選定には入っていない。
3. 一号機引渡しは2014年の予定で、売却契約の通知はまもなく議会に報告される。
4. グローバルホークの導入に関心のあるアジア各国は韓国以外に日本とシンガポールがある。またドイツ空軍の信号情報収集仕様に応じたグローバルホークが開発中だ。それとは別にNATOはブロック40に次世代空中地上監視センサーの搭載を決めた。ただしグローバルホークの航続距離・ペイロード(3,000ポンド近くと言われる)はミサイル技術制限取扱枠(MTCR)の制約対象。
5. 米国務省は韓国向けにはMTCRによる制限適用を免除することにした。米空軍は販売条件等の詳細を詰めているが、売却価格はまだ決まっていない。
6. 米空軍は同機を画像収集、信号情報収集、地上監視目的に導入している。米海軍は海洋監視任務用に同機改修型を開発中、オーストラリアは同機に関心をもつものの高価格がネックだ。

2011年3月10日木曜日

無人機間の空中給油の実現が迫る

Northrop Simulates Global Hawk Aerial Refueling
aviationweek.com Mar 9, 2011

ノースロップ・グラマンは無人機の自動空中給油シミュレーション実験に成功した。スケールドコンポジッツScaled CompositesのプロテウスとNASA所有のRQ-4グローバルホークが実験に参加した。

1. プロテウスは有人操縦で飛行高度45千フィートで給油機をシミュレートし、グローバルホーク(無人機)から40フィート以内を飛行した。今回の実験は国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)が2012年春に実施予定のKQ-X無人高高度空中給油実証実験に必要なデータを収集し次回実験のリスクを軽減することが目的。
2. 次回実証実験ではNASAのグローバルホーク2機を使用し、ブーム方式の給油機からドローグ方式の機体への空中給油を行う。給油機が後方を飛行する形で通常の空中給油とは逆の形になる。
3. 今回の実験は1月に実施され、二機の間で発生するタービュランスの実態を把握し、エンジン作動状態や飛行制御の反応を高高度で確認することが目的だった。
4. プロテウス・グローバル・ホーク間の近接飛行の様子はAres防衛技術ブログでご覧になれます。 Proteus and Global Hawk Simulate HALE Refueling.

2011年3月9日水曜日

リビア飛行禁止区域にF-22が投入される可能性

F-22s Could Be Assigned To Libyan Operation
aviatonweek.com Mar 8, 2011
ペンタゴンはリビアに飛行禁止区域の設定を検討しており、F-22ラプターが始めて実戦投入される可能性がある

1. 実現には国連とNATOの支持が前提だが、相当規模の防空網を相手にする作戦となる。
2. 想定ではロッキード・マーティンのF-22,F-16CJワイルド・ウィーゼル機、他にサイバー作戦機でリビア防空網を機能停止に追い込む。リビアの頼みの綱はロシア製SA-6地対空ミサイル(SAM)のみといってよい。その他装備弾薬はNATO軍がセルビアで遭遇したものに類似しているが、当時はF- 117一機が戦闘行動中に喪失している。
3. SA-6ゲインフルがリビアで最高性能のSAMであるが、他にSA-2ガイドライン、SA-3ゴア、SA-5ガモンが装備されている。
4. 空母が現在地中海西部に移動中だが、アフガニスタンの作戦行動のためリビア上空の飛行禁止区域の維持を継続できないため、任務には空軍の投入がふさわしい。
5. 作戦基地の確保が問題となる。イタリア国内の基地利用が望ましいとされており、同国もリビア国内の原油へのアクセス確保の視点から基地利用を認める可能性が高い。
6. ただし最悪のシナリオはNATOが飛行禁止区域の設定に反対し、米軍機がエジプトからの飛行を余儀なくされる場合だ。リビア反乱勢力が確保している地区からの発進は想定されていないのは安全性を疑問視しているため。
7. 「米空軍はリビア作戦の実施には十分な戦力があり、F-22やF-16 CJには完璧なシナリオになるでしょう。空軍の基本任務は相手国の高性能防空組織を破壊し、空軍基地を攻撃し使用不可能にすることであり、レーダー信号を発信する施設を破壊し、相手国領空上から障害を除去することです。作戦開始後24時間から48時間で飛行禁止区域の確立が可能です。」(空軍ベテランパイロット)
8. 大型機材として空中給油機、ノースロップグラマンE-8ジョイントスターズやボーイングE-3AWACSはオマン、チュニジアあるいはカタールからの運行をするだろう。
9. SAMのためにレーダーを作動させたり、コンピュータへのジャミングの動きがあればサイバー作戦が実施される。他に通信施設が攻撃対象となる。特に初期段階でF-22の投入が必要とされるだろう。
10. ゲイツ国防長官も飛行禁止区域の設定を検討中と認めており、その他の選択肢とともにペンタゴンが近日中にホワイトハウスに説明をする。
11. マレン統合参謀本部議長は関連地域7カ国の視察を完了しており、関係各位の意見を聴取したと見られる。
12. 「各種のオプションを検討中であり、人道援助や避難作戦以外の選択肢は内容が複雑になります。仮に投入装備を追加すると、その結果アフガニスタン、ペルシア湾への影響はどうなり、また関連地区の同盟各国への影響はどうなるかを検討する必要があります。」(同議長)

2011年3月5日土曜日

ボーイング提示価格はEADSより10%低かった

Boeing KC-X Price Was 10 Percent Under EADS
aviationweek.com Mar 4, 2011

KC-X提案競争に敗れたEADSノースアメリカだが、選定結果に異議を唱えないこととした。今回の選定では価格差が大きな理由で、EADS提示価格はボーイングよりも10%高かったことが判明した。

1. EADSノースアメリカのクロスビー会長は選定に漏れたことは「残念な結果」としながら空軍によるKC-X選定手順は「ルール通りに行われた」とし、選定結果までの過程を「ていねいに」実施したと発言。
2. 同社がKC-X提案競争に支出した金額は45百万ドルにのぼり、2008年には一度は当時の提携先ノースロップ・グラマンとともに採択されたものの、選定結果は政府監査部門が不適切な手順があったとしたため無効にされている。その際はボーイングによる異議が提出されている。
3. ペンタゴンはボーイングKC-46A選定手順は近年では最長期間になったと発表。EADSは選定後に空軍の説明をうけた。同社は3月7日までなら異議を提出できる。
4. ボーイング提示価格は206億ドルでEADSは226億ドルだったと空軍が説明時に資料で明らかにしている。この金額はKC-135後継機を179機開発、製造する費用だ。さらに350億ドルが契約総額で40年間運用の運行、保守点検費用も含むもの。
5. クロスビー会長はボーイング提案から独自に提示価格を推定したという。そしてボーイングが小型の767基本設計を採用したことによる経済効果を5億ドル相当と見る。
6. 一方、空軍の検討結果はEADS案の提示する多様な運用シナリオによる経済効果を8億ドルとしていた。
7. クロスビー会長はボーイング案採択を祝う一方、契約上は固定価格で納入することがボーイングに可能か疑問を呈する。
8. ボーイングは開発と製造を並行して実施する予定で、KC-46Aの初飛行は2015年とし、初期ロットの18機納入は2017年までになるとしている。

2011年3月4日金曜日

X-37B二号機打ち上げは3月4日

Second X-37B Set To Launch March 4
aviationweek.com Mar 2, 2011

米空軍のOTV(軌道試験機)一号機が224日間に及ぶ無人宇宙飛行から帰還して三ヶ月が経過して、二番機の打ち上げが3月4日予定で準備が進んでいる。

1. OTV-2は前回と同じアトラスVブースターによりケイプカナベラル空軍基地より打ち上げとなる。打ち上げは東部標準時午後3時39分から2時間の間になる。
2. 同機はX-37Bとも呼称され宇宙空間での活動は秘密事項になっているが、搭載するペイロードについても公開されていない。二機を組み立てたのはボーイングのファントムワークスで、外形はスペースシャトルに似ている。低コストかつ短期間で再打ち上げが可能となる宇宙機の技術実証がその目的とみられ、同時に将来の衛星に組み込まれる装置の軌道上試験も行うもの。
3. 空軍は本誌に対し、「軌道に乗ればX-37Bは技術成熟化、宇宙空間からの情報収集、偵察、軌道上補修活動、衛星発射あるいは回収、軌道上のデブリ回収等の多目的に利用されます」と電子メールで回答している。
4. 同機は有翼構造で全長29フィート、全幅14フィートで最大290日間軌道にとどまることが出来る設計だ。OTV-1は帰還時に良好な状態であったことから、OTV-2打ち上げには改良点は最小となっている。
5. OTV-1の再打ち上げ予定は未定。
6. 「OTV- 1帰還が12月でOTV-2打ち上げが3月と間隔が短く、OTV-2打ち上げに際してはOTV-1の大気圏再突入及び着陸時のデータを短時間で検討し、同機の外観の点検を済ませています。今後の低コスト最打ち上げサイクルの確立のためにOTV-2打ち上げ後により詳細な検討を行います」(米空軍)
7. 「OTV- 2はOTV-1の軌道飛行実証の結果をもとに打ち上げられ、X-37Bの性能限界を広げる効果が期待されています。今回の二回目打ち上げにより低価格再利用可能宇宙機に必要な技術要素の微調整ならびに運用コンセプトの開発が進みます」(米空軍) そのためOTV-2は-1よりも長期間の軌道上飛行をするものとみられる。
8. OTV-2の改良点は最小ということになっているが、OTV-1の12月着陸時にタイヤがパンクしたことから空気圧を約15%減らしている。
9. また、前回実証済みの飛行制御及び自動着陸のアルゴリズム能力により着陸時の風向き制限が減っていると、空軍は説明している。
10. なお、X-37Bの統括は空軍Rapid Capabilities Office(短時間で能力を開発する部局)である。

2011年2月26日土曜日

KC-46A ボーイングがKC-Xの勝者へ

Boeing The Clear Winner Of KC-X: Pentagon
aviationweek.com Feb 25, 2011



米空軍はKC-X次期空中給油機のボーイング案を採択し、767を基本とする同社提案機体はKC-46Aの呼称になった。
1. EADS案の大型のA330派生型のKC-45Aは以前の入札で選定されていたものの、今回は選に漏れた。空軍がボーイング案採択を発表したのは24日午後5時(東部標準時)。
2. 価格差が1%以内の場合は仕様で求められていない追加性能を評価する手はずであったが、価格差がこれを上回っていたため追加性能は選定の基準にならなかったとドンレー空軍長官が説明している。
3. 選定過程では各社提示の価格を生涯運用コストで再計算しており、小型の767が消費する燃料合計が少ないことが決定的になっている。
4. ボーイングに交付される契約は2017年までに第一期分18機を総額35億ドル固定価格で納入するもの。ノースロップ・グラマン/EADSコンソーシアムが2008年に一旦落札した際の同様の契約では総額15億ドルだった。
5. 空軍はKC-Xの再度やり直しを2010年7月から始め、仕様書は選定基準を明確にし、入札社の財務負担を軽減する内容に改定された。これは初回の入札で敗者から出た抗議を配慮しこの再現を回避する意図で行われた。
6. これに対しボーイングは当初の競争に敗れた後にアプローチを終始し、767各型の要素を組み合わせた機体の開発案を取り下げ、767-200にKC-10の改良型給油ブームと787コックピットを組み合わせた「NewGen」(新世代)給油機案を提案した。同社によれば当初案よりも価格は下げたという。
7. 一方EADSノースアメリカは一度は採用となったKC-45案のまま、ノースロップが脱退したあと単体で競合に臨み、空軍の仕様書が「明らかに小型機に有利」と批判しながら、今回の入札では提示価格を引き下げている。
8. 前回の入札では敗者からの抗議に遭遇し、しかも空軍の選定過程に批判も集まったことを意識し、ドンレー長官は合計7ヶ月に及ぶ選定作業で作業過程記録を更新したと強調する。入札各社は評価過程をよく理解し、今回は敗者による抗議や議会からの疑義の発生を回避できると同長官は見ている。
9. 上院軍事委員会の重鎮マケイン議員(共和、アリゾナ州)は「空軍には今回の選定理由を明確に説明することを期待したい」と発言しており、「その過程で一番合理的な価格で最高の性能の給油機が実現する」としている。

2011年2月20日日曜日

KC-X選定結果の発表が迫る

USAF KC-X Winner to Be Named Soon
aviationweek.com Feb 18, 2011

米空軍は次期空中給油機KC-Xの選定結果を来週にも発表する、と複数の業界、空軍関係者の情報から判明した。
2. 空軍は選にもれた提案者からの抗議が出ることは予想済みで、対応準備も進んでいると思われる。かれこれ10年近くになる空中給油機選定にはスキャンダル、抗議、選定結果の逆転、データ取り扱いの間違いにより競合他社の提案内容が相手にそれぞれ漏れるという直近の事態が発生している。
3. 「抗議が上がるのは織り込み済み。その対策に時間をかけ、選定過程を説明する文書も作成しています」(ドンレー空軍長官) 議会の会計検査院が連邦政府による入札関連の紛争発生時にはレフリーの役をする。
4. ボーイングが767、EADAがエアバスA330をそれぞれ基本とする案を提出済みだ。選定で大きな比重を占めるのは価格で、179機までの調達が始まると老朽化著しいKC-135と置き換わる。
5. ノースロップ・グラマン/EADS共同事業体が前回2008年の選定で勝ち抜いたが、ボーイングの抗議によりペンタゴンが契約締結を凍結し、再度選考を行うことになった経緯がある。ノースロップはEADSとの提携を昨年中止し、EADSは単独入札している。
6. ボーイングはEADSより価格で不利と判断しており、すでに落札失敗に備えているようだ。EADSが落札すると米国国防市場に大きな足場を築くことになる。なお、ヘリコプターでは同社すでに受注に成功している。
7. 選定結果は2月25日金曜日に最終決定される可能性がある。

2011年2月16日水曜日

F-X選定は次世代機国産開発の序章となる

Japan's Roadmap To An Indigenous Fighter
aviatonweek.com Feb 11, 2011

日本国内の航空宇宙産業界はFX選定を予定通り完了し、2028年まで生産を継続することを政府に求めており、海外3メーカーがこの需要をめぐって争うことになる。

1. さらに後継機種となる国産機の全面開発は2015年ないし2017年に開始するべきと日本航空宇宙産業工業会は提言している。ということは産業界は生産と開発の二つを長期プロジェクトとして同時並行で進める意向があることになり、これにより同国の戦闘機製造の産業基盤を維持する目的がうかがえる。三菱重工業はF-2最終機を今年引き渡す予定だ。
2. 業界にはロッキード・マーティンF-35をF-Xとして発注することを期待する動きがあるが、同機関連技術は米側がしっかりと管理している。その他候補にはユーロファイター・タイフーンとボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットがある。
3. F- Xの相当部分は国内生産となる見込みで、最終選考結果がどうなっても政府が工業会の提言を採択した場合、2014年生産開始し、2028年まで継続すれば、F-2の例で年間8機の生産数をそのままあてはめれば120機の生産規模になる。F-4改ファントムの代替としてのF-Xの発注数はこれまで50機程度とされてきた。
4. となると、次期F-X選定機は現有200機のF-15の一部も代替することになるのではないかと毎日新聞は見ている。
5. ファントムの退役は2015年に完了する見込みだが、F-X選定が決着しないとこの実現は困難になる。そこで航空宇宙工業会は退役を2018年に先送りになると見ている。その年までに一定数のF-X機が配備可能になるというのが根拠だ。タイフーンやスーパーほーネットならその年までにF-35よりも多くの機数を配備できる。
6. 同工業会はF-XはF-2生産終了から完全国産機の本格生産開始予想の2026年までの15年ギャップを埋める存在と見ており、国産機でも海外機でも構わないと見ている。政府がF-2追加発注をしない決定をしているため、結論はF-X導入しかない。
7. その後継機だが、i3技術を元に開発される見込みで、すでに高性能エンジンの研究は始まっている。また基礎研究は2017年まで継続される見込みで、一方ATD-Xステルス技術実証機は2014年から16年に初飛行する。
8. 3技術を導入した戦闘機の本格開発が2017年までに開始されると、これまで防衛省が想定していた2021年より相当の前倒しになる。
9. i3機の初飛行は2025年、実戦配備は2031年というのが工業会の案で、これを含むロードマップを2030年代までカバーして作成している。
10. 「国内開発生産体制は米国が技術を非公開にする場合に備えて維持する必要があります」とロードマップは説明している。間接的にF-XとしてF-22ラプターの購入に失敗した事実をさしている。
11. その他に今後決断を迫られる課題は二つあり、ひとつは米空軍の次世代戦術機(実戦化2030年)と日本の煮え切らない武器輸出三原則の取扱であり、防衛装備の国際開発への参画だ。
12. この二つにあわせて国産戦闘機開発の予算規模が相当のものになることから、i3により日本が米国のいわゆる第六世代戦闘機開発に貢献する可能性も出てくる。ただ米国が機密性の高いプロジェクトだけに国外からの支援を拒否すれば、日本は単独開発に進むことになるかもしれない。

2011年2月13日日曜日

SM-3ミサイル共同生産で決断を迫られる日本

MDA Pushes Japan On SM-3 IIA Production
aviationweek.com Feb 9, 2011
米ミサイル防衛庁(MDA)はSM-3ブロックIIA対弾道弾ミサイルの実戦配備目標2018年実現に向けて日米共同生産の計画の実現を日本に求めている。

1. オライリーMDA長官は仮に日本側と生産計画で合意が得られない場合は米側での生産を実現する準備が必要と発言。
2. 同長官は1月3日付け書簡で防衛省に対し

て同ミサイル生産の計画で決断すべき重大局面に来ており、日本政府による合意がない場合は米国としてレイセオンによる生産に踏み切ることになると伝えている。MDA関係者が同書簡が実際に日本に発信されたことを認めた。
3. SM-3ブロックIIAは射程距離画像化しており、SM-3ブロックIAとの比較では操作性が増しており、実戦配備が予定されているSM-3ブロックIBよりも優れている。この二つは直径14インチのブースターを使うのに対し、ブロックIIAは21インチである。
4. 日米両政府は共同開発で合意しているが、実戦配備を2018年に予定している関係から生産計画をまず決着させるのが急務だ。IIA開発の予算規模は20億ドルと見積もられ両国で負担する。
5. 三菱重工業は第二段、第三段、先頭部分の開発を担当している。レイセオンはペイロードと誘導装置を開発するというのが両国合意内容だ。
6. 両国でそれぞれの開発した範囲の部品製造をするのが理想で、日本が共同開発、資金負担をする際にこの原則が鍵となっている。
7. ブロックIIAの飛行試験は2014年度の予定とMDAは発表している。
8. 仮に米国内での生産が実現しても、両国は必要な部品供給を行い、それぞれの生産に必要な支援を行う。日本が設計した部品を米国に供給することが想定されている。
9. また、他国へのミサイル販売も検討されているとオライリー長官は明かす。「第三国への販売あるいは提供が保証されていないと、コスト上昇や生産能力の過小評価のリスクが増える」
10. SM-3ブロックIIAは海軍のMK41艦載垂直発射装置からの使用が想定されている。同装置を採用している各国海軍が販売対象となる。SM-3ブロックIIAは陸上配備も可能で、イランのミサイル脅威に対する欧州防衛体制の一部に組み込まれる見込みだ。

2011年2月5日土曜日

X-47B初飛行に成功 空母航空戦力の未来

Northrop UCAS-D Completes First Flight
aviationweek.com Feb 4, 2011

ノースロップ・グラマンのX-47B無人戦闘航空機システム(UCAS-D)実証機が2月4日エドワーズ空軍基地で初飛行に成功した。

1. 初飛行は離陸後29分に着陸して完了した。飛行高度は5,000フィート。機体制御システムのデータ収集が目標で同時に今回の初飛行が合計50回予定で年内にかけて実施される性能限界拡大テストの開始となる。当面は一週間一回のフライトで開始し、今年後半には週二回となる。
2. ノースロップと米海軍は昨年11月にタキシー試験と飛行開始前点検で合格判定を出している。
3. 飛行一号機AV-1は2008年12月に完成しているが、飛行開始が大幅に遅れていたのはエンジン関連の音響問題に加えソフトウェアで問題があらたに見つかったため。ジェネラルダイナミクス/マクダネルダグラスのA-12の開発が取り消しとなって以来海軍には同機が初のステルス機となる。X-47Bの初飛行は当初2009年11月の予定だった。
4. 今後は修正作業を空母運用に向けて行い、2013年に空母着艦を目指す。(当初目標は2011年) 
5. 空母着艦により無人機の空母運用の実証を行うのが最大の課題だ。ノースロップは当初A-12に期待されていたステルス攻撃ミッションをUCAS機体で実現させるのが目標としており、無人機のため航続距離、飛行時間ともにA-12性能を上回る期待がある。
6. AV-1は今年後半にパタクセント海軍航空基地(メリーランド州)に移送されたあと、空母にクレーンで搭載され.空母着艦が試される予定。
7. 二号機AV-2は機体構造の耐久性確認として8週間にわたる荷重試験を受ける。これは空母運用の状況を再現し、カタパルト発信、着陸に機体構造が耐えられるかを見るもの。AV-2には搭載する単発プラットアンドホイットニーF-100-220Uエンジンの音響問題解決のためノズル形状の変更が加えられている。
8. AV-2のエドワーズ基地での飛行テストは今年末の予定。

(写真 ノースロップ・グラマンのウェブサイトより)

軍用輸送機市場の見込み:A400M、C-2、KC-390他

A400M, KC-390 Will Reshape Transport Market




aviationweek.com Feb 4, 2011

軍用貨物機市場は今後十年間でおよそ900機の製造規模だが、その様相は大きく変わることになりそうだ。戦略輸送機市場ではボーイングC-17の生産は終了し、エアバスミリタリーA400Mのみが残り、ロッキード・マーティンC-130JはエンブラエルKC-390という新しいライバルに直面する。
1. C- 17生産は米議会の予算承認が期待できない中で、これまで低率生産で採算を確保してきたが、輸出市場だけのために生産ラインを維持するのが困難。現状では受注済みの海外販売用のC-17最終機の引渡しは2016年で、そのあとはA400Mが唯一の大型輸送機になる。A400Mは遅延により、存続が危ぶまれていたが、主要発注国があらたに支持を表明したことで継続が決まった。
2. A400MはC-17より小型で速度も遅いがC-130よりも搭載量は大きく長距離飛行が可能だ。欧州各国およびその他国にとってA400Mは戦略輸送能力をC-17ほどの費用をかけずに確保するものとして映っている。
3. A400MはC-17より安価とはいえ、各国の空軍でも資金に余裕のあるところしか手が届かないというのがエアバスミリタリーにとって困った点だ。各国が国防支出を削減している中で戦略輸送能力も聖域ではない。
4. 輸送機市場で魅力ある部分は中小型機で、これまではロッキード・マーテインC-130Jが大部分を占めてきた。旧型C-130の代替需要が今後増えると期待される中で数社がC-130とアントノフAn-12の後釜を狙う機体の開発を進めている。
5. そのうち、ブラジルのエンブラエルがKC-390を開発中でブラジル空軍より28機の受注ずみ。同機の貨物室寸法はC-130-Jよりも小さいもののジェットエンジン搭載で高高度かつ高速巡航が可能だ。エンブラエルはブラジル政府と共に13.7億ドル規模の7ヵ年計画で試作機開発を2009年に開始した。一方で世界市場を狙いブラジルはアルゼンチン、チリ、コロンビア、ポルトガル、チェコ各国と共同開発・生産の協議と売り込みを図った。同機の初飛行予定は2013年、引渡し開始は2015年。
6. 中国のハルビンはY-9四発ターボプロップ機を開発中でC-130Jと同程度の外寸と搭載量を狙う。これ以外にIl-76クラスの四発ターボファンY-20輸送機の開発もあるようだが、中国政府はY-9を優先するとの報道もある。
7. ロシア・インド共同開発の多用途輸送機(MTA)が実現するとインド空軍の双発An-32の後継機となる。インドはAn-32の最大の使用国。双発ターボファンのMTAはIl-214の設計を元に開発されるというが、C-130と小型のアレニアエアロノーティクスC-27やエアバスミリタリーCN-235/295ファミリーの中間の機材に国際需要があるのかは不明だ。
8. 一方、川崎重工業はC-2を開発中で、双発ターボファン・高翼の同機は航空自衛隊の老朽化した川崎C-1Aと C-130の後継機要求に応えるもの。航空自衛隊は40機から60機の調達を希望しているが、国際市場での可能性は未知数だ。日本は防衛装備の輸出で国内の防衛産業の基盤を維持したい考えだが、武器輸出には憲法上の解釈を巡り議論が決着しておらず、輸出解禁の見込みはない。C-2から民間型が派生する可能性は考えられ、軍用ユーザーには武器禁輸の回避策となるのではないか。C-2はC-130より大型でA400Mと匹敵する大きさだが、やはり大型機の整備を目指す国が少ない中で海外販売は容易ではないだろう。