2011年10月16日日曜日

日曜日はやや長文 中国軍事力整備のめざすもの

中 国の軍事力増強にどう対処するのか。アセアン各国に加え、インドもこれから神経を逆立てられることになるでしょうが、当然日本もその動向を見守る必要があ ります。現状では遠隔地での実戦能力は限定されていますが、ISR能力、空中給油能力、空母群の整備が現実のものとなると米国だけが海洋支配権を持ってい た時代が終わる可能性が出てきました。中国の軍事力は国家のツールではなく中国共産党の目的を実現する手段であることにも注意が必要です。交易の動脈を海に頼る日本、そして世界経済にとってリスクが増えることになります。新しい時代がそこまで来ているの でしょうか。まず、冷静に事実関係を見ていきましょう。

China Expands Its Military Reach

aviationweek.com Oct 14, 2011 By Bradley Perrett
Beijing

                         

  1. 中国の軍事力はどこまで有効に機能するのか。その答えは同国の意志次第だ。今年に入り中国海軍艦艇が地中海に展開されたが、派遣艦艇は一隻でリビヤの民間人退避を支援したのであり、軍事上の実効性はない。
  2. ただ中国沿岸から300キロメーターの範囲となると話は違う。短距離弾道ミサイル1,000基、2,000機の作戦用機材があり、領空は地対空ミサイルで防護されている。
  3. これに対し中国の軍事力投射能力はまだ未整備で遠距離になると急速に低下すると見るアナリストもいる。.
  4. そ の主要原因は中国の軍事能力が台湾侵攻を主目的に整備されてきたことにあり、台湾へは最大でも数百キロメーターしかない。短距離弾道ミサイルならわずか 300ないし600キロメーターの飛翔距離で、戦闘機も空中給油なしで十分到達できる。中国本土から離れるほどISR能力は低下し、かつ高価になる。
  5. た だ中国が整備中の軍事力はこれよりも遠距離として1,000キロメーター以遠での戦闘力を実現しようとしている。整備中の計画が一つ実現するくらいでは中 国は地域内の超大国にはならないが、すべて実現すると軍事力投入の距離が拡大する。地政学の観点では中国軍は南シナ海をさらに広がりつつある。
  6. そ の例にトマホークに類似した巡航ミサイルDH-10がある。西側報道ではとかく弾道ミサイルが報道されがちだが、このミサイルの有効射程距離は1,500 キロメーターを超える。現在の生産ペースはおそらく年間100基だろう。H-6爆撃機に搭載する空中発射型なら3,300キロメーターに達するので、グア ム、沖縄ならびに南シナ海全域、さらにインドネシアやインド洋もその射程範囲に入る。
  7. 冷戦時代のソ連製戦闘機に範を取った短距離機が退役する中、作戦機の航続距離は伸びつつあり、J-10およびJ-11(フランカー)は機内燃料搭載量の大きさは要注意だ。長距離機の配備で遠隔地攻撃のみならず、中国艦艇への支援も可能となる。
  8. 遠距離での敵艦艇攻撃能力が増強中でH-6D爆撃機40機は対艦攻撃に投入される。それだけの距離ではISR能力が課題だが、配備中の中国製ISR衛星群がこの機能を向上させる。また空中早期警戒、信号探知能力も開発中だ。
  9. その一環として無人偵察機の開発があり、中国は超高高度機にISR能力に加えて指揮命令機能も持たせようとしている。そこで得る情報を一番有効に活用するのは潜水艦部隊だろう。
  10. 沿 岸部の防衛にはJH-7攻撃機80機とC-803K対艦ミサイルに大型ステルス機J-20が加わる。同機の外寸から攻撃半径は1,000キロメーター超と 見られ、これにミサイル自他の有効射程が加わる。Su-30MK2にはロシア製超音速Kh-31A対艦ミサイルを搭載する。そして革命的な対艦弾道ミサイ ルDF-21Dがある。ペンタゴンの評価は同ミサイルの有効作戦半径を1.500キロとする。今後急激に中国空軍力が成長する可能性がある。中国は 1960年代にも核兵器開発で急速な軍事力増強の実績がある。当時は資金も今ほど潤沢ではなかった。
  11. 中国発の空母は公試中だがまだ就役していない。同艦は最初は訓練用となるだろう。今後多数の空母建造が予測されている。t.
  12. 長 距離空輸能力は小規模で、イリューシンIl-76が10機のみだ。おそらく国産輸送機の生産を検討しているはずで、Avicは200トン超の機体を開発中 だといい、Il-76の追加導入も可能性がある。同機の性能上の制約はロシア製エンジンにあるが、国産CJ1000Changjiang(長江)高バイパ ス比ターボファンがC919旅客機(158席)に提案されており、新型輸送機にも搭載されるかもしれない。ただC919では機体が小型過ぎて空中給油任務 は困難で、ワイドボディC929の計画があり期待されている。
  13. 空中給油任務にはH-6Uが20機配備されていると見られるが、爆撃機からの転用で給油能力も貧弱だ。Il-78給油機8機の発注が2005年にされたが、契約でつまずいている。ただ導入されるとJ-11向けの空中給油が可能となる。
  14. 現状では空中給油を受けられる機材は四分の一以下だが、増加中で、飛行範囲は伸びつつある。特に南シナ海を意識しているようだ。ただ空中給油機開発はまだ推測の域を出ないし、新型爆撃機の具体的計画は明らかになっていない。
  15. 中 国空軍の考え方は南シナ海周辺諸国を対象に距離を重視する。2010年までの目標が沿岸以遠1,000キロメーターを作戦範囲とするものだった。まだこの 目標は完全に達成されていないが、2030年には3,000キロメーターが目標となると米国専門家は見ている。この背景には領海権の主張もあるが、グアム は約3,000キロの距離があり、さらにインドネシアまでこの範囲に入ってしまう。中国国境と2,000キロメーターを共にするインドが相手ならこれだけ の距離は不要なはずだと台湾は見ている。

2011年10月15日土曜日

米海兵隊航空戦力の整備状況は要注意

海兵隊航空部隊にとってF-35Bは現有ハリヤーの後継機種として、F/A-18の後継機種としても必要不可欠な存在でなんとしても実用化しようと懸命な様子ですが、一方でしわよせもあらわれてきたようです。ペンタゴン筋に強いバトラー記者の報告を見てみましょう。F-35は不要な存在で、同機開発への資金投入により西側陣営の国防能力に大きなひずみが生まれるというのが本ブログの一貫した主張です。

USMC Guarding Existing Aviation Programs

aviationweek.com Oct 14, 2011 By Amy Butler
Washington
                                 
  1. ワシントン政界が国防予算削減を当初の4500億ドルから1兆ドル規模に拡大する案を検討する中、米海兵隊は新規航空機プロジェクト開始ができない状態にあり、既存の事業の開発、生産を守るのが精一杯という様相だ。
  2. これに対し空軍が共用垂直翼輸送支援プログラム(CVLSP) としてヒューイ継機種を、陸軍も武装空中偵察(AAS)ヘリコプターを向かい風を承知で予算を確保しようと懸命に努力しているのとは対照的だ。
  3. メーカー側は軍高官にカイオワ後継機となるAASの技術実証の推進を強く求めている一端資金が支出されれば計画そのものを消滅させるのは困難というのが常識とされてきた。
  4. またCVLSPでも業界は熱い期待があるが、空軍高官は競争開発を無期延期し、予算の動向を見守っている。これは将来に禍根を残す決断になるかもしれない。
  5. これに対し海兵隊の航空部門の計画はF-35を戦術攻撃機の中核とし、V-22ティルトローターに輸送を受け持たせるというものだ.
  6. 大きな疑問が生じているのはF-35B開発の遅れで不確実性がましていることだ。F-35BはUSSワスプ艦上でテスト中。
  7. 海 兵隊航空部門トップのテリー・ロブリング中将 Lt. Gen. Terry RoblingによるとF-35Bの初期作戦能力(IOC)を2015年に実現したいという。IOCは2012年だったものが2014年に先送りになって いた。海兵隊航空戦力整備計画によると10機のF-35BにブロックIIBソフトウェアを搭載し、6機に艦載運用をさせる、またIOC宣言には7gおよび 迎え角50度の運用を実証することが条件だ。
  8. 短 距離離陸垂直着陸(Stovl)のテストは時間がかかっており、艦隊配備が遅れているためゲイツ前長官はStovlに二年間の「執行猶予」を設定したほど だ。B型が問題を解決し、軌道に戻らなければ「開発取り消しだ」とゲイツは今年1月に発言している。ゲイツは長官の座を去ったが、B型の開発中止の話題は 消えつつある。「執行猶予という用語が使われたのは残念で、否定的な語感があります。しかし問題を解決出来る自信があります」(ロブリング中将)
  9. 確 かにゲイツが去ったあとで執行猶予についての言及は業界でも出ていない。国防長官官房も同機の合否の具体的な基準内容を一度も明らかにしていない。そこで 最大の課題はF-35Bを残すことよりも同機各型に対する各国発注機数をなるべく多く保持することにある。各国が経済問題に直面していることがこの裏にあ る。
  10. ロ ブリング中将はペンタゴンは「1.5増加案」を考えているという。これは年比較で50%増のF-35を各国から受注・納入していくというもの。海兵隊のハ リヤー部隊は2024年が耐用限界と見られるが、海兵隊は英国と交渉中で、AV-8Fの部品用に英軍機材を購入しF-35の運用開始まで繋ぎたい考えだ。 ロブリング中将の懸念はハリヤーの部品老朽化特にエイビオニクスとミッションコンピュータにある。
  11. 海 兵隊はF/A-15A-D各型50機の耐用年数を延長し、F-35配備までのギャップを埋める考えもあるとロブリング中将はいう。.海軍と海兵隊あわせて 戦闘機150機が不足し、2018年にはピークを迎えホーネット65機が足りなくなると海兵隊は説明する。ロブリング中将もA-D各型の飛行時間を1万時 間程度に引き上げる必要を認める。
  12. F-35への移行計画をなんとしても進めたい海兵隊だが、回転翼機では進展があることを認めている。ベルボーイングか らV-22を122機販売する複数年度提案があるが、これを実施すれば標準価格より10%の節約となる。この契約は成立すれば、取り消しは非常に困難にな る。つまり今後の予算削減の対象から外れることを意味する。ロブリング中将も24機程度の削減はやむなしと考えているものの、最終的な必要機数は360機 と変更はない。
  13. 同中将はベルよりH-1購入の大規模複数年度契約を検討中といい、海軍もAH-1Z攻撃ヘリとUH-1Y輸送支援ヘリを購入中だ。長期間大規模購入により安定かつ費用節減になる。複数年度契約は来年3月から交渉を開始する。


JSF全型式の調達は困難と見る統合参謀本部議長

                             

Dempsey Worries About Cost Of JSF Variants

aviationweek.com Oct 14, 2011

統合参謀本部議長の発言でF-35共用打撃戦闘機の将来に暗い陰をさしてしまった。

10 月13日の下院聴聞会でジェフ・ミラー議員(共和 フロリダ州)が統合参謀本部議長に就任したばかりのマーティン・デンプシー陸軍大将Army Gen. Martin Dempseyに対してペンタゴンは海兵隊仕様のF--35Bの開発実現を前向きに進める努力をしているのかを尋ねたところ、同大将は確証しなかったの だ。

「同機三型式をすべて、この財政状態の中で調達できるのか心配しております。全機種の調達は財政上大きな困難になります」(同大将)

ミラー議員は食い下がり、ホワイトハウスの行政予算局からペンタゴンに経済成長につながる調達計画を選択するよう求めており、JSFもその候補であり、直接間接含め127,000名の雇用を創出すると主張した。

今回の聴聞会は今後のペンタゴン予算・戦略を議論するため開催されたもの。ペンタゴンは今後10年間で4,500億ドルの予算削減を模索している。議会から削減幅の追加が出る可能性もある。

2011年10月10日月曜日

米空軍 宇宙機開発調達でも新しい考え方を求める

                

 またまた予算削減で国防装備調達がどう変わっていくのかを解説する内容です。NASAで民間企業参入がある程度の成功を示したことをにらんで国防衛星システムにも導入する考えのようですが、既存メーカーは当然反発するでしょうし、国防装備のスペックの違いも考える必要があるのでは。それにしても本ブログが中心テーマにしているISRよりもはるかに大きい支出規模が認められているのですね。

USAF Calls For Broad Industry Revamp

aviationweek.com Sep 30, 2011        
  1. 米空軍は宇宙産業に大幅な改善を求めており、もっと簡単に、もっと安価かつ短期間開発で打ち上げが実施できることを期待しながら、2012年から16年まで予算の伸びが期待できない中で国家安全保障上の装備取得を進めようとしている。
  2. 空 軍はこの期間中に宇宙関連は285億ドルを投入する計画で全体で二番目の規模。これをうわまわるのはF-35に割り当てた336億ドルだけだ。極秘計画や 次世代長距離爆撃機があわせて210億ドルで三番目規模。ちなみに、情報収集・監視・偵察は五位でボーイングKC-46A給油機が6位だ。
  3. 宇宙関連で取得を急ぐのが高性能極高周波(AEHF) 通信衛星、宇宙配備赤外線システム(Sbirs)ミサイル警戒網、発展型使い捨て打ち上げ機の各計画だ。
  4. 2012 年度予算概算要求にはブロック購入・固定価格契約で複数年度調達により費用低減と安定化を狙ったAEHF5/6衛星群の2012年購入とSbiris5 /6を2013年に購入が盛り込まれている。研究・試験・評価活動には国防天候観測衛星システム宇宙機の開発継続、SbirisGEO-1の軌道上試験活 動、GEO-2打ち上げ、AEHF-2の打ち上げ、テストが中心だ。
  5. これら宇宙機の開発期間が長く、製造コストの基準額が高くなっていることは空軍も認識している。さらに契約形態の変更で民間の新規参入を容易にすることも検討している。念頭にあるのはスペースX SpaceX, オービタル・サイエンシズ Orbital Sciences and ATK ATKと言った企業で、各社はすでにNASAの民間宇宙ステーション補給契約で実績がある。
  6. 空軍も既存方針とは違う新しい方策を打ち出し、新規参入業者が長期間にわたり製品を提供できるようにしたいと考えているようだ。

2011年10月9日日曜日

ヨーロッパのミサイル防衛を強化する米海軍の地中海派遣

                

地 中海が欧州のミサイル防衛の観点で重要性を増しているようです。スペインに米海軍がイージス艦を配備する事になったのは知りませんでした。エイビエーショ ンウィークは以下のように伝えています。それにしても革新的な設計のズムワルト級を犠牲にしてイージス艦とは言え、お手軽な既存設計艦の建造を優先しなけ ればならないほど国防予算に余裕がなくなっているのですね。

Navy Anchors European BMD Mission With Basing

aviationweek.com Oct 7, 2011

  1. 米海軍はスペインとジブラルタル北西60マイルのロタをイージス艦配備基地として利用する合意が形成できたことで、いわゆる段階的適合アプローチPhased Adaptive Approachによる欧州ミサイル防衛(BMD)の基盤づくりに成功。
  2. 米国スペイン間の合意内容は実際にはタイコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦USSモントレーが段階的適合アプローチの一環で地中海に配備されて5ヶ月が経過後に成立したものだ。
  3. 同艦のジム・キルビー艦長Capt. Jim Kilbyが本誌独占取材に対して性能向上型イージスシステムは期待通りの性能でBMD以外の任務にも有効な戦術を海軍は構築していくと語った。
  4. ま たロタ基地の利用でイージス艦の配備は海軍の考える理想型になり米国の力を増強する形に働くとし、「北アフリカ、地中海地方の米国の政策目的の支援に役立 つ」とレキシントン研究所のローレン・トンプソンLoren Thompsonは分析する。「イージス艦は米国の戦域ミサイル防錆の中心であり、大陸間弾道弾対策においても重要な存在となるでしょう」
  5. 基地利用合意の発表に際し、レオン・パネッタ国防長官は「ロタにイージス艦4隻を配備し、地中海における同盟各国の海軍力は大幅に増強され、この重要地域の安全を確実にする能力が向上されます」と語った。
  6. 「各 艦はNATOのミサイル防衛の支援します。米国はルーマニア、ポーランド、トルコとも協定を結んでおり、今回のスペインの決定は欧州段階的適合アプローチ の実施で大きな進展となります。米国はNATO各国のうち欧州域内各国への完全な対ミサイル防衛能力の建設に全力で取り組んでおり、弾道ミサイルの脅威が 増している中その重要性がましています」
  7. もう一つ重要な要素が陸上イージスシステムAegis Ashore system.であり、ミサイル防衛庁は総額115.5百万ドルでロッキード・マーティンにシステム改造、用地選定、輸送計画、ギ技術開発含む契約を交付している。
  8. 米 海軍はイージスシステムに高い優先順位をつけ、BMD任務関連でDDG-51アーレー・バーク駆逐艦の建造再開でイージス防衛装備の増強を進めている。さ らに高性能のBMDおよび個艦防衛手段として対空・ミサイルレーダー(AMDR)をアーレー・バーク駆逐艦フライトIIIの各艦に装備する予定だ。
  9. アーレー・バーク駆逐艦を追加建造する予算を捻出するために海軍はより新鋭のDDG-1000ズムワルト級駆逐艦建造を当初の7隻から3隻に縮小した。DDG-51級の建造再開の妥当性は政府会計検査院が調査中。

2011年10月3日月曜日

予算削減でISR機材はどう変化をせまられれるのか

USAF Weighs Which ISR Programs To Cut

aviationweek.com Sep 27, 2011
By Amy Butler
Washington
   

米 空軍の偵察監視情報収集(ISR)機材にはU-2、新世代無人機からボーイング707を原型とする各機種まであるが、9/11以後は緊急性を理由に予算計 上は特別扱いであった。そして10年がたち、空軍は情報収集装備の縮小により今後数十年にわたる各種の脅威に対応剃るまで追い詰められている。
  1. 空 軍長官マイケル・ドンレーによると空軍は今後の上昇収集・監視・偵察(ISR)機材の構成で選択肢を検討しているという。この検討は今後数週間のうちに完 了し、その結果次第で2013年度予算案が来年2月に議会に提示される際にどの情報収集活動を削減するかを伝えることになる。その結果次第では仮に議会が 赤字削減法案通過に失敗する事態を想定して、各種の選択肢を検討することになるという。
  2. このような選択肢検討は情報収集機材だけに限らず、空軍全体で進められている。たとえば、F-35にかわる選択肢はないと言われるものの、ドンレー長官は同機計画も精査を免れることはできないと理解している。
  3. た だし情報集機材の構成には多様な検討ポイントが組み込まれており、機材、搭載センサー、地上配備のデータ処理能力などあり、逆に内容の吟味が最も必要な分 野になっている。ドンレー長官は空軍協会主催の会議の席上「ISR関連で合計13もの近代化装備計画が別個に有ることを昨年発見した」と語る。「予算に余 裕が減っている現状を考慮して今後の選択ではより注意深くかつ書く選択肢の優劣を意識する必要がある」と述べている。
  4. ISR 用機材の整理統合は空軍にとってつらい仕事になる。わずか数年前までゲイツ前長官がイラク、アフガニスタンの戦闘でISR支援が不足していると主張してい た。ゲイツ前長官は退任直前になり空軍のISR能力増強を評価しつつ、さらにMQ-9リーパー調達の増加を求める意見書を起草している。しかし、 ゲイツは去り、空軍内部にはこの問題提起に対する検討の自由度が高まると見る向きがある。ゲイツ長官在任中はISR機材の縮小案は即座に却下していたと証 言する関係者もいる。
  5. ゲイツ前長官の影響が減少している証拠として、ドンレー長官はリーパー購入増を承認しなかった。「この決定がいまでも議論の種になっているのは十分承知している。今年の秋も引き続き論争が続くだろうが、後戻りはできない」とドンレー長官は語る。
  6. 空 軍関係者と業界筋は単に機材の購入数を増やすだけでは均衡を欠く結果におわると主張。「センサー、インフラ開発、指揮命令通信装備が重要であり、情報の処 理、解析、共有の要望に答えてすすめる必要があります」とドンレー長官は指摘する。空軍は小型機MC-12Wプロジェクトリバティーを配備し、その整備を 進めている。機体メーカーは新規受注量の減少となるが、センサーのメーカーはモジュラー型センサーや性能改修を既存各機に装備する仕事の増加で恩恵を受け るだろう。
  7. 空軍は予算を考慮して単一機種に絞りこむ以外に、機体購入費用に対して機体整備・人員訓練・情報共有ツールの費用を比較している。ただし、ある機体選定で予算を確保すれば他の機体メーカーが負けることになり、熱い論争になる。
  8. 次 期地上監視機材の状況も同じだ。まもなく決断を迫られることになり、JSTARSにもっと予算を拠出すべきか、グローバルホークのブロック40無人機にす べきかを決めなければならない。両機種ともノースロップ・グラマンがメーカーだ。同社は両案を推進してきたが、地上偵察手段で代替策検討がまとまりつつあ り、空軍にはつらい決断を迫ることになりそう。
  9. 厳しい財政状況の中でノースロップは両案をすすめることができなくなるかもしれない。ただ他の計画が中止となっても、グローバルホークが残れば開発費用の超過分が回収できる可能性がある。
  10. そうなるとJSTARS各機のエンジン換装や大型監視レーダーの更新に何百万ドルも使うという要求がしにくくなる。業界でもISR装備整備の中でJSTARS装備の近代化に高い優先順位は無理と見る向きが強い。
  11. 厳 しく見られているのは費用だけでなく、代替策となるグローバルホークでも6月に議会に提出した数字でまもなく決定が下る見込みだ。ペンタゴンの見積もりで はJSTARS部隊の年間運用費用はグローバルホークで同じ面積を監視するよりも650百万ドル余分に必要となる。ただし、グローバルホークには指揮命令 機能がない。
  12. 同 じく発表が予想されるのが高高度飛行するロッキード・マーティンU-2の退役計画で、特にグローバルホークに画像・信号情報(sigint)機能がついて 同機の配備が継続することを考慮すると、これは不可避と思われる。空軍内部では両機の維持を求めてきたが、予算の圧力でついにU-2の退役を空軍は選択す る。これには戦闘部隊の指揮官から中東、北朝鮮近辺で同機の重要性を訴える声が寄せられていたのだが。
  13. 「グローバルホークと比較するとU-2は220百万ドル余分に経費が必要」とペンタゴンは費用分析で総括している。
  14. J-starsは削減対象となってもリベットジョイント信号情報収集機は削減対象を逃れると見る業界関係者がいる。その理由はL-3コミュニケーションズが定期的なシステムの維持管理をしてきたためだという。
  15. 空 軍は広範囲監視能力機能についても評価をすることが求められる。その例としてゴーゴンステアGorgon Stareがあり、広範囲のフルモーションビデオ情報を可能とする同システムは開発・配備費用とその効果を厳しく比較される。同じようにペンタゴンはタス クフォースオーディン機材(各軍で運用中の小型特殊用途機)の取扱を戦闘活動が縮小する中で検討する必要に迫られている。選択肢には機材からセンサー装備 を取り外すことから機体売却まで含まれ、将来の再配備のため機体を温暖地出保存することもあり、さらにそのまま運用を継続する選択肢もある。機材としては 戦地で重要なのだが、特殊性故に訓練、維持が困難という実態がある。
  16. 予 算案の議会内検討では通常複数のシナリオを想定するものだが、今年は空軍も業界も大幅な削減があるものと覚悟している。たとえばU-2やリベットジョイン トの即刻退役もあるかもしれない。単なる想定検討とは言うものの、ペンタゴンにとっては予算削減の大きな圧力となるだろう。


2011年10月1日土曜日

米空軍次期高等練習機を巡る各メーカーの思惑

T-38C高等練習機の後継機種を巡り各メーカーがすでに動いていると、国防関連に詳しいAmy Butlerが以下報じています。

                               

Contractor Teams Shaping Up For T-X Work

aviationweek.com Sep 28, 2011
                                  
米空軍はT-38C高速ジェット練習機の後継機種(T-X)調達計画をまだ発表していないが、業界では米国内の高い失業率を考慮して後継機生産は米国内を前提とするものと見ている。
  1. 競 合メーカーとなりそうなのは三社でそれぞれが海外メーカーの機体を原型とする設計案を準備している業界では有力国会議員の各選挙区で雇用促進に貢献す る提案が出てくるのは時間の問題と見ている。空軍が通常の選定を行う際には雇用創出規模は考慮されることはないが、KC-135後継機を巡る争奪戦をボー イングとエアバスが行ったようにT-Xでも「もっともアメリカ的」なチームが米国内雇用創出を前面に訴える政治的な主張を展開すると見られる。
  2. こ の中でBAEがまっさきにノースロップブラマンと共に米国内生産を提案している。同社提案はホーク練習機を基本とするものだが、生産拠点をどこに置くかは 明瞭にしていない。ノースロップは同社レイクチャールズ工場(ルイジアナ州)の雇用を確保したいところだ。同工場はボーイング707をJSTARS空対地 監視機に改装する作業を行なっていた。予算削減の折、同工場は閉鎖に向かおうとしている。
  3. ア レニアエアロノーティカはM-346原型の提案をする見込みだ。ただ、同社社長ジョン・ヤングは「レイクチャールズ工場を活用するためノースロップが BAEとチームを組むのは予測範囲だ。当社は急いでパートナーを探すつもりはない」と語る。同社CEOジュセッペ・ジオルドは「米国進出も7念目となり、 当社は米国内で受け入れられる仕事の進め方を理解している」と米国メーカー提携先を模索しているようだ。
  4. そ の候補先はボーイング、レイセオンL-3コミュニケーションズだろう。ボーイングは空軍が短期間に開発できる既存設計の応用という当初の案を廃棄して、 完全な新型機の開発に変更するkとを期待している。ただし、その可能性は少ないので、同社としてはアレニアとの共同開発の可能性を残している。ボーイン グ・アレニアの共同事業の直近の例はC-27J輸送機の米国内導入提案だったが、両者間の作業分担率を巡る意見不一致で不発に終わっている。
  5. ヤング社長はフロリダ北部のセシルフィールドが生産候補地だという。同地はC-27Jの最終組み立て拠点として選択されていた経緯がある。アレニアはサウスカロライナ州とも提携先ボーイングの787事業で関係がある。
  6. ロッ キード・マーティン韓国航空宇宙工業とチームを組み、T-50原型の提案をする構えだ。どうチームの提案内容は米国部品メーカーを多数巻き込み、生産拠 点も国内に設定するものになりそう。その場所はジョージア州マリエッタが最大の候補だ。同地ではC-130Jが年産33機生産されているが、F-22生産 ラインは閉鎖に向かっており、余力がある。同工場出の生産案は同州選出の有力国防サクスビー・チャンブリス上院議員Sen. Saxby Chambliss (R-Ga.)(共和党)の強い支持を受けている。
  7. た だ、競争提案がいつ開始されるのかは不明だ。空軍教育訓練軍団を指揮するエドワード・ライス大将Gen. Edward Riceは遅延をほのめかしている。「機体の構造寿命が残り少なくなっているわけではない。まだ安全な飛行は可能です」と同大将は2009年に発言してい る。調査の結果、既存機の余命は予測より長いことが判明している。
  8. T- 38Cの平均機齢は40年超だが、飛行制限なしに戦闘機パイロット向けの高等練習機の役目を果たしている。空軍はその中で次期高等練習機計画をどこまで遅 らせるかを慎重に検討している。2008年にT-38墜落事故が発生したことで同機の運航に不安が広まったのは確かだが。
  9. ペンタゴンはこのT-X調達計画を巡り国防装備取得検討委員会を10月21日に開催する。その結果で競争提案日程と契約への道筋がつくだろう。

2011年9月25日日曜日

F-16生産ライン閉鎖の可能性、機体寿命の延長可能性

Possible F-16 Production Lull Stirs Worries

aviationweek.com Sep 23, 2011     
                         
F-16の生産開始は1976年でそれ以来世界20カ国に4,500機以上が販売されている。かつては「黙っても売れる」状態だった同機の生産が終了する可能性が出てきた。
  1. ロッキード・マーティンは生産終了を回避したいところだが米空軍はF-35導入に注力しており、支援は見込み薄だ。一方、現存するF-16の飛行寿命を50%延長する案に空軍は注目している。
  2. 海 外販売ではイラクとオマーン向けの詳細がまだ決まっていない。オマーンには12から18機、イラクには18機の販売予定だが商談は成立していない。一方、 最近成立したモロッコ、エジプト向け販売でロッキードは57機の受注残を抱える。生産ペースは年間18機で、各機は30ないし36ヶ月の工期が必要。その ため今年末までにイラク・オマーン商談が未成立のままだと現有の生産ラインを維持するための資金段取りの決断が求められると同社は見る。
  3. イ ラク・オマーン両国向け販売に議会の反対はないが、政府間交渉がまだ続いている状態だ。米空軍高官にはイラク向け販売に難色を示す動きがある。イラク空軍 のパイロットには高性能機を運行する準備がまだできていないというのが理由だ。さらに中東地域の不安定要因が販売を遅らせている。
  4. そ の次に控えるのがルーマニア・台湾向け販売の可能性で、台湾は最大66機、ルーマニアは48機程度を検討している。ルーマニア高官の訪米が今月に予定さ れ、それを機に一気に進展するかもしれない。台湾向け販売は政治的に厄介な側面があり、中国の抗議を呼ぶが、ホワイトハウスは来月までに決断を下す見込み だ。ジョン・コーニン(共和 テキサス)とロバート・メネデス(民主 ニュージャージー)両上院議員が台湾向け売却を支援する法案を上程している。コーニ ン議員はF-16生産ラインを選挙区に持ち、販売の経済効果は87億ドルもあると主張する。
  5. 一方、1,000機以上のF-16を運航中の米空軍には調達予定はない。むしろF-35導入までのつなぎで現有機の飛行時間を延長する方法を検討中だ。
  6. 設 計仕様では飛行時間は最長4,500時間であったが、これまでの改修で8,000時間まで延長されている。だが、稼働中機材の点検で空軍はパイロットが性 能上限以下で扱っていることを発見している。9/11後の10年間でF-16は地上兵力支援や空中警戒を危険度の低い空域で行うことが多くなっており、機 材への過酷な負担も少なくなっている。このことから空軍は各機材の予測寿命を判定している。各機で「数年間」の追加となり、さらに最新のブロック 40/50機では12,000時間を目標にする機体構造飛行時間延長プログラム(SLEP)を空軍は検討中だ。
  7. 財政赤字削減が課題のワシントンでは費用は重要な検討課題で、ブロック40/50機材にSLEPを実施する予定の空軍もF-35導入の日程がさらに遅れると実施できなくなるかもしれない。
  8. 空 軍が運航中のブロック40/50機は640機で、機齢は17年から21年になっており、その他ブロック25・30・32が400機で平均24年経過してい る。ロッキード・マーティンはF-16機体の耐久性を飛行時間を24,000時間の設定でテストする契約を受注しており、これはSLEP設定の二倍だ。こ のテストが2017年に終了し、SLEPで焦点を当てるべき部材を判明する。
  9. 機体構造とは別にエイビオニクスの更新も検討中で2025年以降に予想される電磁スペクトラル環境で同機が行動できることが狙いだ。
  10. そ の内容にはアクティブ電子スキャンアレイレーダーの搭載、AN/ALQ-213電子戦装置の更新がある他、現在の4インチ四方のコックピットディスプレイ 各種は6x8インチのスクリーン一つに集約し、赤外線目標捕捉ポッド都のインターフェースを改良する。さらに同機に統合情報通信サービス Integrated Broadcast Serviceを利用した運用が想定される。

2011年9月24日土曜日

2010年度の国防契約受注大手企業はどこか

Analysis: Lead Pentagon Contractors For 2010

aviationweek.com Sep 23, 2011                                                             
本誌独自の分析で2010年の国防契約で最大の規模を獲得したのはロッキード・マーティンと判明した。同社は総額125億ドル契約数6,334件で第一位。
  1. 続 くボーイングは83億ドル1,756契約件数で、ジェネラル・ダイナミクスが第三位で67億ドル5,604契約だった。ノースロップ・グラマンは僅差なが ら第四位で63億ドル6,302件でここに最近同社から分離した造船部門(現社名ハンティントン・インガルス・インダストリーズ(HII)を含むと66億 ドルになる。HII単体では64位の規模だ。
  2. これら上位企業に共通するのは幅広い事業部門を有することで、その多くは近年の企業統合で傘下に入ったもので軍の幅広い部門でサービス・装備を提供している。
  3. それ以外の主要契約社は専門性をもち、特定のサービス、機材等を提供している。
  4. た とえば2010年には第五位のオシュコシュ・トラック・コーポレーションOshkosh Truck Corpは車両製造を専門に行い54億ドル837件の契約規模であった。同社が契約額の規模拡大を開始したのは2000年代の後半になりペンタゴンがアフ ガニスタン、イラクの過酷環境で兵員、物資の輸送を拡大する必要に迫られた事態以降だ。
  5. 第六位のBAEシステムズBAE Systemsもペンタゴンの車両需要の拡大の波に乗ってきた。同社の実績は41億ドル5,485件だった。
  6. ペ ンタゴンは各計画の管理水準の向上に契約会社を使うことが多くなってきた。ベクテルBechtel,は第七位28億ドル79件だったが、プログラム管理業 務、エンジニアリング、建設で専門的な立場にある企業だ。その他ケロッグ・ブラウン・ルートKellogg, Brown and Rootも建設大手で2010年順位は8位28億ドル350件だった。
  7. 2010年に10大企業の座から脱落したのはベル・ボーイング共同事業体(27億ドル298件)とレイセオン(23億ドル、2,052件)だった。

2011年9月23日金曜日

リビア作戦の教訓:精密誘導ミサイル開発を重視する英仏

                             

After Libya, Europe Eyes Precision Arms

aviationweek.com Sep 22, 2011

NATO主導のリビア作戦ではっきりしたのは精密兵器の威力だ。だが同時に今回の作戦でヨーロッパ各国の精密兵器備蓄が不足していることも露呈した。
  1. フランスは自国のAASM精密誘導弾に大きく依存し、英国空軍はデュアルモードのブリムストーンを大量に使用しており、ミサイルメーカーMBDAに増産を依頼している。
  2. 今回の作戦でヨーロッパの精密誘導兵器の大幅な見直しにはつながっていないが、実地使用の結果が現在分析中で、今後の改善につながる可能性がある。
  3. 欧州防衛機関(EDA)は欧州内兵装メーカーと共同で精密兵器の産業基盤の大規模評価をまもなく完成する。その目標は2020年目標で強い産業基盤を整備することにある。
  4. 同評価から先に出た内容では移動目標に対する弾薬生産で各国協力関係の強化が指摘されており、附随損害を避けて攻撃を最後の段階で取り消す機能が求められている。
  5. 同時にこの評価から現状の欠陥が指摘されており、高性能誘導弾の誘導制御に必要な技術の弱体化がその例。
  6. 技術ギャップにも注目があつまっている。欧州の防衛関連電子工業がそのひとつで、誘導弾の数千Gに耐える制御部分ハードウェア製造がその中心だ。また同様に過酷な条件に耐える電池製造能力も不足していることが露呈。
  7. 関 連する国の数、企業数のためその調整内容は現在の誘導ミサイル製造でフランスと英国が協力している事例をはるかにこえる規模になる。英仏両国は昨年にミサ イル開発の協力を確認しており、その理由には自国内産業技術の温存がある。合意されたのは将来型空対艦重量級誘導ミサイル(FASGW(H))でフランス ではANLと呼称される。
  8. フランスも自国兵装メーカー支援に動いており、FASGW(H)向け予算は国防相合意のMBDA向け財政支援の一環として特別扱いになっている。業界筋によれば11月予定の英仏国防協力サミットでこれ以外の協力案件が成立する可能性があるという。
  9. FASGW(H) 開発は昨年合意された技術基盤強化の一環である。弾頭部、推進モーター技術のそれぞれ成熟化、ミサイルのデータリンク試験、海上でのアンテナ試験を実証す る。赤外線画像シーカーも海上試験の対象で、その結果から早期の製品製造段階につながることが期待されている。次の段階は重量110Kg射程20Kmのミ サイル本体を飛翔試験することで、4.5年間の期間が予想される。運用はまず英国のAW159ワイルドキャット、フランスのパンテール、NFH90の各ヘ リコプターに搭載する。
  10. ただしフランスの支出がすべて英仏共同兵装開発にあてられているわけではない。一部予算はMMP兵員携行対戦車兵器やアステル30ブロックINT弾道ミサイル防衛に振り向けている。
  11. 英 国も同様に自国の防空体制整備に取り組んている。MBDAの将来型局地防空システムFuture Local Area Air Defense System (Flaads)の海軍仕様は初期発射テストを完了しているが、原型の共用空対空モジュラーミサイルCommon Anti-Air Modular Missile (CAAM)は実地試射テストが完了していない。MBDAは同ミサイルのレーダーシーカーテストを開始した。
  12. もうひとつの進展がファイヤーシャドウ空中待機兵器の海軍阪で、もともとはMBDAが英陸軍向けに開発したもの。海軍版は開発契約はまだ締結されていない。陸軍向けファイヤーシャドウは納入に向けた最終公試を完了している。来年に第39砲兵大隊にまず導入される。

2011年9月21日水曜日

米空軍次期ISR機開発は新型爆撃機構想と同一方向になりそう

Bomber Discussions Template For USAF ISR

aviationweek.com  Sep 20, 2011   
                                                                      
次期情報収集・監視・偵察(ISR)機材の支出規模を再調整する米空軍案は長距離攻撃能力を基本とする「システムのファミリー」をめざした以前の案と同じ方向を たどると空軍長官マイケル・ドンレーは考えている。「予算規模が全体で縮小すれば、優先順位のつけ方でも差別化を図らねば、ISRの向上は実現しません」 と本誌に語っている。
  1. ISR戦力構築の再検討作業は空軍情報本部の主導ですでに開始されている。ドンレー長官によると秋に完成し、予算配分の決断に間にあうという。2013年度予算案は来年2月に議会に提出される。
  2. 今秋の財政赤字削減策協議の結果次第でペンタゴンは5ないし10%の削減を余儀なくされるだろう。このため異例の予算検討作業が主要プロジェクト全般で国防総省内で進んでいる。
  3. わ ずか三年前にはゲイツ国防長官(当時)が空軍に対しアフガニスタン・イラク両作戦でISR支援の対応が遅すぎると叱責していたのであり、同長官のもと ISR対応チームが編成され従来の調達方法に頼らず迅速な第一線配備をめざすことになった。同長官はこれまでになく迅速にISR機材を戦地に配備しようと していた。
  4. そ の結果、空軍はジェネラルアトミックスのプレデターおよびリーパーへの支出を大幅に増やした他、MC-12プロジェクトリバティとしてL-3コミュニケー ションズによるホーカー・ビーチクラフト製キングエア350ERに電子光学、赤外線、情報収集センサーを装備させイラク、アフガニスタンに投入している。
  5. 「ISR は成長分野ですが、購入価格にも十分な考慮をして最新技術を早く戦地で利用できるようにする必要があります。国防長官とは昨年に次期爆撃機でやりとりがあ りましたが、空軍が全体包括的な考えをして選択肢の詳細評価に時間をかけてバランスのとれた判断をしようとしたためです。そのモデルをISR検討にも使っ ています」(ドンレー長官)
  6. ゲ イツ長官が空軍が選択肢を検討し終わるまでは棚上げしようとしている中で新型爆撃機の構想は生まれた。参謀本部議長ノートン・シュワルツ大将がその結果生 まれる機体は「一匹狼」ではないと発言し、ミッション遂行に必要な各種システムを搭載する機体各種と共通項を持つものになるとの意味だった。これで大幅に 次期爆撃機の要求性能の範囲を狭めて経済性も上がると期待された。「現在の関心は価格であり、調達可能性が計画内容を決定する要因です。空中給油機ではこ の考え方を徹底的に推し進め、次期爆撃機でもこの点を十分配慮しています」(ドンレー長官)
  7. た だしISR機材の整備では大きな課題も立ちはだかっている。まだ決着がついていないのが共用管理目標捕捉攻撃レーダーシステム(JStars)機のエンジ ン換装、地上監視レーダーの性能向上に予算を使うべきなのか、それとも別の方法を採択すべきかという問題だ。後者ではグローバルホークやボーイング737 改装の機体を使うことが構想されている。ノースロップ・グラマンはJStars、グローバルホークの双方で主導的な立場にある。もうひとつはグローバル ホークの運用成熟度が確実に上がる中U-2の退役をすすめるべきなのか、退役させるとしたらいつにすべきなのか。空軍内部ではまだ結論が出ていない。
  8. 空軍にそもそも長距離UASとして数日間数週間飛行が可能な機体、リーパーやグローバルホークを上回る性能の機体への関心はあるのだろうか。またリーパー後継機の構想を空軍は検討しているが、要求性能や調達日程の最終案まで完成していない。

F-35 テストは順調に進展中

Lockheed Wraps Up F-35 Structural Testing

aviationweek.com  Sep 20, 2011     By Amy Butler
                                                        
ロッキード・マーティンの共用打撃戦闘機開発は静的構造テストを完了したことで重大課題5件のひとつを達成し、報奨金の受け取りが期待できる。

今回達成したF-35Cの静的テストはA型B型ではすでに完了している。2011年予定の5つの課題の中では難易度が一番低いとはいえ、同機開発が正しい方向に向かっていることは確実だ。:

同社は2010年に合計6億ドル以上の報奨金を得ているが、今年は35百万ドルを獲得している。さらに以下の各課題につき7百万ドルを手に入れることができる。

*F-35Bの空母運用試験
*カタパルト発信および拘束着艦試験
*ブロック1Bソフトウェアの訓練開始
*ブロック2ソフトウェアを飛行テスト用に使用可能とする
*F-35C艦載型の静的モデル公試
同 社F-35開発統合担当執行副社長トム・バーベッジTom Burbageによると特別装備の二機のF-35B短距離離陸垂直着陸型(Stovl)を揚陸艦ワスプに搭載する準備が進んでおり、10月第一週に実施す るという。これが艦載公試の皮切りで艦艇と同機のインターフェースを見ることになる。公試期間中に合計67回の垂直着艦をワスプで試す予定だ。

こ れとは別にF-35テストチームと米海軍はジェット噴射偏向板のテストを実施している。同機の飛行運用の効果測定として偏向板は艦と搭載機を発進時の高温 ジェット噴射から守る役目がある。バーベッジによると現状の偏向板を改修する必要なく、F-35Cを空母に導入できると確認できた。同機の空母上の公試は 来年春に開始となるという。

現時点でStovlテストは合計156回実施され、ロッキード・マーティンによるとテスト飛行で一時中断はあったものの、年間計画では8%計画を先行しているペースだという。本年に入ってからの飛行回数は以下のとおり。

*F-35Aによる通常型離着陸 314回
*F-35B Stovl: 226回
*F-35C艦載型 102回 
 
テストは順調に進んでいるが、資金確保では逆風状態だ。バーベッジによると同社は2013年度予算で上院歳出委員会国防省委員会が提唱している大幅予算削減の効果を慎重に検討しているという。

2011年9月20日火曜日

F-22飛行運用再開へ

U.S. Air Force Clears F-22 Fleet For Flight  

aviationweek.com Sep 19, 2011

                                 
米空軍はF-22の飛行再開を9月21日付で認め、パイロットへの酸素供給を強化する形で進めると議会に19日に報告した。
  1. ラ プター各機は5月3日以来地上待機となっていた。パイロットに低酸素症の兆候が発見されたため。空軍科学審議会が調査に乗り出したが決定的な原因は見つ かっていないことが議会に報告されている。かわりに搭載する酸素発生器(Obogs)がパイロットに適度の酸素を供給しなかった理由には複数の要因があっ たのではないかと調査を進めている。
  2. この問題により空軍はF-15C部隊の再編成を進めている。また機体の点検を強化し、訓練や防護策でパイロットに生理学的なテストも実施している。
  3. 同審議会は「残る問題の解決」に今も取り組んでおり、最終報告は今秋の末の予定だ。
  4. Obogsの欠陥により2010年11月に発生したアラスカの第525戦闘機中隊のF-22喪失事故が発生したと見られる。同機のパイロットは機体脱出せず死亡。墜落地点に大きな穴ができていることから機体が高速急角度で地面に衝突したことが伺われる。
  5. Obogs はF-22向けは英国のハネウェルが制作したもので、F/A-18は米国のCobham(旧ベンディックス)が納入している。ただし作動原理は共通で、エ ンジンのブリードエアを分子レベルで振るいにかけ酸素を発生させ、窒素他のガスを吸収して、パイロットにはほぼ樹酸素の状態で送風する。
  6. これに対し空軍は口を閉ざしており、今回の地上待機でラプターはリビア作戦にも投入されず、光学な同機の存在が改めてワシントンでは厳しく見られていた。

2011年9月18日日曜日

NRO長官が近況を語る


NRO Chief Protects Tech, Procurement Budgets

aviationweek.com Sep 16, 2011



米国の極秘情報収集衛星群の状態は良好、かつ現在開発中の次世代宇宙機の進捗も良好だと極秘宇宙機を設計、運用する国家偵察局 National Reconnaissance Office (NRO)長官が発言している。

  1. ブ ルース・カールソン空軍大将(退役)Bruce Carlsonは同局の科学技術開発予算規模を「維持」していると強調している。これまで科学技術開発予算は同局予算の8%台であったが、近年は5%近く に下がっていた。この予算で革新的な技術の配備につながる先端的な業務が支えられている。
  2. 予算削減が求まられるのであれば、職員や技術の現行レベルを維持するの使われている業務予算を削減する道を選ぶと同局長は語る。ただし、これによりNROが迅速に対応する能力が損なわれる。
  3. 軌道上にある衛星の多くは旧ソ連の情報データ収集に特化した設計だとカールソン局長は語り、NROは反テロネットワーク活動を支援する方向に大きく方向転換しているという。例としてアフガニスタンの即席爆発物(IED)を作動前に探知することに成功している。
  4. NRO の課題は通信情報・画像情報含む多様な情報を統合して伝達することで、局長は「数分間以内に実施できる」と「レッド・ドット」計画の例を挙げる。名前の由 来は陸上兵士がもつデジタル地図上にIEDの所在地を疑われる地点に赤い点で表示するためだ。これは通信情報データを携帯電話等の発信機に転送するもの。 携帯電話はIED爆破に使用される。
  5. また、現場で使用される通信機器について以前は半径3マイル以内の範囲で捉えていたが、現在は数メートル単位で可能だという。これは敵の通信手段が米国の誘導兵器の目標になるということだ。
  6. 寿命3年から4年といわれる衛星画10年たっても機能しているとカールソン局長は語り、新型衛星の開発調達計画も順調に進捗しているという。

2011年9月17日土曜日

米上院の動き 国防予算削減へ対応し勘定を潜りこませる 



Senators Shift Billions in Defense Off Budget

aviationweek.com Sep 16, 2011

上院歳出委員会の2012年度国防予算の調達削減規模は予想より三分の一程度少ないもの。同委員会が9月15日に可決した案では基本調達を60億ドル削減し、29億ドルを予備費に編入しアフガニスタンでの戦闘活動の支出に充当する。
  1. 同案の予算項目合計22点には国防総省でも最高度の優先順位がついているMQ-1Aグレイイーグル、MQ-8ファイヤースカウト、MQ-9リーパーといったUAV各機が含まれている。
  2. その他調達にめどが付いた装備には陸軍向け155-mm軽量榴弾砲、ロケット対抗迫撃砲、ハンビーの仕様強化が含まれる。
  3. 22 件合計で33億ドルとなるが、2012年度予算編成の当初は全てが基本予算でゼロ査定となっていた。同委員会は調達規模を削減したものの、9割相当の予算 を臨時戦闘勘定に潜り込ませ、戦闘運用及び保守活動でも同じように本予算から米中央軍の広報、隊員家族支援その他の予算を財源に切り替えている。
  4. 9 月13日に上院国防歳出小委員会はペンタゴンは不要予算50億ドルがあり、兵員数削減によるものだと発表。それに対し歳出委員会による法案はオバマ政権が 求める総額1,170億ドル戦闘継続予算にはほとんど手をつけていない一方で260億ドルを基本予算から削減し、予算管理法が求める赤字削減に対応しよう としている。
  5. 計上された予算は一見アフガニスタン国内の戦闘活動に関連しているように見えるが、戦端を切ってからワシントンの予算専門家たちは戦闘継続に必要な支出を見極め、その結果基本予算に残る規模はいくらあるべきかを巡り議論を続けてきた。
  6. 2006 年10月に国防副長官(当時)ゴードン・イングランドGordon Englandは議論の種となったメモを発表し、戦闘勘定に「対テロ世界戦争」に必要な経費のすべてを盛り込み、戦闘中に喪失した装備の改修・修理も可能 とすべきと主張した。その結果、戦闘活動を理由とした支出は4割増加し、その中にロッキード・マーティン共用打撃戦闘機開発予算も計上された。
  7. 補正国防支出には伝統的に本予算要求と同程度の議会による精査は必要としないもので、補正支出そのものが緊急性があるためとされてきた。その反面民主党はジョージ・W・分ブッシュ前政権の予算管理の不備を攻めてきた。
  8. この結果戦闘活動支出にいっそう厳しい定義が導入されることになり、オバマ大統領の選挙公約がこれを求めてきた内容と同じだ。そうなるとオバマ政権が上院の動きに同調すれば、公約の後退と受け止められるおそれがある。

2011年9月10日土曜日

T-50を世界各国に売り込もうとするロシア




Russia Sees 1,000 T-50 Sales

aviationweek.com Sep 9, 2011
  1. ロシアはT-50戦闘機の需要は1,000機にのぼるものがあると見込んでいる。
  2. 同機導入を契約済みのロシア、インドに加え、10カ国以上で274機から388機の商談があるとロシア国防省関連団体のTsamto分析センターは見ている。
  3. 輸 出先にまず想定されるのが、アルジェリア、シリアで、販売が成立するのは早くて2025年の予想。ラテンアメリカではブラジル、ヴェネズエラ、アルゼンチ ンが先陣を切ると見られ、この中ではヴェネズエラがまず2027年以降に導入する予測だ。同国には中国も戦闘機を売却している。
  4. その中国にも同期販売の可能性は排除しないが危険性があると指摘する。そのひとつが同機の知的所有権をロシアが守ることができるかで、スホイSu-27を過去売却した結果、見事にコピーされた苦い経験がある。
  5. その他にアジアではインドネシア、マレーシア、ベトナムが輸出先として有望だ。
  6. Tsamtoは西側ヨーロッパも同機の購入可能性はあると予測している。


2011年9月4日日曜日

MALDの新しい作戦用途

Old Weapons, New Tricks 

aviationweek.com Sep 1, 2011

                                               
ISR(情報収集・偵察・監視ミッション)に電磁スペクトルの領域が加わり、新しい性能が浮上してきた。サイバー戦、電子・情報戦能力だ。

  1. そ の中で2つの兵器体系が注目を集める。ひとつが高速対放射線ミサイル(HARM)により地対空うミサイル(SAM)陣地を運動学敵に破壊する策とミニチュ ア上空発射おとり miniature air-launched decoy(MALD)でSAMを惹きつけてその位置を電子的に探知する方法だ。電子ネットワーク攻撃でこの2つが重要となり今後はその性能が拡充 されるだろう。
  2. MALDは各種航空機の特性をシミュレートすることで おとり目標となる。2010年にF-16とB-52仁搭載されて実戦化された。
  3. 「B- 52機内でMALDはSmart1760バスに接続され操作員あるいは情報部員が飛行中にプログラムを変更できます。発射後のMALDは特定の機体として 認識され、SAMやレーダー基地を目標とすることができます。その情報から敵のIAD(統合防空網)の種別や位置を割り出すことが可能です。または HARMを使って敵施設を破壊することができます」(レイセオンのMALD-Jプロジェクト責任者).
  4. 米 海軍もMALDに関心を示し、F/A-18E/Fスーパーホーネットに装備する可能性が高い。作戦立案では攻撃ジャミング装置の検討をしており、MALD は独立したミッションを近接範囲出実施可能であるので有望な候補だ。MALDの重量は300ポンドを下回り、ここに80ポンドの燃料が入っている。これで 2時間以上の飛行が可能で500マイルの有効距離がある。空軍、海軍が着目しているのは電子ジャミング機能を搭載した派生型MALD-Jで空軍が2012 年に配備を開始する。
  5. レ イセオンはMALD-Vの採用を期待する。これは弾頭部分に任意のペイロードを搭載できる設計だ。同社はここに電子攻撃・通信ペイロードの搭載を検討中 で、高出力マイクロウェーブまたは無線周波数バースト装置を組み込む。このため同社はその分野ヲ専門とする企業を買収している。
  6. MALD は外寸が小さいことから探知は難しく、目標に接近できる点で有人機や大型無人機よりも優位性がある。これにより多くのミッションに最適と考えられており、 電磁パルスによる電子攻撃への応用も想定される。これにより無動力誘導爆弾と長距離巡航ミサイルの間のギャップを埋めることができる。運用は上空 35,000フィート上限で可能で、飛行速度はマッハ0.2から0.9の間になる。
  7. こ れに対しHARMに非運動性志向エネルギー弾頭を搭載することで、対電子兵器とする検討も進むだろう。HARMコントロールセクション改修の製作が進行中 だ。GPSと性能向上型IMU(慣性測定装置)を組み合わせて命中精度を上げるのが目標。付随被害、自軍攻撃を減らすのも期待できる。