2012年2月11日土曜日

防衛装備を充実させるシンガポール



Singapore Seeks Tankers, Tranports, ASW

aviationweek.com Feb 10, 2012

シンガポール空軍(RSAF)向けにエアバスミリタリーが 大きく受注を伸ばす見込み。調達リストには空中給油機、戦略空輸機、対潜固定翼機があり、今後数年にわたり同国が東南アジアで最大の防衛装備購入国にな る。2011年度の国防予算は121億シンガポールドル(96億ドル)で政府予算の26%、同国GDP比5%相当。人口5百万人の同国の一人あたり国防支 出はイスラエル除くと世界トップクラスだ。
  1. シンガポール独立の1965年以来国防は最優先事項であり、同国を創り上げたリー・クアン・ユーは最近の著書「厳しい真実」の中で「強固な国防なくして、シンガポールは存在できない。隣国の衛星国家あるいは弱くおびえる事態に陥るだろう」と述べている。
  2. 新型空中給油機は現有のボーイングKC-135R(4機)の更新用だ。後継機種にはボーイングF-15SG部隊をマウンテンホーム空軍基地(アイダホ州)に海外展開させる際の支援が求められる。
  3. ボー イングKC-46Aが通常なら候補機種に上がるが、ボーイングとしてははすでに米空軍向けKC-46Aを18機納入する責務をかかえており、他国向けに早 期納入を実現の余裕がない。ボーイングはKC-46Aの海外向け納入は一番早くで2018年になりそうだと本誌に語っている。それではシンガポールには遅 すぎる。シンガポール空軍はKC-135Rの保守点検に相当の労力が必要としており、イスラエル航空産業(IAI)による767の給油機転換という選択肢が浮上する。
  4. よく見落としがちだがシンガポールとイスラエルの国防協力は密接で、シンガポールの今後の装備購入ではイスラエル企業が目立つ。
  5. ただし業界筋によると最右翼候補はエアバスミリタリーの多用途給油輸送機(MRTT)だという。オーストラリア空軍のA330MRTTへシンガポール空軍が関心を寄せている。
  6. シンガポールテクノロジーズエアロスペースは政府関連企業で空軍の各機種の保守点検を行なっており、シンガポール航空が 運用するA330の重メンテナンスを実施していることから構造を熟知している。A330MRTTは111トンの燃料を主翼と水平尾翼に搭載し、機体主要部 は人員輸送(380名)に利用する。貨物輸送であれば軍用パレット26基を格納できる。またエアバスミリタリーA400MおよびボーイングC-17にも関 心をよせいているという。
  7. シンガポール空軍が現在運用しているのはロッキード・マーティンC-130H(5機)だが東南アジア域内での運用しかできない。シンガポールが必要とするのは軍事訓練の場所であるオーストラリア、台湾、フランス、米国に人員・貨物を輸送する長距離空輸能力だ。現在はシンガポール航空あるいはアントノフから大型貨物機をチャーターしている。
  8. これ以外に対潜哨戒機(ASW)需要があり、現行フォッカー50哨戒機(9機)の後継機となろう。これは隣国における潜水艦整備が進んできたことへの対応だ。候補としてアレニアATR42MP、ボーイングP-8Aポセイドン、IAI/EltaシステムズボンバルディアQ400改造)がある。
  9. シ ンガポールは日本がロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機を採択したことを興味深く見ている。米国と密接な軍事関係がある同国だが、事実昨年12 月の海外軍事販売(FMS)に関する議会調査報告によるとシンガポールは2010年に530百万ドル相当のFMS利用で合意しており、世界上位10カ国に 入っている。
  10. さらにシンガポールは艦艇搭載用の小型カタパルト発進型のボーイング製スキャンイーグルUAVに注目しており、海賊対策も装備品調達の大きな動機になっている。


コメント 日本としてはC-2輸送機、P-1対潜哨戒機にも関心を示してもらいたいところですね。特にシンガポールと日本の関係を見てみても。ただし問題はコストでしょうか。

2012年2月4日土曜日

F-35は中国サイバー活動の最大の標的か

China's Role In JSF's Spiraling Costs

aviationweek.com Feb 3, 2012  
                                                       
F- 35共用打撃戦闘機の上がり続けるコストでどこまでが中国によるサイバー技術盗用の影響なのだろうか、また第5世代戦闘機の被探知性と電子戦の追加対応が どれだけ必要となっているのか。まさしくこの質問が予算作成者が問いかけている内容であり、その疑問は正当なものに映る。ペンタゴンと業界関係者によると 他にも秘密の兵器開発計画でも同じ状況になっているようだ。情報侵入が発覚したのが三年前で、中国のハッカー集団は安全なはずの計画の進捗状況の会議の内 容を密かに覗いてたのだという。
  1. 秘密漏洩により設計のし直しが一部重要装備で必要になっている、ソフトウェアの書き換えも必要となっているとの見方はほぼコンセンサスとなっている。
  2. データ流出によりコストがどれだけ上昇しているか、運用上の弱点が生まれているかを米国関係者が公に話し始めたのはごく最近のことだ。
  3. ジェ イムズ・クラッパー国家情報長官James Clapper, director of national intelligenceによるとインターネットにより「著しい盗難が知的財産・知的所有権で発生しており、あきらかにF-35が標的だ」と認めており、 「サイバー攻撃は個人によるもの、国家組織によるものにせよ、何らかの対応が必要だ」と発言。
  4. 国 防情報庁副長官デイビッド・シェッドDavid Shedd, deputy director of the Defense Intelligence Agencyは「情報漏えいで敵側にこちら側の内情を知られたのは打撃です。情報機関にとっても打撃は大きい」と発言。
  5. ただF-35開発に近い筋はサイバー侵入の損害規模についてそこまで明瞭に発言していない。
  6. 「運用上も日程上もサイバーデータ盗難により問題が起こっています。さらに弱点の補強とソフトウエアの改修でコストが追加になるという問題もあります」とF-35と情報各機関の双方に詳しい戦闘パイロットが話してくれた。
  7. こ の問題は2013年度国防予算案の説明時にもペンタゴンが触れている。「兵器体系のサイバー上の弱点には注意が必要。これはわが国の兵器、相手方の兵器双 方を指します。現代の航空機は高度にコンピュータ化されており、他のコンピュータシステムと同様の注意が必要なのです。(アシュトン・カーター Ashton Carter国防副長官)
  8. 2011 年7月にウィリアム・リン国防副長官(当時)が指摘していたのは海外の情報機関により実際に米国のある国防契約企業で被害が発生しており、24千にのぼる ファイルが流出しているとのことだった。流出した情報で敵方が同様なシステム開発に進む、同様の攻撃・防御手段を講じるかどうかで再設計の範囲が変わって くる。被害は数百億ドル単位になるとの評価もある。
  9. たしかにこの心配を裏付ける証拠がある。中国は新型機の設計を数年おきに発表しており、最近ではJ-20ステルス攻撃戦闘機の試作型や無人機数種類がグローバルホークやセンサークラフトのような米国設計に著しく類似しているのだ。
  10. . ペンタゴンは2017年にかけて合計179機の調達を減らす意向で、2013年予算案に盛り込むが議会によりこれが可決されると、早期に生産量拡大と生産 単価引き下げで海外販売増を実現したいロッキード・マーティンの思惑は実現できなくなりそうだ。ペンタゴンの理屈は生産ペースを落とすことでまだ解明して いない問題点による打撃を緩和できるというもの。さらにブロックIIソフトウェアも開発が遅れている。
  11. ハッ キングのおそれからF-35の多機能高性能データリンク(MADL)は棚上げになっている。F-22,B-2にも追加装備となる同リンクでステルス機の通 信は安全に行えるはずだった。MADLは大量データ処理と周波数の頻繁な変更、さらに対妨害性能を特徴とし、フェーズドアレイアンテナにより無線信号を送 受信するものだ。.
  12. 開 発期間が長期になっていることがF-35開発の最大の弱点だ。JSFの情報処理システムはサイバー諜報活動(最近の用語では高度持続脅威)を想定せずに設 計されているという。ロッキード・マーティンも関係協力企業でハッキング被害が発生していることを認めており、国際調達先の多さから言ってもF-35が最 大の標的になっている可能性がある。2009年の事例はF-35ではなく別の極秘開発計画を狙ったものだった。侵入者はデータを抜き出しただけでなく、オ ンライン会議を姿を見られることなく聴講していた、と関係者は語る。侵入が発覚したあとは当該極秘計画は一時停止となり、再始動のために費用の高い複雑な 保安システムを立ち上げなくてはならなかった。
  13. F-35では他の問題も発生している。上院関係者によるとF-35開発であまりにも問題が多いため有人戦闘機への相対的な関心が減少してきたという。
  14. 「JSF で最大の問題は軍にとって有人戦闘機の価値が無人戦闘機との比較で大きく変化していることではないでしょうか。アフガニスタンで前線航空管制を担当してい た海兵隊関係者と話してわかったのはF/A-18なら呼び出しても15分しか滞空できないが、無人機のリーパーなら8時間上空に待機できるのです。戦闘機 パイロットの時代はおわりました。軍にとって無人機・有人機の価値判断で地殻変動が起こっています」
コメント F-35が本当に最後の有人戦闘機になるのかどうか。仮にそうなるとしたらF-35の大きな反面教師としての役目になるのかもしれませんね。ところで、中国のサイバー攻撃がかなり深刻なことは明白ですね。今年はサイバー防衛がひとつのキャッチワードになるでしょうが、日本のサイバー防衛はどうなっているのでしょうか。


2012年2月3日金曜日

米空軍の削減規模が明らかに

                             

U.S. Air Force Reveals Budget Cut Details

aviationweek.com Feb 2, 2012

財政赤字、予算削減への対応として米空軍は戦闘機123機、輸送機133機の削減策を提案する。
そ の他機種合わせて286機を削減するが、戦闘機123機は7飛行隊で戦術実戦部隊6と練習部隊1だ。このうち102機がA-10Cで、21機が旧型F- 16であるのは地上兵力の削減で支援機の需要が減るため。A-10 は246機が残る。ドンレー空軍長官が明らかにした。
  1. 開発の進捗を遅らせる各プログラムの予算は確保される。その例として長距離攻撃構想の一連の計画(新型爆撃機含む)、KC-46A空中給油機、高性能情報収集監視偵察(ISR)機材、F-16などがある。ただ装備近代化の進展がすべてペースを落とすわけではない。
  2. 「F- 35の開発遅延の余波でF-16近代化を350機対象に実施する方針を打ち出しました。一方、F-35の量産を遅らせますが、調達規模で今のところ変更は ありません。通産生産機数が1,000機ないし1,600機になる2020年代に全体規模を検討することになるでしょう(ドンレー空軍長官)
  3. ISR機材での変更では無人機が現状65機を85機に増強する。有人機では変更無く、RC-135 リヴェットジョイント、コブラボール、コンバットセントの各機材を維持する。装備品の更新には予算を十分準備する。
  4. 「RQ- 4グローバルホークのブロック30(18機)、RC-26(11機)のほか作戦中に損傷を受けたE-8Cジョイントスターズ一機を退役させます。このうち グローバルホークについてはコストが限界を超えたのが理由です。性能はほしいのですが、このコストでは無理です。代替としてU-2があったのですが、現時 点ではブロック20のグローバルホークが使えますし、移動目標の捕捉能力が高いブロック40の導入を進めます」(ドンレー長官)
  5. 人員削減は合計9,900名で、このうち空軍3,900名、州軍5,100名、900名が予備役だ。人員減を緩和するため州軍人員は    期間延長の場合は無人機操縦とISR部門に配属する。   
  6. 予 算削減の流れは昨年8月の赤字削減のための債務上限設定法から始まっている。空軍長官は運用上の工夫でこの流れに対応使用という考え方だ。昨年12月17 日はこの二十年間ではじめてイラク上空にわが国が軍用機の飛行がない日になっている。リビア作戦はその反対に、空軍が緊急要請に数時間で対応したという。 つまり、規模は縮小しても柔軟な対応が必要ということだ。