2025年10月30日木曜日

米陸軍航空部隊はウクライナ戦争から何を学んでいるのか(TWZ)

 

ウクライナ戦争が陸軍航空部隊の未来を変えた理由と、無視してよい教訓を米陸軍将官が語っている

Not every lesson in Ukraine is applicable to U.S. Army aviation a top general told us.

(米陸軍写真、スペシャリスト・ジャスティン・ヤーボロー撮影)

クライナとロシア両国が密集した従来型前線防空システム場合によってはドローン基地攻撃多量のヘリコプター損失を被る一方で、米陸軍は自軍の回転翼機部隊の将来に教訓を適用するにあたり慎重な姿勢を取っていると、最高指揮官が語った。米陸軍航空センター・オブ・エクセレンス司令官のクレア・ギル少将 Maj. Gen. Clair Gill, commanding general of the U.S. Army Aviation Center of Excellence は、ウクライナで起きていること全てが米陸軍に当てはまるわけではなく、正しい教訓のみを汲み取ることが極めて重要だと断言している。

「ウクライナを議論する際、学ぶべき教訓は多い」とギル少将はワシントンD.C.で開催された米国陸軍協会(AUSA)年次会議の場で語った。「学ぶべき正しい教訓に焦点を当てている」「ドローンを用いた位置的戦闘――ウクライナでは今まさに第一次世界大戦をドローンで再現しているようなものだ――と、米陸軍の戦い方には違いがある。特に、統合兵科チームの一員として、また統合軍の一員として戦う場合だ」と少将は付け加えた。「このため注目すべき点は多いが、彼らは夜間飛行を行っていない。我々の作戦計画とはちがう。作戦実行時に我々が動員できるあらゆる集団的要素を投入していない」。

Paratroopers assigned to "Cavemen" Bravo Company, 2-82 Aviation Regiment, 82nd Combat Aviation Brigade, 82nd Airborne Division prepare and take off for night flight on April 24, 2024. The Black Hawk is the military's most versatile helicopter, suited for a variety of missions, including command and control, air assaults, medical evacuations, and lift operations. (U.S. Army photo by Sgt. Vincent Levelev)

2024年4月24日、第82空挺師団第82戦闘航空旅団第2-82航空連隊ブラボー中隊「ケイブメン」所属の空挺兵が夜間飛行の準備と離陸を行う。(米陸軍写真:ヴィンセント・レベレフ軍曹) ヴィンセント・レベレフ軍曹

ウクライナとロシアは作戦の一環として欺瞞戦術を用いている可能性が高いが、「しかし…夜間を利用し、地形を利用し、視界不良環境を利用することで、我々には非常に優れた能力と訓練された要員がいる。ウクライナ側も同様だ」とギル少将は指摘したが、ロシアの訓練水準については懐疑的だ。

「ロシア側が昼間に高度を保ち同じルートを飛行する様子を見て、疑問に思う撃墜事例を目にした。彼らの飛行方法と我々の飛行方法を同列に扱えないと思う。我々には学ぶべき点が多いが、良い部分まで捨ててはいけない」「これは若い航空士官たちに、陸軍が航空機を削減し無人航空システム(UAS)に投資する判断から何を学ぶべきか話す際の核心だ」とギルは付け加えた。「我々は変化を迫られている。現実を直視せねばならない。回転翼機の時代が終わったわけではない。運用中の機体は全て、長期間にわたり運用を続けることになる」。

陸軍航空資産にはUH-60 ブラックホークCH-47 チヌークAH-64E アパッチに加え、大幅な改造を施したMH-60M ブラックホークMH-47G チヌークAH/MH-6R リトルバードヘリコプターがある。今後10年間で、ベルMV-75バラー・ティルトローター機も運用開始予定だ。詳細は後述する。

AH-64Eアパッチは今後も運用されるだろうと、陸軍将官は言う。(米陸軍

ウクライナにおけるヘリコプターの運命から作戦開始前に極めて詳細な計画を策定する必要性を痛感させられた、と陸軍航空未来能力担当のフィリップ・C・ベイカー准将 Brig. Gen. Phillip C. Baker, the Army’s aviation future capabilities director は語った。

「作戦計画に優れた計画ツールを導入する能力が必要だ」とベイカー准将は説明した。「計画ツールは、戦闘システム・情報・機動・火力といった全領域にわたるデータ統合で駆動される。NGC2[次世代指揮統制システム]は、計画段階の早期段階で可能な限りの情報を統合的に取り込むデータ経路を提供する。これにより有人・無人両方の搭乗員は、敵の動向、電子スペクトル、気象状況など、突入前にあらゆる要素を把握した上で、任務セットを完全に計画できる」。


さらに「戦場データとその伝達速度を考慮すれば、作戦指揮所内や航空機内でデータを保持可能とする必要がある。そこで今年度は、新たな通信能力をプラットフォームに統合する取り組みを強化している。3月の実験では衛星通信やメッシュネットワークをプラットフォームに導入し、作戦指揮所内のプラットフォームへデータフローを誘導した」。

ベイカー准将は、スタンドオフ兵器能力も重要と指摘した。米軍が現在「発射効果」と呼ぶ広範な概念は、無人航空システムを様々な任務用に構成したものを指す。偵察や、他の航空プラットフォーム、地上や海上から発射可能な徘徊型兵器としての任務などだ。陸軍にとって、長距離兵器の一例として陸軍ヘリコプター向けに配備が進むのがイスラエル設計のスパイク-NLOSだ。これによりアパッチは遠方の移動目標を精密攻撃できる。さらに長射程の「発射効果」も登場する見込みで、数十マイル、さらには数百マイル離れた目標を欺瞞・妨害・攻撃可能なものも含まれる。

「発射型効果の役割は、8キロメートル先のヘルファイアのような近接攻撃ではなく、何キロも離れた位置から敵と接触し、敵の行動を把握した上で効果を発揮するスタンドオフ能力を提供することだ」とベイカー准将は述べた。「これが発射型効果の真の役割である」

ベイカー准将はさらに、新型・改良型センサーが回転翼機の生存性を高めると付け加えた。視界不良環境下での運用能力を向上させるためだ。

新型センサーを搭載することで、最高の能力と生存性を発揮できる環境下での真の運用を実現したい」とベイカー准将は指摘した。「つまり夜間や砂塵環境、昼間以外の運用が必要な環境下でも活動可能にするためだ。このためプラットフォームにセンサー能力を導入し、夜間作戦能力をさらに強化している」。

ウクライナから得られる教訓、特に中国のような対等な敵との潜在的な戦闘における教訓について問われ、ベイカー准将は「それは本当にスタンドオフ射程に結びついている。スタンドオフが重要だとわかっている。交戦圏外に留まり、一種の安全地帯で活動できるようにする」と述べた。

陸軍はさらに「データネットワークに依存し、情報を迅速に伝達することで、素早く攻撃を仕掛け敵に影響を与えたい」とベイカー准将は付け加えた。

ウクライナから得た教訓は、陸軍がMV-75ヴァラーを開発する上で参考になっていると、航空プログラム執行責任者のデイビッド・フィリップス准将 Brig. Gen. David Phillips, program executive officer of aviation は本誌に語った。

「装備の観点と維持管理の観点から言えば、MV-75で下している装備決定は、こうした教訓と直接結びついている。発射効果の統合方法、ネットワークの統合方法、プラットフォーム上の生存性、プラットフォーム外の生存性、そして航空機自体の生存性の統合方法だ。我々は今まさに、来春に迫る重要設計審査に向け、こうした教訓を設計作業に確実に統合している」と述べた。

The U.S. Army's Future Long-Range Assault Aircraft (FLRAA) tiltrotors will be designated MV-75s, the service announced today at the Army Aviation Association of America's annual Mission Solutions Summit.

米陸軍の次世代長距離攻撃機(FLRAA)ティルトローター機はMV-75と命名された。(ベル社)ベル

ロシア軍ヘリコプターが基地への攻撃で多数喪失している状況を受け、陸軍航空ミサイル司令部のロリ・ロビンソン少将 Maj. Gen. Lori Robinson, commanding general of Army Aviation and Missile Command は、空域の監視が重要だと述べた。

上空を警戒すべきということが重要な教訓だ」とロビンソン少将は語った。「地上での補給活動も例外ではない。これを機動化するための方法を模索している。地上に物資の山を置かない。そして、航空機に搭乗している兵士であれ、地上で航空機を維持している兵士であれ、全員が頭上を警戒しなければならない」。

ウクライナから得た教訓を考える際、ギル少将が特に強調したのは一点だ。有人回転翼機は今後何年も運用されるが、無人システムが最終的に最前線に立つことになる。

「陸軍は無人化能力への移行を決断した」と同少将は指摘した。「ウクライナ戦争から得た教訓は、無人システムで先制攻撃を仕掛けることだ。効果を生み出すため、注意をそらすため、何かを発見するためでも、まず無人システムを導入する。人間でないとできないことを人間にやらせる必要がある時だけ、人間を投入するのだ」。


The Lessons U.S. Army Aviation Is Learning From The War In Ukraine

U.S. Army general tells us how the war in Ukraine has changed Army aviation's future and what lessons are best left unheeded.

Howard Altman

Published Oct 16, 2025 2:43 PM EDT

https://www.twz.com/air/the-lessons-u-s-army-aviation-is-learning-from-the-war-in-ukraine

ハワード・アルトマン

シニアスタッフライター

ハワードは『ザ・ウォー・ゾーン』のシニアスタッフライターであり、『ミリタリー・タイムズ』の元シニアマネージングエディターである。それ以前は『タンパベイ・タイムズ』のシニアライターとして軍事問題を担当した。ハワードの作品は『ヤフーニュース』『リアルクリアディフェンス』『エアフォース・タイムズ』など様々な媒体に掲載されている。


2025年10月29日水曜日

米空軍が空対空ミサイル満載の全翼機を戦闘機支援用に検討中(TWZ)―これを見るとドッグファイトの時代は去り、単座小型戦闘機では将来決定的に戦力不足なることがわかります。

 

当ブログが主張してきたように戦闘機の概念が大きく変わり、「ミサイルトラック」として一定の大型化が必要となると、B-21のような機体が空の戦艦として浮上しそうですね。

米空軍は、戦闘機の作戦を支援するため、空対空ミサイル多数を搭載する全翼機の使用を検討している

USAF eyes large flying wing arsenal ship.

USAF

空軍は、空対空ミサイルを搭載した「兵器運搬機」として機能するステルス全翼機の配備を検討していると報じられている。この構想については、過去に議論しており、ステルス爆撃機B-21レイダーのバージョンとの関係でも取り上げられた。Air & Space Forces Magazine記事によれば、空軍はこの空対空任務を担うため、その他全翼機プラットフォームも検討しているという。

空軍高官は『Air & Space Forces Magazine』に対し、この種の兵器搭載機はインド太平洋地域における中国との高強度紛争への対応策として検討されていると述べた。記事によれば、ステルス飛行翼機は「数十発」の空対空ミサイルを装備するとある。

今月初め、カリフォーニア州エドワーズ空軍基地に到着した2機目の試作機B-21。USAF

Air & Space Forces Magazine誌の取材に応じた元空軍高官によれば、過去にはB-21の対空戦闘機バージョンについて「説得力のある議論はなかった」という。議論はあったものの。しかし中国との空戦の可能性とその急速に進化する航空戦闘能力が、この立場を変えたようだ。

現在、検討はまだ初期段階だが、現在飛行試験の真っ最中にあるB-21とは異なるプラットフォームを採用し、他のメーカーとの協力を模索している事実は、少なくとも興味深いと言える。

同関係者は本誌に対し、この種の兵器搭載機は、空軍が今後数年で配備を予定する新型共同戦闘機(CCA)ドローンの補完、あるいは代替手段となり得ると説明した。「CCAで空を埋め尽くす以外に『手頃な大量戦力』を達成する方法は存在する」と述べた

基本的な作戦シナリオでは、兵器搭載機がF-22、F-35、将来のF-47などの有人戦闘機に対し、追加の空対空「弾薬庫」を提供する。戦闘機は目標の探知と指定を担当し、その後、兵器搭載機がスタンドオフ距離で発射した長距離ミサイルが目標を攻撃する。CCA もこの組み合わせに加わる。F-35 および F-22 の乗組員が最も不満に感じているのは搭載できる空対空ミサイルの数が少ないことである。この問題を緩和するために、内部搭載に最適化された小型のミサイル射程の短いミサイルが開発中である

兵器搭載機が有人か無人かについては言及されていないが、無人またはオプションで有人となる B-21 の構想は、当初からこのプログラムの一部だった。さらに、B-21を補完するドローンの開発はすでに進んでいる。これは当初、爆撃機ドローンとして提案されたものだったが、このような設計は、空対空兵器搭載機としても同様に活用できるだろう。

B-21に空対空任務を与えるアイデアが過去にも提案されていたことも興味深い点だ、

2019年当時、太平洋空軍(PACAF)の航空・サイバー作戦部長を務めていたスコット・プレウス空軍少将は、B-21が「空対空能力も備え」、ステルス性を活用して「システム群と連携し自己防衛できる」可能性について言及していた。

この発言以前から、本誌新型ステルス爆撃機が空対空能力を含む複数任務を遂行する可能性を検証しており、空軍当局者もその多機能性を繰り返し示唆していた。

「JDAMから巨大貫通爆弾(MOP)超長距離空対空ミサイルに至るまで、B-21が搭載する多様な兵器は、レイダーの高い飛行高度の恩恵を受ける」とTWZは2017年時点で既に記していた。「将来的にはレーザー兵器でさえ、この性能特性により射程が延伸される可能性がある」。

昨年12月、空軍参謀総長デイビッド・オールビン大将は、F-47開発につながった次世代航空優勢(NGAD)構想計画の再評価の一環として、B-21の役割・任務拡大を排除していないことを確認した。

空軍の最新構想には、B-21とは異なる機体を用いて同等の空対空任務を達成する選択肢も含まれている。これは明らかに、ノースロップ・グラマンが基本型爆撃機に加え、空対空任務を想定した派生型を製造する能力に対する懸念に基づいている。同時に、完全仕様のB-21は極めて高価な資産となり、兵器運搬機としての役割にはその高度な性能レベルは不要だろう。センサーや通信能力を削減し、パイロットを省略しステルス性能を若干低下させた簡素化モデルなら、B-21の基本機体を流用しつつ価格を大幅に抑えられる。

空軍が公に表明している計画では、少なくとも100機のレイダーを購入する方針が長年維持されてきた。しかしB-21部隊は最終的に大幅に拡大する可能性がある。一方、空軍グローバルストライクコマンド(AFGSC)はB-21の生産量増加に向けた選択肢を検討しており、新たな生産施設の開設もその一環として検討されている。

現在の予測では、ノースロップ・グラマンは2030年代初頭までに年間10機のB-21を生産する見込みだ。生産量増加のための資金が確保されたとしても、空対空バージョンを追加生産する余力が生まれるかは全く不透明である。

明らかに、新たなステルス全翼機型兵器搭載機を一から開発することは大規模な事業となるが、兵器搭載機用途向けの高性能爆撃機を生産するよりコストが低くなる可能性が高い。同時に、この役割に特化した設計は、B-21だけでなく、機密扱いの領域にあるものを含む他の先進的な全翼機プログラムで開発された技術を活用できる可能性がある。

ステルスドローン「RQ-180」の概念図。Hangar B Productions

B-21の専用空対空バージョンはAFGSC(空軍グローバル戦略コマンド)の支持を得られないかもしれないが、自己防衛用に空対空ミサイルを装備したレイダーは別問題だ。この点は、太平洋軍(PACOM)が中国との将来の戦いを想定した戦争ゲームに、対空兵器を装備した仮想のB-21をはやくも組み込んでいる事実によって裏付けられている。

別の選択肢としては、基本仕様のB-21に対空能力を拡張(あるいは未装備なら新規搭載)することが考えられる。対空・対地兵器の両方を運用可能なレイダーは汎用性を確保し、任務に応じて混合兵装を搭載することも可能となる。なおB-21は現行のB-2スピリットより兵装搭載能力が小さく、少なくとも2号機の写真からは小型兵器用サイドベイが欠如している(開発継続で変更の可能性あり)。

一方でB-21は極めて高価な機体で、空対空兵器に割り当てられた兵装容量は必然的に爆撃任務を損なう。これはAFGSCが歓迎しない点だ。また大規模紛争時には中核的攻撃任務で過重な負担を強いられる。したがって、B-21が戦闘機向け兵器運搬艦としての役割を部分的に担う場合、より多くの機体が必要となり、この役割を引き受けることがAFGSCにとって受け入れやすくなる可能性がある。

一方、この種の兵器運搬機に適した武装を提供し得る長距離空対空ミサイル計画は、明らかに不足していない。

米国では様々な超長距離空対空ミサイル計画が開発中とされているほか、機密扱いの計画も存在する。最も有名なのは空軍・海軍共同開発のAIM-260で、現行のAIM-120 AMRAAMを大幅に上回る射程と新機能・改良機能を備えつつ、AIM-120と同等の外形寸法に収める。レイダー級の航空機ならAIM-260を大量に搭載可能だ。

同時に、B-21と同等かそれ以上のサイズのプラットフォームは、CCAや有人戦闘機の搭載能力を超える超大型兵器、例えば多段式空対空兵器の運搬も可能となる。大型の超長距離空対空ミサイルではAIM-174が極めて有望な選択肢となる。これは艦対空ミサイルSM-6の空対空派生型であり、現在米海軍のF/A-18スーパーホーネットが搭載している。米軍がこれまで配備した空対空ミサイルより射程が長く、下記の動画で確認できるようにインド太平洋戦域に最適化されている。前方展開戦闘機の指示でこれを発射する運用は、戦闘機よりもはるかに多くの兵器を搭載可能なこの新型飛行翼機の役割に極めて適合する。

あるいは、数十発のミサイルを搭載する大型の全翼機を購入する代わりに無人戦闘航空機(UCAV)を導入する選択肢もある。UCAVはCCA(戦闘空挺機)よりも長距離・高生存性を備え、はるかに大きなペイロードを運べる。その結果、戦闘機並みのミサイル搭載量を誇る、より生存性の高いドローンが実現する。空軍の計画からあらゆる種類のUCAVが明らかに欠落している点は、以前詳細に議論した問題であり、その後も追跡調査を続けている

この選択肢が採用されれば、数十発のミサイルを一度に搭載する大型の全翼機型プラットフォームの限界をある程度解消できる。端的に言えば、それらのミサイルは同時に一箇所にしか存在できない。UCAVを多数購入すれば、同時に複数箇所に展開可能となり、この種のドローンを1機失うことは、空軍が数千万ドルもする精巧な全翼機プラットフォームとそのミサイルを損失するよりも好ましい結果となる。

ボーイングのX-45ファントムレイは2000年代後半に開発され、2010年代初頭に飛行試験を行ったが、国防総省の他の無人攻撃機計画と同様に棚上げとなった。(米空軍)

一方、中国は無人攻撃機を含む全翼機ドローンの開発を精力的に進めており、その中には特に大型のものも存在する。実際、最新型の中国機は設計上少なくとも米空軍の新型兵器搭載機コンセプトに匹敵する可能性が高い。ただし具体的な任務や兵装構成は不明だ。具体的には「クランクドカイト」翼型の飛翔翼ドローンで、B-21よりやや小型ながらキネティック兵器搭載能力を有すると見られる。空対空戦闘支援任務への転用も想定される。

2025年8月14日、中国・馬蘭付近の試験基地で確認された、これまで未公開の「クランクドカイト」翼型の無人機。写真 © 2025 PLANET LABS INC. 全著作権所有。許可を得て転載

新たな米空軍構想と海軍の「重武装艦」計画の間にも興味深い共通点が存在する。これらの艦艇は同様に弾薬庫容量を拡大し、防空・対地攻撃・対艦ミサイルを発射することで、より従来型の水上戦闘艦を支援することを目的としている。一部の兵器搭載艦は無人運用が想定される一方、他艦は大幅に削減された乗組員で就航する見込みだ。

仮に空軍が何らかの形態の空対空兵器搭載機開発資金を確保した場合、それがCCAやその他の構想に与える影響は不透明である。

匿名の高官が『Air & Space Forces Magazine』に語った発言によれば、空対空ミサイル多数のを装備したステルス全翼機は、CCA構想をある程度脅かす可能性があると同時に、極めて有用な補完手段となり得るという。

CCA計画は、少なくとも初期段階では、空対空ミサイルを搭載可能な無人機を中核とする。これにより無人機は有人戦闘機と緊密に連携し、その行動範囲を大幅に拡大しつつ、殺傷能力と生存性を高められる。

現状では、CCAの第一段階における主要任務は「ミサイル運搬機」として有人戦闘機を支援することであり、ジェネラル・アトミクスYFQ-42AとアンドリルYFQ-44Aに付いたFQ(戦闘ドローン)の呼称にもこの事実が反映されている。

Update from General Atomics from the show floor of Air, Space & Cyber 2025

ジェネラル・アトミクスのYFQ-42A CCA。GA-ASI 

CCAは兵器搭載機より敵に接近して運用されるが、搭載可能なミサイル数ははるかに少なく、初期段階ではAMRAAM2発のみとなる。

一方、有人戦闘機(および他のプラットフォーム)の到達範囲と柔軟性を拡張する取り組みも進行中であり、特に空対空「ミサイル運搬機」として開発中のロングショットLongShotドローンが挙げられる。このドローンはミサイルを前線まで運搬し、発射プラットフォームの戦術的殺傷力、特に生存性を向上させる。コスト効率化が図られる一方、ロングショットは再利用不可で、各機が搭載できるミサイルも2発のみとなる。同時に、兵器搭載機の射程延長手段としても活用可能だ。

左上にF-15と2機のロングショットドローンのレンダリング図。ジェネラル・アトミックス

小型ドローンは全て比較的限られた兵器搭載能力しか持たない。この文脈において、中国のような数的に優位な敵対勢力に対し、最大数の空対空ミサイルを投入する観点から、大型のステルス全翼機で内部容量が豊富な機体は非常に有力な選択肢となる。さらに、兵器搭載機の運用可能なスタンドオフ距離によっては、B-21と同等の低観測性(ステルス性)は必ずしも必要としない。

興味深いのは、新たな兵器搭載機の情報公開のタイミングである。F-47は当初から、インド太平洋地域における空軍の将来の制空権確保の先鋒となることを意図されていた。

ボーイングは空軍向け初のF-47の生産を開始し、初飛行は2028年を予定しているが、最終的な生産機数やコスト、機体全体のサイズ(および兵装搭載能力)については疑問が残る。

空軍は少なくとも185機のF-47を購入する計画と発表しているが、この数字は今後変更される可能性がある。また、複数のバージョンを段階的な開発サイクルで製造する可能性についても議論されている。一方、F-47のコストが平均的なF-35の3倍になるとの予測もあり、この要素も調達計画に大きく影響するだろう。

F-47の調達数がどうであれ、空軍はこれらに加え、はるかに大量のF-35やCCAを配備しても、特に長期戦において太平洋の広大な海域で中国から制空権を奪取するには不十分だと見ているようだ。

莫大なコストは伴うものの、空対空ミサイルを満載したステルス全翼機が、その手段の一つとなり得る。


Flying Wing Arsenal Plane Packed With Air-To-Air Missiles Eyed By USAF: Report

The Air Force is examining the use of a flying wing that totes dozens of air-to-air missiles to support fighter operations.

Thomas Newdick, Tyler Rogoway

Published Sep 29, 2025 6:45 PM EDT

https://www.twz.com/air/flying-wing-arsenal-plane-packed-with-air-to-air-missiles-eyed-by-usaf-report

トーマス・ニューディック

スタッフライター

トーマスは防衛分野のライター兼編集者であり、軍事航空宇宙分野や紛争に関する取材歴は20年以上に及ぶ。数多くの書籍を執筆し、さらに多くの書籍を編集。世界の主要航空出版物にも寄稿している。2020年に『The War Zone』に参加する前は、『AirForces Monthly』の編集長を務めていた。


タイラー・ロゴウェイ

編集長

軍事技術・戦略・外交政策の研究に情熱を注ぎ、防衛メディア界でこれらの分野における主導的な発言力を築いてきた。防衛サイト『フォックストロット・アルファ』を創設した後、『ザ・ウォー・ゾーン』を開発した。