2011年8月7日日曜日

多様な中国の無人機開発動向に注意が必要

China Seeks UAV Capability

aviatonweek.com Aug 5, 2011

無 人航空機UAVに関して中国は1990年代末までは西側の技術開発を追随する姿勢だった。しかし台湾との軍事対立の可能性を意識した人民解放軍PLAが 90年代末から装備近代化を打ち出したなかで無人航空機は高い優先順位を与えられた。その結果、中国のUAVは飛躍的に進歩し、航空機、ヘリコプター、巡 航ミサイル各分野で主要航空機メーカー、大学、研究機関が成果を上げつつある。
  1. PLA のUAV開発意欲は各種とりそろえ、超小型から、戦術機、戦略機までカバーする他、まもなく高高度、準宇宙高度の飛行船、超音速機体まで登場するだろう。 UAV活用はPLAの戦略ドクトリンの「情報戦力化」の一環となっている。一方、中国の電子産業企業は高度に洗練された遠隔操作設備、ラップトップパ ソコンによるUAV運航を実現している。2010年代末までに配備完了となる中国製コンパスCompass航法衛星システムで全世界規模で中国のUAVは 運用可能となる。業界筋によると中国のUAVおよび無人戦闘航空機システムUCAVは将来においてセンサーから攻撃まで、地上兵員から宇宙空間までひろが る軍事力の一端を担うことになるという。
  2. 一 方、戦術レベルでのPLAのUAV活用は控えめな進展にとどまっている。PLAが90年代から使用しているのは西安ASN-206でトラックから離陸する 航続距離150Km、6から8時間帯空できるUAVだ。同機は各種演習で視認されることが多くなっており、主要な用途としてPHL03多装填発射ロケット 兵器による長距離攻撃を支援することがある。同UAVに円盤状の通信リンクアンテナを装着いているのも確認されている。
  3. こ れに対して2000年から導入が始まったのが南京シミュレーション技術研究院Nanjing Research Institute on Simulation Technique開発によるW-50で滞空時間4から6時間、重量100Kgの同機が陸軍演習でみられている。また、陸上兵員が投げることで飛行を開始 するASN-15は指揮統制機能を強化した89式装甲兵員輸送車に搭載される。
  4. さ らに小型UAVは模型飛行機がその原型となっているものがある。W-1は重量1.75Kgで滞空1時間で手動離陸するが原型はラジコンモデルだ。垂直離陸 UAVの実用化は遅れている。90年代に北京航空航天大学Beihang Universityは同軸ローター方式の小型垂直離陸UAVを海軍用に開発しており、南京航空航天大もソアーバード・シリーズを開発している。同大の LE-300(重量900kg)はノースロップ・グラマンのファイヤースカウトFire Scout.とほぼ同じ大きさだ。
  5. 中 国ヘリコプター開発研究院Chinese Helicopter Research and Development Institute,はZ-10攻撃ヘリを設計していることで知られるが、2006年にU-8E(重量220Kg)を公試しているが、PLAが採用したか は明らかではない。またヤマハ発動機のモデルをコピーしたRMAXのあとをうけて偵察用のラジコン無人ヘリを開発するメーカーがあり、警察用に垂直離陸 UAVが納入されている。
  6. 中 距離長時間飛行UAVに兵装を与えてUCAVとする開発も進んでいるが、PLAは配備に慎重だ。プレデターと同程度の大きさのプテロダクティル -1Pterodactyl は滞空20時間出2010年の珠海航空ショーで初めて確認されたが、中国北方工業公司Norinco BA-7 光学誘導ミサイルを搭載してる。同機開発は2004年開始といわれ、地上基地経由で画像情報を転送できるとされるが、PLAへの配備は不明だ。
  7. 2008 年の珠海ショーで初めて確認されたのがやや小さいCH-3で12時間滞空でき、米国のVariezeホームビルト機をコピーしたカナード翼の設計だ。 FT-5小型衛星航法誘導爆弾とAR-1光学誘導ミサイルを搭載。同ショーではCH-3による地上、海上支援の可能性が展示されていた。両機ともにPLA の第一線部隊には配備が確認されていないが、パキスタンはCH-3の共同生産を選択している。
  8. ター ボジェット、ターボファン動力UCAVの開発もされている。台湾ではPLA空軍がJ-6戦闘機をUCAVに改造してすでに300機以上が配備されていると指摘し ている。超音速のこれらUCAVは精密誘導ミサイル発射が可能なため台湾は地対空ミサイル防衛の拡充を迫られている。
  9. 2002 年珠海ショーでは杭州成都合作によるWZ-2000高高度長時間飛行(HALE)が可能なターボファンUAVが展示され、形状はノースロップ・グラマンの グローバルホークそっくりであった。2008年ショーでは洛陽光電子工業Luoyang Opto-Electronics Co.がWZ-2000と類似した形状のUCAVを展示しており、空対空ミサイルを搭載していた。
  10. PLA は戦略級UAV開発も進めており、今のところBKZ-05がHALE-UAVとして偵察任務に配備されている。同機の動力はレシプロあるいはタービンの推 進式でイスラエル航空宇宙工業のヘロンと寸法は近い。同機を運行する部隊は中央軍事委員会の国家戦略司令本部直属だといわれる。
  11. 成都航空機の天翼Tianyi はグローバルホークの三分の二程の大きさで2008年にテストが確認されている。配備されれば、中国が領海と主張する東シナ海、南シナ海を活動範囲に入れるだろう。.2006 年には瀋陽航空機がダークソードDark Swordの構想を珠海ショーで発表して波紋を生じた。無人空対空戦闘航空機との説明であったが、その後の展示はない。ただし、中国航空博物館でPLA航 空部隊設立60周年特別展示が2009年にあった際に同機モデルが展示されていたことから同構想はまだ開発が継続されているのではないかとの観測が生まれている。また中国製第5世代戦闘機として超音速無人機が攻撃、防空任務につく可能性もあろう。
  12. さ らに超高空飛行UAVが偵察、エネルギー兵器運用、大量兵員輸送の各種任務に使われる可能性を米国は注視しており、実際に中国航空宇宙工業並びに各大学研 究センターがこの構想を研究中だ。研究の中心は高高度運用の飛行船でとりあえずは監視・通信中継が目的で太平洋上空出の運用が想定されている。
  13. ま たPLAは多額の研究開発努力を極超音速で準宇宙高度・低周回軌道を飛行するUAV/UCAV開発で続けており、2007年に成都の神龍Shenlongが ボーイングX-37Bと同サイズの小型宇宙機として存在することが判明している。すでに同機が準軌道飛行を2010年ないしそれ以前に試験実施しているとの報道 がある。また未確認報道だが成都が極超音速技術試験機をテストした可能性がある。米空軍の構想では同じような性能の機体の運用開始は2030年としている が、中国が先を越す可能性はないか。

2011年8月6日土曜日

F-35テスト飛行は全面停止中

JSF Force Grounded

aAug 3, 2011

共用打撃戦闘機JSFはすべての飛行運航、地上運航を停止している。これは米空軍配備テスト機材AF-4で二次出力系統に不良が発見されたためだ。
  1. 不良は8月2日にエドワーズ空軍基地での地上エンジン点検用の稼働時に発生している。JSF開発室によると「エンジンを即座に停止し、パイロット・地上係員双方は無事だった」としている。
  2. JSFのテスト過程で飛行停止措置や飛行制限はこれまでもあったが、地上での運転が停止になるのはこれまでなかった事態だ。
  3. 今回の不良で機体やシステムに損傷があったのかについては発表がないが、「故障原因をつきとめるための措置」ということだ。
  4. 不 良が発生したのは一体型動力パックIPPで、F-35だけにしかないハネウェル製のシステムとしてエンジン始動、緊急時補助動力、機内環境維持、予備発電 機としても機能する設計だ。3月にエンジン取り付け発電機が2つとも故障した際にはIPPは設計通り機能している。この際も短期間ながら飛行中止になって いる。
  5. F- 35のフライトテストはここまで改訂後の計画よりも先行していた。3月の飛行中止措置は5日間と短く、当時は7機が飛行可能状態であったが、発電機の問題が判 明し設計変更がその後の機体に応用されている。2010年10月にはソフトウェア不良のため全機が飛行中止になっている。

2011年7月30日土曜日

空中給油機需要が高まる中、勝者はエアバスミリタリーか

Asians, Europeans Seek Aerial Refuelers

aviatonweek.com Jul 29, 2011

ボーイングKC-46A空中給油機を米空軍が採用したことは同社にとっては同機を海外販売することを逆に阻害し、各国の空中給油機需要はエアバスミリタリーが大きく獲得する可能性が出てきた。
  1. 米空軍からの受注獲得は通常なら朗報なのだが、2017年までに設計、開発、生産を完了しKC-46A18機を納入することはボーイングのエヴァレット工場(ワシントン州)のラインを大幅に使用する事になり海外向け生産の余裕がなくなるのだ。
  2. 米空軍はKC-46Aの発注179機に加え追加発注の検討もしている。KC-46AはボーイングKC-135ストラトタンカーが1950年代から就役していたものを代替する。
  3. ボー イングはKC-46Aの海外向けスロットがいつ利用可能となるかの予定を公式には明らかにしていない。「当社は顧客側と協力してKC-46を国際市場に近 い将来に納入開始できる日程をまもなく決定します」と同社スポークスマンは発表。ただし、別のKC-46計画に関与する同社関係者によると海外向けの納入 は2018年以降だという。
  4. そ れでは遅すぎるかもしれない。欧州防衛局(EDA)のローラン・ドネLaurent Donnetは情報開示請求(RFI)を5月に通達しており、EU加盟国の深刻な空中旧能力不足解消策としてこの回答に基づきEDAが方策を立案するとい う。締切りは8月だ。目標は本年11月に加盟各国に対策を発表し、2012年から空中給油能力の取得努力を開始することだ。
  5. ドネによると欧州の以前の空中給油能力拡充努力は2003年、2005年ともに失敗しており、資金不足と新型機のみを検討対象としたためだという。今回の情報開示請求は新型機にこだわらない点でこれまでとは切り口が違うという。
  6. 給油機を多数取得する以外に既存の給油機の活用に加えて輸送機に給油装置を装着する、民間機(例 Omega Tanker)をリースすることがあるという。各国は資金がないのだからこそ協調するべき、とドネは語る。
  7. 欧州各国は米空軍の給油機部隊に大きく頼り切っているとドネは見ており、米国は欧州により独立性を求めてきている、とする。fリビア作戦の空中給油の8割は米空軍が実施している。これは米空軍の好意からでなく、単に欧州各国に給油能力が不足しているからに過ぎない。
  8. アジアではシンガポールが現在運用する4機のKC-135Rの後継機種を積極的に検討している。業界関係者によると入札は来年になり、2013年初頭に機種決定となる。
  9. その際の重要な性能要求はシンガポール空軍のボーイングF-15SG隊のマウンテンホーム空軍基地(アイダホ州)への海外展開を支援することだ。同空軍はロッキード・マーテインF-16C/Dもルーク空軍基地(アリゾナ州)へ展開している。
  10. シ ンガポール空軍が米空軍と密接な関係を維持していることから通常はボーイングが有利となるとみるのが通例だが、今回はエアバスミリタリーA330MRTT が優位であると見られる。エアバスミリタリー以外にはイスラエル航空宇宙工業(IAI)があり、シンガポールはイスラエルとも強い防衛面での関係があり、 IAIはボーイング767を給油機に改装する案がある。
  11. これ以外にインドには給油機6機の導入案があり、A330MRTTとイリューシンIl-78がまず候補に上がっている。ボーイングは早々とインドの競合には加わらないことを決定している。

2011年7月23日土曜日

米財政危機で国防予算も削減は免れられない見込み

Vice Chief Nominee Hints At Program Cuts Ahead

aviationweek.com Jul 22, 2011

米財政危機を念頭に国防予算の大幅削減が避けられない方向にあり、これまで以上の数の計画が取り止めになる予想だと、次期就任予定の制服組次席が上院で7月21日に発言した。
  1. 「財 政圧力や上層部による決定次第だがなかには途中で放棄される計画もでるのではないか」とジェームズ・ウィネフェルド海軍大将Adm. James Winnefeld(統合参謀本部副議長就任予定)が上院任命公聴会で発言している。「決定はあくまでも戦略的視点でなされるよう期待します」
  2. 合わせて同大将は予算削減で軍事力の骨抜きがないよう、また国防産業基盤力が回復できない打撃を受けないよう上院議員に伝えた。
  3. 国防予算削減は上院軍事委員会においても大きな議題になっていた。同委員会の公聴会は「六人組」と言われる有力上院議員が債務上限額の引上げの一貫としての赤字削減提言に同意した翌日に開催された。
  4. 提 言内容では安全保障関係で9000億ドルが盛り込まれる見込みで下院軍事委員会の共和党議員は大統領に反対を訴える動きを見せている。「強固な国防基盤を 守り、一方で連邦政府による広範囲な各種計画の財務規律を追求するべき」との内容の書簡をすでに大統領に送りつけている。.
  5. 赤 字削減の話し合いが続く中、国防族の中でも最もタカ派と言われる上院議員連もペンタゴンにメスが入るのは避けられないと認め始めている。ジェフ・セッショ ンズ上院議員Jeff Sessions(共和、アラバマ州)は国防政策の強力な推進者であり上院予算委員会のメンバーであるが、1ドルの支出に対して40セントの借金をしてい るのが今の国の姿だという。そこで国防支出は国の支出の半分近くなので、「削減努力の中で国防総省も当然努力すべき」と語る。
  6. 今 回の予算削減提言には具体論がない、というのが批判の中心だ。そこで「常識を求める納税者連合」はより具体的な対案を提案して今後十年間で6000億ドル を安全保障予算から削減することを提案している。中には奇抜な案もあり、海兵隊、海軍の統合打撃戦闘機はF/A-18E型 F型で代用せよとしている。
  7. 防衛契約企業の側は政府が債務不履行宣言を擦る可能性を危惧しており、大統領と議会が合意形成に失敗すると取り返しの付かない事態になると警告している。
  8. 債 務上限をめぐる議論は超党派で合意形成ができなくてもいいはずだと、航空宇宙産業Aerospace Industries Association会長マリオン・ブレイクリーMarion Blakeyは考えている。政府が債務不履行に陥れば自然に合意ができるのではないかというのだ。ただし「全ては正常に戻らないでしょう」.
  9. 専門サービス協議会Professional Services Councilは多数の国防契約業者を代表することから、会員企業に対して政府のキャッシュ・フロー問題を見越して先に代金の支払を請求することを勧奨している。
  10. 同協議会によると国防関連企業はペンタゴン予算の削減回避に議会工作をすでに開始しているが、先が読めない状況には動揺が隠せないようだ。
コメント 米国が債務不履行に陥るタイムリミットは8月2日です。

2011年7月19日火曜日

震災復興需要で機体調達に動く日本



Japan To See Flurry Of Aircraft Orders

aviationweek.com Jul 19, 2011

東日本大震災で被害を受けた仙台空港、松島基地の航空機の代替需要で日本が各メーカーとの商談を始めた模様だ。

  1. 津波被害で塩水をかぶった軍用機、民間機が存在する。航空自衛隊、海上保安庁、海上自衛隊、航空大学校が特に大きな被害を出している。
  2. 松島基地には大震災当日に合計18機の三菱F-2B練習機があったが、全機が海水を浴びている。防衛省の見積もりはこのうち6機から9機だけしか復帰可能とみているが、業界筋では海水によるエンジン、電気系統への腐食被害から修復は全機不可能と見る向きもある。
  3. 同省は機体修復には予算支出の承認を必要とし、今日の厳しい財政状況ならびにF-Xを合計42機調達する予定を考えるとこれはかなり難易度が高いと言わざるをえない。
  4. ただし、同省は補正予算で航空自衛隊向けにヘリコプター3機分の予算を獲得しており、UH-60Jとなる見込み。政府は三次補正予算の準備も始めている。海上自衛隊も補正予算によりキングエア喪失分の補完を期待しているという。
  5. 松島基地ではF-2以外にUH-60Jが5機、川崎T-4ジェット練習機5機、ホーカー800XPが2機、それぞれ海水の被害をうけていると航空調査会社アセンドAscendがまとめている。
  6. 今回の津波で松島基地のような沿岸部に立地する基地の脆弱性が浮き彫りになったが、航空自衛隊は同基地を放棄する考えはなく、むしろ同基地に津波被害を最小限に抑える扉付きの格納庫の設置を検討しているという。
  7. 一方航空大学校はビーチクラフト・キングエアおよびボナンザ数機を仙台空港で喪失している。
  8. 海上保安庁もキングエア数機とヘリコプターを失っているが、各機はジェムコで保全中だった。.
  9. 同 社によると震災の津波が襲った時点で同社仙台施設内に12機が預けられていたが、全機破損したという。仙台市消防局も三機のヘリと固定翼機一機が被害を受 けている。海上保安庁はメーカーとの接触を開始しており、接触を受けたメーカー幹部によると保安庁は予算の面で自衛隊よりも恵まれていないが、日本各地の 航空機配備数を一定程度に保つ政策の恩恵で航空機調達には積極的なのだという。

2011年7月16日土曜日

磨きがかかるF/A-18ホーネット


Hornet Buffs Up

aviatonweek.com Jul 13, 2011


ボー イングF/A-18E/Fが当初これほど長寿の機体になるとは予想されていなかった。だが、ロッキード・マーティンの統合打撃戦闘機JSF開発が遅延して いることから、また世界規模で戦闘機部隊の経年化が進む中で、ボーイングは同機の生産規模を1,000機まで拡大し、生産ラインを2010年代一杯稼働さ せる検討をしている。現在までの累積生産機数は700機近くになっており、最近ではJSFの遅れの影響を緩和すべく米海軍が追加41機の発注をしている。
  1. 進 行中の商談にはブラジル、デンマークがあり、名前を伏せている中東国、おそらくクウェートも関心を表明している。スーパーホーネットは日本の次期戦闘機候 補でもある。その他オーストラリアもJSF遅延で第一線戦闘機の不足が生じるためスーパーホーネットを検討しており、ボーイングによるとJSF共同開発国 複数からも同機の情報開示請求があったという。
  2. ボー イングの戦略はJSFとの比較を避けることだが、一方同社は「納期と明確な価格」をまず指摘してからスーパーホーネットとグラウラー両機種が予定価格内か つ納期前倒しで納入されている実績をあげる。さらに同社はJSFはその高価格ゆえに国際市場では「すき間需要の戦闘機になるかも」とまで発言している。
  3. 同 機の「国際市場ロードマップ」の詳細が明らかになりつつある。そのなかで目を引くのが一体型燃料タンク(CFT)を機体上部に搭載することとレーダー断面 積(RCS)の縮小をめざす兵装ポッドで、今年中に風洞実験を行い、その結果で飛行実証を実施する。CFTは3,200ポンドの燃料を格納する。ボーイン グによると巡航速度では抗力は発生しないという。その理由としてトリム抗力が減り、機体前面面積の増加を打ち消すためだ。その結果、CFT搭載し、中央線 にもタンクを付けると現在の増槽三基搭載と同じ飛行距離を実現できるという。兵装ポッドにはAIM-120ミサイル4発、2,000ポンド爆弾一基、ある いは500ポンド級兵装なら二発を搭載できる。
  4. スー パーホーネットは就役当初から亜音速加速性能、出力余裕が難点と批判されてきた。そこでロードマップでは性能向上型エンジン(EPE)としてジェネラルエ レクトリックF414の派生型をオプション設定し、20%までの推力アップができるとしている。EPEでは26,500ポンドとなり、推力重量比では他に 追随のない11:1を実現する。ただし、インドはこの内容で採択しなかった。
  5. ロー ドマップではミサイル接近警告システム、赤外線探索追跡(IRST)システムを機首ポッドに搭載することも入っている。ボーイングとロッキード・マーティ ンは1980年代にグラマンF-14D用に開発されたAAS-42IRSTの性能向上改修を開発中で、海軍のホーネット各機への搭載をめざしている。ボー イングは海外向けに同システムの改修のオプションもありとしている。例えば日本には独自開発のIRST技術があり、F-15改で使われている。
  6. 操縦席周りでは新しいオプションは11インチx19インチの大画面ディスプレイで来年実戦検証される。デジタルLCD投影を利用したヘッドアップディスプレイによりこれまでの制約がなくなる視野を実現する。
  7. ボー イングからは以前の展示会でも大画面付きの操縦席モデルを公開しており、パイロットからの反応を見る一方、ディスプレイ内容のコンセプトを宣伝している。 これはブロック2機体にも後付け装備が可能で、この全機が米海軍所属だ。改修型ホーネットはF-35Cの水準には至らないが、RCSと航続距離でギャップ を埋めて、一方軽量化がすすみ、より協力な動力性能かつ現時点の見積では購入・運用ともに費用を節約できるとしている。

2011年7月13日水曜日

F-35 機体引渡し目標を達成できず

JSF Misses June Goal For Eglin Deliveries

aviatonweek.com Jul 8, 2011


F-35共用打撃戦闘機の引渡しでまたもや予定が遅延している。
  1. C.D.ムーア少将(JSF計画副責任者)は先月パリ航空ショー会場にてF-35の初の納入はエグリン基地に6月中に実施されると発言していた。
  2. だが書類作業の遅れで機体はまだフェリーされていないとペンタゴンのJSF報道官が明らかにした。
  3. AF8および9の二機は最初の生産型F-35だが計器を一部取り付けない形で来週中にもエグリンにフェリーするのが目標だと同報道官は言う。
  4. ロッ キード・マーティンは声明文で「AF8およびAF9はともに最初の低率初期生産ロット2からの納入となりますが、地上モニター用のテスト機材が取り付けら れておりません。両機ともに納入前検査に合格しており、契約どおりのミッション能力、訓練、保守点検を実現できることが確認されております」
  5. ロッキード・マーティンは同機は引渡しまで「数日前」の状態だと表現しているがAF8と9用の書類作成は若干複雑だと認めている。
  6. 両機はエグリンで初期保守点検訓練用に地上で使用される間に今年秋後半の飛行許可を待つ。
  7. 一方、ペンタゴンとロッキード・マーティンはAF6および7の「完熟飛行」をエドワーズ基地で実施する件で協議を続けており、その後のエグリンでのパイロット訓練につながる準備の一端と理解されている。
  8. エグリン基地には合計6機のF-35通常型が納入されて飛行訓練が開始される予定だ。AF10と11の初飛行は6月29日、7月1日それぞれ完了している。AF12と13は初飛行前最終段階で数日間のうちに初飛行を敢行する予定だと同社は明らかにしている。

2011年7月11日月曜日

UCAS-Dの自動着艦モードをF/A-18で実施に成功

F/A-18 Shows UCAS-D Can Land On Carrier

aviationweek.com Jul 8, 2011

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ノースロップ・グラマンX-47B無人戦闘航空機実証機 (UCAS-D) のソフトウェアおよびシステムがF/A-18により代理テストされ、同機は「手放し」で米海軍空母に着艦した。
  1. X-47Bで使うのと同じエイビオニクスとソフトウェアを使いF/A-18テスト機は7月2日空母エンタープライズに58回の離着艦アプローチを実施し、うち16回はタッチアンドゴー、6回は着艦フックを使っている。
  2. この成功でX-47Bの空母運用試験は予定通り2013年に実施の可能性が高まった。一号機はすでにエドワーズ空軍基地で初飛行に成功しており、2012年にパタクセントリバー海軍航空基地で陸上基地からの運用テストを開始する。
  3. 代理テスト機F/A-18は艦からの操作のもとで自律的な着艦が可能なことを証明した。母艦から8マイル地点で無人機が自律的に制御する計器飛行アプローチ(Case 1)が28回実施された。r.
  4. それとは別に30回の有視界アプローチ(Case 3)だったという。
  5. 飛 行には高精度GPSおよび戦術目標ネットワーク技術の高速データリンクにより母艦への航法ならびに実験機への指令を送信している。海軍は分散制御コンセプ トを提唱しており、空母内のミッションオペレータはどの時点でも無人機の制御ができる一方、母艦の航空管制官、艦橋内のエアボス、着艦信号士官も指令を有 人機の時と同じように送る事ができるのが特徴だ。
  6. 一方エドワーズでは同機の性能限界を広げるテストが完了すればパタクセントリバーへ移され、陸上からカタパルト発進テスト、着艦フックテスト、空母運用を想定した飛行テストを2012年一杯続ける予定だ。
  7. 代理機のテスト予定はさらに来年にもあり、空母トルーマンを使用し、X-47Bをクレーンで搭載し、飛行甲板上での同機の取り回しを評価する。
  8. その後空母への着艦実験を2013年に行い、2014年に自動空中給油を含む飛行テストに入る。この実験の前準備で今年後半からリアジェットを同機に見立てて試行を開始する。

2011年7月9日土曜日

イスラエル向けF-35は海外販売の突破口になる技術公開となるかとなるか

Israel, U.S. Strike F-35 Technology Deal

aviationweek.com Jul 6, 2011

イスラエルによるF-35統合打撃戦闘機購入の前にふさがる最大の障壁が解消しつつある。米国がこれまでJSF技術輸出でとってきた強硬な姿勢を緩和していることがうかがわれ、さらに海外販売へのはずみがつくかもしれない。
  1. 米 国はF-35先端技術の提供に慎重だったが、共同開発国から、また日本はじめとする海外での商戦で公開の圧力が高まっている。そこで共同開発各国が正式に 同機購入の決断をする今がその突破口になる。ただし、新規受注となっても同機の生産コストにさほど影響はでないみこみで、各国の調達数全部合わせてもペン タゴンの導入規模より小さいことがその理由だ。
  2. そ の中でも熱い論争相手がイスラエルで、同国は国産電子戦(EW)装備を搭載することを望んでいるためだ。一次は強く拒絶した米国もイスラエル向きF-35 の機内配線を変更し、同国製EW兵装の搭載を合意した。これによりイスラエルは機体を受領後、順次EWセンサー類、電子対抗措置
  3. 装備を充実することができる。
  4. イ スラエル空軍とロッキード・マーティンは総額27億ドルでF-35Aを19機ないし20機導入の契約を来年早々に締結する方向で交渉を進めている。イスラ エル向け一号機の引渡しは2016年の見込み、とロッキード・マーティンF-35計画主任トム・バーベジは本誌に明らかにしている。イスラエル空軍もこの 日程で合意しているという。
  5. イ スラエル空軍はJSF装備で特殊かつ高価な搭載の希望を数多く提示していたが、結局搭載されるのはイスラエル製指揮統制コンピューター通信情報収集 (C4I)システムだけになりそうだ。イスラエル製EW装備の追加、空対空・空対地兵装、外部燃料タンクの追加も原則で認められたものの、予算管理と納期 日程を優先するため先送りになっている。
  6. これまでイスラエルはシリアに配備されているSA-17やSA-22対空防衛装備のような同国を取り巻く防空脅威を配慮してイスラエル製EWの搭載を強く主張していた。ただし、F-35の受領した仕様で対応は可能とイスラエル空軍は見ている。
  7. 全体生産日程から見てイスラエル向けF-35は低率初期生産(LRIP)の第7ロットと第8ロットの中間で生産される見込みだ。イスラエルは初の国際顧客としてJSFを受領することになる。
  8. イスラエル空軍要員の訓練は2016年開始見込みだが、訓練用の機材の選択はペンタゴンが決める事項とされている。
  9. 地 域内の状況変化に応じてイスラエル国防軍は対応計画を変更しようとしており、状況分析ではこれまでイスラエルに比較的友好的だったエジプト、ヨルダンと いった周辺国が敵性国家に変化することを想定している。その結果、国防軍は装備の拡充、対応の柔軟性を増やすことで全方位に対応する能力の確保をめざす。 その中でイスラエル空軍は2030年までにF-35部隊を75機まで拡充することで柔軟対応を実施する能力の獲得が必要と主張している。
  10. 今後数年のうちに同空軍はF-16A/B、F-15A/Bといった旧型機を退役させるが、新型F-35が20機だけとなると戦闘機部隊の規模はかつてないほど縮小してしまう。
  11. ただし国防軍内部では強力なエジプト陸軍が敵となる可能性から機甲師団の拡充が必要とする陸軍の主張も強く、メルカバ戦車から派生のネイマー装甲兵員輸送車の生産は米本土のジェネラルダイナミクスが米軍事援助予算を使って行う。F-35取得にもこの予算が使われる。
  12. ただし、今回の米・イスラエル合意をもって米国がJSF技術の公開を各国に行う決定をしたとは言い切れない状態だ。関係者は海外向けには米国仕様より低いステルス性能の機体を提供するとしている。
  13. で はどこまでの技術移転度まで許容される様になったのかを図る試金石が日本だ。日本は高度の技術移転および国内生産の実現に高い意欲を示している。米政府は ロッキード・マーティン、プラットアンドホイットニーと協議しどこまで日本にとって魅力的な提案ができるのかを見極めようとしているところだ、とC.D. ムーア米空軍少将は語る。日本の技術力は同機関連技術の提供元として高い可能性があると同少将は付け加える。
  14. オーストラリアとイタリアがその次にJSF購入に踏み切る国と見られている。おそらく来年のLRIP6の内数として発注になるのではないか。トルコがその後に続くものと見られる。ノルウェーはとりあえず4機の購入を承認したが、契約締結には三年かかるかもしれない。
  15. デンマークも次期主力戦闘機選定をまもなく開始する予定で、総選挙の結果いかんで作業日程が加速する。ここでもF-35にはボーイングF/A-18E/F、サーブ・グリペン、ユーロファイター・タイフーンとの競り合いとなるだろう。

2011年7月3日日曜日

KC-46Aでボーイングは自社負担増になるのか

Boeing Liable For KC-46 Overage

aviationweek.com Jun 29, 2011

米空軍はKC-46A空中給油機調達契約でこれまでで最大の金額を支払う見込みの一方、ボーイングも相応の勘定の支払いを迫られそうだ。
  1. ボーイングがEADSに競り勝って契約を獲得して二ヶ月となるが、空軍には5億ドルの追加支出がないと第一期分の18機の納入ができないとの通知が同社から入った。
  2. 2 月時点では固定価格制でさらに順調な開発に成功すれば報奨金が入る仕組みの契約で44億ドル規模の契約という話であったのに、「ボーイングからは契約交付 後の4月に入り、選定過程では同社は実際の費用よりも低いエンジニアリング・生産開発費を提示していたと打ち明けてきました。ボーイングは契約上限額49 億ドルを超過する支出の全額を負担する責務を有します」とジャック・ミラー中佐(空軍スポークスマン)は声明文を発表。
  3. ブルームバーグからはボーイングは追加3億ドルを支出しないとKC-46A開発を実現できなとの報道も先週でたところだ。結局ボーイングは低価格で入札する戦術を選択して、開発期間中の赤字リスクを覚悟の上で販売売上で赤字を埋めるつもりであったことが明らかになった。
  4. 米 空軍の調達予定数は179機で海外販売の機会もある。「KC-46Aでは収益を見込んでいます。KC-46調達契約では追加的な機会の可能性も閉ざされて おりません。その一部として米国により海外向け調達が想定され、関連サービス売上も今後数十年にわたり期待しているところです」(ビル・バークスデール、 ボーイングのスポークスマン)
  5. た だ空軍、ボーイングともにKC-46A開発の実現に必要な総額を明示していない。ボーイングは損益分岐点となる機数の明示も拒んでいる。ボーイングは入札 が積極的かつ責任をもって行われたと認めるが、開発総費用が契約上限額を超過する見込みがいつ認識されたのかについては言及を避けている。
  6. ボーイングは7月27日に次回株主向け収益計画説明会を控えており、その席上で開発費用の超過分の対応方法を説明するものと見られる。現時点ではボーイング株価にはこの問題での懸念は反映されていない。
  7. 空 軍関係者にはボーイングの持ち出しは3億ドルと見る向きがある。バークスデールはKC-46A開発日程は予定通り進んでいると強調するが、日程計画そのも のの詳細はほとんど外部に伝わっていないが、第一期分18機の納入は2017年度第4四半期までに実現すると定められていることだ。ボーイングの低価格見 積り戦術そのものは違法ではないと同社は主張する。
  8. ボーイング入札価格はEADS提示価格より10%低かったとEADSは発表している。仮に3億ドル追加支出の見込みが正しいと、ボーイング入札価格は実質で4%安かった計算だ。

2011年7月2日土曜日

リビア航空戦で英仏空軍が得つつある教訓

U.K., France Fine-tune Libyan Air Ops

aviationweek.com Jul 1, 2011

英仏両国の空軍にとってリビア航空作戦で得つつある教訓には明暗分かれるものがある。英空軍にとっては自国政府がキャンセルしようとしている装備能力が不可欠であることが改めて認識されたこと、フランス空軍にとっては兵装の整備で選択を誤っていたことがそうだ。
  1. 実 際にはリビア作戦は進行中なので英空軍は教訓と言うには時期尚早と考えるが、4月にサー・スティーブン・ダルトン空軍司令官他が演説中で明らかにしたよう に退役が予定されている機体が極めて重要な装備であるが判明した。NATO設定の飛行禁止地帯でび英国の支援活動は英国ではエラミー作戦と呼称され、戦闘 イスター(情報収集、監視、目標捕捉、偵察)Istar (intelligence, surveillance, target acquisition and reconnaissance)コンセプトの実証がさらにすすみ、シナジー効果を証明している。
  2. こ のシナジーを生んでいるのは三つの機材だ。E-3Dセントリー、センティネルR1、ニムロッドR1で、このうち英空軍の装備として今後も残るのはE-3D だけ。電子情報収集用のニムロッドR1は3月末で退役予定だった。その穴埋めにRC-135Wリヴェットジョイントの導入がされることになり、英空軍では 同機をエアシーカーAir Seekersと呼称する。一号機はまだ米国内で改装作業中で実戦化は2014年移行になる。ニムロッドは退役予定を先送りにしてリビアに投入されている ものだが、6月28日に現地から退く予定だ。その代替として米空軍のリヴェットジョイント機に英米混成乗員が乗り込み運用をする。英空軍乗員はネブラスカ 州オファット空軍基地で必要な訓練を今年初めから開始していた。この共同運用は今夏から始まる。
  3. 見 えてこないのは英空軍のAstor(空中スタンドオフレーダー)機材であるセンティネルR1(レイセオン装備で強化したボンバルディアグローバルエキスプ レスビジネスジェット機、英空軍は5機を運用)の去就だ。同機は合成開口レーダー能力を持ち、地上走行目標表示(GMTI)モードも持つ。ダルトンは「標 準的な」エラミー作戦ではセンティネルは他の機材に先駆けて特定区域で一次評価を行う他、GMTIモードで標的抽出しているという。
  4. 英 政権による戦略防衛安全保証報告2010年阪ではセンティネル全機はアフガニスタン作戦終了を持って退役としていた。同機の後継は不明だ。国防省はスキャ ベンジャーUAVの取得を要求しているが、センティネルと同等かそれ以外の能力を持たせるかの決定は未定で、運用上第一線化はまだ先になる。
  5. SAR 能力の提供はリーパーおよび英陸軍で今後配備されるワッチキーパーWatchkeeperの両UAVで可能とされるものの、またリーパーとシーキング7ヘリに GMTI能力があるとはいうが、リーパーもシーキングも高脅威度空域での運用は危険で実際に両機ともにリビアには投入されていない。
  6. 想 定外だったリビア作戦で英空軍のジェット機部隊の乗員管理にも問題が生じている。地上目標攻撃用のユーロファイター・タイフーン機ではもともとトーネード F3からタイフーンへ防衛装備の主力を移行しつつある中で当初計画の変更を余儀なくされている。トーネードF3は3月末で退役している。その結果、リビア 作戦がはじまったとき、英空軍パイロットで地上攻撃任務の訓練を受けていたのはわずか8名であった。その後、その8名から教官を選び、訓練を開始した結 果、現在は20名がタイフーンで対地攻撃を実施できる様になった。
  7. 単座高速ジェットの同機により対地攻撃をする際の最大の課題はレーザー目標捕捉で、タイフーンGR4投入当初は二機ペアで僚機が照射をしていたが、現在は単独で実施が可能となっている。ただし、実際の運用ではタイフーンとトーネードのペアで飛行している。
  8. そ の結果指揮官は状況に応じ最良の弾薬使用が可能となり、高価格の精密兵器の節約になる。乗員派遣は短期サイクルで通常は6ないし8週間で練度が低下するの を避けるのはアフガニスタンにおけるハリアー運用で得られた教訓が元だ。英空軍は今回の作戦では基本訓練技術の一部としての夜間飛行や空中給油は戦域内で は実施しておらず、本国帰還後に再訓練することとしている。
  9. フランス空軍では今回のリビア作戦で感じているのは空対地ミサイルの増備、小型化の必要性。運用しているサゲムSagem製AASM(Armement Air-Sol Modulaire)250Kgだが、実戦では大きすぎると感じている。
  10. 英 空軍が運用するブリムストンミサイルに相当する装備はフランスになく、外寸が大きい割に精密度が低い同AASMでは街区の中の目標だけを攻撃できないので フランス空軍はAASMを不活性化して運用する方策を考え出した。実弾と同じ重量のAASMに、爆薬の代わりにゴムあるいはコンクリートを装填する。実際 に英空軍のトーネードがコンクリート爆弾でイラク戦車を2003年に破壊した事例がある。
  11. 不活性爆弾でもGPS航法システムを装備し、精度は1メートル以内と実弾と同じだ。ラファールから投下されると秒速330メートルで落下し、敵戦車を附随被害を生じさせず半径200メートル以内で破壊できる。
  12. 実 弾阪AASMにはモードがふたつあり、ミッションに先立ちプログラムしておくと建物や弾薬庫といった目標に有効だ。もうひとつは機内でプログラムしておく 時間調整目標対応Time Sensitive Targeting (TST) モードだ。レーザー赤外線誘導モードは開発中でリビアでは使用されない見込み。
  13. フ ランス空軍は作戦初日にAASMでベンガジ近郊の装甲軍用車両隊を攻撃した。またロシア製S-125(SA-3ゴア)地対空ミサイル陣地の攻撃にも同ミサ イルの有効射程範囲外から攻撃を実施している。3月24日には飛行禁止区域に迷いこんだユーゴスラビア製ソコ・ガレブジェット練習機一機を地上で破壊して いる。同機はAWACSにより探知された。同機が着陸した時点で破壊命令が下された。
  14. これらの実戦から明らかになったのは軍事装備の輸出問題だ。両機のメーカーともにリビア実戦で性能は証明済みと訴えるはずだ。
  15. ダッソーはタレスおよびSnecmaの後ろ盾を得て同社製品は実戦証明済みと主張するはずで、実際にラファールはアフガニスタンで2002年から飛行している、とはいえ同機の初期飛行はシュペル・エタンダール機への空中給油任務であった。
  16. NATOの空対地攻撃装備の一部に取り入れられたラファールはアフガニスタンで近接航空支援任務に投入されている。最初のミッションは2007年と報道されているが、実際の効果はごくわずかとされる。
  17. ラ ファールが実戦でどんな活躍をしているのか情報はごくわずかした公表されていない。フランス空軍の同機は開戦初日からサフラン/MBDA AASM複数目 標捕捉誘導爆弾を搭載しているのが目撃されているが、あきらかに開戦当初に限定されていたようだ。ただしフランス国防省発表は低調であり事実はなかなかわ からない。
  18. これに対して英国はタイフーンによる多用途任務の成果を声たかだかに発表しており、4月13日付報道発表では性能向上型ベイブウェーII(1,000ポンド)レーザーGPS誘導爆弾がタイフーンから投下されたとしている。

2011年6月26日日曜日

軍事宇宙予算削減の動きに憂慮を示すホワイトハウス

White House Raises Milspace Concerns In Bill

aviationweek.com Jun 24, 2011


オバマ政権は下院の2012年度国防予算案に対して国防宇宙開発・衛星整備の計画を遅延させるあるいは製作意図から逸脱擦る可能性があると警告した。
  1. ホワイトハウス声明では下院法案2219号が採択されると影響を受ける内容として通常兵器迅速世界規模攻撃(CPGS)、深宇宙気候観測(Dscovr)用の宇宙機および単一戦域内衛星通信確保業務(Assist)があるという。
  2. さ らにロッキード・マーティンが中心となり開発中の中距離拡大防空システム(Meads)の中止の文言が同法案に入っていることで、共同開発国のドイツ、イ タリアも中止に追い込まれ、結果として島嶼提案時の費用を上回る資金投入が必要となるとホワイトハウスの行政予算部門(OMB)は見ている。
  3. CPGS に関してはオバマ政権は前政権がこれまでに提示していた論点を再度強調しており、その内容は現行の核兵器を中心とした長距離攻撃体制では「迅速かつグロー バルの非核戦力攻撃能力を実現できない」としている。今後配備すべき新規システムには通常兵力を搭載した大陸弾道弾を地上あるいは海上配備することも含ま れるが、下院歳出委員会の法案内容のままだと配備が最大二年間遅れるという。
  4. Dscovr では下院歳出委員会の認める空軍のロケット打ち上げシステム開発への支出規模ではペンタゴンによる宇宙機打ち上げが困難となり、商務省との合意で作った計 画が実施できなくなるという。Dscovrは太陽フレアなど悪条件がある中で間近に迫りつつある磁気嵐の発生予想ができるが、これにより電力網、通信網、 民間航空運航など民間部門にも適切な管理が可能となる。
  5. AssistについてOMBは現時点で同衛星を取得することが「はるかに費用効果が高い」選択肢であり、下院法案のままだとペンタゴンは商用衛星のリース利用を続けることになり、ワイドバンドグローバル衛星の利用開始が「複数」年度遅れるという。
  6. 民 間業界側も下院法案の内容に対して警鐘を鳴らしており、「経済情勢からの予算節約は理解できるものの、宇宙関連の予算削減が行き過ぎだとの懸念を強く感じ ている」(航空宇宙産業連合会Aerospace Industries Association)と声明を発表している。
  7. 同 会によると宇宙関連の予算削減は非公開分を除くと6億ドル相当になるとしており、政権側が当初要求した102億ドルに対して相当の比率だという。同会は要 求案どおりの全額予算化に加え、ペンタゴンの宇宙関連効率的購入モデルによる段階的調達方法を議会が支持することも求めている。
  8. 一 方、政権側の発表文書では議会が予算削減を推し進めるのであれば大統領権限そのものの侵犯でありホワイトハウスとしては拒否権の行使も辞さないとしてい る。その反面、下院の有力議員からは大統領との対立そのものに異議を唱える動きもあり、国防支出小委員会のジム・モラン下院議員(民主 ヴァーモント州) は下院はホワイトハウスは国防支出法案をめぐり合意ができるので、拒否権行使に至る事態は想定していないと発言している。

サイバー作戦はISRの重要手段にすでになっています

Cyber-Ops Become Critical ISR Tool

aviatonweek.com Jun 24, 2011


サイバー作戦が急速に情報監視偵察(ISR)分野で重要な要素になってきた。また、今後敵対勢力や潜在的な敵国の状況を把握する際の中心的手段になる可能性が出てきた。


  1. すでにサイバー侵入が米国に対して実施されており、しかもくり返し試みられているため今や専門用語とし高度持続的脅威advanced persistent threat (APT)の名称がつけられているほどだ。
  2. 「通 常は発生源を突き止めることは明確にできないものの、APTが中華人民共和国から来ていることはみんなが知っていることです。」(クリストファー・フォー ド、ハドソン研究所の技術安全保障センター所長) 重要なのは「APTはこれまでスパイ活動の一部」(フォード)だったものがサイバー戦にエスカレートす る可能性があることだ。
  3. 情報部門の関係者も同じ意見だ。国防長官に就任する前の公聴会でパネッタ前CIA長官は「次のパールハーバーはサイバー攻撃となる可能性大で米国の電力網、パイプラインを使用不可能とし、金融証券及び政府の各種システムもダウンする可能性があります」と証言している。
  4. 「情報を盗む目的でアクセスがされていますが、これが悪意のあるコードでクラッシュさせる、あるいは基幹コンピュータシステムを操作することに使われる可能性があり、すでに実行されているかもしれません」(フォード)
  5. もう一人のサイバー専門家ジェームズ・マルヴェノン(Defense Group Inc)も同じ意見だ。ISR/サイバー偵察活動は第二次大戦時の「ウルトラ」暗号解読作戦と同じだとする。
  6. 「中 国がリアルタイムで内部情報、戦略的な方向性、民間の通信内容を入手するこの手段を諦めるとはとても思えません。まだ大量のサイバー攻撃は受けていません が、サイバースパイ活動ならすでに多くの事例があります。相手側はサイバースパイ攻撃を続けるために当方の対応を注視しているのです。」(マルヴェロン)  一方でその他諸国に対しては国際的な取り決め条約の形でサイバー攻撃の使用を制限するよう説得する必要があるという。
  7. 米国はすでにこの脅威に対応している。新しい政府のガイドラインではサイバー手段を海外のネットワークに使用して情報経路・接続点を事前に把握することが軍に許可される。このネットワーク侵入では時限爆弾となる組み込みソフトを使用しない受動的なものになるだろう。
  8. す でに各種のサイバー手段が確立されており、敵のサイバー防衛の経路は偵察ずみで、目的に応じて仕様が確立されている。先制攻撃は許可されていないが、新ガ イドラインでは防衛のためには専門機関が報復的な攻撃をし、敵の攻撃を阻止し、海外のサーバーを使用不能にすることができる。
  9. ただし、脅威がすべて中国が機嫌であるとは同意しない向きもある。「ハッカーは米国だけでなく中国も攻撃していますし、特定の国家によるものとは思いません」(崔天凱外交副部長)とハワイで米側との協議の前にコメントしている。
  10. 「国際社会は何らかのルールを作り高度技術の悪用を防止すべきだ。中国は米国が各国との協調共同体制を強めるべきと期待し、高度技術が破壊手段として使用されることのないよう希望します」(同副部長)

コメント 中国を敵国と断言しているのがポイントです。サイバー安全保障をテーマにすでに米中が接触しているのですね。新しいガイドラインはこれまでよりも踏み込んでいる内容ですが、それだけこの分野が重要性を増しているということですね。ネットワークを部隊とした情報戦が航空宇宙手段に同反映されるのか、補完するのかを考えるべきなのでしょうね。

2011年6月19日日曜日

2012年度国防予算案に新型爆撃機を計上した米下院

House Panel Adds $100M For Future Bomber

aviationweek.com Jun 13, 2011



米下院歳出委員会は2012年度国防予算法案原案の審議を始め、6月14日に1億ドルを追加し、新型爆撃機の開発競争を促す意向だ。

  1. 国 防予算案は総額6,490億ドル規模でその詳細が国防小委員会で検討されている最中だが、本誌はその一部を入手した。その一部としてボーイングC-17A 一機を昨年エルメンドーフ空軍基地で事故抹消された機材の穴埋めとして225百万ドルで調達することが明記されている。
  2. 予 算案では削減を追及し、空軍研究開発勘定では14億ドル相当が過剰請求分としてカットされている。その中には極地周回環境観測衛星システム(2.2億ド ル)、ロケット打ち上げシステム(1.24億ドル)、さらにオバマ大統領から直接要請のあった高性能超高周波衛星開発(67百万ドル)が含まれる。
  3. さらに法案には以下の文言が加えられている。ボーイングKC-46A給油機開発では空軍に5百万ドル以上の変更が発生した場合は議会への通知義務を30日以内に行うこととした。
  4. 同法案が成立するまでにはまだ多くの難関がある。上院が歳出内容の検討を開始するのは9月になりそうだとする観測もある。

2011年6月18日土曜日

電動UAV新型機で大きな進展を示すイスラエル

Electric UAVs Jolt Performance

aviationweek.com Jun 16, 2011

イスラエルで進行中の小型UAVに電動モーターを推進力とするものが複数あり、さらに水素燃料電池を利用するものもある事が判明した。各型は戦術利用を想定しており、データリンク含むペイロードを搭載する。

  1. 電 動モーターはこれまでも小型、超小型UAVで使用されているが、今回の事例は設計・性能両面で大きな変化をもたらすものと専門家は見ている。電動モーター の利点に低燃費、静寂運転、機体重量の軽減、運動・音響両面での捕捉可能性の低減があり、UAVのステルス性、生存性を高くできる。
  2. 特殊部隊がイスラエル航空宇宙工業IAI)製ティルトローターUAV(重量65キログラム)への関心を示している。同社は特許取得済みの垂直離陸垂直着陸VTOL機能をもつ2機種、パンサーとミニパンサーを開発済みだ。
  3. パ ンサーには固定翼機の性能にVTOL機のホバリング性能が加わり、ティルトローター2基と垂直離陸用の補助プロペラを備える。これによりパンサーは滑走路 を必要としない。特殊部隊にはこれまで大型機でしか利用できなかった機能を提供できる。パンサーには電動モーターを三基搭載し高度10,000フィートで 6時間滞空することができる。運用飛行半径は60Km で、IAI製MiniPOPマルチセンサー電子光学式EO昼間夜間ペイロードを搭載し、振動制御式のカメラ、測距装置、レーザー測距装置を含む。
  4. ミニパンサーは低高度飛行用で、重量は12Kg。飛行時間は2時間だ。搭載するのはPOP EO振動制御装備で運用は兵員2名で運搬する。
  5. 両機種に超低騒音モーターが搭載されている。パンサーの飛行制御には自動飛行移行制御モードがあり、ホバリングから前進飛行への移行をスムーズに実現できる。これにより同機の離陸着陸は操作員がクリックすることで完全自動で行える。
  6. こ れとは別の電動UAVは航空国防システムズAeronautics Defense Systemsが開発したマイクロオービターMicro-Orbiterで最大離陸重量は6.5Kg 。全翼機のオービターの全長は1メーターで翼巾は2.2メートルだ。ペイロードは1.2kgで10,000フィートまで上昇できる。飛行時間は最大90 分。同機の飛行は完全自動式で、10倍ズームカラーCCDセンサー・ペイロードを搭載する。オプションの暗視センサーもある。D-Stamp昼光ペイロー ドは650グラムしかない。さらに高性能エイビオニクス、GPS、慣性航法装置、データリンクを組み入れ同機は最大15Km地点からリアルタイム画像の発 信が可能だ。
  7. IAI には ミニチュアUAVとしてバードアイ650 BirdEye 650もある。用途は情報収集、監視、偵察(ISR)で、高度1,000フィートを飛行してリアルタイムで敵戦闘部隊の情報を伝える。衛星通信データリン クを介して移動式地上指令所に画像情報を送ることも可能だ。
  8. 同 機には陽子交換膜燃料電池をエアロパックAeropakの名称で搭載している。開発はシンガポールのホライゾンエナジーシステムズHorizon Energy Systemsで、飛行時間は6時間までとなる。これはリチウム電池を動力の前型の二倍以上にあたる。エアロパックは最高出力600ワットで、全体重量が 2Kg 以下の場合は900ワットとなる。
  9. エルビットシステムズElbit Systems は同社のスカイラークSkylark I-LE mini-UAVsでエアロパックをテストしている。
  10. 戦場を想定して実際のペイロードを搭載したミッションテストで、スカイラークは様々なシナリオでテストされている。離着陸の反復で燃料電池の耐久性が試された。

2011年6月12日日曜日

737軍用需要を総計150機と見るボーイング


Boeing Sees Big Special-Mission 737 Market

aviationweek.com Jun 9, 2011


ボーイングは737の軍用専用機需要を150機程度の規模があると見ており、その範囲はP-8海洋哨戒機またはウェッジテイルWedgetail 早期警戒機だけにとどまらない。

  1. この予測の根拠は現在C-130、P-3や707改造機が投入されているミッションの機材更新需要だ。
  2. そこであらたな顧客をとり込むべくアラブ首長国連邦、インド、日本にはウェッジテイルの需要があるとし、すでに同機の購入を決定 しているオーストラリア(6機)、韓国・トルコ(各4機)に加えたい意向だ。ボーイングは各国15機程度の需要があると見ている。
  3. P-8については米海軍は117機、インドは8機の導入を決定している。その他、オーストラリア、カナダ、サウジアラビア、ノルウェー、イタリア向けにも75機程度の導入が可能として政府間交渉が続いている。
  4. 別の動きもある。EC-130コンパスコール通信妨害ミッション機、WC-135コンスタントフェニックス大気サンプル収集機、オープンスカイズ機(条約に基づく上空査察飛行)の代替機材としての可能性だ。
  5. コンパスコールのミッションには737が適当とは見られないが、ボーイングはミッションそのものの進展で同機でも十分任務を実施できるはずと見ている。
  6. 海軍向けの特殊仕様P-3各機、空軍のRC-135リベットジョイント情報収集機の更新機材にする案も検討されている。総需要は50機程度と見ているがまだ提案段階ではない。
  7. そ んな中で一番実現性が高いのが空中地上監視用途への利用で、現在は707改造のジョイントスターが運用されている。米空軍は機材更新の検討をしているが、 ボーイングは737案が運行支援、燃料消費量の点からも一番効果が高いと主張する。この用途での需要は15機以上あるとみられる。
コメント; ウェッジテイル売り込みの対象は航空自衛隊のE-2Cでしょうか。その実現のためには経済がしっかりとして国家財政に余裕が無いといけませんね。

2011年6月7日火曜日

ボーイング防衛部門が重視するインド、日本、韓国市場



Boeing Targets India, Japan and South Korea

aviationweek.com Jun 6, 2011


ボーイングはインドの中型多用途戦闘航空機提案に敗れたものの、インドでは別の商談に中心を移しており、一方で日本、韓国それぞれの次期戦闘機契約の受注の準備も進めている。

  1. 「イ ンドの戦闘機案件では残念な結果になったが、当社は前に進んでいきます。」とボーイングの防衛宇宙保安部門CEOデニス・ミュイレンバーグDennis Muilenburgが報道陣の前で発言した。席上でボーイングがインドからC-17計10機を受注していることが発表された。
  2. またインドは大型輸送ヘリ、攻撃ヘリの調達を予定しており、ボーイングはここでもAH-64DアパッチとCH-47Fチヌークがともに実地テストに合格しているという。
  3. そ の他アジアの市場としてボーイングが力を入れているのが日本と韓国だ。日本はFXを40機ないし50機調達する公募を開始しており、ボーイングは F/A18E/Fスーパーホーネットで商戦に参入する。「防衛省の提案依頼が早期に公表されたことに力づけられています。調達は予定通り進行すると期待し ています」
  4. 日 本の防衛調達方針では第一陣の12機を平成28年度内に引き渡すことになっており、ミュイレンバーグはその意味でF/A18E/Fは低リスクの選択肢とな り、とくに費用と納期で顕著と説明する。一方、競合相手となるロッキード・マーティンの課題はF-35の引渡しが予定通り予算内で実現すると納得させる必 要がある。
  5. ボーイングは三菱重工業とボーイングF-15生産をめぐり密接な関係を築いている。ボーイングはこの関係をさらにテコ入れする一方、富士重工業川崎重工業との関係も強化し、FX受注を目指す。一方、ロッキード・マーティンもF-16派生型のF-2を生産する三菱重工と強い関係がある。
  6. 一方で、ボーイングは韓国が12年の末と予想される提案要求内容の発表を待っている。調達内容は戦闘機60機でボーイングはここではF-15を売り込む予定だ。
  7. 各国からの受注を目指す同社には米国国防予算の削減が背景にあり、海外販売の占める比率は現在ボーイング防衛部門の7%相当だったが、昨年に17%に急増している。さらに今後数年間で25%に伸びる見込みだ。そのうちアジア太平洋に大きな期待がかかる。
  8. ボーイングの民間・防衛部門の売上比率は今後50-50で推移する見込みだが、防衛部門最大の顧客である米国政府は国防支出をすでに削減している。

2011年6月5日日曜日

JSFの開発遅延は欧州戦闘機メーカーに朗報となるか

Duels In The Sky

aviationweek.com Jun 3, 2011


欧州の戦闘機メーカー各社は共用打撃戦闘機JSFの先行きをさらに否定的に見ている。
  1. サー ブユーロファイターダッソーの各社はJSFが公約通りの納期で公約通りの価格で引渡し可能となるとは見ていない。また、JSFのステルス性は予想より も低く、欧州製の戦闘機よりも性能は低いと見ている。そのなかでオランダ、ノルウェー、カナダがJSFを採用した背景には三つの理由が ある。ひとつは米国による政治的圧力(ウイキリークスがこの裏付けになった)、米国装備が中心の空軍力整備、また各国の政治的な動揺があった。
  2. 【イ ンドの選択の影響】インドは独自の中型多用途戦闘機MMRCAの選定でボーイングとサーブを選外とし、これは両社にとっておもわぬ敗北となった。残るユー ロファイター(タイフーン)とダッソー(ラファール)が受注をめぐり火花を散らすことになる。インド側関係者によると一次選考は技術面を重視したためタイ フーンおよびラファール両機ともにサーブのグリペンよりも優秀と判定されたのは当然という。また欧州製の各機は空力特性でもボーイングのスーパーホーネッ トよりも先進性がある。ラファールまたはタイフーンが採択されても、まだ課題は残る。たとえばAESAアクティブ電子スキャンアレイレーダーの共同開発、 メテオ空対空ミサイルの搭載、開発サイクルの長期化で避けられない技術陳腐化への対応、技術移転・国産化生産、完全デジタル機材の導入などインド空軍には すべてを限られた時間の中で実現する必要があるのだ。
  3. 仮 にラファールが選定に残る場合、またブラジルでも採用されれば、ダッソーおよび提携各社サフラン及びタレスも自国から9,000マイル離れたインドで上記 の課題に直面する。インドはリスクは全部契約先に押し付ける考えで、問題が表面化し国内で非難されることは極力避けるはずだ。
  4. ボー イング、サーブ両社にとってはインドで選択結果が出ても自社設計製品を各国市場に売り込む方法がそれ自体誤っているとは言えないことが救いか。ボーイング にとってインドの決定は米国製装備に依存したくないという選択結果と理解し、サーブは二次選考の対象はいずれも欧州の主要国との関係を強めることに救いを 見る。
  5. 欧 州の三機種はいずれもカナード翼を特徴とし、それぞれ各国の経済、運用、技術、これまでの歴史の蓄積の結果を反映している。歴史要因は1980年代の中頃 までさかのぼり、フランスとユーロファイター分担国がたもとを分けたことが大きい。ドイツと英国は一カ国による戦闘機開発では米国製戦闘機と競争力をたも つだけの規模が足りないと主張。フランスは多国間開発には主導的な立場を取る国がなければ不可能と主張を曲げなかった。その両方とも正しかった。
  6. ス ウェーデンが一線を画してこれたのは、戦闘機を独自開発してきたため。設計、開発、主要部分の生産は同国内で行っているが、サブシステムのエンジ ン、レーダー、兵装類は海外調達や共同開発である。
  7. 【タ イフーン】 外観こそ似ているが、タイフーンとラファールは技術、運用面で相当の相違がある。タイフーンはトーネードが運用可能年数の半分になった段階で 導入する構想であった。当時のMiG-29やスホイSu-27の脅威により空戦能力を重視する方向に変わり、レーダーは大型化し、ミサイル搭載 数は6発標準となり、空力特性と推力は機動性とマッチする設定になった。
  8. 英空軍はタイフーンはロッキード・マーティンF-22の性能にはかなわないと見てラムジェット推力で高性能赤外線追尾システムを搭載したメテオAAMを装備してより強力になると考えていたが、問題は強力な敵勢力に対抗する必要のある空軍は限られていることだった。
  9. ま たタイフーン共同開発の四カ国で対応が異なっている。英国はタイフーンでトーネードの任務を実施することとし、精密対地攻撃能力 を重視した。一方でその他各国は空対地攻撃能力を最重要課題とは見ずに、(これにはイラクやアフガニスタンで作戦展開していないという事実もある) 資金 投入を渋り、性能実現には時間がかかることになった。それでもタイフーン共同開発各国は将来の発展形の売り込みもしている。その中には推力ベクトル制御 TVCの提案もあり、外部に重量級兵装を搭載しても機体取扱特性が向上し、この艦載型にインドが関心を寄せている。JSFが失敗の場合は英国も導入 を検討するだろう。タイフーンの生産・性能向上計画は繰り返し遅延し、共同開発国が費用負担、開発日程でしばしば紛糾したことで体制の立て直しが発生して いる
  10. 【ラ ファール】 これに対してラファールはフランスの空軍編成を意識して開発され、海軍でも運用を想定し、近接航空支援から核攻撃までの各ミッションを想定し ている。その結果、機体の割に大量の外部搭載兵装が実現したが、タイフーンよりも性能限界は低い。また、レーダー有効範囲を犠牲に軽量としている。ラ ファールで目を見張るのはステルス性だ。ラファール開発チームは2000年代中頃から同機の成熟化に成果を上げており、GBU-12レーザー誘導爆弾と SagemAASM長距離精密誘導兵器を搭載できるようになった。敵防空網の破壊ミッションではレーダー目標捕捉を敵射程外から行う構想と超低空で地形を カバーとしてAASMを発射剃る方法が提案されている。さらに地形画像追尾型の赤外線装備の試験が予定されている。ラファールはタレスのエアロマルチバン ド長距離偵察ポッドを運用することが可能だ。ラファールはゆっくりと生産されて機体価格は高い。生産数を伸ばすと自国内の他の防衛装備調達が犠牲になる。
  11. 【グリペン】 グリペンの開発ではステルスが大きな特徴となるが、スウェーデンは小規模ながら高性能の空軍部隊を維持するとの戦略的な政策決定をしており、グリペンを2040年まで運用する予定だ。そのためJAS39E/F グリペンNGの開発が急がれる。グリペンNGの初飛行は2012年の予定で、各種報道によるとステルス性向上のため空気取入口で分流器が廃止されるという。高性能エンジンにより、アフターバーニングなしでも出力は現行C/D型のRM12エンジンの最大推力の90%相当になるという。ただしエンジン寿命をのばすために も推力を下げる可能性もある。