2013年3月24日日曜日

サウジ王国向けF-15SAは初のフライバイヤ方式イーグルで意外といいかも

Fly-By-Wire F-15SA makes first flight


form USAF website




3/15/2013 - WRIGHT-PATTERSON AIR FORCE BASE, Ohio (AFNS) -- 米空軍および主契約会社ボーイングはF-15SA高性能戦闘機のフライトテストに成功した。同機はサウジアラビア王国空軍用に開発された。

  1. F-15SAの初回飛行は2月20日にボーイングのセントルイス施設で実施された。飛行は予定通り実施され、すべてのテスト項目を実施し、機体開発日程は予定通りの進展を見せている。
  2. 同機はサウジ王国空軍のF-15部隊近代化計画の中心となる存在で、294億ドルを投入するその規模は米国の歴史上最大の海外向け防衛装備販売事例となる。
  3. F- 15SAは機体性能の向上に加え、状況把握能力の向上、生存性の増加をこれまでよりも低いライフサイクルコストで実現するもの。エイビオニクスの改良では デジタル電子戦闘装置、フライバイワイヤ飛行制御、赤外線探索追跡システムおよびアクティブ電子スキャンアレイ式レーダーを装備している。コックピット前 席後席には高性能ディスプレイ装置とヘルメット搭載位置指示装置が特徴。兵装搭載場所が二箇所増えたことでペイロードも増加している。
  4. 米空軍関係者は立ち上げから一年未満で初飛行にこぎつけた成果に満足している。
  5. 同機のフライトテストには三機を導入し、セントルイスとカリフォーニア州パームデールのボーイング社施設で実施する。量産型の機体はサウジアラビア王国に納入を2015年に開始し、2019年に完了する。■


2013年3月23日土曜日

冷戦時代よりも重要になってきたミサイル探知衛星

U.S. Sends New Satellite Into Space To Monitor Missile Launches

By Reuters

aviationweek.com March 20, 2013
Credit: Lockheed Martin

アトラス5ロケットガケイプカナベラル(フロリダ州)から19日打ち上げられ高性能ミサイル警戒衛星二号機が軌道上に乗せられた。

  1. 打上げは東部標準時間午後5時21分で米空軍の宇宙配置赤外線システム地球静止衛星二号機Space Based Infrared System Geosynchronous(Geo2)を搭載していた。
  2. .同衛星は軌道上監視ネットワークの一部となり、ミサイル発射の兆候を連続探知する手段となる。
  3. . 「ミサイル後部から出る赤外線の兆候を見つけます」と空軍宇宙軍団司令官ウィリアム・シェルトンAir Force Space Commander William Sheltonが同日に開かれた下院科学委員会公聴会で発言した。同公聴会は小惑星ほか宇宙物体の接近の発見方法がテーマだった。
  4. .「ミサイルの種類がわかります。またミサイルの向かう目標もわかります。搭載する赤外線センサー一式では地球の外から襲来する物体の予測は不可能です。」
  5. .同衛星はロッキード・マーティンが作成し、2011年に打ち上げ済みのGeo1に加わる。各衛星には赤外線センサー二組が搭載され、そのうち一基が地表を連続してスキャンしてミサイル発射の兆候を探知すると共に、残りの一基は固定地点を監視する。
  6. 宇宙配備赤外線探知システム衛星は当面は40年前から配備済みの国防支援衛星ネットワークの補完の扱いだがゆくゆくはこれに取って代わる。
  7. . 「ミサイル警報探知システムの機能が厳しく問われる事態になっています。多分冷戦時代よりも要求水準は高いのではないでしょうか」とジェイムズ・プラノー James Planeaux(空軍で赤外線宇宙配備システムズを統括)は語る。「戦略級、戦術級ミサイルの脅威が数の上でも種類でも多様化しています。そこでわが国 のシステムも近代化して現在の脅威に対抗できるようにしておく必要があるわけです」
  8. .米国の宇宙配備探知衛星全体で2011年に200近くのミサイル発射を見つけており、その他に1,700件近くの赤外線現象を感知したとプラトーは言う。「世界情勢の動向次第ですが、今年はミサイル発射件数が増えると見ています」
  9. チャック・ヘイゲル国防長官Defense Secretary Chuck Hagelからアラスカにミサイル迎撃手段を14基追加配備するとの発表があり、北朝鮮とイランからの脅威の増大に対応する動きとなる。
  10. 軍 が運用する宇宙配備監視ネットワークからの情報によりミサイル迎撃の位置・追尾情報が利用可能となる。Geo 1衛星はデータ通信の問題により運用が完全となっていない。ただし10月1日までにリアルタイム監視が実現するとプラノーは発表。Geo2も年末までに同 様の性能が獲得される。
  11. .さらに2機の衛星が製造中で、2015年と2016年に打ち上げられ、今年中に別の二機製造の契約が交付される見通しだ。
  12. なお、今回の打ち上げはユナイテッド・ローンチ・アライアンスにとって通算69回めとなった。同社はロッキード・マーティンとボーイングにより2006年に設立された共同事業体だ。■


2013年3月17日日曜日

オープンソースソフトウェアは次世代戦闘機の中核技術になるのか

U.S. Navy Eyes Open-Avionics Testbed For Future Aircraft

By Graham Warwick
aviationweek.com March 15, 2013
Credit: Lockheed Martin
米 海軍が航空業界での関心の程度を把握しようとしているのは開かれたエイビオニクス・アーキテクチャの応用がが計画中の将来型垂直離着陸Future Vertical Lift (FVL) 先端回転翼機およびF/A-XX 次世代制空戦闘機next-generation air dominance fighterへ可能か、という点だ。
  1. 構 想ではまず政府研究施設で参照用のアーキテクチャ試作型prototype reference architectures を作成し、将来型空中性能環境Future Airborne Capability Environment (FACE)と呼称されるオープンかつ再利用可能なソフトウェアの技術標準を使用する。FACEとは共通ソフトウェアによる作動環境をモジュラー構造の パーツで実現し機体間で交換し、再利用できるものと定義される。
  2. 開発コストと所要期間を短縮するため、既存ソフトウェアのモジュールを利用することでFACEはサードパーティ製アプリケーションを利用する他、激しさを増すソフトウェアコンポネント開発の競争状況も利用して大幅なコスト削減を実現できると期待されている。
  3. 合計50の企業団体で構成されるFACEコンソーシアムFACE Consortiumから技術標準第二版が発表されており、ソフトウェアコンポネント間のデータ交換では要求水準を高くしており、相互動作環境と移植性の実現を図る。
  4. 一 方で海軍航空システムズ軍団Naval Air Systems Commandは試作型FACE作成提案書を公表している。試作型FACEは海軍航空戦センターNaval Air Warfare Centerの航空機部門(メリーランド州パタクセントリバー)および兵装部門(カリフォーニア州チャイナレイク)、ならびに陸軍の航空ミサイル研究開発 技術センターAviation and Missile Research, Development and Engineering Center(アラバマ州ハンツビル)に設置される。
  5. 各施設でFACE技術標準のversion 2.0を使い技術の実証、基準作成、成熟化を進め、目標はエイビオニクスのアーキテクチャに指針を示すことで将来の機体となるFVLやF/A-XXへの搭載を目指す。
  6. 試作型FACEでは一般的なミッション用装備を再現し、ハードウェアやセンサー類と関連ソフトウェアを接続して使用する。
  7. 2014年1月から各社はソフトウェアコンポネントの新作をFACEラボに持込み基準アーキテクチャに統合させて、デモとあわせて政府事業との共同実験を行うことができるようになる。
  8. 海 軍の次世代ジャマー開発計画Next Generation Jammer programおよび陸軍の統合多用途フェイズ2ミッションシステム実証Joint Multi Role Phase 2 mission-system demonstrationがFACE準拠の調達の先陣となろう。それに先立ちロッキード・マーティンが30.8百万ドルで実施する海軍向けC-130T のコックピット改修がFACE準拠調達の最初の例となる。

読者のコメント(オリジナル)

warrant9さん

FACE ラボにより基本モジュールがESM//ECM、通信、その他戦闘システムの監視・在庫管理、データベース、ディスプレイに共通のインターフェースで現有あ るいは将来の機体で利用できるようしてもらいたい。その鍵となるのは設定管理の自動化、履歴管理や文書化のツールだ。米政府には政府調達装備 Government Furnished Equipment (GFE) が潤沢にあり新型機の要求する性能水準に対応可能だ。ここで投資しておけばソフトウェア開発工程を将来短縮することにつながるので開発費が下がる。F- 22やF-35の開発には多額の費用が投入されながら時間損失も大であったのがソフトウェア開発で、このため工程が長期間に及んだ。多分我が国のGEFが 将来の開発の種子となるだろう。小さく産み、テストも小規模にして成功例にするのである。これが可能だという前例はイージスである。

コメントへのコメント:  Aviation Week読者には内部関係者も多数あり、コメントそのものにも深みがありますね。それにしてもスマホではありませんが、ソフトウェアの占める価値がどんど ん高くなっていることを痛感します。一方でEMPや電子攻撃を想定して高価なシステム装備を防衛する手段にも投資が必要ですね。防衛ができるということは 攻撃もできるわけで、今後は電子攻撃というジャンルが注目されるでしょう。数で圧倒しようとする敵に対向するためにも電子装置の無力化という目に見えない 戦争がこれから前面に出てくるのでは。



F-35導入に動くシンガポールは東南アジア最強の国防国家だ

Singapore Expected To Order F-35s Soon: Source

By Reuters

aviationweek.com March 14, 2013
Credit: USAF
シンガポールがF-35の「最終段階評価」にあり、米側関係者は今後同国は速やかに発注に移り、数十機の導入を図ると見ている。
  1. ビジネスと海運のハブ国家であり、東南アジアで最優秀な装備の軍を抱えるシンガポールはまもなくF-35導入の「要請状」を提出してくると米政関係者が匿名を条件に明らかにした。
  2. シンガポール国防省ン・エンヘンNg Eng Henは同国空軍部隊の近代化にF-35が最良の選択と判断し「F-5の耐用年数が限界に近づいており、F-16は半分過ぎている。現時点でF-35の総合評価の最終段階にきている」と議会で発言。
  3. シンガポール空軍の現有勢力はF-15SG(24機)、F-16C(20機)、F-16D(40機)、F-5S(28機) F-5T(9機)であり、このほかにAH-64アパッチ攻撃ヘリも19機運用している。
  4. 人口530万人で裕福な同国は2013年度国防予算として98.5億米ドルを計上しており、対前年度比4.3%増だ。
  5. 世界の金融センターであり、世界第二位規模のコンテナー港をかかえる同国は地域内で最大の軍事予算支出国で、国家規模が大きい隣国、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムのいずれも同国に比べれば小さな存在だ。
  6. 米国政府が急速に成長するアジア太平洋で経済、安全保障上の関心が増大するる中で、F-35輸出が拡大すれば同盟国とのつながりが強化されるとともに米国の調達規模縮小を補えるので心強いニュースとなる。
  7. ロッ キードは3,960億ドルの規模でとりくみつつ、すでに計画より7年遅れ、当初費用見積もりを70%上回る形でF-35合計3型式を米国以外に国際パート ナー8カ国向けに製造中だ。各国は資金拠出をしており、英国、オーストラリア、カナダ、ノルウェー、デンマーク、イタリア、トルコ、オランダの8カ国だ が、コストの上昇、納入の遅延、さらに各国の財政事情で一部に計画見直しで調達機数が減りそうな動きがあるほか、代替策の検討を始めている国もある。
  8. シンガポールは2003年に副パートナー国になっており、同時に19機を発注済のイスラエルも加わっている。
  9. シンガポールの発注には海兵隊仕様のB型も一部含まれる見込み。
  10. なお、同国では国土が狭いこと空域に制限があることからかねてから戦闘機パイロットの訓練は米国で、ヘリ・パイロットはオーストラリアで行ってきた。
  11. シンガポールの通常兵器購入規模は2008年から2012年時点で世界第5位で、インド、中国,パキスタン、韓国の後に続いている。■


2013年3月16日土曜日

UAS大量投入で米空母部隊撃滅ができると考えている中国

                            
China Plans Swarming UAS as Defence Against US Attack
                    
UAS Vision  March 13, 2013                   
                                            



民間シンクタンクProject 2049 Instituteによると中国は無人航空機システムunmanned aircraft systems (UAS)開発で大きな進展を示しているという。
  1. 「人民解放軍が第一線で実用に耐えるUASを配備していることが近い将来の同地域内の安全保障上で大きな影響を生むだろう」とレポートはまとめている。
  2. 「無人機技術で世界クラスのリーダーとなることを目指す中国で人民解放軍はこれまで広範囲かつ組織的に各種のUASを開発してきた」
  3. 中国は280機のUASを配備しており、今後その数は急速に増えそうだ。
  4. USA.同レポートの情報源とは中国国内で公刊されている各種資料だ。レポートでは将来のアメリカとの軍事衝突でのUASを使った戦術を予測している。
  5. 「とくに米海軍には懸念材料となるはずだ。今回検討した技術軍事文献によると、PLAの戦術構想では多用途UASで米空母戦闘群を攻撃する想定がある」
  6. 中 国の作戦構想では長距離UASを接近阻止・領域拒否作戦に投入し米国と対抗する。衝突の初期段階ではおとりUASが投入され、護衛戦闘機・艦艇を欺瞞さ せ、貴重な対空ミサイルを消費させる。そのあと数波のUASで電子戦、通信・レーダーかく乱をさせる。同時にその他のUASが米側の早期警戒指揮管制機材 に動力学的攻撃を加える。
  7. UAS は巡航ミサイル、対艦弾道ミサイル(ASBM) の誘導でも中心となり、米海軍艦艇の攻撃に参加する。中国のASBMとなるDF-21Dは理論上は米海軍空母ほか主力艦を直接攻撃できるはずだ。あるいは 上空から小爆弾をばらまくことができる。空母の飛行甲板にとって爆発性の高い小爆弾が高性能火薬をばらまけば結果は致命的だ。
  8. 珠海航空ショーで2010年、2012年それぞれに中国航天科技集団公司が大型UASをWJ-600の名称で展示しており、2010年展示では同機が米海軍のアーレー・バーク型駆逐艦を対艦ミサイルで攻撃する絵が公開されていた。
  9. 同レポートでは同機を「PLAのUAS機材中で最大かつ複雑に各組織が絡んで開発したUAS」と表現している。
  10. 「その背後には国家中央組織が合同してUASミッションの要求水準を決め、産軍複合体が設計、研究、開発、生産を担当していること、UAS運用部隊が中国の各軍事組織内で急成長していることがある」■


2013年3月14日木曜日

F-35を30年間運用すると総額いくらになるのか 麻痺してくる金銭感覚

Pentagon Needs $12.6 Bln Per Year Through 2037 For F-35: Report

By Reuters

aviationweek.com March 12, 2013


.ロッキード・マーティンF-35の開発を完了し、予定の機数全部を配備した場合2037年までペンタゴンは年間126億ドル(約1.2兆円)の予算手当てが必要となることが判明した。
  1. この試算額はこれまで会計検査院Government Accountability Office (GAO)が試算していた年間予算より20億ドル高くなっている。ロイターが今回GAO報告書の原稿を入手し、先週土曜日に報道している。
  2. 同上原稿では同機が搭載するプラットアンドホイットニー製エンジンのコストは触れられていないとペンタゴンのF-35計画推進室からコメントが出ている。
  3. GAO報告書でペンタゴンは2037年まで同機調達・開発費用で毎年3,160億ドルの支出が必要としている。
  4. GAO 報告書のまとめは「F-35共用打撃戦闘機は長く、費用がかさみ、険しい学習プロセスを経て、やっと正しい方向に動きつつある。ただし、この先にも大きな 課題が立ちふさがっていることに変わりはない。」としてペンタゴンで一番高額な兵器調達となった同機計画をまとめている。
  5. F-35のコストは当初見積もりから70%上昇しており、技術上の課題も多いが、米軍や同盟国が発注数を減らすか、さらに難問が加わると機体単価がさらに増える可能性がある。
  6. 現 状では総額4,000億ドルになる見込みで、プラス1兆ドル超が配備期間30年の運用、保守費用として必要になる。ペンタゴン、F-35計画推進室はコス ト削減をしようとしているが、GAO報告書ではF-35が代替しようとしている現行機種よりも60%も高い水準になっているという。
  7. . また同報告書によるとペンタゴンの費用査定計画評価室Cost Assessment and PrograGm Evaluation (CAPE) officeによる直近の予測では年鑑運用保守費用は各型あわせて182億ドルにのぼり、2010年時点での既存機種の運用保守費の111億ドルより高 い。
  8. 「国防総省および契約企業はF-35計画が投入費用に対して、また約束どおりの納入日程に対して実際に現実のものとできることを証明する義務がある」としている。
  9. 「毎年の予算環境の中で妥当な価格を実現できるのか、機体単価がいくらになるのか、運用・支援費用が運用期間中で総額いくらになるのか」で米軍が最終的に調達する機数が決まる、と同報告書はまとめている。■

コメント  これだけの規模で話が進むと感覚が麻痺する気がしますが、それでも日本はこんな機体を本機で導入するつもりがあるのでしょうか。大きすぎてつぶせない、と かつての銀行の整理の際に聞いたようなフレーズが聞こえてくる今日このごろですが、F-35と心中することに意味があるのでしょうか。


2013年3月12日火曜日

F-35エンジンで見つかったブレイドの亀裂がどんな影響をこれから与えるのか

F-35 Engine Blade Crack Raises Durability Questions

By Amy Butler
Source: Aerospace Daily & Defense Report

aviationweek.com March 06, 2013
Credit: Pratt & Whitney

0.6インチの亀裂が第三段目の低圧タービンで見つかったF-35Aの先月の事例の原因は「熱クリープ」だったとクリストファー・ボグデン米空軍中将(F-35計画主幹) Lt. Gen. Christopher Bogdanが明らかにした。
  1. 現 在のところこの問題はF135エンジンの欠陥と結び付けられていないが、プラット・アンド・ホイットニー製の同エンジンは今回の問題により同エンジンの耐 久性へどんな影響が出るのかを検証するまでは「安心できる状態ではない」とされる。ボグデン中将が3月5日に開催されたAviaion Week主催の国防技術と経済性要求のバランスを考える会議の席上で発言した。
  2. 今回の亀裂が発見されたのは2月19日に通常の内視鏡による検査を地上で行った際のことだった。3月1日に解除となるまで同型機すべてが飛行禁止措置を受けた。
  3. 亀裂がみつかったのはAF-2のブレイドだった。ボグデン中将は同機のエンジンは「馬車馬のようなエンジン」で性能限界のの押し上げ用に使われており、極限まで稼働しており、マッハ1.5で低高度飛行や、7ないし8gでの超音速飛行をこなしてきた。
  4. .同機はA型の機材の中で性能限界の確認のほとんどをこなしてきた、と同中将は語る。
  5. またAF-3とAF-6という通常離着陸型機が他に二機あるが、現状では地上待機のままであり、その理由として各機が問題の機と同様の運用をされてきたためだ。
  6. エンジン専門家は最低二週間かけないと今回の事象がエンジン耐久性そのものにどんな影響をあたえるかは判断できないとボグデン中将は明らかにした。
  7. 「熱ストレスがどこまでかかるのか、通常の機材では」考えにくい極限状態になるのか。「問題は100%で想定していたエンジン寿命が実際に短くなるとしたら、タービンブレイドが寿命を短くさせる要因であれば対応が必要となる」
  8. もしこれが大きな問題につながれば、同機を導入する予定の各国は追加的検査の実施が必要となるか、または当初の想定を上回る点検修理作業の実施を迫られることになろう。■


2013年3月4日月曜日

F-35飛行禁止措置が解除され、飛行再開へ

Engine Investigation Clears F-35 To Return To Flight

By Guy Norris guy_norris@aviationweek.com


aviationweek.com March 01, 2013

.
F- 35全機の飛行停止措置が解除となった。調査の結果、タービンブレイドの亀裂は別個の減少と判断されたため。「各機の点検結果から実験室での点検まで行 い、根本原因が解明したことでF-35の飛行安全性が確認できました」と同機搭載のF135エンジンのメーカーであるプラットアンドホイットニーが発表し た。
  1. 同機が飛行停止措置になったのは2月21日のことで内視鏡による点検で0.6インチ大の亀裂が第三段目低圧タービン (LPT)のブレイドで見つかったため。この機体は空軍向けAF-2でエドワーズ空軍基地に配備されている。
  2. そ れを受け当初はLPTで2007年から2008年のテスト中に発覚した高サイクル疲労問題の再発ではとの懸念が広がったが、プラットによると「高サイクル 疲労あるいは低サイクル昼王の兆候はなく、問題のタービンブレイドに疲労が広がっているとの証拠も見つかっていない。ブレイド亀裂の鍵となる要素は飛行テ ストの特殊な運用状況の中で発生したと見ている」と発表。
  3. 同 社からは当該機のエンジンは「通常のF-35運用想定よりも高温環境での運転が4倍の長さにわたり行われており、高温にさらされたことでブレイドの粒子構 造が分離したもの」としている。このような分離現象はクリープ破断creep ruptureとして知られている。これは負荷が連続してかかる状況と高温により、ブレイド素材が限界に達して変形が発生することが引き金となる。”
  4. F- 35統合開発室からは追加声明として「当該機のエンジンはF-35の性能限界確認のため通常より長く高温条件下で運転されていた。高温に加えその他ストレ ス要因に長時間さらされていたためこのエンジンで亀裂が発生したものと判定される。その他の機材では同様の亀裂は一切見つかっていない」と発表した。
  5. た だしAF-2で発生した現象の原因についてはこれ以上の説明は出ていない。AF-2はエドワーズで試験用に使用されている機体だが、これとは別に垂直尾翼 付近で発生する機体表面の焼け焦げ問題への対応として新種類の表面設計のテストをする予定になっていた。かねてから同機では高速・高高度飛行の繰り返しで 表面焼け焦げや剥離の問題が見つかっていたため、テスト中の飛行条件でも制約が加えられていた。新型の表面塗装も試行したものの、問題解決にはつながって いなかったので、AF-2がテストとして完全に新しい表面処理を今年にテストする機体に選定されていた。このテストでは通常を上回るエンジン高出力運転の 連続が必要条件となる。”
  6. プラットからは「緩和策としてエンジンの状態で異常状況を探知する高性能装置や状況の監視っシステムがあり既にそれを装着しており安全に飛行を再開できる」としている。■


2013年2月24日日曜日

F-35 エンジン亀裂発見で今度は全機飛行停止へ


Engine Crack Grounds Entire Lockheed F-35 Fleet

By Amy Butler abutler@aviationweek.com, Jen DiMascio jennifer_dimascio@aviationweek.com
 


aviationweek.com February 22, 2013

Credit: USAF


F-35全機が地上で飛行停止措置となっている。原因はエンジンで、今回発生した問題は米海軍航空システムズ軍団Naval Air Systems Command (Navair)によると「壊滅的な不良」“catastrophic failure.”につながる可能性があるとしている。
  1. 2月19日に第三段目低圧タービンのエアフォイルで亀裂がF-35A点検中にみつかったのはエドワーズ空軍基地でのことだったとプラットアンドホイットニーが明らかにした。同社は同機用F135エンジンのメーカーだ。

  1. 「予防措置としてF-35全機のフライトオペレーションを調査点検が完了するまでは全て停止している」とペンタゴンが声明文を発表しており、「今回の自体で同機部隊全体にどんな影響が出るかを断言するには時期尚早」としている。

  1. プラットアンドホイットニーは今回の飛行停止は「予防策」と表現しており、「破損したタービンモジュールおよび付属ハードウェアを当社ミドルタウン(コネチカット州)工場に搬送され調査をする。今回亀裂を生じたエンジンは合計700時間運転しており、そのうち400時間がフライトテストで計上したものだった」としている。同社としても事態の把握をしてすみやかにフライト再開ができることを期待しているという。

  1. 一方Navair司令官デイビッド・ダナウェイ中将Vice Adm. David Dunawayは議会向けの情報更新は3月1日以前には期待できないとの見解を示している。

  1. 飛行停止措置が長引くとフライトテストの進捗予定にも影響が出る可能性があり、重要システム系統のテストも遅れることになる。とくに2Bソフトウェアが最初に作戦能力獲得をめざす海兵隊にとって必要な要素だ。

  1. 今回の事件は短距離離陸垂直着陸型F-35B部隊の飛行停止措置が解除になった直後に発生している。B型の飛行停止の原因はプラットアンドホイットニーが統括する燃料圧力系統の不適切な加工取り付けであった。

  1. 今回の事態によりF-35に別のエンジンを提案したものの採択されなかったジェネラル・エレクトックにとってはわずかばかりとはいえ溜飲が下がる思いをしているはずだ。2つの政権にわたり厳しい論争とロビー活動をくりひろげたにもかかわらず、ペンタゴンはGE/ロールスロイス連合のF136エンジン開発に終止符を打つことで議会の同意を2011年に取り付けていた。■



2013年2月16日土曜日

F-35Bの飛行停止措置は解除へ 

Pentagon, Navy Lift Flight Restrictions On F-35Bs



aviationweek.com February 13, 2013
Credit: Dept. of Defense

ペンタゴンおよび米海軍は海兵隊向けF-35Bの飛行制限措置を解除し、およそ一ヶ月間地上待機していた同機のテスト・訓練飛行の再開にめどがついた。

今回の措置は水曜日に決定となったとケビン・キレア大佐Colonel Kevin Killea(海兵隊向け機体を統括)が発表した。同大佐によると海軍とF-35統括室には今回の飛行停止措置の原因を作った製造上の問題を解決すべく多くの課題があるという。

飛行再開は総額3,960億ドル規模のF-35開発ゼンタイではよい知らせではあるものの、今年は相当の密度のテスト飛行日程を行わないとこれまでの遅れを取り戻せない同機の状況に変りはない。
.
ペンタゴンと海軍がF-35Bの25機全てを飛行停止させたのは1月18日のことで、Stratflex製の燃料ラインが飛行開始前に外れるという事態が1月16日にフロリダで発生したため。ペンタゴンからはその後、この原因は製造過程内の不良であり、機体整備上あるいは設計上の問題ではないとの発表があった。

ペンタゴンF-35管理室のスポークスマン、ジョー・デラべドヴァJoe DellaVedovaによると25機全部の飛行再開は不良品の燃料ラインの交換が完了すれば可能だという。すでに不良品は全点が点検済みで、問題がある部品は交換されるという。問題の部品はF-35Bの排気系の一部だ。
.
Stratoflexは英国のロールスロイス Rolls Royce Plc向けの製造契約企業であるが、F-35Bのエンジンはプラットアンドホイットニー製だ。

ペンタゴンF-35統括室はまず開発テスト用の機体9機の飛行制限を解除しており、海軍航空システムズ部門を統括するデイヴィッド・ダナウェイ中将Vice Admiral David Dunawayがその後16機の飛行制限を解除している。この機体は訓練用に使用されていた。

なお、空軍向けA型と海軍向けC型の飛行には今回の問題は影響を及ぼしていない。燃料ライン部品が異なるため。


今回の飛行停止措置の結果がF-35Bのテスト日程にどのような影響をおよぼすかは不明だ。これまでは同型はわずかであるが予定よりも先を走っていたが、30日の飛行停止の影響は確実に出てくるだろう。

ペンタゴンはStratoflex製部品の分析を継続し、プラットと詳細点検・修理の費用負担を協議するという。

プラットのスポークスマンであるマシュー・ベイツMatthew Batesは同型の飛行再開決定を歓迎し、根本原因は解決ずみだという。「納入業者と追加措置をとりホースの機能確保をしたので、エンジン推進系全体の機能維持はもう大丈夫です」 ただしベイツは今回の点検修理の費用負担は誰がするのかについては言及していない。

F-35B各機から合計82本のホースが取り外され、ミネソタ州でCTスキャンを受けている。初期分析では36本中10本で締め付けが限度以上になされていることが判明している。ペンタゴンと海軍はテスト機のエンジン性能結果からホースの性能要求内容を修正している。締め付け度が過剰だったホースも合計1,600時間の飛行で異常は発生していないという

2013年2月10日日曜日

初飛行したY-20の性能は意外に低水準、しかし今後の向上策には要注意

Avic Y-20 Airlifter Awaits Better Engines


aviationweek.com February 04, 2013
Chinese Internet
Bill Sweetman Washington and Bradley Perrett Beijing

初飛行はしたものの性能向上の課題が残る機体、それがこのたび登場した中国の Y-20輸送機だ。1月26日に初飛行した同機は一見現代的な機体に陳腐化した60年代技術のエンジンの組み合わせとなっている。そのため、運用上で大きな真価を発揮できる機体ではなく、せいぜいイリューシンIl-76よりわずかな性能向上を提供するだけだろう。
  1. というものの同機にはもう少しまともなエンジンが開発中だ。中国が高バイパス比エンジン技術を実用化したとき、同機の性能は急上昇する。ComacのC919旅客機にも同様に高性能エンジンが開発中だが、道は遠い。
  2. Y-20の機体開発が成功したことが中国航空産業では重要な成果だ。これまでおよそ60年間に渡り中国は主にソ連時代の設計をコピーするだけに終始してきたが、Y-20は純国産機では最大規模で、80年台に失敗に終わったY-10旅客機よりも大きい。
  3. ただしY-20の就役は2017年以降になりそうだとの観測が中国国内にあり、機体には複合材料が使われているというが、機体の大部分はアルミニウム製のようだ。また、「超臨界」主翼構造にになっているという。その目的が後日エンジン換装を見込んだものなのかは不明だ。
  4. 機体寸法と外観ではIl-76に近いもののY-20は完全新設計の機体だ。エンジンも同じサツルンD-30KP中バイパス比エンジンが搭載されている。ただしIl-76より主翼幅が短く、機体幅は逆にわずかに大きくなっている。エアバスA400Mよりも大型で、ボーイングC-17機体と直径はほぼ同じで全体では小型だ。
  5. Aviation Weekによる同機の詳細性能の推定値と中国国内で報道されている値は食い違いっている。中国報道ではY-20の全幅45メートル、全長47メートル、全高15メートル、基本重量200トン、ペイロード66トンとしている。その根拠は不明だが、2006年に同機開発が始まった際の推定値に近い。Il-76との比較で同じD-30KPエンジンの性能から見て公表されている重量とペイロードは大きすぎる。
  6. Y-20の組立は西安航空機が行い、ロールアウトは2012年12月だった。機体構成はロッキードC-141に近い。主翼の取り付け位置、、中程度の後退角は低速度での飛行性能を重視した一方、適度な巡航速度が期待できる。また、降着装置を機体内に格納し、T字尾翼となっているのも同じだ。C-141以降の輸送機はAn-124除き、同様の構造を踏襲している。Y-20の主翼では全体に渡りスラットが付けられ、フラップは三段式だ。エンジンはIl-76同様に低い位置に取り付けられているが、C-17のようなエンジン推力を利用したフラップは採用されていない。
  7. エルロンで揚力を低速度で稼ぐ構造で、大型のスポイラーが付けられている。C-17同様にY-20のラダーも四枚構造だ。
  8. Il-76よりもコックピットは小ぶりで乗員3名となっているので貨物室の容量増加に貢献している。中国国内報道ではIl-76よりも輸送容量が大きく、現在運用中の戦略級輸送機の中では一番身軽だとしている。貨物室直径が大きいことでヘリコプターや建機を搭載できるとしているが、貨物室全長はIl-76より短い。
  9. 降着装置の構成はA400Mに類似しており、2輪一組で3基を左右に備えている。機首ノ降着装置は90度回転し、簡易な飛行場での運用が可能だという。
  10. D-30KPエンジンよりも20%以上の効率向上を実現するターボファンエンジンをAvicエンジンが瀋陽で開発中で、WS-20の名称となるだろう。これはWS-10戦闘機用エンジンからの派生型とみられる。
  11. D-30KPのバイパス比がCFM56と同程度なのに対し、Y-20が同エンジンを搭載して初飛行したのは中国製エンジンが未完成であるためで、開発が完了していないのか、完成していても信頼度が不足しているからだろう。
  12. これよりも実現が巌しいと見られているのがCJ-1000エンジンで、Avic民間航空機エンジン部門がComacのC919用に開発中のものだ。ねらいとしてはCFMのLeap-1と同程度の性能をめざしている。CJ-1000開発は技術上の問題に直面しているが、潤沢な資金が投入されている。十分な推力が提供出来れば世界標準の運航効率が実現できるので、同エンジンがY-20の性能を引き上げる可能性はある。Y-20の運用では中国海軍が揚陸運用能力を開発し空母を就役させている中で、中国政府が一貫して推し進めている軍事力前進配備能力の増強の一部となる。世界の専制国家体制の行動と共通して中国も他国の内政へは不干渉の原則を強く掲げている中で中国報道ではY-20による人道援助、災害援助を強調しているのは驚くに当たらない。たしかにこのような任務が同機により実施されれば中国の国際イメージも向上するだろう。
  13. 軍事力の前進配備能力という観点ではY-20の出現で近隣国が過敏に心配する必要はないだろうというのがオーストラリアの軍事アナリスト、アンドリュー・デイビスAndrew Daviesの見解だ。航空機よりも多くを輸送できる海軍力のほうが心配だというのだ。「Y-20は中国の目指す軍事力投射の道具にはなるが、それ自体はとりたてて威力のある要素ではない」というのだ。また、空輸能力は中国のような大国では国内的にも重要な意味がある。
  14. 中国もロシア並みに空輸能力の整備に並々ならぬ努力を払っている。中国の部隊では第15空輸軍団が中国国内および近隣国向けの危機状態に対応すべく待機中だ。また空中投下が可能な特殊軍用車両の開発も続いている。その最新型がNorinco ZBD03でロシア製BMD-3を元に 30-mm 2A72機関砲を搭載している。第15空輸軍団にはヘリコプター部隊もあり、Y-20の貨物室でヘリコプター輸送も想定される。現状の中国の空輸能力は中国製Il-76の機数が不足しているために制約を受けている。

2013年2月2日土曜日

海外販売に期待するボーイング防衛部門の期待はインドだ


International Orders Boost Boeing Defense


By Michael Mecham
aviationweek.com January 31, 2013
Credit: Boeing

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ボーイング防衛部門への各国発注の比重は同社受注残で全社レベルで24%、防衛宇宙安全保障部門では41%相当にまで増えていることが同社の1月30日発表で判明した。
  1. 防衛部門の売上は2%増加して326億ドルになり、民間商用機部門の491億ドルに近づく勢いでその中でもボーイング軍用航空機部門の増加10%が大きい。とくにAH-64DアパッチとCH-47チヌークのヘリコプター2機種の生産ペースがあがっている。また、KC-46給油機の生産が開始されており、インド向けにはP-8I海洋パトロール機の一号機が納入されている。

  1. 一方で中間飛翔段階ミサイル防衛と衛星案件で売上が伸び悩んでおり、世界規模での顧客向けサービス・支援プログラムでも売上拡大が勢いを失っており、総額86億ドルにとどまっている。ただし、ことしは米空軍向けC-17輸送機の供用維持契約とF-15合計68気の改修により売上の伸びが期待される。

  1. 米国向け防衛案件が弱含み担っている一方で、海外販売はそれを上回る勢いがあり、現時点でボーイング防衛部門の売上24%相当になっている。インド向けには今年のボーイングはP-8Iをあと3機およびC-17を5機納入する予定だ。■