2023年2月9日木曜日

中国のスパイ気球とされるものに関する様々な疑問に答えてみる

 
 

(Render created by osunpokeh and sourced via Wikimedia Commons) 

 
 

2月4日土曜日、F-22ラプターがサウスカロライナ州沖で中国の監視気球をAIM-9Xサイドワインダーミサイルで撃墜した。撃墜までの数日間、気球はアメリカ本土とカナダの一部を横断し、多くの陰謀論を残した。中には、政治的なものから、気球が兵器を搭載していた場合の被害まで、各種の説が出回った。 

 

まずはっきりさせておく。中国の監視気球が米国内を漂い、米中外交に緊張をもたらしているが、国防総省は、今回のシステム自体が米国民に直接的な脅威を与えることはほぼない、と一貫して明言していた。言い換えれば、今回の出来事は大きな出来事なものの、物理的な危険と無縁だった。 

中国の監視用気球をめぐる、誤報や偽情報の語り口と、最も差し迫った疑問を確認し、国防当局が発表の公式声明を使い、文脈を整理し、疑問点に対処してみよう。 


気球はどうやって撃墜されたのか? 

気球は土曜日午後、バージニア州ラングレー空軍基地の第1戦闘航空団の米空軍F-22ラプターによって、サウスカロライナ州の沖合約6マイルで撃墜された。米国の領海は沖合12マイルまで広がるため、気球は法的に米国の主権領域とみなされる上空を飛行中に撃墜されたことになる。 

使用された武器はAIM-9Xサイドワインダーミサイルで、アメリカの最新の赤外線誘導(熱探知)空対空ミサイルで、長く使われているサイドワインダーシリーズの最新版である。 

F-22ラプターは高度58,000フィートでAIM-9Xを発射したと報告されているが、F-22の公表されている運用限界が「50,000フィート以上」とあることを考えれば、注目に値する高度だ。AIM-9Xは高度6万5,000フィートまで上昇し、ターゲットを捕捉した。 


なぜもっと早く撃墜しなかったのか? 



公式回答は、撃墜すれば、スクールバス3台分と推定の気球が地上に落下し、アメリカ政府は誰も傷つけず、財産も損なわないようにしたかったから、というものだ。モンタナ州のような人口の少ない地域でも、6万5千フィートの上空から破片がこれだけ降り注げば、深刻な問題を引き起こす可能性がある。 

しかし、気球の浮遊を許した二次的な理由は、むしろアメリカにとって情報収集上の価値があったからだろう。気球の情報収集能力をいったん緩和すれば、米国は気球を自由に観測し、そのシステムからデータを吸い上げ、比較的リスクの少ない環境で総合能力を評価できる。 


中国は気球で有益な情報を集めたのか? 


簡単に言えば「ノー」だ。防衛当局は、気球がデータを収集し中継する能力を緩和措置を取ったと明らかにしており、TwitterやRedditユーザーからは、気球の通過地域の近くにRC-135リベットジョイントなど機材があることをすぐ指摘していた。 

リベットジョイントは、ボーイングのC-135ストラトリフターを大幅改造したもので、電子戦や監視装置を満載し乗員30名以上を乗せ、電磁波から位置を特定する機能など、さまざまなシステムを運用することができる。

 

スパイ衛星が頭上を飛ぶ中、なぜ気球を使うのか? 

スパイ衛星は、軌道を調整するスラスター用の燃料の搭載量に限りがあり、その結果、衛星の軌道はかなり予測しやすい。上空を回るスパイ衛星から何かを隠すには、衛星が直視できる時間帯を選んで隠せばよい。このように衛星軌道が予測可能であることから、スパイ活動の可能性は低くなります。このような衛星軌道をリアルタイムで追跡することは、アメリカ宇宙軍が引き継いだ仕事の1つだ。 

また、気球は低コストで低シグネチャーで大量に飛ばすことができ、また、大きさにもかかわらず、発見されにくい特徴がある。二酸化炭素排出も赤外線の影響もほとんどありません。レーダー波が気球の生地で反射されないため、レーダー断面積は小鳥並みに小さいこともあります。 

また、気球の航法性能は限られるが、人工衛星では難しいローテーションを行える。 

新型スパイ衛星を軌道に乗せるには10年ほどかかるが、気球は現代の小型システムのおかげで、比較的低コストで非常に効果的な情報収集プラットフォームとして機能できる。 


気球がEMP兵器や核兵器が搭載していたら? 




(ピーター・ヴィンセント・プライ博士著「NUCLEAR EMP ATTACK SCENARIOS AND COMBINED-ARMS CYBER WARFARE」2017年7月号より)。 


気球が米国内を横断する間、多くの人がSNSで「この気球にはEMP(電磁パルス)や核兵器が搭載されているのではないか」と懸念を表明していた。国防総省は、これが事実ではないと示す理由を明確に表明していないが、文脈と常識を組み合わせれば、この問題についてはかなり解決できる。 

電磁パルスは広範囲で電子機器にダメージを与えることができるが、そのため必要になるエナジーは膨大だ。米国全土に電磁パルスを発生させるには、米国上空で核兵器を爆発させるのが最も現実的な方法だ。 

そこで、気球に核兵器や生物兵器が搭載されていたのではないかという懸念が生じる。実は、中国が米国上空で核兵器を爆発させることに関心があるなら、ミサイルの方がはるかに効果的な手段である。風船と異なり、ミサイルははるかに高い精度を可能にする(そして迎撃がはるかに難しい)。 

また、アメリカの核ミサイル部隊は、核戦争に耐えられる設計で、EMP攻撃にも耐えられるようになっていることも重要だ。 

 
 

気球撃墜に高価なミサイルをなぜ使ったのか? 


AIM-9X サイドワインダーミサイル(米海軍撮影) 

信じられないかもしれないが、気球に安価な銃を使っても効果がない。1998年、カナダのCF-18戦闘機2機が、同様の大きさの気球の暴走を迎撃するため派遣された。2機はM61A1バルカン・オートキャノンから1000発以上の20mm弾を気球へ発射し、これは戦闘機の弾倉のほぼ全部に相当する。 

20mm弾は決して小さいものではない。大きな穴はたくさん開いたが、気球は空中に残り、その後何日も浮き続けた。

 

将来の攻撃の予行演習だったのか? 

今回の気球は、将来の気球攻撃の練習で飛ばされたのではないかという声も多く、アメリカが気球を領空に侵入させることを容認していることへ懸念が高まっている。実際、気球を使った攻撃は(第二次世界大戦で日本が学んだように)有効ではないが、仮に有効でも、今回の気球の飛行を黙認したところで、将来にわたる前例ができたわけではない。 

脅威評価は常にケースバイケースで、過去の判断が新たな判断に役立つことはあっても、評価は毎回異なる。仮に来週、別の気球が米国領空に向かい、それが本当に脅威となれば、米国はまったく別の行動を取るだろう。 

しかし、今回の中国気球が、将来の気球攻撃のためのテスト飛行なら、米国が一番避けたいことは、手の内を見せ、そうした脅威にどう対応するか正確に示すことだろう。中国に貴重な情報を提供することになるからだ。

 

他にも気球はある? 

現在、中南米上空に少なくとも1機の中国製気球が浮かんでおり、同様の懸念を呼んでいるが、最初の気球と同様、上空通過時に物理的な脅威を与えることはないようだ。 

このような気球や類似の情報収集システムは、珍しいものではない。米国にも独自の類似プログラムがある。2021年には、太平洋と大西洋の両岸にある米軍訓練場の上空で、少なくとも9機の操縦可能気球が追跡されていた。

 

中国の気球が以前もアメリカ上空を飛んでいたのか? 

簡単に言えば、「ある」。国防当局によると、トランプ政権時代に2回、バイデン政権時代に1回、同様の気球が米国内を横断したが、米国本土上空を長時間飛行しなかったという。■ 


Alex Hollings | February 6, 2023 

 
 

Alex Hollings 

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University. 

 
 

2023年2月7日火曜日

中国スパイ気球にはU-2Sが高高度で追尾、監視していた。さらに電子妨害も行っていた模様。

中共はあいかわらず民間気象観測機器と嘘をついていますが、ではその民間企業が声を挙げないのはなぜでしょう。日本メディアは米国の行動を乱暴と言いたいのでしょうが、記事でU-2が投入され、中国へのデータ送信を妨害していたのは最初から米国は安全保障上の脅威であり、中国から飛来していたことを把握していたわけです。一方、宮城県上空での目撃例では「不明」と官公庁が探究を放棄した日本、仮に安全保障上の脅威とわかっても法律の縛りで撃墜命令が出せない日本はこのままでいいのでしょうかね。


U.S. Air Force photo/Staff Sgt. Robert M. Trujillo / Tyler Schlitt Photography / LiveStormChasers.com


U-2ドラゴンレディが気球上空を飛び、情報収集していたことがわかった



空軍のスパイ機U-2Sドラゴンレディは、最近アメリカ大陸とカナダの一部を横断した中国政府の監視気球を監視し、情報収集に投入された資産の一つだ。F-22ラプターステルス戦闘機が土曜日にサウスカロライナ沖でAIM-9Xサイドワインダー ミサイルで気球を撃墜し、現在、大西洋から残骸を回収する作業が進められている。

 米国防当局は、中国のスパイ気球に対する広範な対応の一環として、U-2Sを使用していたと本日The War Zoneに確認した。U-2Sが中国のスパイ気球の飛行経路に沿ってU-2Sが存在していたかは不明。


A U-2S Dragon Lady. USAF


 国防総省は週末、気球は1月28日にアリューシャン列島上空で米国領空に入っていたと発表した。その2日後にカナダ領空を通過し、1月31日にアイダホ州北部上空で米国領空に戻った。その後、米国本土を広く南東方向に進み、サウスカロライナ州沖の大西洋上で撃墜された。

 The War Zoneは、少なくとも2機のU-2Sが、ドラゴン01とドラゴン99というコールサインで中西部上空で気球を監視していたことを別途確認した。 また、少なくとも1機のドラゴンレディは、ハントレスというコールサインで呼ばれる空軍の東部航空防衛部門(EADS)と連絡を取っていた。EADSは米国とカナダの北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の一部で、米国本土のほぼ東半分の空域を防衛する。

 気球を監視でU-2Sがどのような役割を担っていたのか、正確なことは言えないが、同機の投入は理にかなっている。ドラゴンレディは、少なくとも我々が知る限り、米軍機材の中で唯一、気球が飛んでいた高度よりもさらに高い高度(米国とカナダを横断する間、およそ6万から7万フィートの間)で持続的に飛行できる機体だ。


71,000フィートで飛行するU-2のコックピットからの眺め。ドラゴンレディが飛行する高度のため、パイロットのフライトスーツは宇宙服のようなものであることに注意。USAF



 さらに、U-2Sは、複数の情報を同時に収集できる。ドラゴンレディが搭載する一般的なセンサーは、シグナルインテリジェンスのシニアグラスで、機体のベイと翼下の2つの「スーパーポッド」に搭載され、機首にはシニアイヤー電子光学偵察システム-2(SYERS-2)または先進合成開口レーダーシステム-2(ASARS-2)が装備される。SYERS-2はマルチスペクトルカメラシステムで、夜間でもターゲットの高解像度画像を生成できる。ASARS-2は、レーダーを合成開口レーダーとして使用し、全天候画像を生成する。

USAF

SYERS-2で撮影された画像の一例。UTAS (Now Collins Aerospace)


 こうしたセンサーがあれば、U-2Sは気球の高画質画像を収集できるだけでなく、気球から出る電子放射の吸収も可能だ。さらに、ドラゴンレディは堅牢なデータリンクを搭載しており、収集した情報を地上とほぼリアルタイムで共有できる。

 U-2が気球上空に到達できることが非常に重要だ。各種センサーで上から下へ監視するだけでも、設計や能力について新たな情報が得られる。また気球に何が隠されていたかも重要な情報源となる。とはいえ、最も重要なのは、気球から発信の指向性衛星通信を確実に傍受する方法を提供できたことだ。

 最後に、U-2は高度な電子戦能力を備える。気球の比較的近く、特に上空を飛行することで、上空の衛星に送信される通信を妨害できた可能性がある。

 繰り返しになるが、空軍が公開している機材には、高空飛行や長時間滞空が可能な航空機は同型機以外にはない。


U-2ドラゴンレディは60年以上にわたり、不可欠な国家資産であることを証明している。USAF


 気球からどんな電子放射を収集できたのかは不明なままだ。空気より軽いプラットフォームに、カメラ、レーダー、特に信号情報ペイロードを搭載することは難しくないと思われる。

 昨日、Politicoは、米情報機関が以前、2020年にバージニア州沖で探知された小型気球がレーダー妨害ペイロードを搭載していると評価していたことを報じた。

 2019年、The War Zoneは、米国東海岸沖で以前に報告された内部に球体を持つ立方体の目撃情報が、レーダー反射器と電子監視ペイロードを搭載した気球で、米軍の能力に関する重要情報の収集に利用されていた可能性があることを詳細に説明した。

 当時、「キューブ・イン・スフィア」の目撃例は、未確認飛行物体(UFO)として俗称される未確認航空現象(UAP)のレッテルを貼られていた。中国の監視用気球が米国上空を飛行し、米国本土を含む米国領内で過去に複数の事件が起きていたことが明らかになったことで、他の気球状物体の目撃例も外国の情報資産だったのではないか、という新たな疑問が浮上している。The War Zoneは過去に、様々な種類のUAPの目撃例が、通常非常に機密性の高い試験・訓練エリアで活動する、外国の敵の情報収集プラットフォームを住民が発見した可能性が高いという分析を発表している。


太陽電池を搭載したペイロードが着いた中国監視気球。Tyler Schlitt Photography / LiveStormChasers.com


 1月、国防総省に新設された全領域異常解決局(AARO)と国家情報長官室(ODNI)の航空担当国家情報マネージャー(NIM-A)は共同で、2022年のUAP関連活動に関する公開年次報告書を発表した。これには、AAROやNIM-Aが把握していなかった古いものも含め、新たにカタログ掲載された366件のUAPインシデントの言及が含まれている。それらの「新しい」インシデントのうち、163件は 「気球または気球のような存在 」と評価されていた。

 また、国防総省によると、中国気球事件はドナルド・トランプ大統領時代まで遡るが、米当局が中国政府との関連を判断したのはここ2年ほどの間だ。これは、在任中にこのことを知らなかったというトランプ政権時代の当局者の発言を裏付けている。

 ジョー・バイデン大統領とその政権は、この気球への対応と、なぜもっと早く撃墜しなかったのかについて、各方面から非難を浴びている。バイデン政権は、気球が陸上にいる間に撃墜することの潜在的なリスクと、気球自身の能力によるリスクが軽減された後に気球の情報をさらに収集することができることを強調して反論している。そのデータを活用すれば、気球とその能力についてさらに詳しく知ることができ、また、気球と中国政府を結びつけるさらなる証拠となる可能性もある。


 U-2Sが気球の飛来に対応したことが明らかになった今、米軍の監視活動に関する他の詳細が発表されるかもしれないのは興味深いことである。


Howard Altman contributed to this report.

Author's note: The incredible image at the top of this article was taken by photographer Tyler Schlitt of LiveStormChasers.com. Make sure to check out his work, including on his awesome Facebook page linked here.


U-2 Spy Planes Snooped On Chinese Surveillance Balloon



BYJOSEPH TREVITHICK, TYLER ROGOWAY|PUBLISHED FEB 6, 2023 3:12 PM

THE WAR ZONE