2025年12月9日火曜日

中国の 99,000 ドルミサイルが解決不能な数学の悩みを米海軍に与えている(National Security Journal)―低価格の敵攻撃手段を高価な防衛手段で迎撃するジレンマです

 中国の 99,000 ドルミサイルが解決不能な数学の悩みを米海軍に与えている(National Security Journal)

ルーベン・ジョンソン

https://nationalsecurityjournal.org/china-has-a-cheap-99000-missile-that-creates-a-math-problem-for-the-us-navy-it-cant-solve/

Credit: Lingkong Tianxing Technology----こんな不真面目なイラストを堂々と公表しているところが中国企業の品性の無さを示していますね

要点と概要

 – 中国の新型 YKJ-1000「セメントコーティング」ミサイルは、安価な攻撃と高価な防衛のバランスを覆す可能性があり米海軍にとって悩ましい存在だ。

 – 民生用グレードの素材で製造され、単価10万ドル未満と報じられている同兵器は、米空母打撃群など高価値目標への飽和攻撃のため設計され大量生産を狙っていると思われる。

 – 中国製ミサイル1発のコストがSM-6やTHAADといった米軍の迎撃ミサイルの数分の1だと、海軍防衛の経済性は崩壊し始める。

 – このシステムが輸出されれば、小国にも強力なアクセス拒否手段を提供し、ワシントンの空母による軍事力投射への依存が複雑化する可能性がある。

新たな超低コスト中国ミサイルが米海軍に新たな脅威をもたらす

中国の対艦弾道ミサイル及び巡航ミサイルが米海軍空母打撃群(CSG)に重大な脅威となるというのが長らく通説とされてきた。10年以上にわたり、北京が大量の対艦ミサイルを配備する能力は、そのアクセス拒否/領域拒否(A2/AD)戦略の基盤となってきた。

この戦略で中国はDF-21DDF-26Bといった「空母キラー」ミサイル、さらにDF-17のような極超音速ミサイルを多層的に配備することを求めている。こうした兵器は陸上、艦船、潜水艦、爆撃機から運用・発射できる。

これらのミサイル配備の目的は、本質的に米海軍の西太平洋へのアクセスを拒否することにある。これが「A2/AD」と呼ばれる所以だ。抑止力が成立するのは、空母打撃群が中国の飽和ミサイル攻撃に対して極めて脆弱となるためだ。

このシナリオでは中国に二つの潜在的な欠点がある。一つは、必要なミサイル数が莫大な費用を意味すること、さらにその使用により発射基地が露呈することだ。二つ目は、弾道ミサイルが攻撃を成功させるため必要となる長距離での標的捕捉が依然として困難である点だ。

二つの主要な進展と米海軍の課題

人工知能の急速な普及が、標的領域の力学を変えつつある。AIはミサイルの命中精度を大幅に向上させ、米空母打撃群への脅威を高める可能性がある。

しかし別の変化として、中国は「超低コスト」ミサイルと呼ばれる大量生産可能な兵器を配備しつつある。

YKJ-1000ミサイルは「セメントコーティング」ミサイルと通称されている。終末段階の高速度に耐える耐熱コーティングに、発泡コンクリート含む民生用グレードの材料を使用していると報じられている。

複数のウェブサイトで出回っている中国側資料によると、同ミサイルの単価はわずか70万元(約9万9000米ドル)とある。

同ミサイルは戦闘試験を成功裏に終え、既に量産段階に入ったとされる。北京に本拠を置く凌空天星科技Lingkong Tianxing Technologyは火曜日、YKJ-1000ミサイルの飛行映像を公開し、砂漠の試験場における実弾標的への命中シーンも含まれている。

比較のため、この「コンクリートコーティング」ミサイルを撃墜するのに使用される米国製SM-6艦対空迎撃ミサイル1発の価格は約410万ドルで、YKJ-1000の40倍以上である。

一方、高高度防衛ミサイルシステム(THAAD)1基のミサイル価格は1200万~1500万ドルだ。台湾が購入を希望する米国製ミサイル防衛システムの迎撃弾の中でも最も安価なペイトリオットPAC-3 MSEでは370万~420万ドルかかる。

戦争の論理を変える

この問題に関する記事の一つが指摘するように、「低コストの攻撃手段と高コストの防衛手段の間の不均衡は、戦争の論理を変える可能性がある」。

「このミサイルが国際防衛市場に投入されれば、圧倒的な競争力を発揮するだろう」と軍事評論家の魏東旭は火曜日、中国国営放送CCTVに語った。「多くの国はまだ自国で極超音速ミサイルを開発しておらず、このミサイルは長射程、高い破壊力、強力な貫通能力を備え、その破格の安さゆえに人気商品となる可能性が高い」。

海外に販売されれば、この兵器は小国に、はるかに強力な軍事大国に対し一定の抑止力を発揮させる力を与えるだろう。それにより世界の戦略的均衡が変化する可能性がある。

米国にとって重大なのは、同国が伝統的に海軍力投射を外交・防衛政策の主要手段としてきたためだ。このミサイルは先進的な海軍艦艇、特に空母に顕著な脅威となるだろう。

例えば、ヴェネズエラが同ミサイルを入手したら、現在カリブ海沿岸に展開中の米空母打撃群(CSG)を標的とすることが可能となる。

これはワシントンの戦略的判断に重大な影響を与える。なぜなら、このミサイルの射程はフォード級原子力空母の有効戦闘射程である1,100キロメートルを上回るからだ。

アナリストからは、このミサイルの主張されるコストに懐疑的な見解が示されている。ロケット燃料の価格がどうやったらここまで低く抑えられるのか、ましてやロケットエンジン自体のコストについて具体的な疑問が呈されている。■

著者について:ルーベン・F・ジョンソン

ルーベン・F・ジョンソンは、外国の兵器システム、防衛技術、国際的な武器輸出政策の分析と報告において36年の経験を持つ。ジョンソンはカシミール・プワスキ財団の研究部長である。また、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を生き延びた生存者でもある。長年、米国防産業で外国技術アナリストとして勤務し、後に米国防総省、海軍省、空軍省、英国政府、オーストラリア政府のコンサルタントを務めた。2022年から2023年にかけて、防衛関連の報道で2年連続の受賞を果たした。デポー大学で学士号、オハイオ州マイアミ大学でソ連・ロシア研究を専門とする修士号を取得している。現在はワルシャワ在住である。


China Has a Cheap $99,000 Missile. That Creates a Math Problem for the US Navy It Can’t Solve

By

Reuben Johnson

https://nationalsecurityjournal.org/china-has-a-cheap-99000-missile-that-creates-a-math-problem-for-the-us-navy-it-cant-solve/


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