日本の令和8年度防衛予算が過去最高額を更新、海上自衛隊関連のハイライト
Naval News
2025年12月30日
高橋浩祐
DSEI2025で展示されたASEVのスケールモデル(クレジット:筆者)
高市早苗内閣は12月26日、2026年度防衛費として580億ドル(9兆400億円)を承認した。核保有国3カ国の中国、北朝鮮、ロシアからの軍事的圧力が高まる中、米国が防衛費増額を要求している状況にも対応する措置だ
予算案は前年度比3.8%増で、過去最高を12年連続で更新する
国会通過が見込まれる防衛予算は、安全保障環境の悪化に対応し無人防衛システムとスタンドオフミサイルで強化をめざす
防衛予算で海上自衛隊は、4種類の艦艇建造と各種航空機の調達資金を確保した。主要な海上関連項目は以下の通りである:
多層沿岸防衛システム「SHIELD」の構築(6億4060万ドル)
防衛省
防衛省は、海上自衛隊が「SHIELD」を構築するため、水上艦発射型無人機、小型艦載型無人機、小型多目的無人水上艇を未公表の数量で取得する計画だ。名称は「Synchronized, Hybrid, Integrated and Enhanced Littoral Defense(沿岸防衛の同期化・ハイブリッド化・統合化・強化)」を意味する。
防衛省は、外国メーカーからUAV及びUSVを購入する計画だ。また、水上発射型UAVは海上自衛隊艦艇から敵艦艇を攻撃する。一方、小型艦載型UAVは水上艦艇の情報収集・監視能力を向上させるとともに、敵艦艇への攻撃も可能となる。
7月、海上自衛隊関係者は本誌に対し、米国航空宇宙防衛技術企業Shield AIのV-BATが、改良型もがみ級フリゲート艦(日本では「新型FFM」、06FFMとも呼ばれる)に搭載される無人機として検討中と語った。
海上自衛隊は新造の1,900トンさくら級沿岸哨戒艦(OPV)標準にV-BATを搭載すると決定している。2022年12月に採択された防衛力整備計画に基づき、防衛省は今後10年間でOPV12隻の取得を計画している。2025年度防衛予算では、新型哨戒艦向けV-BATシステム6基の調達に40億円を計上している。
さらに防衛省は、多数の多様な無人資産を同時制御する実証試験実施のため、1410万ドルを配分された。
新型FFM1隻の建造費(6億6700万ドル)
将来の近代化改修型もがみ級フリゲートのコンピューター生成画像。 (提供:三菱重工業)
防衛省は、満載排水量約6,200トンの近代化改修型もがみ級フリゲート6番艦の建造に6億6,700万ドルを計上した。新型FFM(護衛艦)の1番艦は2025年度に起工、2028年度に就役する。三菱重工業によれば、建造が順調に進めば、全12隻は2032年度までに就役する。
新FFM1隻分の建造費を1年で確保するのは極めて異例である。これまで防衛省は2024年度予算で2隻分、2025年度予算で3隻分の建造費を計上してきた。
この動きは、オーストラリア政府が8月に改良型もがみ級フリゲートを同国海軍の将来の汎用フリゲート艦として選定したことを受けたものだ。防衛省は、海軍戦力強化を急ぐオーストラリア政府を考慮し、三菱重工業長崎造船所の短期的な造船所枠とサプライチェーン資源をオーストラリア向けに優先したと見られる。
さくら級OPV2隻の建造(182.3億円)
海上自衛隊の新鋭哨戒艦「さくら」と「たちばな」は、2025年11月13日にジャパンマリンユナイテッド(JMU)で進水した(クレジット:筆者)
防衛省は新造さくら級OPVの5番艦・6番艦建造に1億8230万ドルを計上した。海上自衛隊は約10年間で巡視艦を計12隻取得する。
たいげい型潜水艦1隻の建造(7億7300万ドル)
防衛省は、排水量3000トンの最新鋭ディーゼル電気潜水艦たいげい級10番艦の建造に7億7300万ドルを計上した。
あわじ級掃海艇1隻の建造(2億1750万ドル)
防衛省は、深海機雷を含む各種機雷への対応能力を向上させた690トン級の第7次あわじ級掃海艇1隻の建造に2億1750万ドルを割り当てた。淡路型掃海艇の計画建造数は9隻。
イージスシステム搭載艦(ASEV)2隻の各種試験準備(5億1000万ドル)
防衛省はイージスシステム搭載艦2隻の取得関連経費として5億1000万ドルを確保した。具体的には各種試験準備に伴う費用とする。
ASEVは2020年6月に中止された陸上配備型イージス・アショア弾道ミサイル防衛(BMD)システムの代替案である。中止理由はミサイル迎撃弾の落下部品が上空から人口密集地域に到達する懸念があったためだ。
防衛省の説明によれば、新型艦は全長190メートル、幅25メートル、標準排水量12,000トンとなる。
海上自衛隊は2027年度に1番艦を、翌年度に2番艦を受領する。
いずも級ヘリコプター運搬艦の改造(1億8230万ドル)
海上自衛隊は、2隻のいずも級ヘリコプター運搬艦(JSいずもおよび JS かが)を、ロッキード・マーティンF-35B 戦闘機の運用空母に改造し続けるため1億8240万ドルを割り当てた。
「いずも」については、甲板作業員が甲板の状態を共有できる甲板状況表示灯の設置、および「いずも」の着艦誘導システムの試験費用として580万ドルが割り当てられた。
「かが」については、格納庫施設のアップグレードを含む船体改造に1億7660万ドルが割り当てられた。
防衛省によれば、JS「いずも」の改造は2027年度、JS「かが」は2028年度に完了する予定だ。
同省によれば、来年度予算を含むいずも型ヘリコプター運搬艦の改造費用は総額6億8720万ドルとなる。
艦載型12式対艦ミサイル改良型(2284万ドル)の取得
防衛省は2025年度、艦載型12式対艦ミサイル改良型の量産を開始した。海上自衛隊は2027年度、改修済みの護衛艦「照月」(DD-116)にこの新型ミサイルを配備する。
潜水艦発射ミサイルの取得(102.4億ドル)
防衛省は新型潜水艦発射ミサイルの量産を本年度中に開始した。潜水艦の魚雷発射管から発射可能な長距離巡航ミサイルである。防衛省は、このミサイルが海上自衛隊のたいげい級潜水艦に搭載されると説明した。
イージス駆逐艦2隻へのトマホーク発射機能追加(770万ドル)
防衛省は2026年度中に、海上自衛隊のイージス駆逐艦「みょうこう」(DDG-175)と「あたご」(DDG-177)の2隻に、米国製トマホーク巡航ミサイルを発射する機能を追加する。
防衛当局者によれば、3隻のイージス駆逐艦、すなわち「ちょうかい」(DDG-176)、「はぐろ」(DDG-180)、「きりしま」(DDG-174)では2025年度中にトマホーク発射機能の追加装備が完了している。
海上自衛隊は現在、イージス駆逐艦を計8隻保有している。こんごう級4隻、あたご級2隻、まや級2隻である。残る3隻、「こんごう」(DDG-173)、「あしがら」(DDG-178)、「まや」(DDG-179)も近い将来にトマホーク能力を付与される。
MQ-9Bスカイガーディアン無人機4機の調達(4億8940万ドル)
防衛省は海上自衛隊向けにMQ-9Bスカイガーディアン無人機4機の追加調達のため4億8940万ドルを確保した。
海上自衛隊はシーガーディアンを水上艦艇及び潜水艦の持続的監視に活用し、潜水艦が探知された場合は有人P-1及びP-3C海上哨戒機が対潜戦を実施する計画としている。海上自衛隊は2032年度頃までに計23機を調達する計画で、約半数は鹿児島県の鹿屋航空基地に、残りは青森県の八戸航空基地に配備される。
高橋浩祐
高橋浩祐は日本在住の防衛問題ライターである。ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー、ジェーンズ・ネイビー・インターナショナル、モンチ出版に寄稿している。ハフポストジャパン元編集長、朝日新聞社・ブルームバーグ元記者である。高橋は1993年に慶應義塾大学経済学部を卒業した。朝日新聞社とダウ・ジョーンズ社での勤務を経て、コロンビア大学ジャーナリズム大学院および国際公共政策大学院(SIPA)に留学し、2004年にジャーナリズム修士号と国際問題修士号を取得した。1993年に朝日新聞社の記者となる前には、川崎市の姉妹都市プログラムの交換研修生としてボルチモア経済開発公社に勤務し、日米間の貿易問題を研究した。その功績で1988年にボルチモア市の名誉市民に選ばれている。
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Published on 30/12/2025
By Kosuke Takahashi
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