2025年12月29日月曜日

主張 米国の航空戦力で再び優位性を確保するためNGAPが必要だ

 

米国の航空戦力優位性を回復するには

The National Interest

2025年12月21日

著者:ジョン・ベナブル

空の支配は次世代適応推進プログラム(NGAP)の開発にかかっている。



国の産業基盤再建はトランプ政権の主要テーマだが、中国が戦闘機を年間200機以上生産できる能力が緊急性を明白にしている。2026年国家安全保障戦略NSS)はこのテーマを反映し、インド太平洋地域での紛争抑止に必要な軍事力の再建と防衛産業基盤の刷新を明確に要求している。

第一列島線(台湾、日本、フィリピン及び周辺島嶼)に対する中国の侵略を抑止するには、北京が展開し得るいかなる攻撃作戦も米軍を相手にすれば失敗する可能性が高いと確信させる必要がある。この任務は主に航空戦力に依存し、そのような動きを阻止するため最も重要でありながら見過ごされがちな能力が、戦闘機用エンジンの産業基盤である。

中国に対する米国の抑止目標を完全に実現するためには、次世代戦闘機で必要とされる能力を提供する次世代適応推進(NGAP)計画を緊急に加速させねばならない。

中国の絶え間ない航空戦力増強

過去15年間で、中国は軍事力を強化・変革し、米国から見て対等なライバルへと成長した。その軍事産業複合体は他のどの国よりも大幅に多くの兵器を生産しており、年間100機以上の第5世代戦闘機J-20と、140機以上の第4世代以上戦闘機J-10、J-16、J-20を供給している。

2010年以降、中国人民解放軍空軍(PLAAF)の前線戦闘機部隊は第4世代以上および第5世代戦闘機に更新された。現在、PLAAFの戦闘機調達ペースは米国防総省全体のほぼ4倍に達している。現状の保有機数でも、今日南シナ海で紛争が発生した場合、中国は台湾上空に展開可能な米軍及び地域同盟国の出撃回数のおよそ4倍の飛行任務を遂行できる。さらに中国の軍事産業基盤は、PLAAFに数か月、場合によっては数年にもわたり、大幅な消耗を伴う高強度作戦を持続することを可能にする。

米国が対等な敵を打ち負かす能力、戦力、準備態勢を最後に有していたのは冷戦時代だった。1980年代には、米軍が準備万端だっただけでなく、米国の産業基盤はほぼあらゆる軍事技術において世界をリードしていた。単に機動性の高い戦闘機や初のステルス戦闘機、先進的な精密誘導兵器を開発しただけでなく、ソ連の攻勢を撃退しても十分な期間にわたり高強度戦闘作戦を維持できる生産能力も備えていた。

当時開発された戦闘機エンジン技術は推力重量比を実現し、高エナジー機動を可能にした。これは第四世代戦闘機誕生の重要な基盤となった。1980年代に開発されたプラット・アンド・ホイットニーのF100-PW-229とゼネラル・エレクトリックのF110-GE-129エンジンは、40年以上にわたり他の追随を許さなかった。残念ながら、その後配備されたエンジンは同じ基本技術に依存したままで、技術は50年近く前のものだ。

F-35が体現する能力の世代的飛躍、そして現在空軍と海軍が推進する次世代航空支配(NGAD)プラットフォームは、より高い推力、エイビオニクス用の強化冷却、そしておそらく最も重要になる燃料効率の大幅向上という要求を基に設計されている。これによりインド太平洋地域における敵の攻撃を単に到達するだけでなく、撃退するのに必要な航続距離が確保される。

数量は重要であり、米国防産業が生産能力拡大のため多額の資金注入を必要としていることは疑いない。しかし米国は、米空軍兵士がそのような戦闘を支配できる技術を開発し配備しなければならない。F-35のステルス性、センサー、兵器は決定的な優位性を提供しており、NGADのような先進的な次世代機がその優位性を永続させるだろう。しかし太平洋戦域の広大な距離は、いずれのプラットフォームがもたらす優位性も、最終的にエンジンに制約されることを意味する。

空軍はこの現実を2007年に認識し、その後17年間で40億ドル以上を投資し、一連のプログラムを進化させて適応型エンジン移行計画(AETP)を確立した。AETPの目標は推力を10%増加させ、燃料効率を25%向上させ、冷却能力と電力供給を倍増させることだった。

このコンセプトは、適応型第三気流を用いて高推力戦闘モードと効率的な巡航モードをシームレスに切り替えられる革新的な三気流設計に基づいていた。驚くべきことに、AETPは4つの目標全てを達成したが、2024年度の空軍予算優先順位のため、生産段階へ移行できなかった。

NGAPをどう加速するか

AETP技術はNGAPにとって卓越した基盤を提供するが、資金調達が完成への主要な障壁のままだ。最近の契約修正によりNGAPの上限が35億ドルに引き上げられたものの、実際の2026会計年度の議会資金水準では、NGAP開発は暫定的な状態のままだろう。

政府と議会は、防衛部門が設計、製造、試作機の試験を加速し、下流の生産リスクを軽減できるよう、NGAP への資金を大幅に増額しなければならない。また資金はできるだけ迅速に提供されなければならない。

NGAP がないと、2つのNGADプログラムとアップグレード版 F-35 は、数十年前の推進力に依存することになり、1980年代のエンジン技術に制約された第 6 世代戦闘機を事実上配備することになる。圧倒的な能力とほぼ同等の技術力を持つ敵に直面するアメリカの空軍兵士たちは、勝利を収めるために、追加の推力、航続距離、そして利用可能な電力と冷却能力のすべてに依存することになる。

ドナルド・トランプ政権が掲げる、刷新され支配的な産業基盤のビジョンのため、特に軍事分野で大胆な行動が求めらている。今すぐNGAPを加速させ、今後数世代にわたるアメリカの空軍力の優位性を確保すべきだ。■

著者について:ジョン・ベナブル

ジョン・ベナブルは、米空軍 F-16戦闘機武器教官コースを卒業し、3,300 時間以上のジェット機飛行経験を持つ。3回の戦闘作戦のベテランであり、飛行隊および飛行団レベルで指揮を執り、現在はミッチェル研究所の航空戦力研究の上級常駐研究員を務めている。

How to Revive US Air Power Dominance

The National Interest

December 21, 2025

By: John Venable

https://nationalinterest.org/feature/how-to-revive-us-air-power-dominance




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