2025年12月29日月曜日

フリードマン:米国はラテンアメリカになぜ介入するのか ― 地政学での説明 国家安全保障戦略NSSとの関連

 

ラテンアメリカ介入は地政学でこう説明できる―対象はヴェネズエラだけではない。西半球を重視し、ゆくゆく東半球からは撤退するのが米国家安全保障戦略のねらいだ



     GEOPOLITICAL FUTURES

ジョージ・フリードマン

2025年12月22日

https://geopoliticalfutures.com/the-geopolitical-logic-for-latin-american-intervention/

月初めに発表された米国国家安全保障戦略に米国の対外行動を形作る関連する優先事項二点が含まれていた。すなわち、米国が東半球への関与を減らすことと、西半球戦略に焦点を当てることである。米国が東半球から完全に手を引くことはできないため、ワシントンを同地域での幾つかの高コストで失敗した戦争に引きずり込んだ敵対的な関係を終わらせるか、少なくとも改善しなければならない。その一方で、重要な経済関係は維持する必要がある。そのための取り組みは進行中だが、まだ道半ばだ。

同様に重要なのは、新戦略が西半球への積極的関与を暗に求めている点だ。その目的は米国の安全保障上の優位性を主張し、ラテンアメリカの経済力を劇的に高めることで、米国が東半球から撤退できるようにすることにある。そのためには、ラテンアメリカ諸国が政治的に安定し、経済的に生産的になる必要がある。

第二次世界大戦後、米国は国家安全保障の基盤を欧州とアジアの東半球諸国の復興に置いた。その戦略には冷戦論理に根ざした安全保障的要素があったのは当然だが、同時にあまり意識されていない現実も示していた。すなわち、成功した先進経済国では、やがて賃金とコストが上昇し、国家の経済成長が必ずしも国民の経済的幸福を意味しなくなるという現実だ。コストを抑えるため、国々は発展途上経済から安価な製品を輸入する。欧州と日本のケースがこれにあたる。「日本製」は西洋諸国で消費をより手頃なものにしたが、日本が成熟し価格が上昇するにつれ、中国が低コスト生産の主要供給源となった。米国の投資と相まって、これが中国の経済的台頭を後押しした。これは意識的な政策というより、むしろ受託者責任の問題であった。

豊かな経済圏は、発展途上国からの低コスト輸入品を必要とする。しかし、そうした輸入への過度な依存は、輸出国が経済的・地政学的に進化するにつれ、彼らに政治的影響力を与える。中国が成熟するにつれ、米国が中国製品に依存する状況は、今やより危険であり、米国経済にとってより有害となっている。

こうした文脈で、ワシントンがヴェネズエラに軍事的焦点を再び向けているのは、地政学での軍事的側面だけでなく、経済的側面においても意図せぬ進化と結びついているからだ。

地政学的な論理はこうだ。ラテンアメリカにおける経済成長の拡大は、東半球の脆弱性を減らし、やがては米国への移民を緩和する可能性がある。そのためには、特定のラテンアメリカ諸国における政治的安定の向上が必要となる。

大まかな要請は、かなりの程度で明確だ。戦術的な要請、つまりワシントンが目標達成のために取るべき具体的な措置は、明確ではない。たとえラテンアメリカ諸国が長期的に利益を得たとしても、短期的には政治体制は著しく不安定になる。米国がラテンアメリカに介入する権利があるのか問う者もいるだろう。それは不合理な疑問ではないが、人類の歴史は介入の歴史でもある。

一部ラテンアメリカの政治経済は麻薬輸出に依存しており、輸出業者であるカルテルが構築した経済・政治体制は広範な経済発展を不可能にしている。麻薬取引はアメリカ社会への影響以外に、多様で強力な経済の発展を阻害している。

カリブ海地域で進行中の軍事作戦は、その目的に向けた第一歩だ。カルテルとその軍事・経済力を弱体化させ破壊するため、大規模な米軍部隊が展開されている。カルテルへの焦点は、米国への麻薬流入を阻止すると同時に、ヴェネズエラの潜在的な富を顕在化させることを意図している。これは善意の行為ではなく、米国の利益のための行為だ。

しかし、採用されている戦術に奇妙な点がある。カリブ海に展開されている兵力は、ヴェネズエラ封鎖に必要な量をはるかに上回っている。また、ヴェネズエラ内陸部での麻薬生産を破壊する前提条件となる、同国への侵攻・占領に必要な兵力にも遠く及ばない。しかしこの展開は、米国の抱える別の問題――キューバ――を考慮すれば理解できる。キューバはフィデル・カストロが共産主義体制を樹立して以来、約65年間にわたり米国の潜在的問題であった。ラテンアメリカを再構築する上で、ワシントンはキューバ問題への対処を迫られる。例えば米国がウクライナへの長距離トマホークミサイル供与を検討していた際、ロシアはキューバと新たな防衛協定締結を進めていた。メッセージは明白だった:米国がトマホークを供与すれば、ロシアも同様の兵器をキューバに送る可能性がある。つまりカリブ海に展開された軍隊には二つの目的がある。ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を退陣させ麻薬カルテルを混乱させること、そしてキューバを威嚇することだ。

The Caribbean

キューバは電力システムの大規模な故障や生活必需品の頻繁な不足に象徴される経済は破綻状態にある。しかし、こうした失敗にもかかわらず、ロシアとの関係(ある程度はヴェネズエラとも)を考慮すれば、キューバは米国にとって現実的な戦略的脅威だ。ロシア軍がキューバに駐留する可能性(想像し難いが)は、米国の貿易ルートと国家安全保障に対し脅威となる。

米国がラテンアメリカ経済を活性化させたいなら、キューバと向き合う必要がある。キューバは経済的苦境にもかかわらずラテンアメリカでの活動を継続し、ヴェネズエラとは緩やかな関係を維持している。キューバ情報機関はマドゥロ政権の保護に協力しており、カラカスはキューバにとって最大の石油供給源だ。最近の石油タンカー差し押さえは、米国がこれらの供給を断ち切り両国の経済を混乱させる意図を示している。

ワシントンでは新たな戦略が浮上しており、それに伴い政府は目標達成のため詳細な戦術を計画している。この米国戦略分析が正しければ、戦略上はキューバへの対応が不可欠で、ヴェネズエラからの石油禁輸はその合理的な一歩だ。戦略を前進させるには、ヴェネズエラではなくキューバを優先すべきである。なぜなら、可能性は低いものの、米国本土近くにロシアが重大な存在感を示す潜在的脅威に対処できるからだ。

米国の関心が西半球へ移行したこと、ヴェネズエラへの石油タンカー封鎖の拡大、そして米軍の展開規模は、国家安全保障戦略で示されたより広範な計画における戦術的動きと見える。ワシントンは意図を表明し、今それを実行に移しているのだ。■

ジョージ・フリードマン

https://geopoliticalfutures.com/author/gfriedman/

ジョージ・フリードマンは国際的に認められた地政学予測者であり、国際問題の戦略家である。地政学フューチャーズの創設者兼会長でもある。フリードマン博士はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー作家でもある。彼の最新著書『嵐の前の静けさ: アメリカの内紛、2020年代に迫る危機、そしてその先の勝利』は、2020年2月25日に刊行された。同書は「アメリカは定期的に危機的状況に陥り、内戦状態にあるように見えるが、長い期間を経て、建国の理念に忠実でありながら、かつての姿とは根本的に異なる形で自らを再構築する」と論じている。2020年から2030年にかけての10年間はまさにそのような時期であり、アメリカ政府、外交政策、経済、文化に劇的な変動と再構築をもたらすだろう。彼の最も人気のある著書『次の100年』は、その予見の正確さによって今なお生き続けている。その他のベストセラーには『フラッシュポイント:欧州に迫る危機』『次の10年』『アメリカの秘密戦争』『戦争の未来』『インテリジェンス優位性』がある。著作は20以上の言語に翻訳されている。フリードマン博士は国内外の多数の軍事・政府機関に助言を行い、主要メディアで国際情勢・外交政策・情報分野の専門家として定期的に出演している。2015年5月に退任するまでの約20年間、フリードマン博士は1996年に自ら設立したストラトフォー社のCEO、その後会長を務めた。ニューヨーク市立大学シティカレッジで学士号を取得し、コーネル大学で政治学の博士号を取得。


The Geopolitical Logic for Latin American Intervention

By George Friedman -

December 22, 2025

https://geopoliticalfutures.com/the-geopolitical-logic-for-latin-american-intervention/


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