2014年3月13日木曜日

論説 それでもU-2を退役させるのか


Editorial: U-2 Has The Edge Over Global Hawk

Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com March 10, 2014
Credit: U.S. Air Force


先週発表された2015年度予算案の説明席上でチャック・ヘイゲル国防長官がU-2対グローバルホークで熱い対立があったとの内幕を示した。予算が厳しいので高高度飛行の情報収集偵察監視(ISR)用途の機材として両機種の維持は困難であるのはだれにでもわかる話だが、両論の対立を最新派と回顧派の戦いとみることもできよう、無人最新鋭機とパイロット付きの冷戦時の遺物の対立ともいえる。ヘイゲル長官は「機齢50年のU-2よりも無人機グローバルホークを優先し」2016年からU-2の退役を始めると発言したが、両機種の比較はあまりにも単純化ししすぎで、そもそもその選択があやまりだ。
  1. ヘイゲル長官が「きわどい差」と表現したのは実に率直な言い方だった。両機種の運用費用はほとんど差がない。.
  2. U-2の方は米国史に確固たる位置を占めている。伝説のスカンクワークスでクラレンス・「ケリー」・ジョンソンのもとで生まれたU-2が東欧で情報収集を始めたのは1956年で、その後ソ連、中国他各国上空を飛行した。キューバでソ連ミサイルの存在を撮影した画像は1962年のキューバ危機で重要な転回点となった。
  3. もし現在のU-2が当時と同じ機体であればヘイゲル長官の判断は正しい。だが、今日のU-2特に最終形のU-2Sはロッキード・マーティンの生産ラインを1980年代に離れたもので、もっと重要なことに搭載するセンサーは電子光学式赤外線カメラ、レーダー、通信傍受用アンテナなどさらに性能が向上している。.
  4. さらにU-2は高性能の防御システムを搭載し、最新鋭のS-300やS-400といったロシア製防空ミサイルにも対応できるが、グローバルホークにはそもそも防御装備はついていない。グローバルホークは長時間飛行性能で優れているが、U-2は高度(70,000 ft.以上を飛び、グローバルホークは55,000-60,000 ft.が上限だ。そのためU-2はより大きな傾斜角度範囲でセンサーを作動できる。またペイロードでもU-2の搭載量が大きい。(5,000ポンド対3,000ポンド)また機内発電容量も大きい。グローバルホークは無人機であり、海外配備の難易度が高く、機体運用の立ち上げ、実施も難しい。同機には着氷防止装置がついていないので太平洋での運用信頼性は天候条件に左右され低くなる。
  5. だからといってノースロップ・グラマンのグローバルホークに価値がないわけではない。同機の出自は国防高等研究プロジェクト庁がUASの開発運用が経済的に実施可能と証明しようとしたことにさかのぼる。ただし、グローバルホークはそもそもU-2のミッションを肩代わりすることを想定した設計ではない。むしろ空軍が同機の長い主翼を見て偵察任務が生まれたというのが経緯だ。
  6. 9.11テロ攻撃を受けて、グローバルホークはU-2を補完するデータ収集任務に就いたのが出発点で、画像信号を収集し、地上あるいは水上の目標を対象にレーダー情報を集めた。海軍も同機を使い、ペルシャ湾地区での船舶の動きを監視する実証をおこなっている。
  7. その後13年近く同機は素晴らしい働きぶりをしているが、その中でペンタゴン上層部が同機ならU-2の役割を肩代わりできるのではと考え始めた。しかし、各地の司令官がU-2をどれだけ重宝してきたかは無視している。今週になりペンタゴンからU-2と同等の性能を実現するには19億ドルかかるとの発表があった。この金額はU-2を退役させて浮く金額とほぼ同額だ。
  8. では両機を比較すれば、本誌は長官の決断は間違っていると断言する。U-2は今でも性能上の優位性があるのだ。本誌の見解は新旧の対立という単純なものに写るかもしれないが、有人機対無人機と言う比較ではない。
  9. 本誌も無人機の可能性を信じるものである。RQ-180は本誌がその存在を明らかにしたのが昨年12月のことで、同機がU-2の後継機種になるのかもしれない。ただ、国防の歴史を見れば時期尚早で採用された機材がいっぱいあることがわかる。なかんずく本誌はUASで誤った決断がなされる事例を恐れており、グローバルホークをU-2の後釜にすえるのは誤りとみる。そこでU-2を当面は温存すべきと考える。■


2014年3月12日水曜日

日本の沿海部戦闘艦建造に米国が技術協力を提供する話題


U.S. To Help Japan Develop Littoral Warship

By Michael Fabey mike.fabey@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com March 08, 2014
Credit: U.S. Navy


日本が開発する沿岸戦闘艦で米国は日本に対し米国がすでに運用ch中の沿海戦闘艦(LCS),と同様の性能の実現の協力提供で同意している。一方、ペンタゴンはLCSの仕様を再検討中だ。
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直近のペンタゴンの指導方針では米海軍は当初52隻調達案を途中まで来たところで調達交渉を停止することにしているが、国防総省はもっと強力で生存性の高い艦にすることを狙っている。

在日米軍司令部が沿海戦闘艦案件での二国間協力関係を確認した。この構想は日本の外務省発表で明らかになったもの。その声明文によると岸田外務大臣とケネディ大使が「共同開発を日米両政府間で行い、高速沿海戦闘艦の最適化を日米相互防衛協定のもとで行う内容の文書を3月4日に東京で交換した」という。

戦闘艦の詳細はまだ不明だ。米国務省がこの実現で動いたといわれているが、照会には回答をしていない。米海軍および国防総省によればこの合意内容は把握していないとしているが、在日米大使館が外務省に本件を照会中だ。
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LCS建造の一方の企業チームで主契約社ロッキード・マーティンによればこの合意については何も知らないとする。もう一方のチームの主契約社オーストラルUSA Austal USAにコメントを求めたが回答がない。ただしアジア各国の報道では構想は三胴船構造でオーストラル陣営のLCSに類似しているという。現行のLSCは排水量3,000トンで全アルミニウム製の船体をウォータージェットで推進する。
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現行のLCS二形式はともに高速が特徴だ。対機雷戦、対潜水艦戦、対水上艦船作戦を想定し、任務ごとにミッションモジュールを交換して対応する設計になっている。

浅部海域で高速運航が可能かつ柔軟性が高いこの艦種はアジア太平洋地区には理想的だ、とみるアナリストもいる。■

コメント 太平洋の両側で微妙に発表のトーンが異なるのに不安を感じるのは筆者だけでしょうか。またLCSがF-35に見えるのは偏見でしょうか。米海軍関係者の中にもLCSに大枚払うのであれば、FFG-7オリバー・ハザード・ペリー級フリゲートを新造した方がいいとの極端な意見もありますがね。海軍がらみの記事が増えてきました。航空と接点がない純粋な艦艇の話題は別のブログにした方がいいでしょうか。ご意見を頂戴したいと思います。


2014年3月10日月曜日

海軍艦載レーザー兵器開発の現状(米議会文書から抜粋)米海軍協会


Document: Report on Navy Shipboard Lasers

USNI News
Published: February 28, 2014 2:50 PM
Updated: February 28, 2014 2:51 PMThe Laser Weapon System (LaWS) installed aboard the guided-missile destroyer USS Dewey (DDG-105) US Navy Photo
The Laser Weapon System (LaWS) installed aboard the guided-missile destroyer USS Dewey (DDG-105) US Navy Photo

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以下は2013年2月7日付議会調査局による報告書「海軍艦載レーザー兵器による対水上艦艇、航空機、ミサイル防御策」からの抜粋である。

これまでより高出力のレーザー兵器の搭載が今後数年で可能となり、米海軍水上艦艇に敵の水上艦艇や航空機をから射程10マイルで防御能力が備わる。また最終飛行段階での敵弾道ミサイルの防衛手段にもなり、中国の新型対艦弾道ミサイル(ASBM)も含まれる。

海軍と国防総省は海軍水上艦艇用に三種類のレーザーを開発してきた。繊維状固体レーザーfiber solid state lasers (SSLs),スラブ状SSL slab SSLs および自由電子レーザー free electron lasers (FELs)である。
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海軍が独自開発した繊維状SSL試作機はレーザー兵器システム Laser Weapon System (LaWS)の名称。もうひとつの繊維状SSL開発は戦術レーザーシステム Tactical Laser System (TLS)と呼ばれる。国防総省にはスラブ状SSLの軍事利用で複数案があり、海上レーザー実証 Maritime Laser Demonstration (MLD)をまず開発中。低出力FEL試作機は完成ずみで、現在は高出力モデルを開発中だ。艦載兵器として各型の効果が異なる。

海軍はレーザー技術を開発しつつ艦載装備を念頭においた試作機を完成させ今後の艦載レーザーの方向性をまとめているが、まだ量産型の調達は開始していないし、レーザーを艦艇に搭載する具体的な計画はない。海軍艦艇にレーザーを搭載するためには議会としては以下の点を検討すべきである。.


  • 海軍予算の制約を考慮すると、何種類のレーザー開発を継続すべきか、また現在開発中の各型式の比較優位性は何か
  • 艦載レーザー兵器により海軍艦艇の設計、調達がどんな影響を受けるか。とくにDDG-51駆逐艦フライトIIIの調達を海軍が2016年度に開始したいとしてることとの関係で。


2014年3月5日水曜日

米国防予算 なぜU-2を退役させるのか グローバルホークに未来はあるのか


Pentagon Chooses Global Hawk Over U-2

UAS Vision, March 3, 2014


アフガニスタン戦闘が下火になり、連邦予算支出減へ圧力がます中、ペンタゴンは平時編成となり減量化に着手し、無人航空機システム(UAS)も影響を回避できない。チャック・ヘイゲル国防長官から2015年度予算案で削減予定の内容が示されたが、ホワイトハウスは3月4日に予算案を議会へ提出する。超党派合意による予算法案が昨年12月に成立し強制削減の規模が同年度および16年度に限り緩和されているものの2014年度の実績は310億ドルも予算要求を下回っていた。さらに2015年度の国防総省関連予算の上限額は4,960億ドルに制限されており、昨年度の要求額を450億ドル下回る規模になっていると同長官は説明している。

きびしい財務環境はは人員減、基地閉鎖措置につながる。進捗を遅らせるプログラムがあり、全機退役となる機種もある。A-10ウォートホグ攻撃機およびU-2スパイ機がその対象だ。

U-2にかわるのがGPS/INS航法で飛行するグローバルホーク無人機だが、ヘイゲル長官によればその決定は「きわどい差」 “a close call. ”だったという。

国防関係者はかねてからU-2温存とグローバルホークのブロック30機材の処分が提言しており、U-2の方が高高度情報収集監視偵察任務では性能が高いという説明だった。今回の決定はそれを覆す形となったが、上位国防関係者はその理由を「グローバルホークに長期にわたり相当な投資をしてU-2と同等のセンサー能力を実現させる」必要があるからと説明。

一方で国防総省はグローバルホークの運用コストを削減し、「飛行距離、飛行時間で優れている」とヘイゲル長官は言う。「グローバルホークには高高度偵察機材になる可能性がある」

上記国防関係者は「昨年時点でグローバルホークはU-2の代替機材にしても予算節約にはならない、と判断していたが、その後同機の運航費用が大幅に下がり、ブロック30に搭載した技術が改良される可能性が高まり、同機の訓練支援コストが優位性を示し始めた」という。

「両機種を維持することはできない」と別の政府関係者が予算関係の記者説明会で説明。「どちらかを選択するのがカギとなる。そこでグローバルホークのブロック30が仕事をこなせるのであれば同機を選べばよい、ということになった」

ただしペンタゴンは他の無人機の稼働も縮小することとしており、プレデターやリーパーで24時間体制・戦闘警戒飛行(CAP)
の回数も少なくする。65回の飛行を55回にし、必要に応じ71回の実施が可能とする。

一回のCAPには4機を配置し、操縦制御には合計168名体制で実している。パイロット、センサー操作員、ミッション情報調整官、保守整備要員、発着回収要員、およびミッションで得る情報の処理、利用、流通を担当する専門家集団だ。

パトロール回数は減るが機材を一部更新する。空軍は高性能リーパーの調達を「全機をリーパーにする」まで継続するとヘイゲル長官は説明。

リーパーはプレデターより大型で高性能で情報収集用に使用されている。また長時間飛行性能と精密攻撃能力で一刻を争う状態で目標を破壊あるいは無能力化に投入される。パトロール回数の制限はコストの問題だけではないとヘイゲル長官は説¥明。「ゲリラやテロリスト相手に有効」だが「敵機の前を飛行させられず防空体制が有効な環境では運用できない」

「今後10年くらいのうちにステルス性を深化させた機材を開発し、U呼称の機材とするか、攻撃能力のある無人機が出現するのでは」とみるアナリスト(フロスト&サリバンのマイク・ブレイズMike Blades, a senior industry analyst at Frost & Sullivan)がいる。

「現時点で我々は制空権を確保している。イラク上空、アフガニスタン上空でそうでした。でも今後同様にできるかわかりません。侵入脱出をステルスのまま実行できる機材が必要でしょう。接近阻止領域拒否が決まり文句になっています。防御体制のしっかりした地点にわが方の機材が入り、損害なく撤収できることが必要になりますが、現時点でこれが可能な機材はありません」

その懸念からUASに防御能力を装備することとなったという。フロスト&サリバンは「米国防総省無人機市場」の題でレポートを刊行しており、UASに有人機とペアを組ませるMUM-T (manned-unmanned teaming) 構想が出ているという。

無人機の性能向上策も2016年に再度強制予算削減が現実になれば撤回されるかもしれない。強制削減そのものの中止で議会が合意しなければ、削減はさらに拡大する可能性があるとヘイゲル長官は語る。空軍はグローバルホークのブロック40全機を退役させ、プレデター・リーパーによるパトロール回数を10回削減させる必要が出てくる。さらに飛行時間削減につながると即応体制の復帰はむずかしくなる。■

コメント なるほど今後画期的な新型機が出てくるのですか。しかし開発ペースは以前よりずっと落ちていますからブラックな機体を今から作るとしたら2020年代初頭の稼働開始は非現実的ですね。そうなるとLRS-Bの派生型無人機版に期待するしかないのでしょうね。

開発中止になったLEMVが民間ハイブリッド飛行船として復活する見込み


U.K.'s Hybrid Air Vehicles Begins Re-assembling Large Airship

By Graham Warwick graham.warwick@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com February 28, 2014
Credit: U.S. Army

英国のHybrid Air Vehicles Ltd. (HAV) 社が米陸軍から取得した大型飛行船の再組み立てをしている。この飛行船はノースロップ・グラマンが音頭を取り開発した長時間飛行多用途情報収集機(LEMV)のこと。
  1. HAV(本社カーディントン)は全長302フィートのHAV304ハイブリッド飛行船(2012年にニュージャージー州レイクハーストで一回飛行したのみ)を同社が企画するエアランダー50 Airlander 50 商用大型飛行船の試作実証用に使う予定だ。英国内での初飛行は今年末の予定。.
  2. 同船の1.34百万フィート容積の機体に空気を入れ、1月末現在でカーディントンの同社飛行船格納庫内に係留中だった。HAVは数千点の部品を検査中だ。
  3. HAVはもともとノースロップ・グラマン向けに機体とシステム類を設計製造しており、LEMVとして完成した唯一の機体を$301,000で購入した。これはスクラップ価格であると同社は説明。
  4. 同社は追加株式発行で17百万ドルを確保し、再組み立てを完了させ英国内の初飛行を実現しようとする。
  5. HAVは英国のタイプB認可でHAV304 (エアランダー10に改名)を試験機として展示飛行させようとしている。カナダと米国へも2015年中ごろに飛行させ遠隔地への重量貨物輸送能力を示すつもり。世界ツアーは2016年のリオデジャネイロで終わるが、ブラジルの有力なスポンサーが同年の夏のオリンピックで同機を販売宣伝用に使う案を練っている。その他に同機の飛行距離を生かした学術プロジェクトや極地飛行の企画がある。
  6. もともと無人監視機材との想定のHAV304試作機は長時間飛行性能に加え重量物運搬能力をアピールしたい、と同社は考える。5トン貨物の輸送が同機で可能なら、もっと大型の次期モデルなら50トンは可能で、カナダ北部の寒冷地なら60トン70トンも可能だ、とする。
  7. デモ飛行の結果でHAVはHAV304の類似モデルあるいはエアランダー50を一気に開発すべきかを決定するのだという。エアランダー50の仕様は全長390フィート、容積3.64百万立法フィートの機体で巡航速度105kt.航続距離2,000 nmで最大4日間の飛行をパイロット2名がペイロード最高132,000 lb. (60トン)で行う。
  8. 開発総予算は4百万ポンドだが、このうち2.5百万ドルの助成金を英国政府の技術戦略委員会から交付されている。
  9. 試作機は12,000 lb. ほど重量超過したが、設計から建造までをわずか開発期間が18か月だったの理由とし、二号機では同じ問題は繰り返さないとしている。
  10. HAVが想定しているのは貨物輸送以外に監視偵察用に英国家警察と打ち合わせている。
  11. LEMVでは517百万ドルで3機の無人長時間滞空マルチセンサー監視偵察飛行船としてアフガニスタンに投入する想定だった。2013年に建造・飛行実施が遅れた同機に米陸軍は予算投入順位を下げた。
  12. 同機にはノースロップが作成したミッション装備が搭載されていないが、米国の輸出規制ではそれでも軍事装備品と区分される。ただ同社は判定により民間機と再区分されることを期待している。■

2014年3月2日日曜日

F-35でさらに遅延の可能性 ソフトウェアは相当に厄介な部分なのか


Bogdan Warns Of Possible Six-Month F-35 Slip After Development Ends

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First
February 26, 2014
Credit: U.S. Air Force/TSGT. Marvin Lynchard
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F-35の開発段階は2016年に終了するがその後の予定が最大で六か月遅れる予定だと推進室長のクリストファー・ボグデン中将Lt. Gen. Christopher Bogdanが明らかにした。.
  1. 開発業務そのものは予定通り完了すると同中将はクレディスイスとマカリースアンドアソシエイツ主催の会合(2月25日)で発言。.
  2. 海兵隊はF-35Bの初期作戦能力獲得を早ければ2015年2月に宣言する予定だが、空軍は2016年8月を予定している。ともに2Bソフトウェアが必要だが、空軍は3iパッケージのハードウェアが利用できることが条件だ。海軍は2018年8月を予定している。
  3. ボグデン中将の説明には二つの意味がある。ソフトウェアのテストがひとつで、遅延の可能性を憂慮している。3Fパッケージでロッキードは前例のない量のデータ提供が必要になっている。中でも衛星や他機のセンサー情報のインプット処理がある。.
  4. 仮に2B/3iの作業が予定通り完了してもボグデン中将はテスト機材、テスト設備やシミュレーターに3Fソフトウェアを組み込む時間だけで相当な量になると心配している。
  5. 中でも「ソフトウェアの複雑性に一番危惧している」とボグデン中将は発言。「ソフトウェア開発はいつも大変だ。最後の段階で一番困難な部分が立ちふさがっている」という。その中でも複数の艦船と同じ脅威対象の情報を共有し連携して攻撃を実施するためのソフトウェアの作成がある。
  6. その一方でボグデン中将によれば自動ロジスティック情報システムAutonomic Logistics Information System (ALIS) でデータ欠陥が見つかっている。そのため整備部門では手作業でデータ処理せざるを得ず、飛行前に相当の時間が必要になっている。
  7. これまでのALIS改良は「一歩前進二歩後退」だったというが「今回は一歩前に進んでるが後退していない」.
  8. しかしALISの欠陥によりボグデン中将も整備部門にALISのデータが一致しない場合は飛行を制限させていた以前の通達を再考せざるを得なくなっている。ALISではすべての部品、システム診断、ミッション予定を扱っている。問題は一致しないと飛行をさせないことだ。
  9. 整備部門は同機をもう3年間も取り扱っており、知見が相当高まっているので、ALISの警告を無視できるのかとの質問に、同中将は一定の条件付きで認めると答えていている。■

2014年2月27日木曜日

オーストラリアがMQ-4Cトライトン導入へ リアルな対中海上交通遮断作戦


Australia to Buy Seven MQ-4C TritonsMQ-4Cs


オーストラリア国防大臣デイビッド・ジョンストンからMQ-4CトライトンUAS計7機の導入を提言するとの発表があった。総額30億ドル相当。
  1. 【MQ-4Cトライトンとは】翼幅は39.8メートルでボーイング757に匹敵する。高度18,000メートル、時速575キロメートルで30時間まで飛行が可能で、航続距離は16,000KMになる。主目的は広大な地域の探索でインド洋や太平洋が適している。米海軍はトライトン一機で7百万平方キロメートルを一度に監視できると説明している。
  2. 1月には米海軍が同機のテスト飛行に成功したと伝えられた。米海軍は68機をノースロップ・グラマンに発注しており、米海軍での稼働は2017年開始予定。オーストラリアの調達機材は2019年までに稼働に入る見込み。オーストラリアは海洋国家として対応範囲の広さを重視。
  3. ただしトライトン導入はオーストラリア軍部が一度反対した経緯がある。そのときの論拠は同機が武器搭載を想定していないためで、ずっと安価なプレデター改造のマリナーではトライトンに匹敵する飛行性能はないが、ミサイルを搭載しており、艦船攻撃が可能だ。
  4. 【インド洋・太平洋でのオーストラリアの懸念】武装の有無が問題になった背景にはオーストラリアが実感しているアジア域内の地政学的緊張の高まりがあるのと、米国のアジアへの回帰(オーストラリアもこれを支持)がある。特にインド洋でのシーレーン確保が念頭にあり、中国、インド、米国の各海軍間の競合状態だろう。.
  5. 米国とアジア太平洋地区での主要同盟国である日本、オーストラリアが中国との軍事衝突に備えていることが知られるようになってきた。
  6. 【中国との軍事衝突想定】 中国との軍事衝突を想定した軍事戦略では海軍による交通路封鎖で中国の海運を太平洋とインド洋で遮断することが想定され、とくにカギとなるのがマラッカ、ロンボク、スンダの各海峡だ。オーストラリア領も海軍空軍基地として重要な存在になる。そのねらいは中国の求める食料、燃料、原材料輸送を止めて輸出依存の経済体制を崩壊させることにある。米軍のエアシーバトル構想でも中国国内の指揮命令施設への空爆、ミサイル攻撃を防空施設とあわせて実施する想定だ。また封鎖突破を試みる中国海軍も攻撃対象になる。
  7. 【オーストラリアの監視体制】 米海軍はオーストラリアと中東アフリカからインド洋を通過する民間商船の往来の最新状況を把握する必要があり、中国海軍艦艇の動きも当然監視対象だ。
  8. オーストラリアはP-3Cオライオン有人機とジンダリー・レーダーネットワーク(JORN) でオーストラリア大陸の南北を3,000キロメートル範囲で監視している。トライトンを西部のリアモンスあるいは北部のダーウィンから運用した場合は監視対象地域が大幅に広がる。さらにインド洋のオーストラリア領ココス諸島に無人機航空基地を建設すればもっと広い地域が常時監視可能になる。
  9. 【ココス諸島が注目集める?】 2013年にリークされた内容によれば米軍はココス諸島からマリナー無人機を運用することに関心を持っているがまず同地の滑走路を改良する必要がある。
  10. 中国はスンダ、ロンボク各海峡を通過して海軍艦艇三隻をインド洋に入れて演習を行っているが、この事例がオーストラリアに長距離監視が可能なUAS調達を後押ししていると指摘する向きもある。■


米空軍2015年度予算案でA-10とU-2は全廃に 


Pentagon Retiring Air Force’s U-2 and A-10 Warthog in Latest Budget Deal

By: Dave Majumdar
USNI News, February 25, 2014 7:18 AMAn A-10 returning from a training mission on Jan. 11, 2014. US Air Force Photo
An A-10 returning from a training mission on Jan. 11, 2014. US Air Force Photo

米空軍はフェアチャイルド・リパブリックA-10ウォートホグおよびロッキード・マーティンU-2情報収集監視偵察機を退役させ、新型技術への支出を増やす内容の2015年度予算要求を提出する。

ペンタゴンは厳しい選択をするにあたり「装備の量より性能を重視」したとする。チャック・ヘイゲル国防長官が2月24日に記者会見で明らかにした。「空軍の機材近代化事業の中核として、爆撃機、共用打撃戦闘機、新型空中給油機を守った」

上記三項目の空軍優先事項に加え、国防総省は追加予算10億ドルで「有望な次世代ジェットエンジン技術」を開発すると同長官は発言。新エンジンは低燃料消費と保守点検工数を削減してコスト節約が期待されている。

ただし新エンジン技術に予算を付ける理由は産業基盤の温存にある。「産業基盤にひきつづき投資をすることで必要な技術改良が実現する」とペンタゴン記者会見で匿名の国防関係者から説明があった。「予算削減の環境下でも改善改良の必要は変わりなく、我が国の産業基盤は不可欠なパートナーであり、戦略的観点で資金投入すべき分野」だとする。

同長官が言及しているのが空軍研究所が進める適応型エンジン技術開発 Adaptive Engine Technology Development による可変サイクルエンジンvariable-cycle engine と思われる。

空軍は引き続きジェネラルアトミックスエアロノーティカルシステムズのMQ-9リーパーの調達を続け、旧型で性能が劣るMQ-1Aプレデターを全機リーパーで置き換える。またヘイゲル長官から空軍は無人機による戦闘警戒待機 (CAP)実施回数の増加ペースを落とすと発表。常時空中待機65回の予定を55回にする。「待機の対象空域は必要十分」という。

だがエンジン開発に資金投入し、機材更新を維持し、追加リーパー調達で代償も発生する。「空軍の戦術飛行中隊はA-10全機を退役させることで減少する。A-10退役で今後5年間で35億ドルの節約になり、その分だけ機材更新が進む」と長官は説明。「A-10は機齢40年で単独任務しかこなせない機材であり、もともとは冷戦時に敵戦車攻撃用に設計されたもの。敵の機材が高性能化しており防空体制が整備された環境では生存が困難だ」

さらに代替機材があり、A-10の出番はなくなると説明。「イラク、アフガニスタンでは精密爆弾の出現で近接航空支援を今までより多くの機体で実施できるようになった」

A-10の機齢が高いのも問題だ。配備後40年が経過して、保守点検も非常に困難かつ高価になっていると長官は説明。A-10部隊規模の縮小も実効性のある選択とは言い難いという。「費用節約にはあくまでも同機部隊をすべて退役させるしかない。同機専用の支援機材の固定費用のためだ」

ペンタゴンはU-2も全機退役させ、かわりにノースロップ・グラマンRQ-4Bグローバルホークのブロック30を重視する。「この決定は賛否の差がわずかだった。国防総省は以前にU-2を温存してコストが高いグローバルホークを退役させる提言を出していたため。しかしこの数年間でグローバルホークの運用コストの削減に成功している」

An RQ-4 Global Hawk taxies on the flightline as a U-2 makes its final approach Sept. 17, 2013, at Beale Air Force Base, Calif. US Air Force Photo
An RQ-4 Global Hawk taxies on the flightline as a U-2 makes its final approach Sept. 17, 2013, at Beale Air Force Base, Calif. US Air Force Photo

空軍はグローバルホークに搭載したセンサー類の性能はU-2を下回ると説明していた。とくに高性能通信情報収集装備などU-2の飛行が高高度のため物理法則で効率が高くなるとしていた。U-2の実用飛行高度は 70,000ft だがRQ-4の上昇限界は60,000ftだ。

さらにグローバルホークではU-2で使用頻度が高い湿板光学式カメラOptical Bar Cameraを搭載することが不可能。同カメラは大型ですば抜けた高解像度写真を6ft のスライドフィルムに撮影する

グローバルホークの性能改修でペンタゴンの要望に応えることが可能だとみる軍高官がいるが、その際の費用については言及がない。さらに性能改修したグローバルホークでU-2と同等のセンサー性能が発揮できるかも同高官は口を濁している。しかしヘイゲル長官は「グローバルホークは高高度偵察機材に将来発展する可能性はある」という。

ヘイゲル長官はもし国防総省が強制予算削減時とおなじ予算環境に2016年以降も追いやられるとさらに負担になる機材削減が必要になると説明。「その際に80機をさらに削減させ、KC-10すべて、グローバルホークのブロック40全機を退役させるとともに共用打撃戦闘機調達も減速させなければならない」と発言。

その場合F-35調達数は2019年までに合計25機減らし、プレデターやリーバーの連続警戒飛行回数も減らす。そうなると空軍の即応体制が低下する結果になる。「飛行時間も相当削減することになり、適切な即応体制の回復もできなくなる」■

コメント A-10、U-2の全廃が本当に正しい決断なのか、今後の歴史が証明してくれそうです。冷戦時代の遺物、と片づけられてしまうA-10ですが、今後同様の機材は出現することなく、不測の事態が発生した際にはもう遅いのですが。同機にノスタルジアを感じる向きも多いようですが、やはり経済合理性の前には勝てないのでしょうか。グローバルホークは今後の拡張性がカギでしょうね。有人機から無人機へ、単任務機材から多任務機への切り替えという方向が明白に出てきましたが、もう一度空軍の存在意義、あるべき姿を考えてみる方が件名と思いますが。航空自衛隊はこの動きをどう見ているのでしょうか。
可変サイクルエンジンについては次期主力戦闘機の推進手段として重要な存在になりそうですね。今後も要注意な技術です。

もっと重要なのは産業基盤の維持という「産業政策」で、以前は日本による産業政策を競争をゆがめるものとして執拗に避難していたのが米国でしたが、ことここまでくるとなりふりかまわなくなってきたというべきなのか、日本の考え方がもともと正しかったのか、判断に苦しむところですね。


2014年2月26日水曜日

燃料消費を大幅に削減する軍用輸送機が空を飛ぶ時代が来る


Lockheed Martin Refines Hybrid Wing-Body Airlifter Concept

By Graham Warwick

aviationweek.com February 17, 2014
Credit: Lockheed Martin Concept

軍用機では性能を一番に重視し燃料消費は軽視するのが通例だった。ただし燃料価格が作戦運用の制約条件になってきたため、設計の優先事項も再考を余儀なくされている。.
  1. 米空軍では燃料消費削減の対象は輸送機・給油機部隊に集中している。年間消費の三分の二が両機種によるもののため。すぐ実施できる対策として編隊飛行、ウィングレット装着など抗力削減策がであるが、長期抜本的な節減にはならない。
  2. 航空機設計を劇的に変えることで燃料消費を大幅に下げようという空軍研究所のプロジェクトは「革命的エネルギー効率機体構成」Revolutionary Configurations for Energy Efficiency (RCEE) という名称がすべてを物語っている。
  3. RCEEフェイズ1(2009年-11年)の目標は現在の輸送機・給油機より燃料消費が90%少ない次世代機材の定義づけだった。2011年からのフェイズ2では関連企業が詳細な機体構造を検討している。.
  4. フェイズ1ではボーイングが90%削減目標に対して全電動トラス構造主翼で搭載貨物20トン案、ペイロード40トンの分散推力ハイブリッド電動機案、ペイロード100トンのハイブリッド電動方式ブレンデッドウィングボディ(BWB主翼機体一体型)案を提案した。フェイズ2で同社は推力分散型ハイブリッド推進の設計を詳細検討している。
  5. 一方、ロッキード・マーティンは各種の仕様と技術をフェイズ1で検討しており、ハイブリッド方式ウィング・ボディ(HWB)が最有力とした。フェイズ2で同社はこの概念をさらに検討し、主翼胴体一体化に加え、機体前部の空力特性と機体構造の高効率化を加え、機体後部は従来型と同様の構造にし空中投下など空輸上の要求にこたえられるようにしている。
  6. HWBは双発で6,500 ft. 未満で離陸し 3,200 nm を220,000 lb. 搭載して飛行できる。このペイロードはロッキードC-5が輸送する大型貨物の全種類を含む。ロッキードの計算ではボーイングC-17より70%少ない燃料消費になるという。空力特性、新型エンジン、機体の軽量化が組み合わさった効果だとする。「当社は各種成熟技術で経済的で生産可能な機体を想定しています。」(ロッキード・マーティン・エアロノーティクス)
  7. HWB案の特徴は高度の空力特性最適化を計算流体力学を駆使して実現したことだ。C-17やC-130、C-5の時代にはこのツールは存在していない。CFDの成果として巡航速度をマッハ0.81にしつつ亜音速抗力を45%も減らすことができたとロッキードは言う。
  8. 同社の試算ではHWBの空力特性効率はC-17より65%優れている。C-5より30%高く、ボーイング787と比べても5%高いという。
  9. 高効率の理由としてまず一体型機体前部で揚力の25%を稼ぎ、主翼重量を増やさずに抗力をさげている。主翼の縦横比は12まで増えており、一般的な機体は9が通例だ。
  10. 機体後部は現行の貨物搬入や空中投下と同じになっており、完全な全翼機設計ではこれは困難だという。T字型尾翼のため全翼機設計より抗力ガ5%増えるが、機体制御は堅実で新規制御系統を設計・製作する必要がないうえ、全翼機のアルゴリズムを応用するので空中投下をした場合の急な重心移動も制御可能だ。
  11. 機体後部は滑らかな空流を作りパラシュート降下あるいは貨物投下を助けるのはC-5と同様だ。巡航飛行中のトリム操作は不要となっており、抗力の増加を防ぐ
  12. HWBの設計で特異なのは一体型機体前部の中に円形与圧胴体が入っていることだ。貨物の一部は非与圧の胴体に搭載される。パレットは後部扉から入れ、床面ローラーで前方へ移動すれたあと、胴体扉から側面で取り出すことが可能だ。その結果、与圧部分の胴体はC-5より小型化軽量化できたが容積はほぼ同じ。ロッキードの試算ではHWBの機体重量は従来設計より18%軽量化できたという。
  13. もう一つ特異なのはエンジン取付位置が主翼後縁の上になっていること。主翼上にナセルを付けることは長年嫌がられてきたが、ホンダジェットでこの方式を採用したことであらためて注目を集めていた。
  14. ロッキードは巡航飛行中の抗力発生による干渉効果がエンジン取付位置を変えることでどう変化するかを検討し、CFDの解を15,000通りも求めた。その結果、後縁上方にナセルをとりつけると揚力抗力比が良好でエンジン種類を問わず従来型の主翼下取り付け方式よりも5%の効率効果が得られることが分かった。.
  15. エンジン候補は三種類で、ジェネラルエレクトリックのGEnxは現時点で利用可能で燃料消費率specific fuel consumption (sfc) でC-17やC-5Mより25%の改善となる。ロールスロイスが提唱するアルトラファンUltra Fan は30%低いsfcとなるが登場は2030年となる。三番目がGEのオープンローターで2025年以降に実用化されるが効率改善と軽量化を両立している。sfcはC-17比較でGEnxが70%減、アルトラファンが75%、オープンローターが80%減となるという試算結果がある。
  16. エンジン直径でGEnxの11.8 ft. からオープンローターの 21 ft.まで開きがあるが、主翼はどのエンジンにも対応可能だという。各エンジンともモジュラー方式で取り付けられる。
  17. 主翼上取り付け方式ではそのほかの効果もある。ナセル前方から前縁までの距離が長くとれるので気流を整え、空気取り入れ時の乱れを減らすとともにファン騒音の発生場所は地面から離すことができる。後縁から張り出しているのでエンジンの保守点検や取り外しは容易になる。また主翼上取り付けエンジンにより尾翼を小さくできる。
  18. また揚力でもメリットが生まれる。「取り入れ口の気流により主翼上に吸い込み揚力が発生するという。その結果揚力の効果は15%増える。
  19. STOL性能を実現するのがフラップへのエンジン気流吹付でこれ以外にフラップを使って推力を下に向ける、F-35Bのようにノズルを回転させる、エンジン自体を回転させる案が浮上している。
  20. RCEEはまだ研究段階だが、米空軍は近い将来次世代の戦略輸送機開発作業を開始する必要が生まれるとすれば、C-17の退役が予定通りなら2033年に始まるためだ。C-17の配備には計21年かかっているので注意が必要で、そのため今にでも工程を開始する必要がある。■


MDA予算増額で地上配備迎撃態勢の整備をすすめるねらいは北朝鮮とイラン


MDA Budget Request To Boost GMD, Add Radar

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com February 12, 2014

昨年のテストが失敗して日が浅い中、チャック・ヘイゲル国防長官は地上配備中間コースミサイル迎撃システム Ground-Based Midcourse Defense (GMD) の開発予算を増額しミサイル防衛庁(MDA)に2015年度から19年度にかけ45億ドルを追加する。
  1. これまでペンタゴンは1,570億ドルを各種ミサイル防衛手段に投入しており、GMDもその一部。
  2. ペンタゴンの予算要求案は来月に議会に提出予定で、ヘイゲル長官はGMDの予算確保を重視している模様だ。その狙いはテスト自体が目的化している現状を打破し技術の進歩を促進し、今春の迎撃テストで結果を出すことらしい。
  3. さらに最低でも15億ドルで新型レーダーを開発し、北朝鮮が発射したミサイルの探知をめざす。また大型浮遊式宇宙配備Xバンドシステムを東海岸に移動させ、イランからの攻撃を監視させる可能性もある。
  4. MDA予算はそもそも70億ドル台へ減額されるはずが、かつての90億ドル台近くまで回復される。その背景にはGMDが不当な扱いを受けているとのヘイゲル長官の懸念がある。
  5. 北朝鮮あるいはイランのICBM攻撃に対する唯一の国土防衛手段として、GMD開発が失敗すれば国家の一大事だ。GMDの契約企業はボーイングで 2013年7月5日のテストでは難易度が低いはずの内容が実施できなかった。しかも5年前には成功していたのと同じ内容だった。ヘイゲル長官は北朝鮮の挑発的発言を意識し昨年3月にテスト実施を命じ合衆国領土を防御する有効策を示す狙いだった。
  6. それが反対にシステム有効性に疑念を持たせることになった。GMD迎撃部隊はアラスカ州フォート・グリーリー基地とカリフォーニア州ヴァンデンバーグ空軍基地に合計30基が配置されている。
  7. 失敗に終わったテストでは実弾ミサイルを警戒態勢に置き、常時発射できるようにし、世界各国に対しその有効性を示そうとしていた。実際にはレイセオン製大気圏外攻撃飛翔体 Exoatmospheric Kill Vehicle (EKV) がオービタルサイセンシズ製ブースターから切り離しに失敗している。「こんなことは60年代にいつもやっていたことだ」と業界筋は切り離しの難易度が高いはずがないという。この結果200百万ドルが無駄になったが、その原因はクランプあるいはほかの製造精度が低いハードウェアとの仮説を立てる向きもある。原因調査はまだ完了していない。
  8. その結果ヘイゲル長官はGMD予算を増額し、モニタリングを強化するとともに改修作業を進め、システム性能を引き上げることにしたと国防筋は言う。ペンタゴンにとって同システムの失敗は耐えられない。「今回の失敗は5年間の努力が失敗したことになり、国防総省と議会の間で決まったGMDの設計変更、仕様改善の凍結が失敗に終わったことを意味する」のだという。
  9. ペンタゴンは現行仕様から外れないようにしており、EKVのCE(性能向上策)Iベイスライン仕様では14回のうち8回で迎撃に成功している。2008年以降の失敗例3回のうち2回がCE-II仕様で、その内容は秘密のままだが妨害手段を回避する操縦性の改良とみられる。ペンタゴンの主任試験官からEKVの設計改良で提言が出ているが、国防総省高官は唯一の解決方法はEKVを超越した存在いわゆる共通破壊飛翔体Common Kill Vehicle (CKV)だとみているようだ。2014年度予算でその開発予算が含まれており、共通というのは GMDとSM-3イージス迎撃体で相互利用できるからだ。ただこれがどうなるかは見えてこない。ヘイゲル長官の指導でEKVに代わる手段へ進むことになる。迎撃手段の開発で全体戦略が欠如しているとの声もある。
  10. ただ迎撃手段の統一が実現するか不明で、たとえばEKVは単弾頭を目標とする設計だが、不複数弾頭を相手にできる迎撃手段が開発できるのか不明のままである。国防関係者と議会は次期迎撃手段を2020年めどで配備したいとしている。
  11. GMDの信頼性がぱっとしないのは同システムがまだ未完成だからだ。GMDは開発と配備を同時並行する構想で、ジョージ・W・ブッシュ大統領時代に「限定防衛作戦手段」との通称でいかにも作戦能力があるかのように命名されている。THAAD(最終段階高高度地域防衛システム)では10年近く設計変更で稼働できなかったのとは異なり、ホワイトハウスはGMDを「オフライン」にすることを拒否している。
  12. CKVを全面的に推進してもEKVの放棄にならず、今後も改良を続け信頼性を向上させていくだろう。
  13. 一方でペンタゴンは新型レーダーを開発し太平洋地域に配備する案を検討中だ。長距離識別レーダー Long Range Discrimination Radar (LRDR) の呼称であるが、正式には未決定だ。実現すれば飛来する弾頭とレーダーを混乱させる対抗手段を区別することができる。ビール空軍基地(カリフォーニア州)にある早期警戒レーダー、前進配備中のAN/TPY-2Xバンドレーダー、浮遊式海上配備Xバンド(SBX)レーダーならびにコブラデインLバンドレーダーの機能を強化できる。太平洋地域ではイージス艦もSPY-1レーダーを搭載している。
  14. LRDRはレーダー技術開発と生産方法の改良内容を反映して高信頼度で感受性高いシステムになっており、送受信部分、搭載する半導体、アクティブ電子スキャンアレイはSBXが生まれた1990年代から成熟化している。ただしSBXの問題点は信頼性が突如低下することがある点だ。もともとはGMDの性能を測定する技術陣の支援用に創案されたものであり、24時間の監視用途は想定外だ。ただし、GMDが実用化されるとともに北朝鮮の脅威が現実になったので、関係者は警戒用に信頼度がもっと高いシステムを希望している。
  15. このためMDAはSBXを東海岸に移送し、イランを想定した国内の対ICBM防衛体制が不十分と懸念する国会議員を安心させることとした。
  16. 一方で5年以上のブランクを経て初のGMD迎撃テストを行う検討が続いている。前回テストはFTG-06飛行追跡テストとして難易度が最も高いもので失敗に終わっているが、もう少し基本的なシナリオで実施してはどうかと考える関係者もいる。「とにかく成功例がほしい」というのが国防筋の偽らざる心境だ。
  17. FTG-06では敵目標に見立てた高性能なロッキード・マーティンLV-2にEKVのCE-Iを真正面から迎撃させている。接近速度が高いため精度と性能が問われた。
  18. MDAは同テストを再実施する必要があるが、関係者もCE-I仕様の威力を展示するのであればリスクを低くした方がいいとみており、結果的にシステムへの信頼度が回復するという。
  19. GMDテストは毎回200百万ドルほどの経費となる。MDA長官ジェイムズ・シリング海軍中将 Vice Adm. James Syring はGMD発射を再開しテストを定期的に実施することを希望している。■

2014年2月23日日曜日

F-35開発の最新状況:B型で部材亀裂発見、ソフトウェア2Bなど


More Cracks Found In F-35B's Second-Life Testing

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com February 21, 2014
Credit: U.S. Navy


F-35Bの構造支援部分で亀裂が昨年見つかっているが、これまで考えられていた以上に深刻とわかり、同型の地上試験が今年第四四半期まで中止される。
  1. 最初の亀裂が見つかったのは昨秋でセクション496主翼保持部分のバルクヘッドで即座に地上テストが停止されている。その時点でのテストは通算9,400時間相当で飛行時間換算8,000時間の二巡目に入った時点だったが原因調査が行われている。
  2. その後隣接するバルクヘッドでも亀裂が見つかったとF-35推進室が発表している。「周辺部分の追加調査でバルクヘッドのうち二点で亀裂が見つかった」
  3. 亀裂発見が8,000時間超過時点だったため、製造直後のF-35B各機の飛行テストには影響が出なかった。またその時点では、複雑な垂直飛行用ファンを持つ同型だけの問題とされた。同型を使用するのは米海兵隊だけだが、英国とイタリアも導入に前向きだ。計画推進室は海兵隊が目指す同型の初期作戦能力獲得目標2015年には影響がないという。
  4. ペンタゴンはこの問題は管理可能とみているが、失望の念は隠せない。「重大な問題と思いますが、決定的に悪いわけではありません」と調達最高責任者フランク・ケンドール Frank Kendall は語る。「根本原因の調査は進行中ですが、初期調査では問題部分の再設計が必要と判明しています。改修設計部品はロット9までに利用可能となり、影響を受けるのは2014年分のロット8になるとみています」また完成済みF-35Bでも構造強化策が必要だという。
  5. セクション496バルクヘッドの設計変更はすでに作業を開始しており、3月に実地試験をするという。さらに「隣接部分で点検が始まっており、再設計も着手しています。手直し部分がいつ手に入り装着の日程も推定していますが、改修作業のため2014年第四四半期の耐久性試験を再設定する必要が出てくるでしょう」
  6. セクション496バルクヘッドは2010年にも1,500時間超過時点で大きな亀裂が見つかっており、その際は一時的に飛行テストが中止になっている。
  7. セクション496改修で追加になる重量は2ポンド以下とみられるが、その他二か所のバルクヘッドでの追加重量については言及がない。
  8. B型でトラブルがあったが、空軍参謀長マーク・ウェルシュ大将 Air Force Chief of Staff Gen. Mark WelshはF-35Aを大量に調達する考えに変更なく、2月21日の空軍協会主催シンポジウムの記者会見でも「全体計画の進展に満足している」と発言している。
  9. 主契約社ロッキード・マーティンが度重なる計画遅延をしているのは同機運航をつかさどるソフトウェアの作成だが、ウェルシュ大将は作業は「空軍が計画する初期作戦能力獲得2016年目標に向け進行中」だという。
  10. エグリン空軍基地(フロリダ州)で同機を担当する保守整備部門の不満は同機の修理点検で予想より長時間が必要になっている点だ。次期空軍長官のデブラ・リー・ジェイムズ Debra Lee James も「現場で不満が高まっている」と指摘している。
  11. これに対しウェルシュ大将は「フライトテストの現場の考え方から作戦段階のフライトラインの考え方に切り替える必要がある」とし、以前の機種よりもF-35での不満が高まっているのは同機開発が機体配備と同時進行しているためだとする。.
  12. 同機の2Bソフトウェアが海兵隊と空軍のIOCには必要だが、今年中に完了する見込みであると、ロッキード・マーティンのF-35担当副社長ロレイン・マーティンLorraine Martinは発言している。また新型3iハードウェアのテストも今年中に恥じます。これは空軍仕様で実戦用機材に搭載されるという。.
  13. さらにF-35推進室が自動情報提供ロジスティクスシステム Automated Information Logistics System (ALIS) のSOU V2ハードウェアの審査を開始した。これはALISのハードウェアでミッション計画立案とメンテナンスで必要になるもの。現在のALISハードウェアは大型支援用機材の中に収納されているが、海兵隊は小型化し揚陸艦内で使えるように希望している。マーティンによればSOU V2ハードウェアは2015年のIOCまでに利用可能となるとし、海軍、空軍にも導入されるという。
  14. 新型ヘルメットの開発は改良型夜間視認カメラと合わせ8月に実機テストを開始する予定になっている。Gen 3ヘルメットと通称されているが、夜間の運用に必要なほか、強度の衝撃を伴う運用の際にジッター(電気信号の変調)が発生する問題の解決が求められている。■