2021年7月28日水曜日

台湾への軍事支援を公言できるようになった日本....攻撃能力の整備が次の課題だ....この変化を招いたのは中国の強硬な「戦狼」姿勢という皮肉

  

Japan-China WarImage: Creative Commons.

 

国が強硬姿勢を示し、軍事力増強を続ける中で、日本は自国の安全保障に台湾を連関させる動きを強めている。

 

台湾への中国の軍事脅威は増しており、日本政府関係者からは台湾防衛への肩入れを示す発言も増えている。中国が台湾侵攻に踏み切れば、どんな条件で日本は台湾防衛ができるのかに関心が集まっている。またそのシナリオで日本が果たす役割も関心の的だ。

 

日本は台湾救援に向かうのか

 

政府高官数名の発言から日本が安全保障問題にとって台湾が大きな要素だとみていることがわかる。また中国が台湾侵攻に踏み切れば台湾を救う方向に舵を切ってきたこともうかがえる。今月初旬に共同通信が麻生太郎副総理の発言を報じた。麻生は自由民主党の資金パーティーので台湾の存続が日本の存続にもかかわると発言したとある。

 

台湾が侵攻を受ければ、日本は「次は沖縄だと覚悟する必要がある」と麻生は発言した。

 

麻生副総理の発言の前に中山泰秀防衛副大臣は台湾が中国から脅威を受けている事実に世界は「目覚め」る必要があり、「民主国家として」の台湾を守る必要を訴えた。岸信夫防衛相は台湾の安全を日本と直結させた認識で、台湾領空に記録破りの28機のも中国軍用機が侵入したことを受け、台湾の平和安定は「日本のそれと直接つながっている」と発言していた。

 

台湾が侵攻を受け米国からの求めがあった場合、あるいは中国による侵攻で日本領土の遠隔島しょ部が脅かされる事態になれば日本は台湾救援に出動することは可能との見解を公人発言が示している。中国が日本国内に駐留する米軍や施設へ攻撃すれば、あるいは日本国民に向け攻撃すれば日本も紛争に巻き込まれる事態になるのは容易に想像できる。中国は既成事実の積み上げを狙い、日本や自衛隊への攻撃に踏み切る可能性もある。

 

日本の軍事戦略そのものが変わるのか

 

日本が台湾を軍事面で支援する姿勢を示したのは大きな変化を呼んでおり、一部専門家には日本が任務を十分こなせる軍事力整備に走るとの見方がある。注目されるのが日本が長距離攻撃能力の実現に向かい開発を始めたことで、対艦攻撃能力の向上も人民解放軍海軍(PLAN)の脅威への対抗手段で、ここから長距離巡航ミサイルや弾道ミサイルが姿をあらわし中国国内の軍事基地や軍港への攻撃能力が実現するとみる向きがある。中国の兵力投射能力を狙う装備となる。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。

 

 

Would Japan Come to Taiwan’s Aid if China Invaded?

ByEli Fuhrman

In this article:China, China Invades Taiwan, Japan, Military, Taiwan


ロシア、極超音速ミサイル多数を搭載した旧型巡洋戦艦は西側に脅威となる----急がれる極超音速ミサイルの実用化で東西は新たな兵器開発競争へ

 



Russia Arms its Battle Cruisers with 60 Hypersonic Missiles

TASS

 

シア海軍が冷戦時建造の旧式巡洋戦艦で武装強化、近代化改修を進めており、新しく迎撃ミサイル、近接防御兵装、長距離防空機能さらに極超音速兵器を加えている。

 

アドミラル・ナヒモフの改装

 

極超音速ミサイル搭載は1980年代建造のアドミラル・ナヒモフの兵装で大きな強化になる。同艦は「アイオワ級並みの大きさ」があり、「世界最強の水上戦闘艦」になるとフォーブス記事にある。

 

改修で高速処理コンピュータ性能、長距離センサー機能のネットワーク化、新型「火器管制」装備の搭載が進むのだろう。追加装備で近代化が実現すれば、重武装の同艦は米・NATO部隊に大きな脅威となる。

 

アドミラル・ナヒモフはS-300対空ミサイルを艦上運用に改良したフォートMミサイルのほか、対地攻撃巡航ミサイル、AK192砲、近接防御兵装、新型対潜兵器を搭載している。

 

追加兵装として「空母キラー」ミサイルとなるグラナイト超音速大型ミサイル20本も追加搭載されるとフォーブス記事は伝えている。

 

さらに9K33オサ短距離ミサイル40本があり、S-300長距離ミサイルは96本搭載する。またカシュタン近接防御装備にガトリング銃や9M322短距離ミサイルがある。

 

米海軍水上艦との比較 

 

同艦の重武装ぶりを見て、米海軍の駆逐艦との戦力比較で疑問が生まれる。ロシア艦の長短迎撃ミサイルはSM-3、SM-6ミサイルで構成する米海軍の多層防御に匹敵するのだろうか。

 

ロシアの長距離ミサイルは米海軍のトマホークのライバルになるのか。

 

ロシアのCIWSは米海軍のファランクス並みに小舟艇、無人機、爆発体他接近してくる脅威に対応できるのか。

 

最後に米海軍駆逐艦とロシアの性能改修巡洋戦艦はともに無人機、ヘリコプターを運用し偵察、対潜のほか前方攻撃任務を遂行できる。

 

米海軍駆逐艦はロシア巡洋戦艦より小さいが、ハイテク兵装を搭載しており「外洋」海軍戦で大きな威力を発揮する。

 

米国はSM-6ミサイル、トマホーク、CIWS、SeaRAMsの性能向上を進めており、射程距離が延び、移動水上目標の攻撃が可能となり、新世代の誘導装備を導入し、ロシア側の兵装の進歩に対抗し、ネットワーク機能で連携効果を無人機、潜水艦さらに水上艦との間で実現する。

 

ロシアが1980年代建造艦のアドミラル・ナヒモフに60発もの極超音速未シアルを搭載すれば、NATO加盟国には大きな脅威となる。

 

極超音速ミサイル

 

フォーブス記事では3M22ジルコン極超音速ミサイルを搭載するとある。これは同艦が搭載してきたP-700グラナイトミサイルより小型ながらはるかに高速のミサイルだ。記事ではグラナイト1発のかわりにジルコン3本を搭載するとあるので合計60本の極超音速ミサイルとなる。

 

これだけのミサイルを発射すれば圧倒的な攻撃効果が生まれ、水上艦、沿岸防衛陣地のほか内陸部の強化施設も一斉射撃で撃破可能となる。

 

艦上発射の極超音速ミサイルは飛翔速度により戦術優位性を確立できる。黒海から発射すればNATO加盟国への攻撃には最適で、圧倒的な攻撃効果を発揮するだろう。

 

Zircon

ジルコン極超音速巡航ミサイルが誘導ミサイルフリゲート艦アドミラル・ゴルシコフから発射されている。July 19, 2019. Russian Defence Ministry/Handout via REUTERS

Reuters

 

 

高性能防空体制でもこうした攻撃への対応が困難となる。極超音速ミサイルが同時にマッハ5で飛来してくれば防空体制が圧倒されてしまう。洋上から極超音速ミサイルが連続飛来すれば防空体制に穴があき、その後の航空攻撃部隊に進入路を開く。

 

こうしたシナリオから黒海がリスク地帯となることがわかり、大型巡洋戦艦がロシアから遠征すれば他の地帯でも同様だ。米本土が危機に立つ可能性もありえる。

 

ではどう対応すべきだろうか。極超音速ミサイルへの防衛策も研究されているものの、現時点では効果的な阻止手段はない。

 

艦上発射の迎撃ミサイルは高速対応だろうか。答えははっきりしない。このためペンタゴンは極超音速兵器多数を同時並行で開発中だ。

 

極超音速「迎撃ミサイル」で極超音速攻撃を阻止する構想があるが、抑止力となるのは同様の極超音速攻撃能力を整備することだろう。

 

また、極超音速ミサイルの射程が非常に大きいことがわかっているが、艦上発射の射程はわかっていない。とはいえ、巡洋戦艦への防御戦略は衛星、無人機、攻撃機材で追尾し航路を把握して大規模攻撃を実施することだろう。■

 

Russia's Nakhimov Battlecruiser significantly modernizes its weapons

KRIS OSBORN WARRIOR MAVEN

UPDATED:JUL 26, 2021ORIGINAL:JUL 26, 2021

-- Kris Osborn is the Managing Editor of Warrior Maven and The Defense Editor of The National Interest --

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master’s Degree in Comparative Literature from Columbia University.

 


動き出した米空軍の「つなぎ給油機」(旧KC-Y)調達、ふたたびA330MRTTとKC-46がし烈な戦いになるという皮肉な展開へ

 

 

Michigan Air National Guard KC-135T

Credit: Photo by Munnaf Joarder

 

空軍がつなぎ給油機Bridge Tanker調達で初の情報開示請求(RFI)を7月19日に公告した。

 

つなぎ給油機事業とはこれまでKC-Yと呼ばれてきたもので、140機から160機調達し、供用中のボーイングKC-135、マクダネルダグラスKC-10合計479機に交代させる。「つなぎ」とはKC-Xとして2011年に選定されたボーイングKC-46AとKC-Zとなる2030年代中ごろを想定した高性能給油機調達の中間ということだ。

 

つなぎ給油機事業では情報開示段階だが、KC-X調達で展開した政治的に微妙な状態が繰り返される状況がすでに生まれており、ボーイングはKC-46A改修型を、ロッキード・マーティン/エアバスチームはA330多任務給油輸送型を提示する動きだ。

 

今回のRFIではKC-X時と同様の契約となり、同時に「後続要求内容」が今後追加されるとあり、その内容は今後詰める。

 

空軍としてはKC-X事業でボーイングが179号機となるKC-46A納入を2029年度に完了するのを邪魔しない契約交付の時期でつなぎ給油機導入を決めたいとする。

 

ボーイングは供用中機材メーカーとして明暗とりまぜた履歴を有する。完全運用機材となるKC-46Aは2024年にならないと現れない。固定価格契約により空軍はボーイングが50億ドルに上るとする開発製造段階中に発生した費用超過分の負担を免れている。その反面、ボーイングは自社費用負担による遠隔画像システム2.0アップグレードによりKC-46Aは最高水準の技術を応用しており、自律型給油能力が次の目標だとする。

 

これに対しA330MRTTはそこまでに遅延を発生させず、費用超過もボーイングよりはるかに低いまま、軒並み各国から受注しており、日本及びイスラエルのみが例外だ。ただし、ロッキード/エアバスは民生耐空証明要求に合致する形でA330MRTTの軍用給油能力の認証を受ける必要があり、この作業が高価かつ複雑な工程になることはC-130Jはじめ数機種で実証ずみだ。

 

今回のRFIでは技術成熟度が空軍の関心事だ。「どんな『新型』技術が採用されているか。新技術/システムへの対応度は、新技術等の完全稼働に必要となる技術開発の度合いは」との問いが見られる。

 

RFIでは給油機を今後は通信中継機材にも投入しようという空軍の意図が見られる。「提案機材で指揮統制(C2)ならびに空中戦闘管理システム(ABMS)の実施がどこまで見込まれるか」とあり、別の質問事項ではさらに詳しく「提案機材は第五世代戦闘機のリアルタイムデータ送信中継を別の第五世代、第四世代戦闘機爆撃機にどこまで対応できるか」とも訪ねている。■


この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


USAF Begins Data-Gathering Phase For Bridge Tanker


Steve Trimble July 20, 2021


2021年7月27日火曜日

台湾戦シミュレーションで米軍が敗北。そこで登場した新たな戦闘構想とは---中国との対戦に備え着々と準備する米国の動きに注目。

U.S. Air Force Capt. Theodore Bertsch makes radio communications inside the Joint Terminal Attack Controller battlefield dome simulator on Einsiedlerhof Air Station, Germany, June 23, 2021.

ドイツのアインジードルホフ航空基地の合同ターミナ攻撃統制シミュレーション施設で無線交信の確立を図る米空軍大尉June 23, 2021. CAPT. DANIEL DE LA FE

 

台湾を想定した机上演習で米軍はネットワークアクセスをほぼ瞬時に失った。ハイテン大将は四点を指示し現状の変革を図る。


年10月の机上演習で米軍が無残な敗北を喫し、統合参謀本部副議長ジョン・ハイテン大将は長年にわたる米軍の合同運用方針を捨てるべき時が来たと確信した。

 

「誇張でなく、悲惨な負け方となった。強力なレッドチームは20年にわたる米軍の戦闘方法を勉強しており、こちらに一杯食わせた。こちらの出方をあらかじめ熟知していた」とハイテン大将は軍事装備の近代化を加速させようと全国国防産業協会が発足させた新技術研究所のでこう発言した。

 

ペンタゴンはこの机上演習の名称を明らかにしていないが、国防関係者によればシナリオには台湾をめぐ戦闘が入っていた。重要な教訓は艦艇、航空機、その他部隊を集結させると格好の標的になる。

 

「戦闘でも生存でも集合させることを旨としてきた。だが極超音速ミサイル、長距離火砲があらゆる方向から飛来する今日では、部隊を集合させて所在を示せば極めて脆弱になる」(ハイテン大将)

 

もっと厳しく言えば、ブルーチームはネットワーク接続を即座に失った。

 

「情報面での優位性を目指しつつ、各部隊でまんべんなく情報を利用できるようにしている。湾岸戦争の第一回目から20年にわたり、中国ロシアはこちらの動きを逐一観察してきた」「開戦直後に情報が利用できなくなったらどうなるか。これが今直面している大問題だ」とハイテン大将は述べた。

 

これに呼応して統合参謀本部は昨年10月に米軍の戦闘方法を一新し、これまでと異なる作戦構想を「拡大展開」“Expanded Maneuver” として2030年までに実現することとした。

 

今月上旬にハイテン大将は各軍に以下四点を指示した。今回ハイテンはそれぞれについて触れ、「機能戦」“functional battles”の概要を明らかにした

 

戦闘下の補給活動 前線に燃料補給品を送り届ける新方法を確立する。米輸送本部は空軍とロケットや宇宙軌道を利用して大型貨物宇宙船での戦場補給を実現をめざす。

 

前線補給ロケットの想像図

 

合同火力効果 「火力効果を大量に集合させるが、物理的にまとめなる必要はない」とハイテンは述べている。「複数ドメインでの仮想集合とする。単一の指揮命令系統で火力を集中させる。これで部隊集合を避け、生存性が高まる」とし、火力集中コンセプトは「野心的かつ信じられないほど実施が困難」という。だからこそ実現策を真剣に考える必要があると同大将は付け加えた。

 

Joint Fires構想の図

 

JADC2* ペンタゴンはすべてを接続しようとしており、ハッカーの妨害を受けないネットワーク多数が必要だとハイテンは説明。「目標は戦闘クラウドに情報すべてを置き、いつでもどこからでもアクセス可能とすることだ」とし、合同火力効果と同様にデータは一か所に格納し敵の手が及ばないようになる。

*Joint All-Domain Command and Control (JADC2)

 

情報面の優位性 以上三点を統合するとここにたどり着くとハイテンは説明した。「想定通りに進めば、米国や同盟国は情報面で優位性をどんな相手にも発揮できる」

 

米軍は中東での拠点を再整備しながら、中国との対戦への準備を進めており、今回の新作戦構想はこの中で姿をあらわしてきた。7月26日にジョー・バイデン大統領から米軍はイラクでの戦闘任務を今年末までに終了するとの発表が出た。その二カ月前にバイデン大統領はアフガニスタンからの完全撤退を公表していた。

 

「アフガニスタンの次はイラクだ」「中東の脅威に目をつぶることはできないが、これまでと違う形で中東の脅威に対応していく。拠点は縮小する。これで中国やロシアの脅威に対応するべく部隊を増強する余裕ができる」(ハイテン)■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。

 

‘It Failed Miserably’: After Wargaming Loss, Joint Chiefs Are Overhauling How the US Military Will Fight

BY TARA COPP

SENIOR PENTAGON REPORTER, DEFENSE ONE

JULY 26, 2021 04:48 PM ET


 

歴史に残らなかった機体23 リバプリックF-103は米大陸に向かうソ連爆撃機を迎撃する、ラムジェット併用の超音速機になるはずだった....

 

歴史に残らなかった機体23 リパブリックF-103はもはやミサイルといってよいソ連爆撃機迎撃用の直線番長になっていたはず....

空軍がF-103を実際に配備していたら、超音速の無駄装備に終わっていたのは間違いない。

1954迎撃機の名称は同年の実戦配備を想定していたためで、空軍は提案9通を得てうち三案を初期開発に採択したのだが...

 

ICBMが出現する前の1950年代にはワシントンやモスクワへの核攻撃手段は高高度を飛行する爆撃機だった。

 

当時の米戦闘機はF-86セイバーを含め、対応には速力不足が顕著だった。そこで、1949年に米空軍は高高度超音速迎撃機の要求を公示し、高高度を飛ぶソ連の原爆爆撃機を爆弾投下前に排除する構想とした。

 

1954迎撃機と命名されたプロジェクトは同年の実戦化を想定し、空軍には提案が9社から届き、うち三案を選定し初期開発に回した。コンヴェアからはその後F-102デルタダガーとなる構想、ロッキードはその後F-104スターファイターとなった構想、リパブリックエアクラフトはAP-57を提出し、これがXF-103となった。このうちXF-103が最も先端的な内容だった。リパブリックは時速2,600マイルつまり音速の三倍速を高度80千フィートで実現するとした。1950年代初期には亜音速F-86やMiG-15が時速数百マイルで朝鮮上空での空戦を繰り広げていたが、XF-103はロケットといったほうが適当な存在だった。

 

設計図面は巡航ミサイルのようだった。高速を稼ぐべくリパブリックは複合推進手段を考案した。ライトXJ-67ターボジェットで離陸し、通常の飛行時に使う想定だった。

 

ソ連のバジャー、ベア、バイソンの各爆撃機に向かうXF-103で加速が必要となればラムジェットを稼働させる構想だった。ラムジェットは基本的に機体前方から空気を取り入れ燃料を混合し、混合物を後部に排出する。比較的単純な構造だが効果を得るにはマッハ1以上の速力となっていることが必要で空気の圧縮率が高くないとラムジェットに効果が生まれないためだ。XF-103のターボジェットで十分な速力を確保してからラムジェットを始動するはずだった。

 

XF-103は長距離レーダー、GAR-3ファルコン赤外線またはレーダー誘導空対空ミサイル6本、さらに無誘導マイティマウス2.75インチ空対空ロケット弾36発を搭載する予定だった。マイティマウスロケット弾はよい選択だった。というの空軍初の実用空対空誘導ミサイルたるファルコンはベトナム戦で実用に耐えない性能が判明し、54本発射して命中はわずか5本だった。XF-103は機関銃を搭載せず、同様に機関銃非搭載の他機がベトナムで後悔することになったが、1950年代当時の火器管制レーダーではマッハ3飛行時の機銃発射に対応できなかった。

 

XF-103の機外脱出装備は独特だった。コックピット与圧を失えば、シート下からシールドが出てパイロットを与圧ポッドに持ち上げる。パイロットは潜望鏡を使い機体を制御する。機外脱出が必要となった場合にはポッドをレールで機体下へ移動させ、放出する。

 

ただし、XF-103はモックアップから先に進めなかった。「XF-103は当時の技術水準より相当先をめざすあまり、1954迎撃機としてはリスクが高すぎた」と航空ライターのジョー・バウアーが述べている。競合のコンベアF-102があらゆる点で実用的とわかると空軍はXF-103への関心を失った。さらに遅延とコスト超過が加わりXF-103は試作機一機のみに縮小された。ライトXJ67エンジンは遅延したあげく完成しなかった。代替策でJ65ターボジェットを選定しようとしたが非現実的と判明した。空軍は1957年8月21日にタオルを投げXF-103プロジェクトは完全終了した。

 

F-103が米空軍へ実際に配備されていたら、超音速のゴミとなっていたはずだ。ソ連の大陸間爆撃機多数が米本土を空襲する事態は杞憂に終わり、1960年代に入るとソ連はICBM整備を重点的に行っていることがあきらかになった。迎撃対象の爆撃機が多数ないことが明らかになり、F-103の出番はなくなっていたはずで、ましてベトナム上空のドッグファイトでは全く無用の装備になっていただろう。

 

XF-103の設計には目を引くものがあったが、設計板上から先に進めなかった。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


XF-103: The American Super-Plane That Never Was

by Michael Peck

July 20, 2021  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: United StatesFightersDefenseTechnologyAir PowerHistoryMilitary

Had the U.S. Air Force actually fielded an F-103, it would probably have been a supersonic waste.

 

This article first appeared several years ago.

Image: Flickr.


2021年7月26日月曜日

クイーンエリザベスCSGが南シナ海へ移動中。途中でインド、タイ、マレーシアの各国と演習を展開。では海上自衛隊との演習はどんな形になるのか大いに期待。

 


マレーシア王立海軍フリゲート艦KDレキウ(FFG30)、オランダ王立海軍フリゲート艦HNLMSエヴァーツェン(F805)が英海軍空母クイーンエリザベス(R08)とマラッカ海峡でPassex演習を2021年7月25日に展開した。Malaysian Royal Navy Photo

 

 

イーンエリザベス空母打撃群が南シナ海に入ろうとしており、HMSクイーンエリザベス(R08)が先遣隊の後を追い移動中だ。同打撃群はインド海軍とのコンカン演習Exercise Konkanを7月21日22日にわたりベンガル湾で展開した。

 

英海軍空母打撃群CSG21にはその他タイプ23対潜フリゲート艦HMSリッチモンド(F239)、HMSケント(F78)の二艦、タイプ45誘導ミサイル駆逐艦HMSディフェンダー(D36)、艦隊補給艦RFAフォートヴィクトリア(A387)、RFAタイドスプリング(A136)、米駆逐艦USSサリバンズ(DDG-68)、オランダ海軍フリゲート艦HNLMSエヴァーツェン(F805)、原子力攻撃型潜水艦HMSアートフル(S121)、海兵隊戦闘攻撃飛行隊(VMFA)211が英空軍617飛行隊「ダムバスターズ」で構成する。

 

7月25日午前現在で自動反応システムデータではディフェンダーがブルネイのムアラ海軍基地に寄港中で、タイドスプリングはシンガポールを出港し南シナ海に向かっていた。両艦は24日にシンガポールを通過し、タイドスプリングは同日シンガポールに寄港し、補給品を積み込んでおり、ディフェンダーはブルネイに移動した。

 

一方でリッチモンドはPASSEX演習を24日にアンダマン海でタイ王国海軍フリゲート艦HTMSクラブリ(457)と実施していた。これと別にクイーンエリザベス及び残り各艦は翌25日にマラッカ海峡でマレーシア王国海軍のフリゲート艦二隻KDレキウ(FFG30)、KDジェバット(FFG29)とPASSEX演習を展開した。マレーシア両艦は英国ヤーロウシップビルダーズ(現BAEシステムズマリタイム)が建造した。AISデータ上ではフォートヴィクトリアはマラッカ海峡を移動しケント、サリバンズ、エヴァーツェン、クイーンエリザベスを先行していた。記事執筆時点で各艦はマラッカ市街に近づいていた。

 

その他HMSアートフルは25日昼間にシンガポール海峡を通過し南シナ海へ移動した。

 

クイーンエリザベスはシンガポールに寄港するとみられ、米国防長官ロイド・オースティンがちょうど同国を訪問中である。オースティン長官は27日夕に第40回国際戦略研究所のフラートン講演を行うが、シンガポール訪問中にCSG21を訪ねるかは不明だ。

 

今のところ中国からCSG21について声明文は発表されていないが、CSG21各艦は南シナ海で演習を展開し、同地区での中国拠点に接近するとみられ、その場合は中国から即座に何らかの声明が出てくるはずだ。

 

CSG21の英海軍艦艇は帰路の途中で五か国防衛体制(FPDA)によるバーサマ・ゴールドBersama Gold演習に加わる予定で、今年がFPDAの50周年に当たることからこの名前がついている。五か国とはオーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポールと英国。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


UK Carrier HMS Queen Elizabeth Now on the Edge of the South China Sea - USNI News

By: Dzirhan Mahadzir

July 25, 2021 8:08 PM


アジア訪問前に国防長官がエリア51を訪問した模様。極秘事業で何らかの大きな進展があったのか。

 E-4B Lands at Travis

60TH AIR MOBILITY WING PUBLIC AF—PUBLIC DOMAIN

 

 

めて異例な動きだった。米空軍のE-4Bナイトウォッチ別名国家空中作戦センター(NAOC)機がトノパ試験施設(TTR)に着陸した。ここは米国の極秘航空機運用拠点として有名な地点で付近にエリア51がある。謎に満ちたフライトがなぜ行われたのかは不明だが、ロイド・J・オースティンIII国防長官と関係がありそうだ。

 

E-4BのTTR到着はオープンソースの飛行データウェブサイトADS-B Exchangeで判明し、機体番号74-0787の同機はTITAN25のコールサイン(国防長官の搭乗機)で到着していた。

 

「審判の日の機体」と呼ばれるE-4Bは空軍に四機あり、ボーイング747を改装し堅牢かつ生存性の高い空中指揮機として国家指揮権限官(NCA)たる合衆国大統領を乗せ、核攻撃命令を下す役目が知られている。同機には別の任務もあり、大規模軍事作戦の指揮統制や、自然災害含む大規模緊急事態時の対応もある。またナイトウォッチ各機は国防長官の外国訪問時にも使われる。E-4Bは国家機能存続のための重要な手段でもある。

 

FLIGHTAWARE

E-4Bはアンドリュース空軍基地からTTRへ移動した。


ADS-B EXCHANGE

E-4B 74-0787がコールサインTITAN25で TTRへ降下を開始した

 

 

またガルフストリームVの空軍要人輸送機C-37Aの一機がTTRにE-4到着の一時間前に着陸しており、着陸前にトランスポンダーを切っておりフライトの最終状況は把握できない。

 

ADS-B EXCHANGE

C-37A 97-0401 はあきらかにTTRに向かっていた

 

国防長官のアジア三か国訪問を念頭にすると長官はTTRへ寄ってから最初の訪問先シンガポールに出発したようだ。

 

レッドフラッグ演習がネリス空軍基地(ネヴァダ)で展開中であり、国防長官が近隣のTTRへ立ち寄ったのか。レッドフラッグ21-3ではF-117ナイトホーク隊をアグレッサーに使いネヴァダ試験訓練場(NTTR)を舞台にしている。

 

国防長官の海外訪問では随行記者団がE-4Bに同乗するのが通例で、極秘施設TTRへの到着にも同行していてもTTRの厳重な保安体制を考えれば窓のシェードを降ろしたまま機内待機を命じられていたはずだ。

 

GOOGLE EARTH

トノパ試験場空港は高度保安体制が敷かれている。

 

 

広大なネヴァダ試験訓練場にはエナジー省の原子力試験施設やエリア51含む立ち入り禁止地帯がある。TTRもそのひとつで、F-117が1980年代には極秘運用され、今日でも飛行を続けている。冷戦時にはソ連製戦闘機各種を極秘テストしたほか敵機役として米国など西側戦闘機との模擬空戦を展開した。今日では同施設は海外装備品研究(FME)に使われているほか、その他極秘事業を展開しており、高度無人機に関連する技術や特殊作戦能力の開発もその例だ。エリア51は高度極秘事業が開発段階から準運用段階に移行する場所でもある。

 

これまでも国防長官がNTTR内の施設を突如訪問し次世代航空戦闘能力の開発状況を視察したことはあったが、トノパ訪問しかもE-4Bに搭乗しての訪問は初めてだ。

 

別の可能性はE-4BがTTRへ国防長官を乗せずに到着したことだ。いずれにせよ、同機は数時間後にネヴァダ施設を離陸している。同機はアラスカに向かい、アジア歴訪の途上であることを示していた。

 

FLIGHTAWARE

TITAN25がTTRを離陸した

 

 

再度になるが、E-4Bがトノパに到着したこと自体が奇妙だが、アジア訪問を前に国防長官を運んだことはもっと奇妙だ。解釈としては何らかの重要事業が大きな成果をあげて長官自らが視察したのかもしれず、これが真実なら今後その内容があきらかになるはずだ。

 

もう一つの可能性は別のVIPが同機に搭乗していたか、E-4BとC-37をともに同基地に展開する必要があったのだろう。

 

追加情報

確認できた。ロイド・オースティン長官は同機に搭乗していた。また、C-37が長官をエリア51へ運んだ可能性が高い。TTRに6時間というのは長い。C-37はエリア51まで60マイルの距離をこっそり飛び、長官は現地で視察したのだろう。時間は十分あった。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


E-4B “Doomsday Plane” Just Made A Highly Unusual Visit To Secretive Tonopah Test Range Airport

Seldom, if ever, do E-4Bs visit Tonopah Test Range Airport in Nevada and, in this case, the Secretary of Defense might have been onboard.

BY THOMAS NEWDICK AND TYLER ROGOWAY JULY 23, 2021