2023年2月25日土曜日

ウクライナ上空の膠着状況から何を読み取るべきか----航空戦力の意味を再考しよう

 


クライナ上空は、まるで第一次世界大戦の「ソンムの戦い」の空中戦版のようだ。キーウ上空での当初の熱狂と対照的に、双方とも相手領空に深く侵入しようとはしていない。フランスとドイツの塹壕戦さながらで侵入の試みは、地対空ミサイルと防御戦闘機で自殺行為となる。その結果、空中は無人地帯と化している。双方とも消耗品のプラットフォームと弾薬を使うスタンドオフ攻撃を実行し、前線で超低空で狙い撃ちしているが、どちらも空中で決定的な戦闘力を発揮できていない。


 しかし、両者が努力していないわけではない。空での膠着状態は、ロシアとウクライナ双方が積極的な行動を続けることで維持されている。ウクライナ軍は西側諸国の空軍機材を求め続け、ロシアはイランの無人偵察機を新たに配備している。キーウへの最近の支援では防空システムが目立ち、ロシアは長距離兵器の豊富な備蓄に頼っている。要するに、動きが比較的少ないのは、新しい取り組みが行われるたびに相手が素早く対抗してくるため、双方が空中戦を重視していることを示している。

 どちらかが空中で突破口を開けば、どのような結果になるかは想像に難くない。キーウへの西側からの重要な援助は、東ヨーロッパからの道路や鉄道で到着する。ロシア空軍力が輸送を妨害すれば、ウクライナ地上軍は戦線の維持が難しくなり、ましてや攻勢をかけることはできなくなる。また、ロシアが制空権を握れば、アレッポでロシア軍爆撃機が行ったように、無尽蔵にある無誘導兵器でウクライナ都市を破壊できる。逆に、ウクライナ攻撃機がロシアの補給線を死の高速道路に変えれば、ロシアの砲兵隊や機甲隊は燃料や弾薬を失い崩壊する。このように、ウクライナ空軍は、10対で数でも技術でも劣っているにもかかわらず、恐るべき勝負に毎日直面している。空戦はどちらが勝ってもおかしくないが、どちらも負けるわけにはいかないのだ。

 進行中の紛争の不完全な情報から技術や戦術を断言するのは賢明ではないが、1年にわたる戦闘は、将来の西側の概念と投資に役立ちそうな重要原則を示唆している。第一に、膠着状態は非常に重要な指標だ。空からウクライナを支援することは、地上での成功の前提条件であることに変わりはない。第2に、航空作戦は空域に限定されず、すべての領域を巻き込む。次の戦いに勝つためには、米軍と同盟軍は領域を超えたデータリンクと相互運用性に投資するだけでなく、領域の境界を越えた関係を構築するための共同訓練に投資すべきだ。最後に、攻撃は必ずしも航空戦力の本質ではなく、防御の力学も重要だ。また、安価な短距離プラットフォームの大量配備が良い手段となる。


膠着状態は戦略的重要性の指標

ウクライナは当初から、ロシアから領空を奪われぬよう、さまざまな手段を積極的に講じてきた。ロシア空軍の攻撃力を低下させることは、キーウ周辺での最初の逆転劇、東部での戦線維持、ハリコフでの躍進、そしてケルソン攻防戦に必要な条件であった。膠着状態を維持することは、ウクライナ軍の勇気と犠牲、そしてウクライナのパートナーの多大な努力と資源を消費する、コストのかかる取り組みである。

 ソンムの戦いに話を戻すと、第一次世界大戦を分析すれば、静的な塹壕線を戦略的重要性の欠如と混同することはないだろう。防衛線のネットワークを突破することの難しさが、この戦争の中心的な特徴だった。フランスとイギリスは戦車を、ドイツはストームトルーパー戦術を開発し、これらは第二次世界大戦で重要な役割を果たした。同様に、ウクライナも非常に巧妙な戦術を開発し、国際的なパートナーと協力して、高速対放射線ミサイルをMiG-29から発射させるという斬新な能力の組み合わせを実用化した。ロシアは、自国が保有する精巧な兵器を消費し、レガシー兵器の再利用で、これに対抗している。

 作戦設計の技術の一つは、どこで勝たなければならないか、どこで敵の勝利を防げばよいかを知ることである。空中の膠着状態には、米国とその同盟国は、最近の戦争で享受したような並外れた優勢は想定できない。したがって、米国はマハンとあわせコルベットの手段を使うことを学ぶべきだろう。つまり、制空権を握れないときにはその使用を拒否し、一方で決定的な窓のために制空権を握る方法を見出すことを学ぶのである。今後の紛争では、同盟国の空軍が必ずしも制空権を握る必要はなく、統合軍による決定的な行動を可能にするために、適切な時間と場所で優位性を確保すればよい。


 航空戦は空域以外でも展開する

真珠湾攻撃の勝利の後、日本の戦略家は自国軍が「勝利病」に侵されていることに気づいた。緒戦段階の成功が過信につながり、その結果、戦略家は必要な戦い方ではなく、自分たちが望む戦い方をするようになった。同様に、何十年にもわたり同盟国の航空優勢が疑問視されなかったため、航空領域は当然のものと考えがちだ。実際、米軍の記憶では、これまでの航空領域の戦力は、航空作戦で一方的に勝利し、その後、他の共同作戦を進めるために十分だった。しかし、オーバーマッチとは言わないまでも、少なくとも同等以上の力を持つ敵空軍を相手にする場合、こうした仮定は危険だ。連合国空軍は、空域に重点を置くべきだ。統合軍は、我々の成功を前提に構築されているからであるが、他領域も統合航空作戦に織り込むべきだ。

 航空作戦の成功の本質は、地上戦の限界を超え、敵の戦争遂行能力の中枢に深く食い込む能力だ。しかし、それにはコストがかかるため、航空兵は効果の適用に質素でなければならない。そのため、航空兵は敵をシステムとして想定し、主要なノードを特定し、そのノードに効果を適用し、システムを無力化する。第2次世界大戦の燃料庫、ベトナムの橋、最近の紛争での即席爆発装置ネットワークなど、種類はさまざまだ。このような効果は、複数領域からもたらされる可能性があり、またそうでなければならまお。無人航空機や戦場の飛行士からの照準データに基づいて、トラックから対レーダー・ミサイルを発射しているイスラエル空軍がその好例である。

 ウクライナ軍は、複数領域を組み合わせることで、見事な航空作戦を展開している。空、宇宙、サイバースペースを駆使して、補給基地や地対空ミサイル基地などの敵の主要拠点を特定し、空と地上からの攻撃を組み合わせて、拠点を無力化している。システム中心型の標的戦略がなければ、ロシア火砲の膨大な量によって、ウクライナ陸上部隊の勝算は大きく損なわれていただろう。同様に、航空機と地対空砲火の組み合わせが、ウクライナの航空作戦に不可欠な防御的対空任務を構成している。ロシアがウクライナ沿岸に艦隊を出撃させる能力を保持していれば、巡航ミサイルの発射量はもっと多くなっていたはずだから、海上領域も重要な役割を担う。オール・ドメイン・アプローチで航空作戦を展開し、ウクライナは空域での不利を補い、「航空阻止」を達成したのだ。

 航空戦力のオールドメイン・アプローチには、先例がある。第二次世界大戦の北アフリカ戦線で、イギリス空軍は技術力・兵力ともに強力なドイツ空軍を前に厳しい立場に立たされた。特殊空挺部隊の前身は、敵の空中戦の強さを補うため、地中海沿岸の敵航空基地を秘密裏に急襲した。ドッグファイトで破壊されようが、地上での火災で破壊されようが、航空機が戦闘の要因にならないことに変わりはない。ドイツ軍の地上レーダーが連合軍の爆撃機部隊に多大な損失を与えていた頃、イギリスのコマンドーが1941年のブルネヴァル襲撃でレーダーを奪取、移送するという大胆な作戦をとった。この成功により、チャフ(窓)という効果的な対策が生まれ、多くの爆撃機乗組員の命が救われた。同じ原理が、60年後のタリバンとの最初の戦いで、連合軍特殊作戦部隊がB-52の乗組員に標的データを提供したときにも働いていた。

 米軍と同盟国の立案部門に重要な教訓は、全領域統合指揮統制の技術面でも、演習を通じた戦術面でも、相互運用性を積極的に追求することにある。ブラウン米空軍参謀総長が述べたように、米軍は領域と同盟の両方で「設計から統合」されなければならない。さらに同盟国は、航空作戦で勝つため航空領域の戦力を強化し、陸海軍による敵の深部戦闘力を阻止することに貢献する必要がある。


航空戦力の本質は必ずしも攻撃ではない

アメリカの歴史で、航空戦力はアウェイゲームであった。それは、アーノルド大将の「攻撃が航空戦力の本質である」という象徴的な言葉を説明してきた。しかし、アメリカの同盟国協力国は、常に同じ仮定ができない。その結果、航空軍が効果的に防御的な航空作戦も行えないと、アメリカは不利になる。ウクライナは必要に迫られて、航空作戦でほぼ防御的なアプローチをとっている。もし、飛行場や中央防空網のノードへ大量攻撃を試みていたら、受け入れがたいほどの損失を被っていただろう。その代わりに「腐食戦略」で、ロシアが空域を支配しようとする際に摩擦と抵抗を誘発させている。それにより、残忍ながら悲劇的なほど効果的なシリア戦略、すなわち無誘導「愚鈍」爆弾による民間インフラへの絨毯爆撃を防ぐことができた。このような戦術は、作戦上も人道的にも壊滅的な影響を与えていただろう。ロシアはスタンドオフ兵器で戦争法の重大な違反を犯し続けているが、巡航ミサイルは重力爆弾よりまだましである。したがって、ウクライナの防衛戦略は、特に戦力の相関関係を考慮すれば、成功していると判断せざるを得ない。

 ここでも歴史的な先例がある。バトル・オブ・ブリテンにおいて、英空軍は、敵を消耗させつつ、決定的な交戦を回避する驚くべき自制を保った。チェーンホームレーダーシステムの助けを借りて、イギリスのスピットファイアとハリケーンは高度を上げ、侵攻してくるドイツ編隊に一度だけダイビングパスを行い、離脱した。戦闘は接戦だったが、ドイツはイギリス空軍の撃滅から民間人を標的にすることに重点を移した。これは決定的なミスであった。この戦術を毎日、毎週繰り返し、イギリス空軍はドイツ空軍を作戦を継続できないところまで消耗させたのである。

 米国と同盟国が大西洋と太平洋の舞台で直面している脅威を見れば、防衛作戦が適している。台湾やバルト海の場合、同盟国協力国である小国は、より大きな隣国の侵略リスクに直面している。中国やロシアのような攻撃者がこれらの国の上空を支配しても、被侵攻国は1万フィート以下の空域を利用、競合、または支配して、かなりの効果を上げることができる。ウクライナのAerorozvidkaのような小型無人機は、射撃指示と重力弾薬の投下で大きな成功を収めており、攻撃者の動きを鈍らせたり、注意をそらしたりするのに有効だとが証明されている。さらに、このような状況では、統合防空システム、特殊作戦部隊、従来型の肩撃ちのミサイルも、恐るべき低空環境を作り出すために使用できる。

 結論として、航空作戦はこれまでのウクライナの成功に欠くことのできないものであった。連合軍の軍事立案部門や戦略家は、特に空中戦の動きがないように見えることと重要性がないことを混同して、間違った教訓を引き出してはならない。ウクライナ空軍と防空部隊は、全領域を活用した航空作戦の実施が可能であり、膠着状態となった価値を実証している。模範的な防衛航空作戦を展開することは、特に航空面で不利な立場にある同盟国協力国にケーススタディを提供してくれる。■

 

The Somme in the Sky: Lessons from the Russo-Ukrainian Air War

MICHAEL STEFANOVIC, ROBERT “CHUCK” NORRIS, CHRISTOPHE PIUBENI, AND DAVE BLAIR

FEBRUARY 9, 2023


Col. Michael Stefanovic is a U.S. Air Force civil engineer and explosive ordnance disposal technician. A graduate of the Blue Horizons Innovation program, he led explosive ordnance disposal teams in Iraq and currently serves as head of the Air Force Chief of Staff’s Strategic Studies Group.   

Group Capt. Robert “Chuck” Norris is the Royal Air Force exchange officer to the Air Force Chief of Staff’s Strategic Studies Group. A helicopter pilot and instructor with 4,500 flying hours, he also has extensive command and staff experience in the U. K. Joint Headquarters, the U. K. Ministry of Defence and NATO headquarters

Col. Christophe Piubeni is the French Air and Space Force exchange officer to the Air Force Chief of Staff’s Strategic Studies Group. An A400M pilot and instructor with more than 4,000 flying hours and 100 combat missions, he has extensive operational and command experience, as well as staff experience in procurement and capability development. He is the Strategic Studies Group Artificial Intelligence lead and a graduate from the U.K. Joint Staff College and the Massachusetts Institute of Technology Sloan Institute. He also holds a masters of arts in war studies from King’s College.

Lt. Col. Dave Blair is the innovation lead for the Air Force Chief of Staff’s Strategic Studies Group. He is an evaluator pilot with more than 2,000 hours in the MQ-1/9 and AC-130. A graduate of the U.S. Air Force Academy and the Harvard Kennedy School, he holds a Ph.D. in international relations from Georgetown University, where he teaches as an adjunct professor on the politics of defense innovation. 

The authors are all members of the Trilateral Strategic Initiative, which was created a decade ago to strengthen operational effectiveness by encouraging continued collaboration and exchanges between the Royal Air Force, the U.S. Air Force, and the French Air and Space Force. The views expressed are those of the authors and do not reflect the official guidance or position of the U.S. government, the Department of Defense, the U.S. Air Force, or the U.S. Space Force. The appearance of external hyperlinks does not constitute endorsement by the Department of Defense of the linked website for the information, products, or services contained therein.

Image: Wikimedia Commons


ウクライナ戦の最新状況 二年目に入りロシア戦死者14万名と言われる中、めぼしい戦果が生まれないロシアは焦っている

ウクライナ無人機の攻撃を受けるロシア軍戦車 Image Credit: YouTube/Ukrainian military.


クライナ戦争が1周年の節目を迎えようとしている。

 紛争開始から363日目、ドンバスでの戦闘は休むことなく続いている。

 ロシア軍は侵攻1周年を前にバフムートの攻略を試みているが、ほぼ不可能な状況だ。



ロシア軍の死傷者

 ロシア軍はウクライナで兵士を失い続けている。

ウクライナ国防省は、火曜日現在、ウクライナ軍がロシア軍を約144,440人(負傷者はその2倍から3倍)殺害したと発表している。

 破壊された装備品は以下の通り。戦闘機、攻撃機、爆撃機、輸送機299機、攻撃・輸送ヘリコプター287機、戦車3,326両、大砲2,338門、装甲人員輸送車・歩兵戦闘車6,562両、多連装ロケットシステム(MLRS)471基、ボート・カッター18隻、5, 210台の車両と燃料タンク、243台の対空砲台、2023台の戦術的無人航空機システム、226台の架橋車などの特殊装備プラットフォーム、4台の移動式イスカンダル弾道ミサイルシステム、ウクライナ防空が撃ち落とした873個の巡航ミサイルなどだ。


ウクライナにさらなる武器を

 バイデン米国大統領は、ウクライナを訪問し、同国への新たな安全保障支援策を発表した。

 今回の武器供与はウクライナ軍が受け取り済みの大砲の弾薬が主だ。

 一方、ウクライナは西側諸国数カ国分の主戦闘戦車の最初のロットの受け取りを待っている。ウクライナ軍は、Challenger 2、Leopard 1、Leopard 2、M1A2エイブラムズの各主戦闘戦車を受け取る予定である。


地上での戦い

 地上では、ロシア軍は攻勢作戦を続けている。東部では、ロシア軍はクレミナ郊外からウクライナ軍を押し返そうとしている。

 9月以来、ウクライナ軍はクレミナに到達し、そこからさらに東にある重要な物流拠点スヴァトヴを解放しようとしている。スヴァトヴは東部とドンバスのロシア軍への供給拠点であり、ウクライナ軍がここを占領すれば、ロシアの攻撃作戦を大きく挫くことができる。

 ロシア軍はドンバス地方のバフムート、ヴュレダー方面でも攻撃作戦を続けている。しかし、各攻撃は代償が高く、特に先陣を切るロシア軍第155旅団と第40海軍歩兵旅団は、「戦闘不能」と思われるほど高い死傷率を出していると、英軍情報部は指摘している。

 「ロシア軍は、侵攻記念日が近づくにつれ、政治的圧力を強めているようだ。ロシアは、現地の実態にかかわらず、記念日に合わせてバフムートを奪取したと主張する可能性が高い」と英情報部は最新情報の中で評価している。

 「ロシア軍の春攻勢が何も達成できなかった場合、ロシア指導部内の緊張は高まるだろう」と英軍情報部は付け加えた。

 ロシア国内の緊張は今に始まったことではない。

 悪名高い民間軍事会社ワグナー・グループは、ロシア国防省から十分な支援を受けていないとし、弾薬補給さえ十分でないなど、常に不満を口にしている。■


Putin The Desperate: 144,000 Dead In Ukraine And Nothing To Show For It?


ByStavros Atlamazoglou

https://www.19fortyfive.com/2023/02/putin-the-desperate-144000-dead-in-ukraine-and-nothing-to-show-for-it/


Expert Biography: A 19FortyFive Defense and National Security Columnist, Stavros Atlamazoglou is a seasoned defense journalist specializing in special operations, a Hellenic Army veteran (national service with the 575th Marine Battalion and Army HQ), and a Johns Hopkins University graduate. His work has been featured in Business Insider, Sandboxx, and SOFREP.


米連邦議会にウクライナへのF-16供与の声が高まってきた

 

An F-16 jet flies on October 22, 2020, in Spangdahlem, Germany. | Maja Hitij/Getty Images



戦闘機が 「今年のウクライナ領空支配の決め手となる」との主張が下院に出ている


党派議員グループが、ロシア侵攻に対する戦いが2年目に入ったウクライナにF-16戦闘機を送るよう、ジョー・バイデン大統領に圧力をかけている。

 下院議員5名は、POLITICOが入手したバイデンへの木曜日付書簡で、キーウが求めているが政府は同意していない最新のジェット機を「今年のウクライナ領空支配で決定的な影響を与える可能性がある」と主張した。

 「このような航空機の提供は、ウクライナ領空を守るために必要だ。特にロシアの新攻勢を考慮し、大規模な戦闘行為の増加が予想されるためだ」と議員らは書いている。

 書簡は、メイン州選出の民主党議員ジャレッド・ゴールデンJared Goldenが企画した。また、コロラド州のジェイソン・クロウ Jason Crow、ペンシルベニア州のクリッシー・ホーラハンChrissy Houlahan、に加え共和党ではテキサス州のトニー・ゴンザレスTony Gonzales、ウィスコンシン州のマイク・ギャラガーMike Gallagherが署名している。

 この書簡は、キーウに米国製戦闘機を与えるべきという議会からの最新の提案だ。また、両党のウクライナ支援支持者が、支援を縮小しようとする下院共和党の新会派を取り込もうとしているところでもある。

 議員たちは、ロッキード・マーチン製のF-16や同等の戦闘機があれば、米国や他の国々が提供する地上砲よりも高い能力をウクライナ軍に与えられると主張している。

 「F-16や同様の第4世代戦闘機は、ロシアの空対空ミサイルや無人機を狙う高機動力プラットフォームをウクライナに提供し、ロシア軍と交戦中のウクライナ地上軍を保護し、ロシア戦闘機と交戦し制空権を争うことができる」と議員連は主張している。

 議会での超党派の動きは、主戦闘戦車を前線に送り込むという米独の協調的な決定の後に出てきた。論争を経て、米国はエイブラムス戦車を送ることに合意し、ドイツはより早く戦場に投入されるレオパルド戦車を寄贈することになった。

 しかし、バイデンは先月、ウクライナにF-16を送ることを拒否するように見えたが、その後、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と話すと述べた。

 バイデンがF-16を送らない選択をしたとしても、アメリカ製の戦闘機を飛ばす他の西側諸国は、ウクライナに送ることができる。

 POLITICOによると、この動きは国防総省で活発化している。しかし、ウクライナには砲兵、防空、装甲の方がより必要だとの意見もある。

 米国製F-16は、1年前にロシアの侵攻が始まって以来、キーウの兵器希望リストに載っている。議員たちは、古いミグ戦闘機をウクライナに譲渡する東欧諸国にF-16を送るべきだとも言っている。この動きは超党派の支持を得たが、武器交換は実現しなかった。

 バイデンへの提案で議員たちは、ウクライナ軍パイロットを訓練するのに必要な時間を考えれば、F-16決定は「迅速になされなければならない」と主張している。

 しかし、彼らは、ウクライナ軍パイロット多数が、戦前から大規模演習で米軍から訓練を受けていることを指摘し、「ウクライナの軍事能力を強化し、この紛争を公正に終結させるための健全な戦略的投資だ」と主張している。■



Democrats, Republicans join up to urge Biden to send F-16s to Ukraine - POLITICO

By CONNOR O’BRIEN

02/17/2023 07:52 AM EST


2023年2月24日金曜日

2年目に入ったウクライナ戦の行方を大胆に予想する

 

Russia's T-90 tanks. Image Credit: Creative Commons.


シア・ウクライナ戦争の1年目が終わろうとしている。当時紛争が数週間以上続くと予想する向きはほとんどいなかったが、キーウやオデーサへの攻勢が挫折すると、ロシアの迅速かつ決定的な勝利への期待は急速に薄れた。ロシア軍が挫折し崩壊するというウクライナの期待も、急速動員で戦線全体でひどく傷ついた部隊を補うロシアの動きより同様に打ち砕かれた。

 この数ヶ月、ロシアもウクライナも(そして西側諸国のウクライナ支持者も)諦める気配がないため、戦争はしばらく続くと分析されている。その一方で、紛争は一定のリズムを刻んでいる。

 2年目はどうなるのだろうか。


ロシアの攻勢

NATOのオブザーバーは、予想されるロシアの春季攻勢はすでに始まっていると見ている。

 ロシアはドンバスで、連動した進攻軸で前進しており、あるところでは大きな成功を収めている。

 この地道な攻勢は、キーウを脅かし、ウクライナを戦争から追い出すような、大きな突破口を開く可能性は低いと思われる。ロシア軍は1年前に比べ、最新鋭の装備や経験豊富な部隊の多くを戦場で失い、多くの点で物足りなさを感じている。

 しかし、ウクライナ軍に深刻な死傷者を出し、貴重な弾薬を使用させるなど、ダメージを与えていることは間違いない。

 ロシアが紛争を拡大する見込みは厳しいと思われる。ケルソン奪還で、ロシアが黒海沿岸で攻勢をかける可能性はなくなった。ウクライナに対するロシアのミサイル攻撃は損害を与えたが、ウクライナの士気には大きな打撃を与えていないようだ。

 最後に、ロシアはベラルーシからの作戦をウクライナの西部および北部地区に対する脅威とする用意はないようだ。


ウクライナの反攻

 ロシアが成功しても失敗しても、ウクライナ側には反撃するチャンスがあり、兵力、弾薬、車両などロシア軍全体の戦力を消耗させることができる。

 ロシアの攻勢が頂点に達した段階で、ウクライナ軍はロシアの前線を突破し、昨年失った領土の一部を奪還するための作戦を準備することが予想される。

 ロシア側と対照的に、ウクライナは1年前よりも高性能な軍隊を編成して臨むだろう。欧米からの武器供与により、ウクライナ軍の技術的・物質的基盤が向上したことは間違いないが、訓練や西側兵器の統合については深刻な問題が残ったままだ。

 ロシアの防衛力は数カ月前より手ごわくなっており、ウクライナの能力を試す深刻な試練となる。


外国勢の介入

この紛争の残りの大部分は外国の介入に依存することになるが、外国の介入は戦場での結果を条件とするものだ。

 ウクライナの強さとウクライナの弱さのどちらが海外からの支援に影響を与えるかは、一概に言えない。ロシアの攻勢が成功の兆しを見せれば、欧米諸国はキーウに迅速に兵器を追加輸送する必要に迫られるかもしれない。ウクライナの反攻でかなりの領土が奪還されれば、同様にヴォロドミル・ゼレンスキー大統領に「ウクライナは最後まで支援が必要だ」と主張する材料を提供することになるかもしれない。最大の論点は、戦車の移送、長距離ミサイルの移送、そしてもちろん西側諸国の最新鋭戦闘機の移送であろう。

 しかし、欧米の態度だけが問題ではない。今、中国の戦争介入の問題が浮上し、アメリカのトニー・ブリンケン国務長官はロシアへの武器供与を中国に警告している。中国がロシア支援を強化すれば、ロシアの戦況は大きく改善されるだろうが、支援を戦闘に組み込むのは複雑なこととなる。

 同様に、ロシアは、イラン、北朝鮮、ベラルーシの協力を積極的に促すことができる。イランは地理的な機会を提供し、北朝鮮は物質的な支援を提供する。

 

終戦交渉の行方

ロシアもウクライナも、戦争に勝つ見込みはない。ロシアがキーウを占領しウクライナ政府を破壊する可能性は低く、ウクライナもロシア軍を破壊したり占領地から追い出したりする可能性は低い。しかし、戦場と交渉の間には、一般に考えられているほど大きな壁はないことを理解することが重要だ。

 領土を奪い、大隊戦術群を破壊することは、すべて外交上の口実を意味する。ウクライナがスネーク島を奪還したことは、キーウが和平交渉で戦略的な領土の塊を取り返す必要がないことを意味する。

 しかし、だからといって、交渉が今年中に実現するかというと、そうではない。おそらくそうではないだろう。

 軍事的な状況は年内に進展するだろうが、交渉の席でどちらかが決定的な優位に立つということは、今のところなさそうだ。キーウとモスクワは、世界のオブザーバーに「理性」を示すために会談するかもしれないが、どちらも真剣に譲歩する用意はないようだ。

 これからの1年間、我々は2人の巨大なボクサーのパンチとカウンターパンチを見ることになる。巨体でパワフルなロシアは、ウクライナに先制攻撃を仕掛け、小型で素早いウクライナは、ロシアがバランスを崩すか見守ることになる。戦場での結果が、外国の戦争介入のあり方や程度を決めることになり、最終的には交渉による和平の土台を築くかもしれない。■


War In Ukraine: What Happens In Year Two?

ByRobert Farley

https://www.19fortyfive.com/2023/02/war-in-ukraine-what-happens-in-year-two/



Author Expertise and Experience 

A 19FortyFive Contributing Editor, Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005. He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph. D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020), and most recently Waging War with Gold: National Security and the Finance Domain Across the Ages (Lynne Rienner, 2023). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns, and Money.

In this article:China, featured, NATO, Putin, Russia, Russian Military


2023年2月23日木曜日

ウクライナパイロットのF-16訓練に必要な期間、コストとは

 


This Is How Long It Would Really Take Ukraine’s Pilots To Convert To F-16s

米国はウクライナパイロットを数ヶ月で訓練できる。. Jamie Hunter


F-16操縦の教習は、ウクライナ軍パイロットが同機で戦闘できるようになるため必要な事項の一面にすぎない

クライナ空軍の能力を向上させるため西側の戦闘機を寄贈するとの申し出はまだない。しかし、利用可能なタイプのうち、先陣を切っているのは、F-16のようだ。その主な理由は、入手のしやすさ、サポートのしやすさ、広大な物流インフラ、パイロット訓練の能力、適応性の高いマルチロール機能などだ。しかし、F-16の操縦だけでなく、戦闘訓練をパイロットに受けさせるのは、実現可能なのか。

この話題では、不正確な主張と大胆だが空虚な発言がいっぱいだが、現実を見てみよう。

スピードの必要性

ウクライナ戦争が2年目に入る中、ウクライナ空軍に欧米の戦闘機を供給する良う求める声が絶えない。ウクライナの勇敢な戦闘機パイロットは、MiG-29、Su-27、Su-24、Su-25など戦闘機や、AGM-88高速対レーダーミサイル(HARM)など西側兵器を使い、少ない機体で成果を上げ、日々活動を続けている。しかし、航空領域ではロシアが数的・技術的に優位を保っている。

2022年3月までさかのぼれば、ウクライナ指導部のトップは、欧米戦闘機を求め嘆願してきた。今日に至って、欧米から数多くの最新兵器がウクライナに流入しているが、今日に至るまで、戦闘機の選択肢は一つも実行されていない。ソ連時代の戦闘機も西側戦闘機も追加提供されていない。

米国はウクライナ人パイロットを既存のF-16訓練パイプラインに組み込むことができる Jamie Hunter

ウクライナのパイロットと一部の軍幹部は、中古F-16をキーウに供給するのが望ましいと明言している。ウクライナのMiG-29パイロット「ジュース」は2022年12月、The War Zoneに対し、「F-16の場合、訓練プログラム、電子対策、エンジン、あらゆるもので選択肢がある、まるでレゴのようだ」と語った。「技術的な能力は非常に近い。一般的に、F-16が航空機そのものとして優れているとは言わないが、能力、入手可能性、手頃な価格、さらに最も重要となる持続性を考えれば、ウクライナにとって最も現実的な選択だろう」。

ウクライナ空軍司令部の首席報道官ユーリ・イグナート大佐は、ロシア空軍力に対して形勢を逆転させるためには、少なくとも最初は12機の飛行隊2個と予備機があれば十分だと述べている。

2023年1月24日、イグナートはこう語っていた。「ウクライナに提供される航空機の種類と、それに対応する(人材の)訓練条件はすでに決定されている」。ウクライナはすでに、西側戦闘機を受け入れるために、飛行場の改良に取り組んでいるとさえ言われている。

先月、バイデン大統領がウクライナへのF-16戦闘機の譲渡に断固として「ノー」としたにもかかわらず、この可能性は勢いを増しているようだ。アメリカ政府が自らF-16を寄贈することはなくても、オランダのような使用国の決断を承認することは可能だろう。また、もちろんF-16と他の機種を一緒に提供することも可能だが、1機種に集約することが、長い目で見れば訓練や維持のため非常に有効だ。

では、最終的にアメリカ政府がウクライナへF-16の譲渡を認可した場合、その内容はどのようなるだろうか。

ヴァイパードライバーの養成

機材供給が決定されれば、F-16が理想的なソリューションになるように思われる。ヴァイパーはヨーロッパでロジスティクスが確立されており、東のウクライナまで拡大するのは大きな飛躍ではない。また、F-16の中古機体も、その数は増えている。とはいえ、政治的な意思があれば、調達はそれほど難しくはないだろう。

イグナートは最近、ウクライナには少なくとも十分な英語力を持つパイロットと整備士30人がおり、F-16契約が合意できれば、訓練のため渡米の準備が整っているとAir Force Magazineに語っている。

「離着陸やA地点からB地点への飛行など第一段階を学ぶのに数週間かかるが、戦闘方法やミサイルの使い方を学ぶには半年はかかるだろう」(イグナート)。

テキサス州サンアントニオ・ラックランド統合基地の第149戦闘航空団がウクライナ軍パイロットの訓練場所になる可能性がある。 U.S. Air National Guard

F-16は比較的安全に運用しやすいので、ウクライナ空軍が越えるべき壁は高くない。あるF-16パイロットはThe War Zoneに、「不慣れな飛行士がF-16でそれなりに安全に飛行することが数ヶ月で可能になる」と語っている。システムも操作しやすく、操縦も簡単で、直感的に学べる。「ヴァイパーは、経験豊富な戦闘機パイロットにとって、純粋な飛行という観点だけとれば、どの機種からも簡単に移行できる」。「電源を入れ、スロットルを押し上げれば、あとは飛ぶだけだ。飛行制御システムが大きなミスを防いでくれるので、本当にやろうとしない限り、ジェット機が過剰なストレスを与えることはない」。

F-16基本教程は、Bコースとも呼ばれ、通常、パイロット訓練を終えたばかりのパイロット用の9ヶ月のプロセスだ。Bコースに加え、正式な訓練ユニット(FTU)では、他の機種で経験を積んだパイロット用の移行コースも実施する(通常、Bコースよりもはるかに短い期間となる)。

Bコースで最初の4週間は、F-16のシステムや緊急時対処法などを学ぶアカデミックなコースだ。その後、計器飛行の基礎や緊急時対応などをシミュレーターで8回ほど体験した後、2人乗りF-16Dで実機飛行を4回行い、最初の単独飛行に臨む。

F-16のパイロット訓練は、ルーク基地やホロマン基地など、米国内の多くの場所で行われている  Jamie Hunter

次のフライトは、教官とのチェックライドに先立ち、計器飛行や緊急事態への対処の基準を満たす経験を積むためのものだ。この時点で、新米パイロットは全天候でF-16の操縦資格を得たとみなされ、暗視ゴーグル(NVG)を使う夜間飛行に移行する。

基本的な戦闘機操縦、空戦機動、戦術的迎撃などの空対空段階を経て、低空飛行、水上攻撃戦術などの空対地段階に入る。コースでは、移行期、空対空期、空対地期に分かれて、約60回のフライトをこなす。

経験豊富なウクライナの戦闘機パイロットにとって、F-16への機種転換は、TXとして知られる典型的なFTU移行転換コースに類似する可能性がある。これは従来、機種を変更する搭乗員や、複数型式の戦闘機に乗る必要のある上級将校に適用されてきた。欧米のシステムと標準操作手順(SOP)を取り入れた、カスタマイズされた移行コースは、フルクラムやフランカーを飛ばしてきた将来のウクライナのF-16パイロット用のシラバスになるかもしれない。

ジョイント・ヘルメット・マウント・キューイング・システムを装着したF-16パイロット。 Jamie Hunter

「欧米の戦闘機で500時間程度の経験を積んだパイロットで、F-16の操縦は未体験の場合(例えばホーネットから移行する場合)、休みなしで、週末も働いて、ヴァイパーを空対空と空対地で安全に使用するためすべてを学ぶのに69日間必要です」と、あるF-16教官はコメントしている。「これには、教習言語の英語が堪能であることが前提だ。69日間には、操縦と着陸を学ぶ飛行が6回ある。空対空は15回程度ですが、経験者であれば10回程度に抑えられます。空対地ミッションは6〜9回で、レーザー誘導爆弾(LGB)やGPS誘導の統合直接攻撃弾(JDAM)を使用する基本能力を身につけます。AIM-120AMRAAM(改良型中距離空対空ミサイル)のような複雑な兵器にすでに精通していることが前提ですが、大きな効果が得られるだろう」。

「また、210時間の講義と10~20回のシミュレーターイベントが必要です。1日2回のシミュレーターを10日間ぶっ続けでやることになる。つまり、69日間で、パイロットは戦術的な訓練環境で安全に航空機を使用できる可能性があるのですが、戦闘機となると話は別です」。

「Su-35やSu-27と戦闘を行うには、何年もの経験が必要です。新米には無理な話です。ジェット機のすべての機能を備えていても、パイロットが正しい使い方を知らなければ意味がありません。MiG-29パイロットにとって、すべてが違って見える新しいPVI(パイロット・ビークル・インターフェース)を学び、本でしか読んだことのない兵器を使い、3ヶ月の訓練を受けさせ、戦闘に投入するのは、大変な注文なんです」。

「MiG-29からブロック50やミッドライフアップグレードのヴァイパーへの性能の向上は大きなステップではありませんが、武器やエイビオニクスなど技術面では大きな飛躍があります。69日間の猛訓練を経ても、あくまでウイングマン資格でありミッションをリードできません。有効にするには、少なくとも1年間の集中訓練があれば、敵を粉砕できる。

「ウクライナ固有のニーズと脅威シナリオに基づいて新しいシラバスを構築することが必要でその後、戦闘に参加するには、6ヶ月から12ヶ月の訓練が必要です。それでもリスクはありますが、それ以上に見返りがあるかもしれません」。

ツーソンを拠点とする第162飛行隊に所属するF-16。U.S. Air National Guard/Tech Sgt Hampton E. Stramler

F-16を運用する各国は、初期資格訓練でパイロットを米国に派遣している。ポーランドやルーマニアのパイロットは、アリゾナ州ツーソンのモリス空軍州兵基地の空軍州兵第162飛行隊でF-16訓練を受ける。ここは、ウクライナ飛行士がF-16に換装するための理想的な訓練場所と言えるだろう。

別のF-16パイロットはThe War Zoneに、米空軍はヴァイパーFTUの既存のパイプラインに6〜12人のウクライナ人パイロットを比較的短期間で容易に押し込むことができ、戦地で必要とする特定スキルを提供する的を射たシラバスを与えることができるとコメントしている。

ウクライナのF-16がどのような役割を果たすべきかは、慎重に検討する必要がある。最新の単座マルチロール戦闘機は、純粋な操縦の観点からは扱いやすいかもしれないが、多様な任務が用意されているため、コックピットでの作業負荷もそれなりに高い。たとえF-16のような実績ある機種であっても、空軍が完全に対応できるマルチロール戦闘機の飛行隊を立ち上げるには、何年もかかる可能性がある。

AGM-88 HARMを搭載した米空軍のF-16CM。 Jamie Hunter

AIM-120AMRAAMのような西側の先進的な空対空ミサイルが加わった場合、パイロットは新しいスキルを身につける必要がある。「レーダーワーク、長距離飛行、ターゲティング、ターゲット識別などです。西側の第4世代機と旧ソ連の機体では、すべてが大きく異なるんです。コックピットのディスプレイ表示も違うし、ミサイルの運動力学も、ロシアと西側のミサイルでは仕組みも全く違う」。

最終目標がカギ

第4世代戦闘機導入で、ウクライナはどのような実利を得ることができるのか。軍事的に何が得られるのか、ウクライナのF-16は実際に何を達成できるのか。

ある元F-16パイロットはThe War Zoneにこう語っている。「ウクライナで戦闘機を採用するのなら、彼らが実際に何をしようとしているのかを問わなければならない。カリフォーニア航空州兵とウクライナのフランカーとの歴史的な密接なパートナーシップを振り返ると、紛争開始前でも、ウクライナのミッションの大半は1000フィート以下の低空で飛行していた」。

「今、ウクライナ全土におびただしい地対空ミサイル(SAM)があり、現実的にウクライナの戦闘機パイロットが大きなリスクを負わずに実行できるのは低空飛行だけだ。ウクライナは今、まったく異なる環境での作戦行動を展開している」。

第5世代のステルス戦闘機なら、このような激戦区で自由に活動できるが、西側の第4世代プラットフォームには、SAMネットワークが最高の足かせになるだろう。その意味では、ウクライナで供用中の戦闘機在庫と変わらない。

ブロック50/52 F-16C/Dは、敵防空制圧(SEAD)任務に特化した機体。 Jamie Hunter

「このままでは、戦域全体が接近阻止領域拒否になり、固定翼機で効果を発揮するのがますます困難になると思われます。ロシアとベラルーシ国境には高度なSAMがあり、ウクライナは米国からペイトリオットミサイルを受け取ることになっているので、低空飛行が続くと思われ、MANPADS(人型携帯防空システム)や短距離システムの影響を受ける可能性があります」。

ロシアは、ウクライナ上空で戦闘機や爆撃機の定期パトロールを行っていないと考えられており、代わりに、ロシア領内で戦闘空中哨戒(CAP)を行い、ウクライナを長距離から安全に攻撃し、それによって兵器の標的捕捉の不確実性と不正確性を受け入れている。ロシアは長距離巡航ミサイルを一般区域に向け発射することを厭わないが、このようなプロファイルでは、大きな巻き添え被害が避けられない。

王立サービス研究所(RUSI)の直近の報告書によると、MiG-31BMやSu-35Sなどロシア戦闘機は通常、作戦地域上空をカバーするが、そのCAPは通常、ロシアとクリミアなどロシア領の上空だ。

  ウクライナ支援で新しいジェット機の提供をめぐる戦術的なゲームプランは、F-16供給の可能性に大きな影響を与えるだろう。ウクライナ当局は、ロシアの戦闘機や爆撃機を抑えるため、優れたレーダーと長距離ミサイルAMRAAMのようなミサイルを搭載した戦闘機が必要だと言っているが、アメリカ当局は、このような重要な動きをすることの利害関係を検討し、この戦場で航空戦力がまだ重要な役割を担っているかどうかを問う必要がある。ウクライナでは今後、特に反アクセス脅威が高まり、固定翼の航空戦力が大きな影響を与えにくい市街地で地上軍が戦えば、航空領域の影響力が低下する可能性がある。

ウクライナはAMRAAMを搭載したKongsberg-Raytheonの防空システム「NASAMS(National Advanced Surface-to-Air System)」を受領している。

AMRAAMを搭載した戦闘機は、ロシアの長距離ミサイルやドローン攻撃に対するウクライナ防御力をさらに高めるが、ウクライナは、巨大なレーダー範囲と強力なR-37M長距離空対空ミサイルなどを持つロシアのSu-35SやMiG-31BM戦闘機に対抗するには、新しい戦闘機もAMRAAMが必要だと強調した。

「優先順位は、まず第一に、前線の上を飛ぶ彼らの攻撃プラットフォームを撃墜することであり、彼らの戦闘機を狩ることではありません。まずは地域をカバーし、次は地上部隊をカバーすること、そしてそのあとはもちろん、他の戦闘機と楽しむことだけを考えてもいい。それは大きな挑戦でしょう。しかし、それでも、新しいハードウェアは、新しい戦術、すべての操作のための新しいドクトリンを意味し、すべてが私たちの成功に役立つと思いますし、ロシアは自国領空でさえ快適に感じられなくなります」。

F-16に搭載されたAIM-9サイドワインダー(左)とAIM-120AMRAAM(右)。 Jamie Hunter


F-16の幅広い能力のうち、ウクライナはどれを実際に手に入れることになるのか、大きな疑問だ。AMRAAMとスマートウェポンは明らかに空軍の能力を飛躍的に向上させるが、空からの脅威から長距離で低空飛行することになれば、AMRAAMでさえ無力になる可能性がある。あるF-16パイロットは、「私は、AMRAAMはペイトリオットミサイルの移転以上に政治的な難題になる可能性があると見ています」と言う。「AMRAAMの安全性と長距離運用から、この兵器の移転に関し政治的に非常にハードルが高い」。

バイデン政権は、米国の機密技術が戦場でロシアの手に渡ることを警戒し続けている。しかし、もう一度言うが、ウクライナはすでにAIM-120を保有しており、機密性の高い戦術や作戦能力を伴う空対空戦闘環境ではないとはいえ、積極的に使用している。

米国はF-16の輸出先の一部で、AMRAAMの前に共用していたレーダー誘導ミサイルAIM-7スパローに限定している。新品のヴァイパーを受け取ったにもかかわらず、イラク軍の戦闘機はAMRAAMを含まないダウングレードされた能力だ。F-16の長期運用者であるエジプトも、ヴァイパーにAMRAAMを搭載していない。これは、技術的な問題から地域内のパリティの問題まで、さまざまな理由によるものである。

さらに、ウクライナにはGPS誘導弾のJDAM(Joint Direct Attack Munition)供与をめぐる議論が長く続いている。F-16は、この精密空対地兵器を最も重要なスマート兵器と位置づけているプラットフォームなので、この話も大きく取り上げられそうです。現在のところ、ウクライナは未知のプラットフォーム用のJDAMを手に入れることになる。これは航空機と組み合わせた場合、ウクライナに最大2,000ポンドの誘導兵器能力を与える可能性があり、限られたスタンドオフ範囲を提供する。

F-16は他にも多くの兵装を搭載でき、それが最大の強みだろう。特にウクライナにとっては、スタンドオフ地上攻撃兵器の導入など、同盟国が適切と考える新たな能力を迅速に提供することができる。また、ウクライナはすでに珍しい地上発射型の小直径爆弾(SDB)を入手している。F-16は、非常に柔軟な方法でこれも配備することができるが、先に述べたウクライナ上空の防空密度のため戦線に近い地点で高度を制限しているため、これら滑空弾の射程も大幅に低下する。

ウクライナがF-16に習熟すればロシアの「対空傘」を劣化させるためF-16を使用できる、という意見もある。ウクライナはすでにAGM-88高速対レーダーミサイル(HARM)を保有しており、同国のMiG-29やSu-27戦闘機に即席で運用されている。最新のエイビオニクスとセンサーシステムを備えたF-16なら、この兵器を活用することができる。しかし、F-16を装備したウクライナ空軍にとって、これは当面の課題ではないだろう。

とはいえ、こう考えると、F-16がイエスかノーかだけでなく、もっと広い意味での話し合いが必要になってくる。ウクライナは、Mk82「愚鈍」爆弾と熱探知AIM-9サイドワインダー、またはAMRAAMとスタンドオフ兵器を搭載したF-16を受け取ることを期待できるのだろうか?

翼端にAIM-120 AMRAAMを搭載したF-16C。Jamie Hunter


現実が物を言う

ミグとスホーイの運用を続け、規模を拡大することは、西側諸国のジェット機を導入するよりも実際に利点があるかもしれない。ロシアと同じようなタイプの航空機を運用することは、航空事情を複雑化させることにつながる。ハイテンポな作戦展開でも、訓練の負担を増やすことはほとんどなく、ロジスティクスチェーンも部分的ながらすでに整っている。

 ウクライナはまた、減衰中の戦闘機を強化するため、ロシア製戦闘機を繰り返し要求している。Su-27の調達先は明らかではないが、ブルガリア、ポーランド、スロバキアからMiG-29を調達する動きが繰り返されている。すでに実現したようにAGM-88HARMを追加したり、何らかの方法でAMRAAMを追加するなど、これらの航空機に改修機能を付与して譲渡することが、ウクライナの戦術航空兵力を強化する一つの可能性で浮上している。しかし、「ジュース」は、そうすることはほとんど意味がないと指摘している。「旧式ジェット機に空対空システムを統合するには、あまりにも時間がかかり、あまりにも高価で、あまりにも複雑だ」と。さらに、アクティブレーダーミサイルは、たとえできたとしても、ソ連設計のジェット機に装備されているレーダーとのマッチングが悪い。

 しかし、これではウクライナの長期的な将来にむけた戦闘機が提供できないし、ウクライナが西側戦闘機を使うという避けられない結果になる可能性を、先送りにするだけだ。また、長期的には将来のロシアによる侵略を抑止できない。

 もしウクライナがヴァイパーにゴーサインを出した場合、パイロットは基本的な操縦方法を習得するため非常に凝縮された訓練シラバスで、最終的に迅速にスピンアップできる。この場合、アップグレードした最新のF-16のマルチミッションスペクトラムをすべてカバーする必要はない。

 もしウクライナ軍パイロットがF-16の操縦を教わり、空対地の基本武器(おそらく最初は無誘導弾を使用)と空対空用のサイドワインダーの基本を学んだら、おそらく数ヶ月で熟練とみなされるだろう。しかし、これではウクライナが求めているものは得られない。もっと時間がかかるし、数週間ではなく、何カ月何年もかけて戦闘機を移行していくことになる。

 だから、ウクライナへのF-16供与には、確かに方法がある。しかし、その意志はあるのだろうか?

 いずれにせよ、答えは出るはずだ。■

This Is How Long It Would Really Take Ukraine's Pilots To Convert To F-16s

BYJAMIE HUNTER, TYLER ROGOWAY|PUBLISHED FEB 8, 2023 5:50 PM

THE WAR ZONE