2013年5月12日日曜日

次期米陸軍ヘリへの採用を期待するテキサスの新興企業AVX

AVX Presses Case For Coaxial-Rotor JMR Demonstrator

By Graham Warwick



aviationweek.com May 06, 2013
Credit: AVX Aircraft


新興小企業が大手を差し置いて新型回転翼機の実証事業契約を勝ち取れるだろうか。ベルボーイングシコルスキーを相手にAVXエアクラフトAVX Aircraft は可能と信じている。
  1. テキサス州フォートワースが本社の同社は共用多用途機Joint Multi-Role (JMR) 開発で米陸軍は同社を選定し、高速回転翼機実証二機種のひとつとすべきと主張する。実証機は2017年に初飛行予定。
  2. 選 定の意味は大きい。JMR技術実証機はその後に続く次世代垂直離着陸機Future Vertical Lift (FVL) の先行と位置づけられ、シコルスキーUH-60ブラックホークとボーイングAH-64アパッチ合計数千機にかわり2030年代から就役となるからだ。
  3. 規 模の大きさからボーイングとシコルスキーは共同事業体をJMR、FVL双方で組み、シコルスキーX2高速同軸ローター機を原型とした複合ヘリコプター compound helicopterを提案する。EADSノースアメリカもユーロコプターX3ハイブリッドヘリコプターを原型にした提案で参入の動きを見せている。
  4. AVXの設計案(上図参照)では同軸ローターにダクテッドファンと小型翼を組み合わせている。ただし契約獲得を狙う小企業は同社だけではない。パイアセッキエアクラフトPiasecki Aircraftからは主翼つき複合ヘリコプターにベクター推力ダクトつきプロペラーの機体の提案が飛行ずみX-49Aスピードホーク技術を元に出ている。
  5. .AVX 社はベルの元従業員が発足させたもので、同軸ローター技術、ダクテッドファン技術が基盤だ。同社からはベルOH-58Dカイオワウォリアー武装偵察ヘリの 性能向上改修の提案があったが、なんといってもブレイクスルーしたのはベル、ボーイング、シコルスキーを尻目に同社が陸軍からJMRとFVLの概念研究契 約を勝ち取ったことだ。
  6. 同 軸ローター技術でホバリング効率が向上し、テイルローターの出力損失がなくなる、とAVX社長兼主任技師のトロイ・ガッフィーTroy Gaffeyは説明する。ベルの技術部門長をしていた。ダクテッドファンで推進力が生まれるので、ローターは揚力を生むだけでよく、必要な出力も大幅に縮 小できる。陸軍は速度230ノットを希望しており、エンジン出力の三分の二をファンにまわし、残りをローターが使う。
  7. ロー ターを傾け推力を生む必要がなく、ブレイド荷重を低下し振動を最低でも50%減らすことができる。「機首を少し上げれば抗力が減り同出力でより高速になり ます」とガッフィーは言う。「機体構成のつぼは空力特性です」 ダクテッドファンは小さく軽くできるし、巡航性能は優秀だという。
  8. 最高飛行速度で揚力の6割はローターから生まれ、残りの4割は小型前進翼と後部のダクテッドファンとスタブウィングが生む。ただし230ノット飛行ではローターが抗力の半分を生むので、それを減らすべくAVXは改良フェアリングの効果を検証中だ。
  9. 直 径56フィートのローターが生む高揚力で外部積載量は大きいとガッフィーは語る。提案書では同機は機体重量は27,000 lb. で兵員12名、貨物13,000 lb.を運ぶ。乗員は4名。これに対しUH-60Mは22,000 lb.で、9,000 lbを外部輸送できる。貨物輸送量からはむしろチヌークに近い、とガッフィーは言う。
  10. 200 kt. で巡航しペイロード4,300-lb.には3,100-shpのエンジンが必要となる。だが目標は230 kt.なので4,600 shp以上の出力が必要となる。
  11. そ の他の複合ヘリコプター機種も同じ問題に直面している。「230 kt. で問題になるのは出力水準です。大型エンジンはコスト高で燃料も多く必要としますが、その反面輸送力の余力が大きくなります」とガッフィーは言う。もし陸 軍がスピードは高くつくことを認めてくれれば、AVXもダクテッドファンを取り外す。「なくなればスピードは170-kt.ぐらいになります」
  12. AVX は生産のため多くのサプライヤー各社を集めたが、陸軍が新参会社をこれだけ重要なプログラムに選定するだろうか。ガッフィーはすべては陸軍の指示書にある とおりで、JMR入札者はFLVの開発リスクを減らすためにも実証機を飛行させる「切実なニーズが」あると証明すべしという点である。
  13. 「ティルトローター機ではXV-15があってV-22があるのに、なぜベルはV-280を飛ばす必要があるんでしょうか。X2でも同じでしょう。同機はすでに飛行済みで性能を証明済みです。X3に至ってはユーロコプターはまだ同機を飛行させていません」(ガッフィー)
  14. 「当社では同軸ローターとダクテッドファンは効率性を実証する必要があります。大手各社はFVL構想が生きている間は自社の機体を飛行させているでしょう。そこで競争を活性化させるためにも小規模な当社は陸軍が見放さないと考えています」■

2013年5月11日土曜日

ペンタゴンの中国警戒②宇宙空間 衛星攻撃も覚悟する米国

Pentagon Cites New Drive To Develop Anti-satellite Weapons

By Reuters
aviationweeek.com May 08, 2013
Credit: USAF
アシュトン・カーター国防副長官Deputy Defense Secretary Ashton Carterから懸案の国家安全保障に不可欠な衛星群の防護策づくりに米軍が着手したこと、潜在敵国の宇宙作戦実施能力への対抗策の検討に乗り出したと発言が出た。
  1. 「わが国の宇宙計画をとりまとめ衛星への脅威に対応すべく各界の最良の知識を動員します。必要であれば宇宙機を用いずに実施します」とナショナルプレスクラブで発言。
  2. カーターが言っているのは敵の脅威に対して軍用・情報収集衛星群の生存性を確保する方法、衛星群が利用できなくなった場合の作戦運用方法である。
  3. 2014年度予算に関係支出が入っており、「わが軍へ不利な状況を生む相手の宇宙利用を拒否する能力」も支出が認められているという。副長官は具体的に何を意味するのかは説明していない。
  4. 国防総省はほぼすべての軍事機能が米国の衛星群で支えられていると強調してきたが、重要な通信機能、目標捕捉、気象データ、敵ミサイルの発射の警報が提供されている。
  5. ペンタゴンが公表した中国の軍事力開発の年次報告書では中国がコンピュータ・スパイ活動で技術を入手し近代化をねらっているとするが、中国からは根拠がない、と一蹴されている。
  6. 同報告書では中国の宇宙空間での能力拡充を取り上げ、「多方面でプログラムを同時に進めており、有事に敵の宇宙配備アセットの使用を制限するか防止させる能力の向上をめざしている」と記述している。
  7. 中国の軍事戦略立案者は宇宙空間を自国の目的に利用するが敵には利用させない事が鍵と見ている。報告書では中国の軍事分析から「有事の際に敵の衛星ほかセンサーを破壊あるいは捕獲する事が重要だ」との記述を引用している。
  8. 米国は中国の衛星攻撃能力開発を憂慮しており、実際に中国は2007年に老朽衛星を標的にミサイルを発射し莫大な数のデブリを宇宙空間に飛散させた。
  9. 米国の最重要軍事情報衛星への妨害能力を拡大中との情報報告が昨年に出てから中国の動向にいっそう注意を向けている。
  10. 同報告の内容に詳しい筋からは中国が高軌道で米国衛星群の破壊能力を有しているとの信頼すべき情報があると語っている。その手段には衛星、ミサイル、地上発射の妨害策があるという。低軌道ではすでに対衛星手段のテストが実施されているとのこと。■

2013年5月10日金曜日

英軍が運用するUASは現在合計500機規模になっている

British Military Now Has 500 UAS

                   
                        UAS Vision, Posted on May 8, 2013               
                                            

英軍はUAS500機を運用中で、国内空域での運用を検討中とガーディアン紙が報道している。
  1. UASの拡充は2030年までに保有機の三分の一を無人機にする英空軍の目標の一環。
  2. 現時点で英国内で無人機と通常機が一緒に運用されているのは民営のウェストウェールズ空港のみ。国防省は同空港で新型ワッチキーパー監視用UASのテストを行うとともに運輸省、民間航空局と共同で「遠隔操縦航空機への空域開放」の実証をしている。
  3. 英軍運用のUASには、ヘルファイヤミサイルやレーザー誘導爆弾を搭載するリーパーから片手に入るブラックホーネット超小型ヘリコプターまで多数ある。両機種はアフガニスタン戦に投入され、ハーミーズ450監視無人機は陸軍が導入したワッチキーパーに代替されている。
  4. 国防省によれば各無人機は有人機と共通の交戦規則で運用しているという。
  5. アフガニスタンに配備中のリーパー5機で合計350発のミサイルおよびレーザー誘導爆弾を投下発射している。さらに5機が追加配備され、その操縦運用はリンカンシャー州ワディンゴンの英空軍施設で行う。
  6. . ただ国防省によればアフガニスタンに投入する10機のリーパーは来年中の英軍撤退に伴い国内に再配備する。「リーパー各機の配備場所は未定」と国防省ス ポークスマンはいい、「現状では国内運用の予定はない」とする。英軍の配備済みリーパーは累計飛行時間45千時間を越えて、国防省は今後の無人機運用に自 信を持つにいたった。
  7. 同スポークスマンによれば将来の戦闘航空機勢力は有人高速ジェット機と遠隔操縦航空機の混成となる。リーパーの運用経験で21世紀の空軍力で無人機が重要な存在となることが実証された、という。
  8. ただし国防省は完全自律型無人機の導入予定は持っていない。自律型無人機は批判勢力が警戒する構想だ。「操縦、武装利用で人員が介在しないシステムの開発予定はありません。」
  9. 将 来の軍用、民間航空に無人航空機システムは不可欠の存在として、民間シンクタンクRoyal United Services Institute の主任研究員Elizabeth Quintanaは国防省は今以上に無人機利用を進めるべきだと語る。「将来の兵力構成で無人機が必要な要素であることを国防省、政府は認め、倫理的に受 け入れられる利用法を検討すべきです」とし、「これまでの議論は公開されておらず、国防省はこの問題を堂々と先に進めるべきでしょう」とする。
  10. また同研究員は最近の調査で英国民はUASの使用を不安に思っていないことが判明したという。「素性が判明したテロリストを殺害するのか、逃がしてしまうのかという選択を突きつけられれば国民はUASを利用すべきだと賛同しますよ」

Photo: Andrew Chittock/Alamy

2013年5月9日木曜日

F-35運用コストをめぐりペンタゴン内部で見解の相違

Pentagon Struggles To Pin Down F-35 Ops Cost
By Amy Butler

aviationweek.com May 06, 2013
Credit: U.S. Air Force Samuel King Jr.
Amy Butler Washington

ペンタゴンでF-35の飛行時間あたりコストをめぐり意見対立があるのは運用費用がいくらになるのか把握できないことの証拠と通常なら受け止められる。
  1. こんな論争は顧客予定国の懸念を増すだけで、運用コストの前では開発コスト、購入コストが小さく見えてしまうが実際はこれらも大幅に伸びているのだ。運用コストが判明するまでは導入を先送する動きもでてきた。
  2. . この数ヶ月にわたり、ペンタゴン関係者はF-35の飛行時間あたりコストcost per flying hour (CPFH)を同一条件で既存機種と比較検討しようとしてきた。ただし異なる数字がペンタゴンのF-35プログラム推進室責任者であるクリストファー・ボ グダン中将 Lt. Gen. Christopher Bogdanと調達責任者のフランク・ケンドール国防次官Frank Kendall,から相次いで飛び出した事実は価格の比較検討は言うほど簡単でないことを示している。ただしどこかで数字の合意ができないとワシントンお よび各国で困ってしまう状態になる。各国とも財務情況に与える影響を今後数十年間にわたり考慮した上で導入を決意する必要があるためだ。
  3. ボグダン中将はオランダ国会議員にF-35運用費用はF-16の10%高と先月に発言している。
  4. F-35AのCPFHは$24,000と米軍関係者は見ている。ボグダン中将はこのデータをオランダ関係者に開示し、「F-16とF-35の飛行時間あたりコスト比較」と説明した。
  5. ただしこれは仮数字だと関係者は言う。F-35Aの飛行訓練は始まったばかりで、テストは継続中なので、データが集まっても機体のライフサイクルコストに直結していない。耐久性テストで部品またはシステムでサポートが必要なものが出ればCPFHの上昇要因となる。
  6. 開発費は急上昇し、機体単価は2001年の原契約時の二倍まで増加しているのに加え、就役開始時期が遅れているので購入予定各国は機体価格だけでなく、運用コストでも神経を尖らせている。
  7. オランダは当初の85機購入を33機まで縮小しようとしている。そんな中でボグダン中将がオランダ側に示した数字だが、報道と同時にケンドールが疑義を示し、数字は今月予定でペンタゴンが議会に提示する数字よりはるかに大胆だというのだ。
  8. ボグダンの示した10%の数字は「多分に仮定のもの」とケンドールはペンタゴン詰め記者に語っているが、どこが仮定なのかについては語っていない。
  9. 今回議会に提出する数字は昨年度の特定装備取得報告書の数字よりも低くなるとケンドールは発言。昨年度はF-35AのCPFHは$31,900でF-16C/Dは$22,500だった。
  10. 「今年はこれより低くなる。ただしボグダン中将の数字までは低くならないと思う。」とケンドールは発言。
  11. ケンドールによるとF-35のCPFH算出方法は少なくとも六通りあり、これが誤解の元になるという。飛行時間を短くすれば、時間当たり費用は増える。ただし全体としての保有費用は既存機種と大差なくなるという。
  12. 「そ もそも保有にかかわる費用とは何でしょうか」とケンドールは問いかけ「比較できる範囲で機体を稼動状態にしておく費用のことでしょうか。これは使用する国 で違ってきます。」 同じ機体でも国ごとに飛行時間は異なるし、予備部品をどれだけ確保するのか、整備人員がどれだけ有効に対応できるのか、ほかが変動要 因だ。
  13. 米海軍は50年間の供用期間で1兆ドル以上と算定しているが、これを論破できるだけの材料はまだ見つかっていないようだ。
  14. CPFH は全体保有費用のひとつの要素にすぎない。コスト削減につながる可能性が大なのが機体の維持管理関係だとケンドールは見る。初期機体の単価は2001年時 点予想のおおよそ2倍になっているが、このことで各国が購入を先送りする結果となった。たとえばトルコは二年間先送りすると発表しており、トルコ向け機体 の価格は百万ドルずつ上昇する、とボグダン中将は言う。
  15. それでも同中将はF-35A単価は80から90百万ドルに落ち着くと楽観的に見ており、これは現状での各国の導入案から計算したという。
  16. と いうことで管理室は全体保有費用の引き下げに重点を置いており、ボグダン中将によるとロッキードに対して年間生産契約を根拠に価格引下げを迫っているとい う。さらに生産後改変費用を初期生産機体に上乗せさせようとしている。この費用だけで各機5百万ドルかかっており、飛行テスト後に見つかった不良の対策だ が今後も発生しそうだ。■

2013年5月8日水曜日

ペンタゴンは中国の軍事力整備をこう見ている

China Expanding Its Military Mindset, Pentagon Says


aviationweek.com May 07, 2013
Credit: Chinese Internet

中国は軍事影響力をグローバル規模で広げようとしており、各種演習、海賊対策その他手段を使っているとペンタゴン報告書が分析している。
  1. 「中 華人民共和国(PRC)は長期間にわたり軍備近代化を進めており、交戦力向上に加え短期紛争での勝利と高密度地域内軍事紛争でも勝利を目指している」と恒 例の議会向け年次報告書でペンタゴンは分析している。5月6日公開の「PRC関連軍事保安関係の動静報告書2013年版」“Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2013”である。
  2. 台湾海峡の軍事対立に備えるのが依然として中国の軍事関連支出の主要関心事だとペンタゴンは分析。
  3. 「台湾海峡の有事に備えることが人民解放軍(PLA)の重大任務であり、馬総統の2012年1月再選後は緊張状態が減っているが変化はない」「抑止力が低下すれば、PLAは台湾に対し独立姿勢の撤回を求めるか軍事力での統一を図り台湾支援の外国勢力の撃破を狙うだろう」
  4. 「ただし中国の関心対象は拡大しており、国際秩序にも影響を与えやすくなっており、軍近代化も領土紛争の範囲を超えた広範囲のミッション遂行能力への支出が中心で、海賊対策、平和維持活動、人道援助、災害援助、地域大軍事活動を視野に入れている」
  5. 「想定ミッションには国際安全保障体制に挑むものもあれば狭い範囲の国益追求をめざす領土主張の解決、海外における勢力圏の拡張を狙うものもある」
  6. そ の実現手段として2012年も高性能の短距離、中距離弾道ミサイル(通常弾頭搭載)、対地・対艦巡航ミサイル、宇宙兵器、軍事サイバー空間作戦能力の整備 をした。ペンタゴンは「接近阻止領域拒否(A2/AD)ミッションを想定している」と分析している。(PLAは「干渉排除作戦」と表現)
  7. 核抑止力と長距離通常兵器抑止力の整備も続けており、高性能戦闘機、限定つき地域内軍事力投射、初の空母就役、統合防空体制、水中戦、指揮統制能力の改善に加え三軍でこれまで以上に緻密な軍事演習を展開しているとペンタゴンはまとめている。
  8. 他 国との軍事演習の回数も増えており、相手国とのつながりを強化することでPLAの政治的な利益も増大している、とペンタゴンは分析。演習を能力向上の機会 として2011年から2012年にかけてPLAは合同演習を21回実施しているが、それに先立つ5年間(2006年ー2010年)が合計32回だった。■

2013年5月4日土曜日

英空軍 リーパーに自国製ブリムストンミサイルを搭載する意味は何か

U.K. Looks To Integrate Brimstone On Reaper UAV

By Anthony Osborne tony_osborne@aviationweek.com
May 03, 2013
Credit: Tony Osborne
MQ-9 Reaper UAV fleet.英空軍はMBDA製ブリムストン空対地ミサイルを保有するジェネラルアトミックスMQ-9リーパーUAVに搭載する検討中。
  1. このため実証作業を米国内で行う予定で、案が国防装備支援技術開発担当国務大臣フィリップ・ダンのスピーチによりワシントンで披露された。「現在ビッグサファリグループと共同で英国製ブリムストンを米国製機体に装着する作業を進めております」
  2. 英国防省がスピーチ内容を確認しており、それによると英国製ミサイルを米国製機体に取り付けようとするが、機体は米国の海外軍事販売制度により購入しているため、米側のビッグサファリ担当室が実証作業を担当する。
  3. 「ブ リムストンをリーパー含む英空軍が運用する攻撃用機体で運用する方法を検討中です。テストは米国内で行います」と国防省担当者がAviationweek に話している。「英国の海外ビジネス拡大の一環として世界で通用する英国製技術を示す機会をたえず模索しており、国内雇用と投資を確保する一助にしようと しています」
  4. 英空軍のリーパー5機がアフガニスタンに配備中だが、米国内の試験運用で影響を受けることはない。配備中の機体は武装偵察任務に投入中で、ロッキード・マーティン製ヘルファイアミサイル、500ポンドのGBU-12ペイブウェイIIレーザー誘導爆弾を搭載する。
  5. ブ リムストンはヘルファイアと共通点が多い、デュアルモード誘導はレーダーとミリ波シーカ0を使い、打ちっぱなしモードで複数目標を打撃する同時発射も可能 だ。合同保護者作戦(リビア)Operation Unified Protectorでその効果が実証されており、トーネードGR4から発射されている。現状ではブリムストンを装備するのは同機のみである。
  6. 同ミサイルの装備は英国防省がリーパー部隊を2015年以降も稼働させる意向であることのあらわれだ。現状の5機はまもなく10機に増強されるが、アフガニスタンでの戦闘作戦が2014年12月で終了する前提で予算計上されたもの。
  7. ただし英空軍上層部によるとリーパーは英国内で運用の予定はなく、海外で緊急展開が必要となるまでは保存しておくとのことで、パイロットはシミュレーターで訓練し、離着陸時の支援要因は米国内で訓練を続けるのだという。■

2013年5月3日金曜日

X-51ウェイブライダーが極超音速を持続して飛行実験に成功

X-51A Waverider Achieves Hypersonic Goal On Final Flight

By Guy Norris guy_norris@aviationweek.com
aviationweek.com May 02, 2013
Credit: USAF



米空軍のX-51Aウェイブライダー実証機がスクラムジェット推進による極超音速飛行に5月1日成功した。
  1. ま だ空軍から発表がないが、X-51Aはテスト飛行では想定通りマッハ5を維持したと思われる。持続時間は300秒と見られ、無動力滑空時間500秒ののち に、太平洋上の試験海域に突入した。以上の時間及び速度が確認出来れば、空気取り入れ式での極超音速飛行の記録更新となろう。
  2. X- 51Aは自由飛行可能なスクラムジェット機の可能性を実証する意味で製造されて、極超音速兵器・高速航空機に向けた重要な足がかりとなることが期待され る。しかし、2010年5月の初回飛行ではマッハ4.88と部分的な成功をしたものの作動不良でミッション中止となり、2011年3月と2012年8月の テストも不調に終わっている。
  3. これまでが期待以下の結果だったのに対して、今回の飛行は研究開発にはずみをつけるもので、空軍は極超音速飛行の実用化を模索している。機体はボーイングが製造した4機の最後の機体で、動力はプラット・アンド・ホイットニー・ロケットダインSJX61ラムジェット/スクラムジェットのデュアルモードエンジンだ。さらに前回の試験で得た知見と改良が施されていた。
  4. そ の内容にはエンジンのフローパス間のシーリング改良があり、第一回飛行ではこれが不足して高温ガスが機体内部に入ったことで「溶融」が発生し飛行が持続で きなくなったと見られていた。さらにハードウェア、ソフトウェアでも改良があり、今回のテスト飛行では機体の制御フィンも変更が加えられ、三回目ミッショ ンの失敗原因への対策とした。
  5. ミサイルブースターに装着されてB-52H母機から太平洋上空で発進された。切り離しは予定通り実施され、Atacmsが作動終了し分離された後、スクラムジェットが点火されている。■

2013年5月2日木曜日

UASによる領空侵犯に断固対応しているイスラエル空軍の事例は日本にとって他山の石でしょうか

Israeli F-16 Downs Another Hezbollah UAS
                   
                        UAS Vision, Posted on April 30, 2013 by The Editor                   
                                            


イ スラエル空軍のロッキード・マーティンF-16がレバノンから飛来したヒズボラの無人機一機を撃墜した。この無人機は地中海上空を飛行中に4月25日探知 された直後に空対空ミサイルで撃破されたもの。交戦は現地時間13:30に発生し、その時点でベンジャミン・ネタニヤフ首相が公式行事で同国北部にヘリコ プターで移動中だった。今回のUAS撃墜は10年間で5回目。


  1. .迎撃地点はイスラエル・レバノン国境に近い沿岸部で、撃墜されたUASが武装されていたか、あるいはイスラエル沖合の天然ガス採掘施設を狙っていたかは不明。イスラエル空軍はテロ組織の標的となりうる施設の防衛用に特殊システムを運用している。
  2. 「イスラエル軍はレバノンから飛来するUASを軽く見すごしていません、飛行目的に単なる写真撮影のみならず要人暗殺の可能性があるからだ」と西側外交筋が現地Nahar新聞に語っている。
  3. 無人機が発見された時点でイスラエル首相が搭乗のヘリがイスラエル北部ハイファの西10キロ地点を飛行中だった。同ヘリは着陸を指示され、イスラエル空軍が領空の安全を確保するまで地上待機した。
  4. 事 件直後の報道ではヒズボラが発進させたUASと見ている。昨年10月にイスラエルのネゲブ上空で1.5時間の無人飛行に成功とヒズボラが発表していたた め。この無人機はイスラエルが撃墜したが、ソレク核施設Soreq nuclear facilityから数マイルの地点だった。当時のイスラエル軍発表は無人機が「レバノンから」発進したとのみだった。
  5. この際はイランの関与があったとされ、米国政府が自制を求めたのでネタニヤフ首相が報復を断念したとされる。同首相は「我が国の国境を侵犯する深刻事態に」対応しただけと発言している。
  6. シ リア叛乱軍およびイスラエル情報部によるとイランは革命防衛隊隊員をシリアとレバノンに投入し、シーア派勢力を支援している。イランはシリア軍兵員に対し て高性能兵器の取り扱い訓練をしているという。その一環で長距離短距離ミサイルに加え、ヒズボラがUASの運用能力を向上しているのだという。アラブ報道 機関によるとイランから毎週5トンの武器がシリアに供給されている。
  7. 2012年10月にはレバノンから飛来しガザ回廊上空を飛行中のUASを撃墜しており、2011年11月にはこれもレバノンを発進したUASがF-16で撃墜されている。2006年にはイラン製アバビUASがヒズボラにより運用されており、F-16がこれを撃墜した。
  8. 2004年11月に同様の事件が発生したことを契機にイスラエル空軍はセンサー装備を追加展開し、無人機による国境侵犯の探知能力を向上させてきた。
Photo: F-16 – Israeli Air Force


コメント:我が国においても敵性無人機の飛行に対処する事態が早晩発生するでしょう。その意味でイスラエル事例は参考になるはずです。

2013年5月1日水曜日

軍用衛星通信回線の保全に使われるRaidrsシステムとは

U.S. Air Force Makes Raidrs System More Permanent

 


By Amy Butler
April 30, 2013
Credit: Staff Sgt. Angelita Lawrence

米空軍は重要な衛星通信を妨害から守る恒久的な解決策を実戦配備している。

ロ ジャー・ティーグ准将Brig. Gen. Roger Teague(宇宙軍団Air Force Space Command戦略立案担当)が第29回国家宇宙シンポジウムの席上、急速攻撃識別探知報告システムRapid Attack Identification Detection Reporting System (Raidrs)の配備状況について触れ、2012年の実績の一つと紹介している。Raidrsは衛星通信リンクの防御手段としてC、Ku、X、 UHFの各周波数帯での異常を警告する機能を有する。

Raidrs試作型はインテグラル・システムズ(本社メリーランド州ランハム) Integral Systems of Lanham, Md.が設計し、中東で2005年から供用中。システム構成は妨害電波の発信元を探知するアンテナ各種を含む。

こ の配備でシステムが衛星通信をモニターし、干渉信号の発信元を探知する能力があることが実証された。このミッションは米軍部隊が分散配置され、衛星通信に 依存する傾向が強まっていることから重要度が増している。Raidrsは静止衛星による民間通信のモニターを重視し、海外展開する各部隊にとっては頼みの 綱となっている。

こ れに対して空軍はより恒久的なシステムの配備を開始している。空軍はコロラド州ピーターソン空軍基地に中央一括オペレーションセンターを設けた。 Raidrsの移動可能地上施設Raidrs Transportable Ground Segments (RTGS) が以下の5地点に戦略的に配備されている。ハワイ州ルアルアアレイ海軍基地、フロリダ州ケイプカナベラル空軍基地、日本の三沢空軍基地、ドイツのカパウン 空軍基地および非公表の中央軍施設である。「RTGSを日本とハワイに配備していることで、太平洋地区全域での電子電磁干渉信号の監視が可能となっていま す」と宇宙軍団は説明している。

Raidrsの追加調達の予定はない。

コメント:  有人戦闘機の話題はどうしても注目を浴びますが、通信の保全を確保する意味で一見地味なこんな話題が本当は重要な意味を持ってきます。第一次大戦以来情 報を重視する米国人の考え方がこのシステムにつながっているのでしょう。安全保障上の理由からシステムの機能説明はほとんどありませんが、すでに通信回線 の保護で重要な手段となっていることが伺われます。防衛予算の使い方でも考えさせられる内容だと思いませんか。

2013年4月30日火曜日

韓国国産開発戦闘機KF-Xに注目 戦闘機自国開発の意義

Seoul Plans Phased-Development, Typhoon-Size Fighter

By Bradley Perrett
aviationweek.com April 29, 2013
Bradley Perrett Seoul and Jeongseon, South Korea

西側世界では完全に新型の戦闘機といえるのはロッキード・マーティンF-35だけで各国は同機以外に選択肢がないのが現状だが、新たな戦闘機が東洋から出現しようとしている。
  1. ほぼ10年の研究期間を経て韓国のKF-X戦闘機構想が明確になってきた。このまま進み大幅変更なければ同機は双発でユーロファイター・タイフーンと同程度の機体寸法となり、タイフーンはじめ欧州戦闘機の例にならい水平安定板を機体前部に取り付けることになりそうだ。当初は米国製兵装・センサーを搭載しその後韓国製装備を搭載するだろう。
  2. 政 府内で検討が始まったのが1999年、国家プロジェクトになったのが2002年のKF-Xは14年間の研究期間を経て、いまだに全面開発の承認を得ていな い。当初の配備目標は2015年だったが、現状では2021年以前の初飛行はない状況なので、就役は2020年代中頃だろう。ただし、これも強力な反対勢 力から生き残った場合の話。
  3. 韓 国空軍はKF-Xは中型戦闘機としてKF-16の代替を目指す。KF-16は韓国内で生産したF-16。ペイロードと航続距離で優れるKF-Sは高性能戦 闘機として想定されており、現状のボーイングF-15Kとその後継機種として選定されるはずのF-X第三段階選定機種となる。下には韓国航空宇宙産業(KAI)製のFA-50がある。
  4. 推 進役は国防省の国防装備開発庁Agency for Defense Development (ADD)で、ここで予備設計を進めており、完全開発段階でまとめ役になる予定だ。そうなればKAIは韓国の戦闘機製造専門メーカーなのにサプライヤーの 役割を甘んじることになり、同時に詳細設計を担当するのだろう。大韓航空が部品の一部を生産する可能性もある。エンジンは海外調達となり、電子装備は複数メーカーから供給されるだろう。
  5. さらに海外メーカーがパートナーとなるはずで、F-X第三段階の受注企業がこれになるはず、つまりボーイング、 ロッキード・マーティン、ユーロファイターのいずれかだろう。ただし韓国国内には海外メーカーの介在を快く思わない向きもある。KF-Xはあくまでも韓国 主導であるべき、というのだ。一方で、インドネシアは2011年から技術開発の人的貢献と開発費用20%負担、さらに50機発注の意向を示していることで 限定共同開発国となっており、同機がKF-X/IF-Xと呼称される所以でもある。トルコを巻き込む目論見は失敗したが、韓国が主導権を握ると主張したた めといわれ、以後それ以外の国は手を挙げていない。
  6. 一 方、KF-Xには幾多の反対勢力があり、価格が高い、正当化できない、開発能力そのものが不足している、技術者が足りないとの主張の他、開発すべきは民間 機であり、軍用ヘリコプターであるとの意見、技術を握る米国がKF-Xの海外販売を妨害すると見る向きもあり、そもそも韓国製戦闘機の価格は既存機種より 低くならない都の意見もある。
  7. こ れに対して推進派なかんずくADDはKF-Xは韓国製軍用航空機開発の要であり、国産戦闘航空機システムの搭載機として韓国防衛産業全体を引き上げる役割 が期待されるとしている。また韓国が完全に自国主導で機体装備のシステム構成を決定すべきとしており、T-50超音速練習機ならびに派生型戦闘用機体の前 例を引き合いに出している。
  8. ADD は韓国国内に技術力があるのか、同機の性能設定が妥当なのかとの疑問に対応してきた。2009年にはF-35と同等のステルス機の国内開発能力はないと認 め、レーダー断面積の達成目標をボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットおよびユーロファイター・タイフーン並まで後退させている。
  9. 具 体的にはKF-Xの目標は0.1から1平方メートルと見られ、F-4ファントムやF-5タイガーと言った韓国が運用してきた旧式戦闘機が1から10平方 メートルであったのと比較される。これはKF-X企画に関与した空軍退役幹部によるもの。この目標値は「十分な水準」と同幹部は指摘し、非公表ながら公に 認知されている北朝鮮防空レーダーの性能欠陥を暗示している。
  10. ス テルス性能で妥協したものの、外観と機体構成では大きな変更はなく、KF-X はステルス機としては古典的な形状といったところだ。ADDはKF-X後期型でのステルス性能向上を提唱し、ブロック2でステルス表面塗装の向上、レー ダー吸収性を有する表面素材、機体隙間の削減、等を実現する。このステルス性能はF-117と同等となるとADDは見る。さらにブロック3でF-35程度 のステルス性能をめざす。
  11. ADDは同機の仕様でいろいろ検討をし、エンジンは双発とし、水平安定板は海外メーカーの知見を借りることとした。既製エンジンの選択としアフターバーナー出力17,700 lb.のジェネラル・エレクトリックF404か20,200 lb.のユーロジェットEJ200または22,000 lb.のGE製F414を検討している。二案あり米メーカーの支援を想定した水平安定板を後部に備えるのがC103案、欧州メーカーをパートナーとする機首に安定版をもつのがC203案だ。
  12. 推力の想定はタイフーンと類似し、企画中の機体サイズが同機に近いものになっていることも偶然の一致ではない。ステルス機では空気取り入れ口の形状から機体容積は大きくなるものだが、タイフーンを上回る機内燃料搭載量を想定している。
  13. この機内容積を利用してブロック2で兵装ベイを確保する予定。ブロック1ではレイセオンAIM-120空対空ミサイルを機体下部に搭載するが、ブロック2ではこれを機体内部に移動させる。ただし、ベイ、外部ともにスペースは十分とはいえない。
  14. こ の他に強化ポイント6箇所が主翼にあり、別の二点はレイセオンAIM-9X短距離空対空ミサイル専用に想定する。ADD作成の図面では空対地兵装の GBU-39、GBU-53、CBU-105、GBU-31、 GBU-38、GBU-24 誘導爆弾やAGM-65ミサイルが確認できる。外部燃料タンクはオプションとし、巡航ミサイル搭載も想定している。翼端には強化ポイントはなく、レーダー 反射を抑えるためだろう。ただし、モデルではセンサーポッドが機体下部に搭載される。機銃1丁を左側内部に搭載する。
  15. 主センサーはアクティブ電子スキャンアレイ式レーダーで、海外製品をまず搭載し、後期モデルには国産レーダーとする。LIG Nex1 社が開発中である。その他として電子光学目標捕捉システム、赤外線探知追跡センサー、データ・リンク、GPS-INS航法装置、高性能脅威警告対抗装置、電子妨害装置の詳細も検討が進んでいる。
  16. ヘルメット一体型のディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、多機能ヘッドダウンディスプレイがコックピットに搭載sれる。電子装置と兵装の統合では西側設計の標準を採用し、中国やロシアの対抗機種への優位性を確保する。
  17. C103 案、C203案は2月に比較検討されており、複座型案は却下された模様だが、ADDによる最新の発表内容を見ると機体前方燃料タンクの場所に二番目のシー トが搭載されている。F-35ではシミュレータにより複座練習機型は不要としているが、戦闘機で複座型が再度注目をあびているのは、単座型より戦闘ミッ ションの処理が楽になるためだ。
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