2013年6月24日月曜日

ロッキードが狙う海外市場はどこか

       

Lockheed Aims To Conquer Markets Outside U.S.

By Andrea Shalal-Esa/Reuters
June 21, 2013
Credit: U.S. Army

米国最大の防衛装備メーカーかつ米政府向け最大のITサービス提供業者ロッキード・マーティンが次に狙うのは中東やインドを始めとする海外市場だ。

  1. 同社の海外売上は2012年の総売上470億ドルの17%相当80億ドルだったが、目標は20%台に乗せること。レイセオンの26%やボーイング国防部門の42%から大きく差を開けられている。
  2. そこでロッキードは今後は海外市場で積極攻勢に出るという。米国の国防支出の拡大に期待できず、イラク・アフガニスタンの戦闘が幕をひこうとしている中、ロッキードを始めとする米国防衛装備メーカーは軒並み輸出や海外市場に注目している。
  3. ロッキードの海外事業は70カ国に及び、その中でも英国、オーストラリア、カナダでは「本国並み」の事業になっている。同社がこれから事業を拡大しようとしているのはアラブ首長国連邦、サウジアラビア、日本、インドだ。
  4. そ こで同社は米国で生産した製品を納入するだけのモデルから現地生産重視の姿勢を強めており、このことで他社との差別化を狙う。2月にはリヤドに現地本部を 立ち上げ、サウジアラビヤ航空と訓練施設の創設を検討している。またアラブ首長国連邦へはTHAAD(最終段階高高度地域防衛)ミサイルシステムの販売に 成功しており、航空機整備修理ビジネスでも一定の強さを維持している。
  5. サウジアラビアもTHAADへ関心を示しており、ミサイル防衛庁から技術説明を受けている。
  6. インドではタタアドバンストシステムズ Tata Advanced Systems とC-130Jの機体製造で合弁事業を展開中だ。ロッキードは現地生産ベースを強固にして同機のインド向け営業を強める意向だ。
  7. イタリアではフィンメカニカ Finmeccanica 傘下のアレニア Alenia と提携し、F-35の最終組立をする。日本でも三菱重工業と同様の取り決めを交わしている。
  8. 軍用製品以外にも民生需要に同社は大きな成長機会を見出しており、英国、カナダ、オーストラリアで郵便事業に参画している。防衛製品で培った大規模なロジスティック運営の経験を政府系IT事業に応用出来るのが同社の強みだ。
  9. 同社は18年間に渡り米政府の情報技術提供業者を続けている。サイバー安全保障で中東、アジアの現地政府が同社へ関心を示しているが、同社は国名を伏せている。
  10. 米国内のサイバー市場で同社は大手にかぞえられており、軍用および情報機関向けの広範な製品を提供。世界規模でのサイバー攻撃の高まりに サウジアラビアの石油ガス国営企業も被害を受けており評価の高い防護システムを導入する機運が高まっている。ロッキードはサイバー製品をきっかけに新た な製品売り込みを期待するという。■
        

2013年6月22日土曜日

F-35関連 イタリアのFACOが一足先にオープン 10億ドルの賭けはどんな結果を出せるのか?

今 回はFACOが話題です。日本も愛知県の三菱重工(小牧)にFACOを作ると言われていますが、日本が予定している50機弱の規模ではとてもペイしないの ではないか。導入規模を増やすのか、近隣のF-35もMROで引き受けるのか(シンガポール? 韓国は明白に拒否しているので、高価になること承知で米国 かイタリアに頼むのでしょうか。経済減速を無視していますね。)先行するイタリアのFACOもどう見ても経済性を無視して国内産業基盤の強化だ、と強気の 発言をしてますが。ま、50年間も稼働させるという同機ですから今後はインフレを期待して累計で巨額な費用となってもいいと考えているのですかね。西側世 界の防衛基盤を揺るがしかねないのがF-35だ、というのが当方の主張です。

   

Italy Takes $1 Billion Risk With F-35 FACO

By Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
June 17, 2013
Credit: Lockheed Martin
Amy Butler Rome and Cameri AB, Italy


来月イタリアは最終組立・修理点検施設 final assembly and check-out facility (FACO)を正式にオープンする。
  1. 開所式は軍の視点ではイタリアの航空宇宙産業の技術力アップの大きな転機と見ているが、イタリア政界でF-35購入の是非が論争になっている中、トップ企業アレニア・アエロナウティカ Alenia Aeronautica は心中穏やかではない。
  2. 政 界で一貫性ある支援がない中、イタリア軍は前に進めようとがんばっており、イタリア向け機体の最終組立だけにとどまらず、オランダ向け55機の生産の提案 に加え、ロッキード・マーティンの大規模FACO(テキサス州フォートワース)の代替施設としても利用できないかと積極的だ。
  3. カメリ空軍基地(ミラノ近郊) Cameri AB に同施設の建設はイタリア国防省が予算措置をしており、生産規模250機(イタリアの当初案は131機、オランダも当初案は85機だった)で採算分岐点を 越える、という目論見だ。ただ同機の単価上昇で甘い希望は消えたが、F-35とFACOへのイタリア軍の肩の入れ方は一層強くなっている。
  4. 建 設費10億ドルといわれる同施設の投資効果、雇用規模は今後数十年間にわたる修理点検作業の中で明らかになると関係者は言う。カメリFACOは地域内に加 えイスラエルも入れた規模でのMROセンターになるとイタリア空軍調達本部長ドメニコ・エスポシト中将 Lt. Gen. Domenico Esposito は語る。長期的に十分な仕事量が確保できる保証がないため同中将も施設への投資はギャンブルだと認めるが、イタリアの産業強化効果を期待する。イタリア軍 によると地元への経済効果は186億ドル規模という。国防省にとってFACOはイタリア航空宇宙産業力の強化の手段であり、F-35が搭載する技術はこれ までとは違う種類のものであることが魅力だ。
  5. しかしF-35関連でイタリアの業務量に保証があるわけでなく、タイフーンの事例で業務分担が明白に合意形成されていたのとは対照的だ。
  6. 米国主導で2001年に始まったF-35では共同開発国との間で特定国が計画全体を危険にさらすような仕事の独占はまかりならないという不文律がある。つまり同機の価格に響く形である国が特定の技術や工程を希求することは認められない。
  7. 「これまでは安全サイドに留まっていました」と語るのはクラウディオ・デベルトリス中将(イタリア国防力整備本部長) Lt. Gen. Claudio Debertolis, secretary general of defense and national armaments director for Italy だ。「JSFの仕事をイタリアに確保しなければ」という。最終組立工程および修理部門での雇用は1万人規模という。
  8. 軍 はF-35関連で素材や機械設備の業務にあたる中小企業へ投資をしている。デベルトリス中将は航空宇宙産業の活性化のみならず国際競争力の獲得を期待す る。同時にアレニアの企業体質が強固になることはイタリア軍も吉報であり「保護に甘えていた同社も利益が保証され、将来は競争力がさらに伸びる」と見る。
  9. アレニアはそこまで楽観的ではない。ユーロファイターでは雇用を確保できたが、F-35では保証がない。同社がはフォートワースが5年間先行している中で同社従業員が追いつくまでの間に財務負担が増えることを懸念している。
  10. 学 習曲線と呼ばれる作業員が適切な作業効率を実施できるまでにかかる時間のことをさしている。第5ロットを生産中のロッキード・マーティンの従業員はF- 35A一機あたり100百万ドルを節減したが今も機数が増えるにつれ学習曲線は上がる。ロッキードの場合は費用節減で収入が増える形の契約のにより、学習 曲線をさらに先まで行くことができる。
  11. 対照的にアレニアにこの恩恵は存在しない。契約によると最初の6機(低率初期生産(LRIP)ロット6とロット7各3機)はペンタゴン-ロッキード間の固定価格で生産される。
  12. ところがF-35全体にイタリア国内の生産コストは考慮されていない。イタリア国防省も国内生産で損失が生まれた際の補償に及び腰だ。国防省はアレニアも中小企業同様に利益幅を圧縮し競争力をつけるべきと考えている。
  13. ロッキード・マーティンとアレニアは2月に長期間合意に到達し、第一期分として主翼部品130点の生産に道が開けた。これにより6年間分の作業が保障されたことになり、アレニアは主翼の学習曲線では損失を抑えることができそうだ。
  14. 両社はLRIP6および7の主翼生産でも4月に合意しており、アレニアからはフォートワースに主翼コンポーネンツ6基が納入されており、LRIP11までの生産を担当する。その時点でアレニアは主翼完成品の納入を開始している予定。
  15. ロッ キード・マーティン内部にはイタリア作業員が学習曲線を順調にたどり米国内と同一の品質、価格で納入できるのか怪しむ向きもあるが、その裏には両社のこれ までの葛藤がある。戦術輸送機C-27Jをめぐりぎくしゃくした経緯がありロッキード・マーティンは同機の米国内販売提携先だった。また海兵隊の大統領専 用ヘリ機材更新を巡ってもアレニアの関連会社アグスタウェストランドがロッキード・マーティンと提携したが海軍が導入をキャンセルしている。
  16. ロッキード・マーティンでFACOおよびF-35国際生産を担当する副社長デブラ・パーマー Debra Palmer によると納品時に部品不足がないことで好印象をうけ、驚いたという。部品不足でロッキード・マーティンの生産初期に12億ドルが追加発生していたのだ。「過去の経験から学び部品管理できるようになったのはFACOでも幸先よい」とパーマーは見る。
  17. イタリアはFACOの完全稼動はLRIP6(現在ペンタゴンとロッキード・マーティン間で交渉中)からと予定。オランダはLRIP10以前にイタリアの生産ラインから機体購入の予定はない。そうなると当面はイタリアは自国用生産のみになる。
  18. イ タリアのFACO生産能力は月産2機、一方ロッキード・マーティンは24機まで対応可能だ。イタリアは「自走式」生産ラインを採用していない。なくても生 産効率は高いというのだ。ロッキード・マーティンでは完成機体が一日一機出てくることをめざして同ラインを採用したが現実は程遠い。
  19. 正 式な開所式の前にイタリアはFACOの障害を克服に成功している。もともと米政府は安全保障上の懸念から反対していたが、カメリを実際に見てからは態度を かえており、保安体制が厳格なことがその理由だ。ただしイタリア政界にはまだ懐疑的な向きがあり、ティア1パートナーの英国は費用対効果の利点が見られな いとしてFACO導入を見送っている。
  20. 英国が自国用の機体製造しか検討しなかったのに対し、イタリアは他国向け機体の最終生産に加え、MRO業務まで含めて検討し2009年に着工した。FACOには最終組立ステーションが11あり、そのうち4つは電子装備専用で5つがMRO用だ。
  21. ただしイタリアがF-35を今後も購入するか不明。その他のパートナー諸国と同様、イタリアも経済不振に苦しみ、同機開発のコスト、日程双方での目標値からの後退が不安要素だ。イタリアはすでに131機購入を90機に削減している。 
  22. イタリアFACOからのF-35一号機は2016年引き渡し予定。■



2013年6月16日日曜日

ボーイングのファントムアイにミサイル防衛庁が極秘ペイロード搭載契約を与える

Phantom Eye Gets $7M Missile Defence Payload Contract

                   
                        UAS Vision, Posted on June 11, 2013 by The Editor                   
                   
                       


ボーイングの高高度実証無人機ファントムアイに初の顧客ができた。米ミサイル防衛庁(MDA)である。

MDAはファントムアイに情報非公開のペイロードを搭載し飛行させる契約を6.8百万ドルで交付した。ボーイングは同機三回目の飛行を完了したところで、四回目では性能限界を伸ばそうとしてる。

ファントムアイは液体水素動力技術の実証機で合計8回ないし9回の飛行を予定している。

「MDAが最初のペイロード顧客となり、フライト5から搭載します」とボーイングは発表。「フライト5以降は今年後半から来年にかけ実施します」

ファントムアイのペイロード最大搭載量は204kg (450lb) 。

「ファントムアイは大きな関心を集めています。需要がないとしたら当社としても実証飛行はしません。国防関連、民生部門の両方から高い関心を示す向きがあります。』(ボーイング)
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ファントムアイの初飛行は2012年6月でその後着陸に失敗してから一年近く地上大気のままだった。設計上の飛行性能は4日間連続飛行可能で高度65,000ft (19,800m)まで上昇できる。MDAからは事実照会への回答はない。

2013年6月14日金曜日

トルコが第五世代戦闘機製作に意欲を示す---海外共同作業も視野に

Turkey Looks Into Fifth-Gen Complement To JSF

By Tony Osborne
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com June 10, 2013
Credit: TAI Concept
Tony Osborne London and Istanbul

トルコ航空産業はF-16ファイティングファルコンの国内生産を開始した1980年から、F-35統合打撃戦闘機を補完する性能を有する国産戦闘機をあと数年で生産できるところまで進展している。
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トルコ航空工業 Turkish Aviation Industries  (TAI) は第五世代戦闘機構想をF-Xの名称で暖めてきたが、2011年から20百万ドルで進めてきた構想研究が9月に完了することを受け、2013年は決断の年 となり、トルコ国防産業経営幹部委員会で方向性を決定する。

イ スタンブールで先月開催されたIDEF国防装備展示会でTAIは単座戦闘機の設計コンセプト3案を展示しており、そのうち2案は一般的形状で単発案でと双 発案になっていた。それに対し三番目の案はカナード翼をつけた大型デルタ翼構造だった。各案に第五世代戦闘機の特徴が見られ、レーダー断面積を減らす機体 設計、格納式兵装庫、スーパークルーズ性能、高性能エイビオニクス、AESAレーダーが盛り込まれている。サーブが技術支援をしている。

TAI 関係者からは単発機構想二案の最大離陸重量(MTOW) が50,000-60,000lb.との暗示があった。双発機案のMTOWは60,000-70,000 lb.だという。図面を見ると双発型には兵装庫はふたつで、ひとつは空気取り入れ口の中間にあり、短距離空対空ミサイル二発を搭載する。もうひとつはエン ジンハウジングの前方にあり大型ミサイル4発を搭載できる。

業 界筋によるとトルコ空軍の要求内容は少なくとも三回変更されており、TAIやトルコ産業界で実現できる水準に絞り込まれてきているとのことだ。IDEFで 展示された案では双発機案が空軍の要求内容に合致しているとのことだが、空軍が単発機を好むのは経費上および技術難易度が理由だという。多用途戦闘機の想 定だが空軍は空対空、航空制圧任務をまず想定しているとTAI関係者が解説していた。

現在の想定ではトルコはF-35導入と同時に新型機を開発する。TAIはF-X初飛行を10年以内に実施する希望で、F-35はF-4および初期型F-16の代替用に導入し、F-XはF-16後期型と交代する。

新 型機には技術面で新機軸が導入される。オズカン・エルテム Ozcan Ertem はTAI執行副社長(航空機担当)で Aviation Week に「搭乗員2名からゼロまでのオプションを検討中です。」と発言している。言わんとするのは二名搭乗の場合、パイロット1名はミッション指揮官として無人 機部隊の指揮統制に専念するということなのだろう。ただ同機開発の最大の障害はエンジンだ。ファーンボロ航空ショーに各国のエンジンメーカー多数が参加し ていたが、「当社は次世代エンジンを求めており、大手エンジンメーカー各社と連絡を取っています」とTAIでF-Xを統括するエディズ・ターハン Ediz Tarhan が説明している。「当社と共同開発の可能性もあります」とツハスエンジン工業 Tusas Engine Industries を念頭においているようだ。

ターハンは海外提携先とチームを組むことで共通基本形に要求性能を付け加えていく形にすれば資金面で効果が多大だろうとする。あるいは同様の要求水準の第五世代機生産を想定する国とパートナーになり、開発・生産さらに海外販売で協力することだという。トルコ国内の報道では韓国がこの方式のプロジェクトに関心を示しているとされる。次のモデルは戦闘機設計・開発に知見を持つ企業あるいは国家と組んで技術支援を受けることで、構想段階でのサーブの例と同様の方法だ。

トルコが目指す目標へはまだ道のりが長いが、その間の投資と派生技術はトルコ航空産業の地位を押し上げる効果を生むだろうし、完成製品はJSF導入が不可能な各国に広く輸出できる可能性がある。

2013年6月13日木曜日

新しい方向を示す日本の防衛力整備

 

Japan Plans More Aggressive Defense               

US Naval Institute, May. 26, 2013 - 10:50AM                             
               
       
Japan's ruling party guidance calls for boosting the amphibious capabilities of the Army's Western Infantry Regiment, here training alongside US Marines in California in February. (Capt. Esteban Vickers/US Marine Corps)
                                                     
           
70 年近く限定的な防衛能力の維持にとどめてきた日本が揚陸作戦能力、先制攻撃能力の整備に乗り出すべきであり、弾道ミサイル防衛能力も拡充すべきだというの が政権与党による政策提言の骨子だ。同提言は一般公表前にDefense Newsが入手したもので、宇宙配備の早期警戒システムの増強も求めている。同提言をとりまとめたのは石破茂、中谷元の防衛相経験者なので相当の重みのあ る内容だと政策研究院大学の道下徳成准教授は言う。
  1. 提言内容が政策に反映されると今後5年間の中期防衛計画の調達支出で高い優先順位を与えられることになる。防衛省は同計画を12月までに公表する予定だ。
  2. 時あたかも安倍政権が憲法第9条を改正し「国家主権の手段としての戦争」のための「戦力の維持」を禁じるというくだりを削除し総理大臣を最高指揮官とした「国防軍」を保有できるよう求めている。
  3. 自民党による政策提言では個別具体的な兵器名称を表現しておらず、2009年にまとめられた前回の提言内容から具体性を下げている。「当時は自民党は政権の座になかったので表現も直截的にできたのでしょう」と道下准教授は解説する。
  4. 前回の提言ではボーイングKC-46空中給油機の導入をもとに北朝鮮のサイルを発射前に攻撃することを堂々と主張していた。また最終段階高高度地域防衛 (THAAD)の配備も求めていた。
  5. それから4年たち自民党は昨年12月の総選挙で政権与党に返り咲いた。今回は言葉使いも一層慎重だ。
  6. 日本にとっての懸念材料である中国と北朝鮮を直接言及することを避けつつ同提言は防衛能力の整備をどこまで目指すべきかでは堂々と述べており、防衛当局は同提言に沿った防衛能力増強オプションを検討中と、消息筋は言う。
  7. 特 に関心を呼びそうで問題にもなりそうなのが先制攻撃に関する提言内容で、それによると日本は共用直接攻撃兵器Joint Direct Attack Munitions (JDAMs)、長距離空中給油能力をF-35向けに装備すること、海上部隊向けにF-35Bを導入すべきとしている。
  8. 今回の提言ではKC-46Aの言及はないが、航空自衛隊はF-2多用途戦闘機にJDAMの装備を進めており、19,500トンの22DDH計画ヘリコプター護衛艦はF-35B用に改装可能だ。
  9. 日 本がイージスSM-3ミサイル及びペイトリオット性能改修型-3(PAC-3)弾道ミサイル防衛システムを配備したのは2003年のことで石破防衛相(当 時)は日本から北朝鮮のミサイル基地攻撃も一定の条件のもとで実施が可能との見解を示している。ミサイルに燃料が注入され日本が標的ととの証拠が見つかれ ば日本としては防衛手段がないと道下准教授は指摘する。
  10. ただ日本は弾道ミサイル防衛を着々と整備中であり、北朝鮮の長距離ミサイル銀河Unhaおよび移動式中距離弾道ミサイルムスダンMusudanの迎撃を目指す中で、先制攻撃の実施は違憲判断となる可能性があるとも同准教授は指摘。
  11. ブ ラッド・グロサマンBrad Glosserman(戦略国際研究センターCenter for Strategic and International Studies (CSIS)の太平洋フォーラムを統括)は先制攻撃論が日本で高まることに懸念を示している。「CSISは先制攻撃問題を6年に渡り検討しており、この 数ヶ月で先制攻撃能力の整備を求める声が再び高まっていることに気づきました。先制攻撃能力が拡散すると安定性を損なう効果が生まれるので懸念を示さざる をえません」
  12. 日本が海兵隊を別個に整備することはおそらくないだろうが、水陸両用作戦能力の拡充の可能性は十分あり、陸上自衛隊の西部方面普通科連隊が米海兵隊と合同演習をしていると指摘する向きがある。
  13. Global Strategies & Transformationのコンサルタントであるポール・ジアラPaul Giarraは今回の政策提言により陸上自衛隊の一個ないし二個連隊に高性能水陸両用車両を今後5年以内に導入する可能性が出てきたと見ており、現在想定 しているAAV-7A1Sより高性能のモデルとなる、またベルボーイングV-22オスプレイも想定されるという。
  14. 「自 衛隊に高性能装備を導入すべきと言うのが提言内容だと読み取りました。それ自体が大きな進展ですが、自民党は海兵隊創設までは求めていないようですね」と 解説したのはクリストファー・ヒューズ(英ウォーウィック大教授、国際政治・日本研究論)だ。日本が検討中のBMD能力増強策には現状ではこんごう級護衛 艦4隻、やや大型のあたご級2隻とPAC-3部隊が中心だが2009年版提言ではTHAAD他「高性能」版のPAC-3導入を主張していたが、今回の提言 書では陸上配備BMDの性能向上を推奨し、THAADあるいはイージス陸上型、またはPAC-3ミサイルセグメント性能向上型 (MSE)を国土防衛の最終手段として選ぶことがふさわしいとしている。
  15. ジアラによればPAC-3 MSEはイージス陸上型を代替できるという。日本はMSEに関心を示しているが、THAADは能力的に重複するほか過大な調達になる可能性があると指摘している。
  16. 日 本の防衛当局が脅威とみなしているのは巡航ミサイル一般なかんずく中国のDF-21D対艦弾道ミサイルだ。このため性能向上策のトップがSM-3ブロック IIAイージスシステムが利用可能となり次第導入することで、さらに有効射程が長いRIM-174対空ミサイルの導入も検討している。
  17. ヒュー ズ教授は政策提言は各方面からの批判に加え自民党内部のハト派の抵抗が予想されるという。また防衛省の審議会が来年1月に予定されているが優先順位が変わ る可能性があるという。さらに財務省が防衛予算増額に難色を示すと見る。「だが安倍政権が抵抗を封じ込めれば急展開するだろう」
  18. こういった日本の動きは中国が強硬に領土主張を展開する地域の各国が歓迎するだろう。
  19. 「日 本とフィリピンにはギクシャクした過去がありましたが、フィリピンは日本を強く支持しています。なぜなら日本はフィリピン沿岸警備隊の訓練をしていますし ね」とジアラは解説する。「韓国は日本への依存度は低いのですが、関係の緊張化は深くなっており、日本の動きに賛同する可能性は低いでしょう」
  20. 緊張をさらにあおったのが大阪の市長が日本占領下で慰安婦を強いられたのは軍事上の必要悪であったと発言したことで、これに対し韓国新聞各紙は原爆投下は日本の残虐行為に対する「神の復讐」だったと応酬している。
  21. アジア各国及び米国には日本の右派政治家は戦時中の日本軍には非がなかったと思っているのではないかと憂慮している。
  22. 「日本の行動がこのまま変わらくても日本への支持は静かに続くでしょう。ただし、戦時中の行いに何ら反省すべき点がないと思い謝罪も不要とする誘惑に日本側が打ち勝てるかが問題です」(ジアラ)
  23. 「戦 時中の行いで不当な非難を浴びていると日本では感じていますが、韓国、フィリピン、インドネシア等の感情は反対です。ドイツは過去を処理し、現在も向き 合っていますが、日本では問題を封殺してきたので今日では圧力が高くなっていますが、はけ口ができれば防衛力整備に対する各国の見方も変わるでしょう」 ■   

2013年6月12日水曜日

V-22オスプレイ99機追加生産へ。海外販売一号はイスラエル向け


い まだにアレルギー反応としか言いようがないのが日本国内の(一部の)反対感情ですが、着実に実績を上げているオスプレイを永遠に無視できるのでしょうか。 安全保障の観点というのは国内では票にならず「アレルギー」に寛容な姿勢を示すことで選挙には勝てるでしょうが、安全保障=国民の安泰は遠のくばかりとい う事実そのものに触れるのを怖がっていていいのでしょうか。政治家が悪いのではありません。政治家を選ぶ選挙民の資質が悪いのでしょうか。ともあれ、ここ ではあがっていませんが、自衛隊のオスプレイ導入検討も水面下では進んでいるはず。どこかで「真実」を話さないといけないでしょうね。それにしてもイスラ エルにはまたもや先を越されていますね。

Bell, Boeing To Get Order For 99 More V-22 Ospreys

By Reuters
aviationweek.com June 11, 2013
Credit: Boeing

米海軍は今週にもV-22オスプレイで五ヵ年契約に調印し総額65億ドルで99機の生産をボーイングベルヘリコプターに発注する。
  1. 海兵隊のグレゴリー・マシエロ大佐Colonel Gregory Masielloによると2013会計年度から2017年度までの期間とし22機の追加オプションを含む。五ヵ年契約自体が一度は計画取りやめの危機にさらされた同機への信頼回復を裏付けるものだ。
  2. 大佐によると92機は海兵隊向けで空軍は7機を受領する。海軍航空システム司令部が統括しメーカーとの契約交渉に当たる。
  3. ボーイングとベルヘリコプターがV-22オスプレイを共同生産しており、開発当初こそ海兵隊員23名が犠牲となった事故があり難航したが、現在は戦闘下の性能を高く評価されている。ただし昨年はモロッコで海兵隊員2名が訓練中に死亡している。
  4. マシエロ大佐によれば5年契約にすることで一度に全機購入するより10億ドルの節約効果が海軍に生まれる。
  5. 海軍は三番目の多年度契約で100機以上の調達を検討中で、ここに海軍用48機のほか海外販売向け機体も含まれているという。
  6. 「詳細について今から詰めることは決して時期尚早ではありません」と大佐はいい、2007年以来実績を積み重ねてきた同機に対して海外からの需要が高まっていること、それにより米国内の発注が増えると強調する。
  7. 契約調印は6月12日予定だ。マシエロ大佐は単年度契約14億ドル相当で昨年12月に発表したものを手直ししたものだという。この変更は主契約企業二社にとって歓迎されているほか同機部品の各メーカーにとっても生産安定化につながるものだという。
  8. 現在214機のオスプレイが就役中で、実戦での飛行時間は合計19万時間に上るという。
  9. 今週はUSS Harry S. Truman艦上でオスプレイを海上物資輸送手段として各艦艇に運搬する実証実験に使うとマシエロ大佐は明かした。海軍は老朽化してきたC-2艦上輸送機を使っているが、V-22に切り替えれば数十億ドルの節約が可能だという。
  10. 大統領向け輸送部隊に2機のV-22が加わっており、その他英国、スペインにも投入中という。
  11. 同 機への海外からの関心は高く、米政府がこれまで技術説明を行った仕向け国はサウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦、イタリア、ブラジル、コロンビ ア、シンガポール、オーストラリアの各国だという。大佐は国名を明かさなかったが、ペンタゴンが三カ国と同機売却で書簡を交換中だという。
  12. チャック・ヘイゲル国防長官からは4月にV-22導入の最初の国はイスラエルと公表している。消息筋によるとイスラエルは5ないし6機のV-22を推定単価70百万ドルで購入する。■


ユーロファイター・タイフーンの輸出の鍵はレーダー改良にあり

Eurofighter Future Exports Hinge On Advanced Radar Deal

By Reuters

aviationweek.com June 05, 2013
Credit: EADS

ユーロファイター・タイフーンの輸出拡大には英国、ドイツ、イタリア、スペインの加盟各国が高性能レーダー開発の資金供出に正式合意する必要がある。
  1. 同 機導入の可能性があるアラブ首長国連邦などからはEスキャンレーダーE-scan radarsを現在のMスキャンレーダーのかわりに搭載してほしいとの要望が出ている。これを語るのはクリス・ブッシェルChris Bushell、Selexの電子戦担当上席副社長で同社はイタリアのフィンメッカニカFinmeccanicaの防衛需要電子製品部門だ。
  2. 加盟四カ国は新技術開発に2011年に原則合意しているが、正式契約の署名はドイツ総選挙をにらみ延期中で、ユーロファイターは来年上半期中までの発効を求めている。
  3. 「Eスキャン搭載なしではタイフーンの輸出は無理と思いますね」とブッシェルは見ている。「このことは加盟国で認識されているのですが、UAEが要求が厳しい顧客であることも頭に入れておく必要があります」
  4. ユーロファイター・コンソーシアム加盟国は「要求どおりの時期に」同技術が搭載されるとUAEを「確信」させる必要があるとブッシェルはいう。
  5. .昨年のインド商戦で200億ドル126機規模の輸出可能性にふたを閉ざしたのがこのレーダー問題だった。インドは結局フランスのダッソー・ラファールを選んでいる。
  6. UAEもラファールを100億ドルで購入する寸前までいったが、取引条件で不満が出てご破算にしている。このためユーロファイターに希望が出てきた。
  7. .Mスキャンとは機械式スキャン機能のレーダーで目標探知には物理的に装置を移動する必要がある。Eスキャンは電子スキャン方式で電子ビームを移動させて迅速な作動が可能。
  8. .ユーロファイター・コンソーシアムはEスキャンレーダーの初期開発に資金を投入しており、2014年第一四半期にフライトテスト予定だという。その開発日程では機体に同レーダーを搭載したものの引渡しは2017年の予定だ。
  9. なお、サウジアラビアおよびオマーンがユーロファイターを受注ずみ。■
 
 コメント EスキャンとはAESAのことでしょうね。各国の利害がからみなかなか企業体と意思決定がすすまないのでしょうね。タイフーンを日本は選択しなくて正解だったのか、それともお得意の国産化で別の機体になっていた可能性があったのか今となっては不明ですが、機体は美しいですね。