2016年12月4日日曜日

トランプの台湾電話会談の次に何が来るのか


南シナ海、東シナ海で現状維持に堂々と挑戦する中国がトランプ次期大統領の突然の台湾総統との電話会談で現状が破られることを危惧するのはなんという皮肉でしょうか。台湾の独立と繁栄を守るのが米国の大きな目標です。台湾内部の意識変化もあり、そろそろ台湾に国ではない扱いをするのを変える時期に来ているのでしょう。台湾が台湾としてのアイデンティティーを持てば(中国が一番忌避する考え)、一つの中国原則はそのままで、誰もが得をする結果になるのですが、計算高い中国人がこれに気づいていないはずはないのです。台湾侵攻のシナリオはたしかにありますが、何ら生産的な結果を招かないことも自明の理です。建前と本音をうまく使い分けられる中国人と台湾人がうまく並列できるといいですね。しかし今回の電話会談で一番びびったのは外交官僚であり親中派だったのは痛快ですね。

The National Interest

Donald Trump Talks to Taiwan: What Happens Next?

December 3, 2016


ドナルド・トランプ次期大統領が台湾総統蔡英文と12月2日に電話会談した。その事自体になんら誤りはなく、むしろ今後のアメリカの台湾政策で良い兆候となるだろう。
  1. 米台関係には中国と取り交わした3文書による一つの中国政策から制約を受けている。一部は1979年に正式に中華人民共和国を承認するため必要だったが、残りは必ずしも必要ではない。
  2. 新政権は両国交流に塞がる成約を見直し緩和にもっていくべきである。
  3. 台湾に親しみを感じる勢力がこのことを長年提唱してきた。マルコ・ルビオ上院議員(共フロリダ)やスティーヴ・チャボット下院議員(共オハイオ)はともに煩雑な制約に手をつける法案を提出しており、上院版の2017年度国防予算認可法案でも同じ内容が盛り込まれている。
  4. 米台関係では他の課題も目白押しだ。たとえば台湾向け潜水艦、戦闘機の調達は待ったなしだ。台湾関係法の理念を再度確認し、レーガン大統領が1982年に台湾に約束した「6つの保障」も活かすべきだ。
  5. また台湾の国際社会での地位拡大も模索すべきだ。これは議会が長年懸念している。
  6. 両国の軍組織の間には装備品の統合化が極めて重要でこれがないと中国の侵攻から台湾の防衛がままならい。
  7. トランプ政権は閣僚級高官を台湾に政権一年目に送り、今回の電話会談が偶発の結果ではなく今後を象徴する意味があったと証明すべきである。閣僚級人物が訪問した事例はある。迅速に行えば政策優先事項を米国が急いで見直そうとしているとがわかるはずだ。
  8. 今回の両者電話会談では同時に両国関係に制約条件も生まれる。
  9. 米国が堅持してきた一つの中国政策で手直しが必要だとしても廃止はすべきではない。これまでの中国との安定関係の礎になってきたからだ。安定は東アジアの平和と経済成長を下支えし、米国も大きく恩恵を受けている。
  10. 今後両首脳が再び電話をくりかえすとしても、あるいはその他政策変更が生まれても現状変更にはそのままつながらない。また台湾とはまだまだ実行可能な課題が多くあるのだ。■

12月4日のヘッドラインニュース



12月4日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

F-35開発推進室の存続はぎりぎりで認められた
2017年度国防予算許認可法案の政治的妥結でJPO共同開発推進室は廃止を免れたが、ペンタゴンは来年3月までに事業統括の代替策の提出を求められている。

ミニドローンを運用するオスプレイ
先行飛行させ着陸地点の情報を送る無人機をオスプレイに搭載する構想をペンタゴンが検討中。

EU防衛行動構想が公表された
加盟国の集団安全保障作として年間55億ユーロを基金に繰入れ、各国の防衛体制の変化を奨励する内容だ。既存の各国防衛方針の調整変更から装備調達までこれまでの方向性を変えようとするもの。

敵装備を乗っ取る新技術が開発中
米政府は産業界とともに敵通信制御を奪い、無人機など装備を自由に操る技術を開発中。これまでの技術は通信妨害に注力していたが、新技術Mesmerは通信の奪取が目標だ。
USSズムワルトの修理作業はどこまで進捗しているのか
パナマ運河で機関故障が発生し回航途中で修理を受けけている同艦だが、高性能誘導モーターからシャフト周りが浸水していた。出港の準備が整い、サンディエゴへ向かう。

ユーロファイター・タイフーンが南シナ海上空へ投入される
日本へ展開中のタイフーンを送る他、2020年に就航する英空母部隊も西太平洋に展開すると駐米英国大使が語った。ワシントンの会合での発言。駐米日本大使も同席し、日米英三国が安全保障で協議していることを明らかにした。タイフーンは10月末に日本へ到着している。




2016年12月3日土曜日

歴史のIF ② フォークランド戦争でアルゼンチン潜水艦の魚雷が機能していたら


ASWが困難であることに改めて驚かされます。もっとも英海軍はフォークランドでは対潜哨戒機を運用できず能力で限定があったのでしょうが、ディーゼル潜水艦とは言え大きな脅威になることを示していますね。

The National Interest


How the Falklands War (Thanks to a Stealthy Submarine) Could Have Gone Very Differently

November 27, 2016

1982年に発生した短期間ながら熾烈なフォークランド諸島(アルゼンチン名マルヴィナス)をめぐる戦闘は英国海軍力による勝利と受け止められている。英海軍任務部隊は激しい航空攻撃をものともせず南大西洋でアルゼンチンから領土を奪還した。

  1. 戦いの殆どでアルゼンチン海軍のディーゼル動力潜水艦サンルイが英海軍に立向かっていた。同艦へほぼ200発の対潜兵器が向けられたが無傷で帰港している。同艦は対潜フリゲート艦に2回も攻撃するチャンスがあり、兵装が正常に作動していれば英国の勝利は大きな代償を求められていただろう。
  2. アルゼンチン軍事政権はフォークランド諸島を占拠し、国内政治で点数稼ぎを狙った。実際に開戦になるとは考えなかった軍事政権は判断を誤り、英国首相マーガレット・サッチャーが事態をエスカレートし軍部隊を迅速に動員するとは予期していなかった。
  3. 作戦立案の不備を如実に語るのはアルゼンチン海軍の潜水艦部隊だ。機関不調で潜行できず、修理に入っている艦もあった。旧式のサンタフェがフロッグマン部隊を送り、4月2日の侵攻当日を支援したが、その時点で最新鋭のサンルイはその翌日に出港しマルヴィナス周辺で戦闘哨戒を実施する命令を受けた。
  4. サンルイはドイツの209型ディーゼル潜水艦で小型かつ費用対効果の高い潜水艦で大量に建造された途上国向けの艦だ。排水量は1,200トンで36名が乗り組む同艦はマーク37対潜魚雷14発とドイツ製SST-4有線誘導式対水上艦魚雷10初を搭載。潜行時に42キロ、浮上時に21キロの速度を誇り、500メートルまで潜行可能だ。
  5. 同艦乗員の技量が逸話になってているが、フォークランド戦争の時点でアルゼンチン海軍の最良の乗員はドイツにいた。かわりにサンルイには経験の浅い乗員が乗っていた。艦長フェルナンド・アズグエタ中佐は潜水艦のベテランだったが209型の経験は浅かった。
  6. さらにサンルイの艦の状態はひどいもので中途半端な修理を拙速で受けていた。シュノーケルは漏れ、排水ポンプは作動不良で4基あるディーゼルエンジンの一つは故障していた。潜水夫がほぼ一週間かけて艦体とプロペラからフジツボを除去しないと速度と静粛性が確保できなかった。
  7. 同艦は4月11日に出港し、政治状況が悪化する中、指定地点で待機に入った。最初から不具合にあう。火器管制装置は魚雷3本を同時に発射してしまう。出港後8日目で故障して、乗員は修理方法もわからない。手動有線誘導で一本の魚雷を発射するのがやっとだったが、サンルイはそのまま任務を続けた。
  8. 一方、サンタフェは第二次大戦中の旧米海軍潜水艦バラオ級で4月17日に海兵隊員及び技術要員をサウスジョージア島へ移送すべく派遣された。同島はアルゼンチンが占拠しており、同艦は4月25日に隊員を下船させていたが出港が遅れ、午前9時に英ウェセックスヘリコプターのレーダーで探知され、ただちにワスプ、リンクスのヘリコプター部隊が飛来した。サンタフェには二発の爆弾が命中し損傷したが、AS-12対艦ミサイルも命中した他、機関銃掃射を浴びてしまう。同艦は座礁したあと、英軍が捕獲した。サンタフェへの攻撃が英軍攻撃の幕開けとなった。
  9. 翌日サンルイは哨戒を命じられ、4月29日に英艦攻撃許可が出た。
  10. ただし英海軍はサンルイの通信内容を傍受しており、同艦を狩るヘリコプターとフリゲート部隊を準備した。英艦隊には対潜任務用のフリゲート、駆逐艦とヘリコプター空母一隻があり、潜水艦6隻も待機していた。
  11. 5月1日にサンルイのパッシブソナーが対潜フリゲートのHMSブリリアンとヤーマス二隻を探知した。アズクエタ艦長はSST-4魚雷一発を9キロ地点から発射したが直後に誘導線が切れた。艦長は急速潜航し海底で隠れようとした。ブリリアントが攻撃に気づき、フリゲート艦二隻はヘリコプターとソナー探知の正体を突き止めようとした。爆雷30発、魚雷数発を発射した英艦はクジラ数頭を殺しただけだった。
  12. その翌日、英潜水艦コンカラーがアルゼンチン巡洋艦へネラル・ベルグラーノを撃沈し乗員323名が犠牲になった。アルゼンチン水上艦はすべて本国近海に逃げ、英侵攻部隊に立ち向かうのはサンルイのみとなった。英部隊は各所でソナー探知と潜望鏡を目視したとし、サンルイがいない海域で魚雷発射していた。
  13. 一方でサンルイの乗員は5月8日に英潜水艦からの魚雷攻撃を受けたと思い込、回避行動をとり、マーク37魚雷を海中の探知目標に発射し、魚雷は爆発して目標は消えた。これもクジラと思われる。
  14. その二日後にサンルイはタイプ21対潜フリゲート艦HMSアローおよびアラクリティをフォークランド海峡の北方で探知した。高速走行するフリゲート艦が立てるノイズに隠れてサンルイはアラクリティから5キロ地点まで接近し、SST-4魚雷一発を発射し、次発の準備に入った。
  15. だが再びSST-4の誘導線が発射直後に切断してしまう。ただし、一部の説明ではこの魚雷はHMSアローの曳航していたおとりに命中したものの爆発しなかったとある。アズクエタ艦長は二発目発射を諦め、反撃を受けないうちに離脱を命じた。
  16. 英艦はそのまま航行を続け、攻撃に気づいていない。アラクリティ艦長に至っては終戦後になって初めて知ったということである。
  17. 落胆したアズクエタ艦長は本国に向けて魚雷が役立たずだと打電すると帰港許可の通信が入ったため5月19日に基地に戻った。アルゼンチン占領部隊が降伏したのは6月14日でサンルイは結局再度戦場に出動できなかった。15年後にサンルイは退役した。
  18. サンルイの魚雷で何が問題だったのだろうか。説明は多々あり、乗員のミスや技術上の不良がいわれる。メーカーのAEGからは魚雷発射が遠すぎたとの説明があったし、アルゼンチン乗員が誤ってジャイロの極性を反対にしてしまったとの説もある。このため魚雷が制御できなくなったという。ただし、魚雷の爆発部が活性化されず深度を維持できなかった証拠がある。そのせいか、AEGはフォークランド紛争後に同社魚雷の改良を数次に渡り実施している。
  19. サンルイは高性能潜水艦ではなく、乗員も卓越した技能はなかった。それでも有能な艦長の指揮下で通常戦術を駆使しながら対潜フリゲート艦から逃げ回ることができた。しかもフリゲート艦は世界有数の海軍国の所属だった。魚雷が予定通り作動していれば逆に数隻を撃沈していたかもしれない。
  20. 英海軍は高価な対潜兵器とヘリコプターを2,253ソーティ送り出して実際に存在しない探知目標を狩ろうとし、サンルイは結局探知できていない。
  21. 第二次大戦後の潜水艦戦は幸いにもきわめて事例が少ない。フォークランド戦争の教訓から安価なディーゼル潜水艦でも乗員が有能で装備がよく整備されていれば侮れない敵になることがわかったのである。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: South African Type 209 naval submarine SAS Charlotte Maxeke. Wikimedia Commons/LA(Phot) Caroline Davies/MOD


ヘッドラインニュース12月3日


12月3日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

中国J-16戦闘機の供用開始か
Su-30MKKを参考にしたといわれるJ-16がまず少数中国海軍に配備開始した。今後、海軍向け機材、電子戦機材を加え、J-20等を補完する戦闘機部隊の中核になることが期待されている。
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韓国がフィリピン向けF-50PH二号機三号機を納入
KAI韓国航空宇宙工業がフィリピン空軍用に製造した高等練習機F-50PH2機が台湾高雄空港に11月30日到着し、フィリピンに12月1日到着する。

ボーイングT-X初飛行の準備進む
ボーイングがSaabと共同で開発中の米空軍向け次期練習機案T-Xが年末の初飛行に向けて順調に準備作業を進めている。米空軍からの最終提案要領は12月に提示されると予想され、初飛行と同時並行になりそうだ。ボーイングは将来は同機の派生型追加を予想している。

極超音速ミサイルの脅威
中国、ロシアが整備を進めていると言われる制御可能な極超音速ミサイルの脅威と対応策をまとめた報告書を米空軍が発表。中国の飛翔体DF-ZFは今年4月に実験をしており、ロシアもYu-71飛翔体の開発を進め、2020年ごろには実用化されるとの予測もある。対応策としてロッキード・マーテインはTHAAD改良型を提案している。

Operational flight information for high-speed maneuvering weapons

次のアジア内武力衝突は水資源をめぐる戦いになる
源流を管理する中国に対して南アジア、東南アジア、中央アジアが強い警戒心を抱いている。


F-16はまだ商売になると意欲を見せるロッキード
F-35生産が軌道に乗らないままだが隣のF-16生産ラインを閉じる予定はまだない。最新のV型をアジアから中東にかけて売り込み中だが、人権問題を理由にバーレーン向け商談は国務省が首を縦に振ってくれず、パキスタン案件は財務保証がつかず暗礁に乗り上げている。



2016年12月2日金曜日

サイバー企業がスパイ活動のフロント、 中国企業へ警戒の目高まる


ファーウェイは日本でも着実に利用者を増やしています。Lenovoへも英米情報機関が警戒の目を向けていますが、こういった表向きはまともな中国企業が西側の日常生活に溶け込んできた分だけリスクが増えているということでしょうか。ビジネスと割り切るだけでは済まされない話です。

Pentagon Links Chinese Cyber Security Firm to Beijing Spy Service

Joint Staff warns of cyber espionage dangers

Chinese soldiers browse online news on desktop computers / A
November 29, 2016 5:00 am
中国サイバーセキュリティ企業が秘密のうちに中国国家安全省に協力してサイバースパイ活動を展開しているとペンタゴン情報関係者が伝えている。
  • その企業、博御信息 Boyusec (Bo Yu Guangzhou Information Technology Co)華為技術 ファーウェイHuawei Technologies と提携関係にある。ファーウェイは米情報部門から中国軍とのつながりを指摘されている企業だ。
  • ペンタゴン統合参謀本部のJ-2情報局による内部報告書によれば博御信息と華為は共同で保安製品をつくり、中国製コンピューターや携帯電話に組み込み、中国側にデータを送り、コンピューターや通信機器を制御しているという。
  • 「国家安全省と華為とともにマルウェアを使いデータを盗み取り、機器の制御を乗っ取る事業を開始している」と博御信息関係者が述べている。
  • サイバー保安会社を隠れ蓑にして情報収集をすることはロシアも行っており、中国はその流れに沿っているだけだと専門家は見ている。
  • 国防情報局はロシアのカスペルスキーがセキュリティソフトを産業用機器制御ネットワーク向けに販売しているが、実はサイバーでの危険度が生まれると警告している。
  • 中国、ロシアそれぞれの国家機関が電力配電網含むアメリカの重要インフラネットワークに侵入していることは米側も認識している。
  • 博御信息は広州に本社があり、華為は「協力企業」だとし、広州情報保安評価センターも同時に協力機関と表現しているが、同センターはソフトェアの保安評価を行うれっきとした政府部局である。
  • 博御信息からはコメントは出ていない。また統合参謀本部もコメントを出していない。
  • 中国企業が国家保安省とのつながりがあることが判明したがさらにニューヨーク・タイムズが中国が一部アンドロイド携帯電話にソフトウェアをインストールし、気づかれないままバックドアとなり端末情報を3日ごとに中国へ送信していると11月に伝えている。
  • Kryptowireの専門家がこの秘密送信ソフトの製造元をShanghai Adups Technologyとつきとめており、約7億の携帯電話等デバイスに組み込まれているという。このソフトウェアは華為製品の他にZTE製の通信機器にも入っている。
  • 華為は2009年のペンタゴン報告書で「人民解放軍と密接な関係があり研究開発で協力している」と指摘されている。
  • CIA内Open Source Centerが2011年に発表した報告書で華為会長Sun Yafangが国家保安省の通信局で勤務していた職歴がわかる。
  • 同報告書によればSun会長は国家情報部門とのつながりを利用して華為の財務危機を乗り切ってきたという。
  • エドワード・スノウデンが暴露した米国家安全保障局NSAの内部文書によると、同局が華為の社内通信ネットに侵入し華為製品が納入されているイラン、アフガニスタン、パキスタン、ケニア、キューバ国内の通信を傍受しているという。
  • そのNSAが華為製品を通じて中国がサイバー攻撃を実施する危険性を指摘している。
  • 「華為製品が広く普及していることからPRCがSIGINT能力を利用して機能停止を発生させる形の攻撃をしてくる可能性がある」とNSAの「極秘」説明資料にある。.
  • NSAは華為によるサイバー危険度は国家情報評価報告でも認知されていると述べている。同報告は全米情報16機関がお墨付きを与える内容である。
  • 「米情報インフラへの世界規模でのサイバー脅威」の表題の文書では「国際企業や海外の人物が米情報技術のサプライチェーンに重要な役割を果たしており、その分だけ密かに転覆破壊活動が進む可能性が高まっている」と指摘している。
  • ジョン・トゥカシックは元国務省関係者で博御信息に保安上のリスクを感じているという。「ペンタゴンのサイバーコムにいたらBouysecには目を光られせるでしょうね。また同社が米系企業に積極的に営業をかけるのを見たら警告を出しますよ」
  • 「米国に有効なサイバー攻撃能力があれば、即座にランサムウェア攻撃を実施して思い知らせてやりますよ」
  • トゥカシックによれば中国のサイバー保安企業が中国情報部と共同作業していると聞いても「犬が人を噛むような」話で驚くべきことはないという。「米国のサイバー反撃があれば人が犬を噛む話になりそうなってもサイバー界には動物愛護団体はないので問題にはなりません」
  • 米議会内の中国問題委員会による年次報告書の本年度版がこの度公表され国家安全省が国務院の下で民間スパイ活動の中心だと述べている。
  • 「同省は各種情報収集活動を展開し人を介した情報収集活動HUMINTやサイバー作戦を実施している」(同報告書)
  • この内サイバー諜報活動について「中国には大規模かつ高度なサイバー活動を行う専門機関が種々ある」と説明している。「中国の情報機関は後半な能力があることを示しており、米国家安全保障分野や民間分野にサイバーで侵入している」
  • 国家安全省は同委員会によれば米国家人事管理局をハッキングし、およそ22百万名の連邦職員情報を盗み取ったと同委員会は指摘しており、機微情報として身元調査結果も流れているという。
  • また同報告書によればサイバー攻撃で米外交、経済、国防産業の各分野の情報を収集しているという。
  • こうした情報入手で中国の国防産業やハイテク分野は大きな恩恵を受けており、同時に中国共産党は重要問題に際して米側の視点を先に理解している。
  • 「さらに狙われた情報により中国の国防計画部門が」米国防ネットワークの全体像を把握し、軍事能力を把握して有事の際対応を図る可能性があると報告書は警告する。
  • 実行犯は中国の国家組織内のハッカーだけでなくサイバースパイや犯罪者も含む。
  • 「これまでは政府外の実行者がもっぱらサイバー情報活動をしていたが中央統制で専門的な機能として当該情報機関内にい関する動きがある」(同報告書)■

12月2日のヘッドラインニュース



筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

F-22ステルス性能の維持は大変
シリア出始めて戦闘投入されてから二年が経つたが、機体表面の特殊塗布が剥離する問題に直面しているF-22で米空軍が苦慮している。塗布面に「シワ」が見つかり、レーダーに見つからないという低視認性が揺らいでいるためだ。

2017年度米国防予算
6190億ドルの新予算案では陸軍削減の動きに歯止めをかけ、サイバー軍団を独立させるが、F-35追加購入、F/A-18、B-21、フォード級空母での大きな動きはない。2017年度国防予算認可法としてオバマ政権による予算要求に32億ドルを追加した内容は下院審議を経て上院に送られる。


中国サイバーセキュリティ企業がスパイ活動
中国サイバーセキュリティ企業Bo Yu Guangzhou Information Technologyが国家保安省の情報州活動の隠れ蓑になっていることを米国貿情報関係者が明らかにした。同社は中国通信機器大手Huawei華為技術とも関係が深いが、Huaweiは中国軍とつながっていると判明している。両社は共謀して中国製品にマルウェアを組み込んで情報収集にあたっているとペンタゴンは判定。ロシアのカペンスキーも要注意企業と認定されており、ともに米国内の重要インフラ系統図を作成していたという。

陸自89式小銃はすごい
豊和工業(愛知県)が製造するNATO正式弾5.56mmを使う45口径自動小銃の唯一の問題は世界に匹敵する他例がないことだが、生産はまだ10万丁にすぎず、自衛隊は旧式の64式小銃も使っている。

KC-46の次はKC-Yだ
KC-46はもともとKC-Xとして企画された。米空軍航空機動軍団は高度技術を応用したKC-Zを調達する前につなぎでKC-46の改良型を調達する考え。だがここにきてKC-Yの可能性も出てきた。




F-35Cは空母でどう運用されるのか
米海軍初の艦載ステルス機材として同機は2018年からいよいよ実戦配備される。C型が搭載するデルタフライトパス装置により着艦時のパイロット負担は大幅に軽減される。海軍が同機を重要な紛争地点に派遣するのは必至だろう。


2016年12月1日木曜日

★★この写真一枚で中国が怯える理由があるはず(日本向けF-35初号機)





The National Interest


This Photo Has China's Military Scared Stiff (Japan Now Has the F-35)

November 30, 2016


日本向けのロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機初号機がルーク空軍基地(アリゾナ)へ昨日到着した。

  1. 航空自衛隊にとっては第五世代ステルス戦闘機の配備に向けた第一歩になる。日本は高まる中国の脅威への対応能力向上に期待している。有償軍事援助(FMS)制度により日本は米空軍予備役第944戦闘機飛行隊と現役第56戦闘機飛行隊の要員からパイロット訓練を受ける。
  2. 日本向け1号機は2016年9月23日にロッキード・マーティンのフォートワース工場(テキサス)をロールアウトしている。日本は米国製造機材を4機発注している。残る38機は名古屋で組立る。日本のパイロット、整備員の訓練はFMS制度による初の養成事例となる。その他国の要員はF-35共同開発国としてルーク空軍基地で養成されている。
  3. 人民解放軍空軍、海軍の装備近代化が迅速に進んでいる中でとくにJ-15、J-16のような第四世代機に日本はマクダネル・ダグラスF-4EJファントムII、ボーイングF-15Jイーグル、三菱重工F-2で対応しているが、防空の実効性、反撃力で課題を実感しているところだ。
  4. そこにF-35が投入されれば、空対空戦闘機としてステルス性能、センサー能力、ネットワーク機能もあるが真価は強固な防空地域への侵攻攻撃能力にある。中国のA2AD体制がロシアからS-400も導入して一層強力になる中で、日本がF-35を導入したことで中国の軍事冒険主義への抑止効果が生まれるだろう。■
Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.
Image Credit: U.S. Department of Defense.



ヘッドラインニュース12月1日


12月1日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

日本向けF-35A初号機がルーク空軍基地へ到着
11月28日にアリゾナ州内の同基地に移動した。日本は機体を11月17日に受領している。今後同基地内で各国向け機体とともに要員訓練に供する予定。防衛省が発表しt.


ポーランドに米製スタンドオフミサイル供与
米国務省はポーランド向け有償軍事援助総額200百万ドルでスタンドオフミサイルJASS-MRの提供を承認した。国防安全保障強力庁が発表した。ポーランド空軍はF-16C・D型に搭載して運用する。


ロシア海軍機はシリア地上基地から運用か
ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフが搭載していたジェット戦闘機はシリア国内のロシア基地から運用していることが衛星写真で確認された。ロシア海軍のSu-33が8機とMiG-29KR1機がラタキア地方にあるロシア空軍基地フマイミムにあることがわかった。クズネツォフが搭載するMiG-29の一機が11月14日に着艦に失敗し墜落している。海軍機がフマイミムからシリア北東部の空爆に加わっていることが西側に確認されている。

南シナ海の中国空軍基地は有効活用できるのか
中国はスプラトリー諸島で滑走路三本を整備し、防御用にHQ-9対空ミサイル(射程200キロ) YJ-12対艦ミサイル(同300キロ)を設置済み。機材としてJ-11やJH-7(同1,500キロ)を持ち込んでいる。中国はこの新基地をどう運用するつもりなのか。


ソマリアでの米軍活動拡大に法的根拠つく
ソマリアで米軍の活動が増大する中オバマ政権はソマリアを9/11以後の対応対象に指定し、アルカイダ派のシャバブを対象とした空爆、その他作戦を米軍が行う根拠が整備された。トランプ次期政権に引き継がれ、アフリカ連合とソマリア政府の支援が大義名分となる。



2016年11月30日水曜日

★歴史のIFシリーズ① 朝鮮戦争で原爆投下が行われていたら?



韓国が政情不安定になっていますが、60数年前には文字通り存亡の危機に会ったのですね。その際に原爆で戦局を打開していたらどうなっていたのか、という考察です。ところで朝鮮戦争の相手は日本だったと信じる若い世代が韓国に存在すること自体に疑問を感じますが。

War Is BoringWe go to war so you don’t have to
A Climax Event nuclear blast at the Nevada Proving Ground on June 4, 1953.

Whew — Let’s Be Glad the United States Didn’t Go Nuclear During the Korean War

Gen. Douglas MacArthur’s push to direct an atomic onslaught at China would have ended terribly

by ROBERT FARLEY
1950年のこと、鴨緑江から中国軍が来襲し米軍部隊の戦線が崩壊しかけダグラス・マーカーサー大将は中国へ戦略爆撃を要請した。これを聞いた関係者は原爆投下も予期した。当時原爆を保有していたのは米国だけで「一方的な優位性」があった。
アメリカの原爆保有数と戦略爆撃機はソ連に対するアメリカの優位性の証だった。
これに対しソ連赤軍には戦闘経験を重ねた膨大な兵力があり、東欧から短時間で西側に侵攻できた。当時はソ連本国を原爆で壊滅する能力があってこそソ連侵攻を食い止められると考えられていた。またモスクワが朝鮮半島の戦闘を裏で画策していたと信じる向きが多数だった。
ではなぜ米国は朝鮮戦争で原爆を使わなかったのか。使っていればどうなっただろうか。

実際の戦況

朝鮮戦争で1950年に重要局面が3つあった。まず6月に北朝鮮が38度線を超え全面侵攻を開始し、以後数年間続く戦乱の諸端となった。9月に米軍がインチョン上陸作戦をすると北朝鮮は攻勢を終え以後守勢に回る。だが10月末に中国人民解放軍が介入し、国連軍は38度線の南まで後退を迫られる。
その時点でマッカーサーが要請を出すと、米国内では原爆投下の主張が出た。ソ連も原爆開発中だったが、米国は原爆で圧倒的優位があり運搬手段も確立していた。
NB-36H は原子炉を搭載した実験機だった。 U.S. Air Force photo

戦略核か戦術核か

1950年当時の米国防関係者は核兵器運用の計画立案および仕様に関し詳細な準備ができておらず、目的別や種別毎の使用構想はないまま、核兵器は通常兵器の体系に入れたままだった。
米国は原爆使用を「戦術」「戦略」の区分を迫られていただろう。
戦略攻撃は中国国内の産業施設、政治指導部を狙い、中国を崩壊させるか、戦闘中止に追い込むのが狙いだった。毛沢東は人民解放軍を参戦させる際にこの事態は予測していた。
中国の人口規模と産業の分散状況を考えると、この作戦には当時の初期的な原爆を多数投下する必要があった。また中国に原爆攻撃を加えること自体に米国防関係者の反対意見もあった。
国防関係者の主流派にとって中国とはソ連の傀儡国であり西側を混乱させ封じ込め体制を崩す勢力という認識だった。そんな中国に無駄に原爆を投下すればソ連産業力を温存させ、世界各地で代理戦争を増やす効果しかないとの見方だった。
当時運用してたB-36ピースメイカー爆撃機を中国爆撃に投入すれば戦略空軍の戦力が消耗していた可能性がある。同機の防御力には疑問があったためで、その場合の米国にはソ連への攻撃手段がなくなっていただろう。
もし米国が戦術爆撃同様に核兵器を集中投下していたらどうなっていただろうか。
まず、数少ない原爆を「戦術」目標に消費することは考えられないことだった。運搬手段にも限りある中で無駄な使い方は許されなかった。
たしかに中国や北朝鮮の司令部、補給処や部隊集結地は核攻撃の前にはひとたまりもない。核兵器は威力を発揮しただろうが、韓国政府は自国内で核の壊滅的効果を自ら招けば以後の統治正当性を失っていただろう。
北朝鮮元山を空爆する米空軍 in 1951. U.S. Air Force photo

当時の実際の状況

最近の研究から当時米国が核兵器使用をためらった別の理由がわかってきた。米国が一方的に自制したと信じる向きがあるが、実は両陣営それぞれ軍事力の浪費を避け、戦線拡大を避ける配慮をしていた。
米軍は戦線が拡大すれば朝鮮半島防御ができなくなるとおそれ、人民解放軍も相当の予備兵力と空と陸で残して米国が全面戦争に踏み切ったときに備えていた。
もう一つ重要なのがソ連が大きな影響力を及ぼしていた可能性だ。中国、北朝鮮へ装備提供を増やす、あるいはソ連地上軍、空軍、海軍の直接投入に踏み切っていたかもしれない。
もし米国が全力投入していれば、ソ連軍には東アジア地区の米軍をうわまわる兵力があったため米軍が朝鮮半島から全面撤退していたかもしれない。
結論
朝鮮半島で原爆投下していれば、恐ろしい結果が両陣営に待ってていただろう。米国は戦略上の優位性を低下し、共産陣営が一層の力を行使する結果になっていたかもしれない。韓国、北朝鮮は人的被害を相当被っていたはずだ。
世界が核兵器をタブーとみなさなくなり、政策決定の場で原爆も一般の爆弾同様に取り扱われていただろう。原爆を使っていればもっと由々しき事態がその後発生していただろう。■