2017年7月5日水曜日

★★北朝鮮の動向を知りたければコブラボールをネットで追跡すればよい



ここまでちゃんとフォローしている人がいるんですね。すごいですね。でももっとすごいのはこれだけの機材装備を維持し、事前情報で警戒飛行をさせている米軍の存在ですね。ここまでの装備を自前で運用するより米軍に便宜を提供し情報をわけてもらうほうが実際的なのでしょうね。しかし日本もできるところからISR能力(機材プラス情報分析)を充実させていくべきでしょうね。

 

Wanna Know If A New North Korean Missile Test Is About To Take Place? Look For This U.S. Aircraft Online…

北朝鮮ミサイル実験の実施は米軍機の動きをオンラインで調べればよい

 Jul 04 2017
  1. 米RC-135Sコブラボールがミサイル発射の最終段階で弾道ミサイルを追尾する様子をオンラインで見られる。
  2. 7月4日早朝北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に初めて成功した。
  3. ICBMはHwasong火星-14とされ、高度2,802キロに達したと国営朝鮮中央テレビ(KCTV)が伝えている。ミサイル発射地点はPanghyon方峴で朝鮮半島から東方向に930キロ飛翔した。
  4. 今回の発射も前回同様に米軍が監視し、空中、地上、海上の核装備を動員した。
  5. 米空軍はRC-135Sコブラボールミサイル追跡機を動員した。オファット空軍基地(ネブラスカ州オマハ郊外)所属の動機は第45偵察飛行隊が運用し弾道ミサイルの搭載する再突入体や弾頭の最終段階での追跡に投入される。強力なレーダーをコックピットすぐ後ろの機体右側に搭載している。また観測窓も右側にあり、赤外線や可視スペクトラムカメラで飛翔の最終段階での弾頭部分を記録する。コブラボールの右主翼は低反射性黒色塗料で包み撮影効果を上げている。
嘉手納を離陸するコブラボール May 31, 2016 (screengrab from YT video by okuchan2006)
  1. 横田空軍基地にコブラボールが二機 (61-2662、 61-2663) 配備されているのは驚くべきことではない。北朝鮮でミサイルテストの兆候があると同基地から同機が発進している。だが驚くべきことはこれだけ重要なRC-135Sをオンラインで飛行状況を追尾できることで、これは同機のモードSのADS-Bトランスポンダー信号をモニターできるためだ。
  2. 日本配備のRC-135Sの動きを観察すれば北朝鮮で何が起こっているのか、起ころうとしているのか理解できることになる。たとえば昨日のコブラボールが横田を離陸し空中にあったのは米情報機関が発射地点を探知しテストの監視に備えていたためだ。このため筆者はツィッターに以下投稿した。(ICBMテストの報道がその後出て確認された)
Won't be surprised if North Korea conducts a new test in the next hours. https://twitter.com/civmilair/status/881997369994301441 …
(北朝鮮がテストをあと数時間で実施しそうだ)
  1. 今回が初めてではない。単なる偶然の一致なのか。おそらく違う。コブラボールは頻繁に飛行しているわけではなく、飛行状況をオンラインで追尾すると北朝鮮のテストと一致している。
  2. 例をあげよう。
  3. 4月15日に北朝鮮が型式不詳の陸上配備ミサイルをシンポ海軍基地から発射した。RC-135Sはその時日本上空を飛行していた。
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Cobra Ball popped up again briefly.
Japan area... (コブラボールがまた短時間見つかった。日本だ)
US Air Force
RC-135S 61-2662
  1. 5月13日には北朝鮮が中距離弾道ミサイルを西海岸から発射した。発射高度は当時記録の2,100キロに達したが、コブラボールは空中で監視し情報収集にあたっていた。
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Mode-S detected. No position showing.  (モードSを探知。飛行地点は非表示)
Cobra Ball - Ballistic Missile detection a/c
🇺🇸 US Air Force
RC135S 61-2662
  1. 6月20日にはコブラボール一機とWC-135コンスタントフェニックス「核嗅覚機」が日本上空を飛行していた。その後、スパイ衛星により北朝鮮核実験施設で新たな活動が探知されている。
This might explain (confirm the reason behind) those Cobra Ball and Constant Phoenix aircraft tracked earlier @CivMilAir@aircraftspots https://twitter.com/barbarastarrcnn/status/877265895470624768 …
(これでコブラボール、コンスタントフェニックス機を追尾できた理由が説明できるね)
  1. 金正恩が次のテストの準備に入っているか知りたいときはコブラボールまたはコンスタントフェニックスが日本上空を飛んでいるか調べればよい。ADSB交信状態あるいは同機の動向を追っているツィッターアカウントをフォローすればよい。たとえば@CivMilAirはRC-135やWC-135のフライト状況を筆者に伝えてくれる友人だ。■

7月5日米韓両国がミサイル発射で北朝鮮ICBM発射に対抗


半島情勢がエスカレーションしてきました。ただし、この反応はどうなんでしょう。牙を見せたということでは意味があるとは思いますが。前日のミサイル発射を実施した北朝鮮は独立記念日を狙った確信犯であり、米軍の対応がこの程度と見て嘲笑するでしょうが、長い(短い?)導火線に自ら火をつけてしまったのではないでしょうか。同国が地図上から消える日が近づいてきたと思います。北朝鮮労働者を受け入れている国はまだあちこちにあるようです。


2017年7月5日、M270多連装ロケット発射装置でMGM-140陸軍戦術ミサイルを日本海に向けて発射する韓国-米国合同第二師団隷下第210野戦火砲旅団第18野戦砲撃連隊第一大隊。米韓両国は5日に合同演習を実施し北朝鮮のICBM発射テストに対応した。 U.S. ARMY PHOTO

US, S. Korea fire missiles in warning to North

米韓両国がミサイル発射で北朝鮮へ警告

 By KIM GAMEL | STARS AND STRIPESPublished: July 4, 2017

SEOUL, South Korea – 米韓両国は7月5日ミサイル数発を警告発射し、北朝鮮の大陸間弾道弾発射に対応した。
  1. レックス・ティラーソン国務長官が同日北朝鮮が打ち上げたミサイルをICBMであると確認したのを受けて発射されたもの。長官は米国、同盟国、協力国のみならず域内、世界規模で脅威が増加したと指摘。
  2. 米太平洋軍は初期評価で中距離弾道弾としていた。
  3. 第8陸軍の公式声明では両軍は韓国東沿岸沖合にミサイルを撃ち込んだと発表。
  4. 今回の発射は異例の形で、北朝鮮が前日発射したミサイルに直接関連させ「北朝鮮による安定に害を与え非合法の7月4日の行動に対抗するもの」としている。
  5. 米軍は特定の出来事に言及することを通常は避けており、合同軍事演習は防御を旨とすると主張してきた。
  6. 第8軍によると米陸軍の戦術ミサイルと韓国のHyunmoo(玄武)ミサイルが発射された。「迅速に展開し発射できた」とし、「遠距離を正確に攻撃できる能力により米韓同盟はいかなる天候条件でも常時重要目標を攻撃できる」
  7. 北朝鮮は4日、Hwasong火星-14ミサイルが金正恩委員長が見守る中で発射されたと発表。39分間飛翔し、最高高度は1,740マイルに達し、日本海に落下した。移動距離は580マイルと同国国営通信は伝えた。
  8. ミサイル実験はほぼ一か月振りで米韓両国の首脳がワシントンで初の会談を行った数日後のことだった。
  9. ティラーソン長官は国連安全保障理事会に対し一層強硬な対北朝鮮措置を求める意向と述べた。
  10. 「世界規模の脅威を食い止めるためには世界規模の行動が必要である」と声明文を発表し、北朝鮮労働者を受け入れる国は北朝鮮に経済軍事効果を提供し国連制裁措置に違反することで「危険な国家体制の支援、ほう助につながる」と警告。
  11. ティラーソン長官は米国は朝鮮半島非核化を平和的に希求しており、「核武装した北朝鮮は絶対に受け入れられない」と強調した。■

2017年7月4日火曜日

北朝鮮がICBM発射成功と発表、SM-3で日本は守れるのか


 

北朝鮮がICBMを完成させたといっていますが、今の段階ではアラスカに辛うじて飛ぶ程度でしょう。それでも米ミサイル防衛体制がいよいよ本土防衛を重視する方向に切り替えを迫られかねず、日本のミサイル防衛体制が一層注目されそうですね。


Can America's SM-3 Missile Protect Japan from North Korea? SM-3ミサイルで北朝鮮脅威から日本を守れるか


July 3, 2017

  1. 日本の自衛隊は通常の軍隊ではない。第二次大戦後の憲法で海外で戦闘行為を禁じているためだ。とはいえ日本が北朝鮮から脅かされるのは国内に米軍基地を抱えるためだが、そもそもは1998年にテポドン-1ミサイルが日本領空を横切り飛翔したことが出発点だ。
  2. その後も北朝鮮はミサイルテストを繰り返し、本日も行った。北朝鮮は米西海岸を直撃できる大陸間弾道弾の完成に向け作業中だが、すでに日本は北朝鮮の中距離弾道ミサイル(IRBM)の射程に入っている。発射後10分で日本本土を直撃するはずだ。
  3. 日本は独自の対抗策で北朝鮮ミサイルに対応している。PAC-3ペイトリオットミサイル地対空ミサイル部隊6個を展開し、駆逐艦4隻に長距離SM-3ミサイルを搭載している。ただしいずれも高速で高高度飛翔するIRBMに有効対応できるか未実証だ。マッハ4で飛ぶPAC-3の有効射程はわずか30キロで局地防衛手段でしかない。
  4. そこでSM-3の新型超長距離型を三菱重工レイセオンが共同開発中であり、IRBM発射後の加速段階や中間飛翔段階で迎撃を狙う。ただし残念ながら同ミサイルは迎撃テスト二回目で失敗し、弾道ミサイル防衛体制が未完成だと露呈している。それでも日本は陸上運用でSM-3を導入しミサイル艦を補おうとしている。
  5. スタンダードミサイル3は別名RIM-161で米海軍の駆逐艦巡洋艦でミサイル防衛ミッションの手段となっている。各艦は洋上の機動発射台となりイージス戦闘システム、各種ミサイルに対応する垂直発射管を搭載する。さらに弾道ミサイルに精密機能が加わり対艦兵器になる可能性が出てきたおり艦船防御用にも弾道ミサイル迎撃装備が使われそうだ。
  6. 三段式固体燃料ロケットで飛翔するSM-3を誘導するのはSPY-1レーダーでGPSと衛星航法からも支援を受ける。標的に近づくと軽量大気圏外発射体により運動エネルギーだけで飛来するミサイルを破壊し、爆発物は使わない。実弾発射テストでは70パーセントから80パーセントの成功率で中距離弾道ミサイルから分離した再突入部分にも対応している。なお衛星攻撃も可能。
  7. 日本はこんごう級駆逐艦4隻にイージス戦闘システムとSM-3ブロックIミサイルを搭載し、あたご級二隻のベイスライン9改修が完成すれば弾道ミサイル迎撃能力も備わる。ブロックIミサイルは最高速度マッハ10で有効射程380マイル(約610キロ)。
  8. 残念ながら6隻では日本本土を守りきれない。またブロックI迎撃体でミサイル弾頭部を確実に破壊する十分な運動エネルギーが確保できるか疑問視する声もある。
  9. 1999年に日米両国は大型長距離飛翔可能な新型SM-3の共同開発に合意した。2012年までにペンタゴンは15億㌦をつぎ込み、日本もほぼ同額を支出している。その結果生まれたSM-3ブロックIIAは以前の型とは第一段だけが同じだが米海軍マーク41垂直発射管システムに辛うじて入るほどの大きさになっている。
  10. ブロックIIAの最大射程は1,350マイル(約2,100キロ)、最大速度はマッハ15超となる。迎撃体が大型化し高度制御が可能となる。迎撃体に積む赤外線センサーが二色対応の高性能版となり、迎撃対象の目標やおとり、デブリを判別できる。
  11. 2017年2月3日にブロックIIAミサイルがUSSジョン・ポール・ジョーンズから発射され宇宙空間で弾道ミサイル迎撃に成功している。
  12. 残念ながら6月22日の第二回テストは失敗し、原因を調査中だ。
  13. 二回中一回失敗したからブロックIIAが役に立たないわけではない。だがミサイル迎撃がいかにむずかしいかあらためて教えてくれた格好だ。長射程性能を誇る地上配備中間段階迎撃防衛システムがアラスカ、カリフォーニアに配備されているが、試射でも不良率40パーセントになっており、原因は配線問題だという。また高価なミサイルのため試射多数を行えないのも事実だ。ブロックIIミサイルは単価20百万ドルを超えるといわれる。またテスト条件を実際の戦闘状況より都合よく設定していることは忘れてならない。システムが肝心な場面で作動しないとなれば懸念材料となるのは必至だ。
  14. それでもブロックIIのSM-3は短距離用のTHAADやペイトリオットPAC-3に比べれば射程、対応可能の双方で柔軟性がはるかにすぐれているが、ブロックIの試射実績と同様の成績の実証が条件だ。想定外だがSM-3で北米をねらうICBM迎撃にも使えそうだ。米本土の沖合にイージス艦を配備すれば迎撃態勢を強化できる。ブロックIIAミサイルは2018年にも配備が始まる予定でそれまでにテストで成功実績を増やす必要がある。
  15. ミサイル脅威の前に日本は防衛体制強化の検討中だ。今後就役する新型駆逐艦二隻にSM-3がミサイル防衛用に搭載される。日本も当初はTHAAD導入に向かう予測があった。短距離(120マイル程度といわれる)対応のTHAADはミサイルが地表に向かって飛翔する最終段階で対応を想定し、SM-3とPAC-3を補完する「第三陣」になると期待された。
  16. ただし北朝鮮が5月14日に発射したIRBM火星Hwasong12を受け稲田朋美防衛相は地上配備SM-3いわゆるイージスアショア取得に傾いていると明らかにした。イージス地上施設はSM-3発射に加えSPY-1Dレーダーで艦船とネットワークを形成し相互補完できる。米軍はイージスアショアをポーランドに導入中で、ブロックIIA迎撃ミサイル24発を展開する。ジャパンタイムズによればイージス陸上施設が二か所あれば日本全土をカバーでき、各712百万ドル(約8億円)とTHAADより大幅に安上がりとなる。
  17. 先週の報道では朝鮮半島の緊張が高まる中で日本政府はイージスアショアの早期導入を準備中だ。日本が地上、海上双方に迎撃ミサイルを多数配備すれば、米海軍でさえSM-3ブロックIミサイルを全イージス艦に一度に配備できない中、一発で命中保証ができなくてもミサイル多数を発射すれば迎撃が確実になる。弾道ミサイル防衛がどこまで信頼できるか不明というのは気が休まらない状況だが原因を探す必要がなければもっと良い。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: Wikimedia Commons

中国に愛想をつかしてきたトランプ大統領の次の手は?


習近平が訪米で示した対応力・応用力のなさは驚くべきで、内弁慶タイプの指導者かと思ったほどでしたが、北朝鮮を巡り各方面の国内要素をはかりにかけて身動きが取れなくなっているのか、一度は約束しても最初から実施するつもりはないという確信犯なのでしょう。トランプ大統領もビジネス経験から中国人との付き合い方は体得しているはず。今後は現実を重視したアプローチに双方が収れんしていくでしょう。

 

Trump Cools on China 中国に冷静になってきたトランプ

The Trump administration is losing patience with Beijing and adopting a tougher policy. トランプ政権は北京に忍耐を失い、強硬政策をとりつつある
U.S. President Donald Trump welcomes Chinese President Xi Jinping at Mar-a-Lago state in Palm Beach, Florida, U.S., April 6, 2017.
The National Interest June 30, 2017


  1. トランプ政権が中国に忍耐心を失いつつある。先週は鉄鋼製品へ関税適用をちらつかせ北京へ衝突姿勢を示した。当初の対中国姿勢と真逆で、中国をパートナーととらえ北朝鮮問題の解決をめざすアプローチは過去のものとなった。
  2. 大統領選中のトランプは中国に厳しい姿勢だった。2016年5月のインディアナ州選挙集会では対中貿易赤字に触れ「このまま中国に勝手にさせておけない」と述べている。選挙運動中のトランプは当選の暁には中国を出し抜くと述べていた。「抜け目なく立ち回れば中国に勝てるはず」と2015年7月にサウスカロライナで述べていた。
  3. 大統領に就任するとトランプは北京と対立するより協調を優先した観があった。4月初めの習近平主席との会談後、トランプは北朝鮮問題、貿易問題共に一緒に解決できると楽観視していた。前向きな言葉と裏腹に選挙運動中の厳しい提言は棚に上げて、中国との協調関係作りを優先した。中国を通貨操作国と批判せずに北朝鮮問題で同国の支持取り付けを優先した。
  4. 北朝鮮問題解決を中国に期待すること自体が大きな賭けだ。中国は北朝鮮に実効力のある圧力をかけることに乗り気ではない。なぜなら北朝鮮現政権の存続に中国にとって戦略的な意味があるためだ。エリック・ゴメス(ケイト―研究所の国防外交政策専門家)は「北朝鮮はちょうどよい緩衝国として在韓米軍と中国国境の間に位置している」と述べている。安全保障上の関心から中国は北朝鮮の崩壊はおろか不安定化につながる動きをとりたくないのだ。
  5. さらにこれが正しくないとしても中国にはトランプが期待するような北朝鮮への影響力は実は有していない。ゴメスは「中国が金正恩を平和裏に米国の望む方向へ導く力があると信じるのは現実とかい離しすぎの見方だ」 2013年の金正恩の叔父で北京寄りの張成沢処刑は北朝鮮が最大の後援国に堂々と反抗する史背の表れに他ならない。中国は強い圧力をかけると裏目に出ると見ているのではないか。つまり北朝鮮が完全に制御不能になると中国は計算しているのだ。
  6. トランプ政権が望む形では中国が北朝鮮を扱えないと露呈すると、大統領は中国への失望を隠せなくなった。オットー・ウォーンビアの死亡を受けてトランプは中国の北朝鮮問題への支援ぶりについてツイッターに6月20日投稿している。翌日、レックス・ティラーソン国務長官も大統領に同じ感想を述べ、報道陣に中国は「外交的責任がありこれ以上のエスカレーションを回避したいのなら北朝鮮に経済外交上の圧力をもっとかけるべき」と報道陣に語っている。
  7. トランプ政権は非難と別に中国の神経を逆なですること疑いの余地のない手段も実施に移している。昨日財務省から中国企業一社、中国人二名が北朝鮮とつながりがあるとして制裁措置を適用した。さらに財務省の金融犯罪対応ネットワークが北朝鮮の外貨獲得を助けたとして中国の銀行一行に罰金を科すと述べた。直前に国務省から中国の人身売買取締まりが実効性を上げていないとし、中国が北朝鮮労働力を利用していることを決定の大きな背景とした。
  8. 現政権も前政権と同じく中国の域内ライバルと関係強化を狙っている。トランプのインド首相ナレンドラ・モディとの首脳会談の前に政権チームはMQ-9Bガーディアン無人機22機の売却を承認し、インド洋上の中国の動きを監視させるねらいがある。また中国を怒らせているのがトランプ政権による台湾への総額14億ドル武器売却だ。
  9. ただしトランプの地政学的な動きは武器販売にとどまっていない。モディ首相との共同記者会見でトランプはマラバール海軍演習に米国が日本とインドに加わると述べ、ティラーソン国務長官と同様に戦略的忍耐の段階は終わったと公言した。オーストラリア国立大の国家安全保障研究部門の主任研究員ディヴィッド・ブリュースターは同上海軍演習は「三カ国間の協調体制が強まり重要であることの実際的かつ象徴的な存在」だが「封じ込めをねらう演習」ではないと強調し、中国がこれ以上「ルールに基づく秩序を傷つけようとすればするほど三国の結束を強めるだけ」と警句を述べている。
  10. だが同時にトランプは中国との協調の可能性を放棄していない。楊潔チ国務委員との6月22日会合でトランプ大統領は一帯一路構想で中国への協力への関心を表明している。対中姿勢をがらりと変更した前歴のあるトランプが再度姿勢を変えてもおかしくない。ただし今のところ、新しい政策アプローチは明確な主張にとどまらず実際にトランプ政権が実行に移しているのはあきらかだ。■
Dimitri A. Simes is a reporter-intern at the National Interest.
Image: U.S. President Donald Trump welcomes Chinese President Xi Jinping at Mar-a-Lago state in Palm Beach, Florida, U.S., April 6, 2017. REUTERS/Carlos Barria.


2017年7月3日月曜日

★米上院18年度予算案(2):軽空母構想の実現を求める



上院の国防支出案の概略は先日お知らせしましたが、詳報で軽空母構想の実現に向けた施策が盛り込まれれていることが判明しましたのでお知らせします。軽空母といっても原型に想定しているアメリカ級でも45千トンという大きさですから往時の主力空母より大きいのですが、ねらいは海兵隊揚陸部隊の航空支援のようです。実現すれば大型空母はもっと大事な任務に専念できるのでしょう。まだ実現が決まったわけではないのですが、CVL呼称が復活するかもしれません。

F-35B ライトニングIIの四機編隊が強襲揚陸艦USSアメリカ(LHA-6)上空を通過している。 Nov. 20, 2016. US Navy Photo

 

Senate Armed Services Bill Directs Navy to Start a Preliminary Design Effort for a Light Carrier, Pluses Up Shipbuilding Totals Over Trump Budget

上院軍事委員会が海軍に軽空母の予備設計作業開始を求め、トランプ政権予算案規模を上回る建艦目標を提示

 By: Sam LaGrone
June 28, 2017 8:41 PM • Updated: June 28, 2017 9:07 PM


  1. 上院軍事委員会(SASC)が作成した2018年度国防支出認可法案(NDAA)ではペンタゴン要求を上回る艦船、航空機調達を求め、トランプ政権案より支出規模が200億ドル大きいことが判明した。
  2. 「6,400億ドル規模の国防予算で即応体制の不備、近代化、軍事優位性の減少といった問題を装備更新、増強で解決したい。今回の法案は近年議会で採択済みの一連の改革法を基礎にしている」と委員長ジョン・マケイン議員(共、アリゾナ)が声明を発表している。
  3. 「国防総省の組織改革、国防技術の革新、国防調達運用を通じ一連の重要課題に引き続き取り組みNDAAではわが第一線部隊に必要な装備、訓練、資源がゆきわたるよう改善し望ましい結果を得られるようにする」
  4. 海軍関係だけ見るとSASCは艦艇建造改修関連で50億ドルを上乗せし250億ドルとし、2018年度は13隻を調達するとし、ペンタゴンが提出した要求より5隻多い。アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦一隻(55億ドル)、ヴァージニア級攻撃潜水艦(SSN-774)の事前調達費用(31億ドル)を含む。
  5. 上院案も下院提案と同様に駆逐艦、攻撃潜水艦を複数年度調達で建造する事業者の資材先行取得用予算を盛り込む。
サンアントニオ級(LPD-17)揚陸艦の12号艦フォート・ローダーデールの想像図 HII Image


  1. SASC案では10億ドルを揚陸艦一隻の追加調達に計上し、次世代LX(R)ドック型揚陸艦あるいはサンアントニオ級揚陸ドック型艦(LPD-17)のいずれかを想定。その他6.61億ドルで新型遠征海洋基地艦、2.5億ドルでT-ARCケーブル敷設艦一隻、5.09億ドルで揚陸艇8機の整備を求める。揚陸艇は政府要求より5機も多い。
  2. 発表に見当たらないのが沿海戦闘艦建造の言及だがSASCも大統領府原案と同様に2018年度に一隻の建造を求める方向に収束すると見られる。

  1. 航空関連ではF/A-18E/Fでのペンタゴン要求を倍増し19億ドルで調達する。SASCはさらにP-8Aを13機23億ドルで海兵隊仕様F-35B24機を29億ドル、海軍向けF-35Cに14億ドルを計上。
  2. SASC案で一番の特色は海軍向けに30百万ドルを計上し、軽空母の初期設計業務を開始させることだ。
  3. マケイン議員は130億ドルのフォード級超大型空母を一貫して批判して代替策の検討を求めてきた。軍事委員会が海軍に求めているのは軽空母が実際の戦闘場面で航空機材運用に耐えるのかを検討すること。

  1. 可能性が高いのはアメリカ級大型揚陸艦にカタパルト二基を加え航空機発艦能力を与えることで実現すれば第二次大戦時の飛行甲板がまっすぐな護衛空母に似てくる。求めるものは揚陸即応部隊にISR機材運用能力を付与し兵力投射効果を向上することだろうとブライアン・クラーク(戦略予算評価センターCBSAで海軍艦艇を専門とする研究員)がUSNI Newsに今年早々に語っていた。海軍も10万トン超の巨大空母の代替策を検討するとは公言していたが実際に真剣に検討している模様はなかった。
  2. SASCは艦艇、航空機でともに増強を訴えながら別事業で削減を提唱している。ジェラルド・R・フォード級空母三番艦エンタープライズ(CVN-80)建造はそのまま認めながらズムワルト級(DDG-1000)から1億ドル、アーレイ・バーク級(DDG-51)から2.25億ドルからそれぞれ回収するとしている。■

2017年7月2日日曜日

★★米空軍はラプターを2060年まで使い続ける


本当に2060年代まで使えるの、その時点でPCA次期制空戦闘機が登場すればラプターは第二バイオリンの役を果たせるのか、UAVの進化をどう予想しているのかと突っ込みどころが多いですが、しょせん日本からすれば往時のF-106のような米国専用機材であり、どこか他人事のようにしか聞こえませんね、というと言いすぎでしょうか。

 

The U.S. Air Force's Stealth F-22 Raptor Will Fly Until 2060

F-22ラプターを2060年まで供用する米空軍

The National InterestDave Majumdar June 26, 2017


  1. 米空軍はロッキード・マーティンF-22Aラプターを2060年まで配備し続ける。そのため空軍は一連の改修予算を計上し、同機の戦力水準を維持する。その一部を2018年度予算案に盛り込む。
  2. 「F-22を2060年まで維持し、途中で脅威の変化に対応し性能を向上させていく。FY18予算に624.5百万ドルをRDT&E用に、398.5百万ドルを調達用に計上している」とアーノルド・バンチ中将(調達担当空軍副長官付軍代表)、ジェリー・ハリス中将(作戦立案担当参謀次長)が下院軍事委員会宛に6月7日に書面で通知している。
  3. 航空戦闘軍団でF-22のアナリストを務めるトム・マッキンタイヤーから記者に2060年という数字にはラプター部隊も驚くだろうが、機体は十分持つの見込みを示した。
  4. 「2060年との予想はなかったので少々驚かされましたが、F-22には機体強度を維持するASIP(機体強度維持事業)があります」

機体構造は強靭
  1. ラプターの機体は冷戦末期に設計されたこともあり厳しい要求内容を反映して極めて強固に作られている。設計上は8,000時間が限界だが、飛行運用実績から12,000時間(ローエンドの場合)あるいは18,000時間(ハイエンド)まで改修せずに使えそうだという。
  2. 「80年代末から90年代初めに機体設計した当時はミッションを10通り想定していました」
  3. 「EMD(技術製造開発段階)中に各ミッションの有効性を試しています。ラプターは実際にはそこまで厳しい条件で供用されておらず機体強度の現状をみると2060年くらいまでなら供用可能と判断されたというわけです」
  4. また機体腐食も米海軍のF/A-18ホーネットほど深刻ではない。ラプターで空軍が見つけたのはステルス塗料による流電腐食現象だが機体構造上で問題になるものではないとマッキンタイヤーは述べている。空軍は問題を起こした特定の導電性ステルス塗装剤を変更し腐食問題の解決を目指す。
  5. 「この補正作業はヒル空軍基地で行っています」とマッキンタイヤ―は述べ、「今後も腐食が発生しないようにすべての作業は2020年までに完了します」

生産用設備はすべて保存中
  1. さらに空軍はシエラ陸軍補給処に保存中のF-22生産用設備の保全状態を調査中だ。現在、調査は85パーセント完了し、今までのところ生産設備はすべて所在が確認されている。それより以前に空軍関係者から一部設備類が所在不明との懸念が出ていたが、調査の結果根拠のない杞憂だとわかった。
  2. F-22の生産再開は米空軍で見込みがなくなっている。「空軍にはF-22生産ライン再開の予定はありません。経済上も作戦上も意味をなさないから」とキャリー・ケスラー少佐(航空戦闘軍団広報官)が記者に述べている。

2060年のラプター像
  1. F-22の機体が2060年までそのまま持つとしても、空軍は21世紀後半でもラプターを戦術的に意味のある機材として運用できるのだろうか。空軍からはこの疑問への答えがまだ出ていないが、2030年代までは有効な機材として維持する構想はある。
  2. 「2060年まで予言はできませんが、」とマッキンタイヤ―は言う。「空軍は2030年代までラプターの航空優勢を維持するべく必要な性能水準を実現していきます」
  3. 中国やロシアはラプターに代表される米航空優勢への対抗手段を大々的に開発中だ。そうなるとF-22は第六世代戦闘機となる侵攻制空機(PCA)とペアで対応することになりそうだ。ラプターはPCAに対して現在のF-15Cの立場になる。
  4. 「PCAが実現すれば第五世代機のF-22やF-35と共同運用する前提で設計されているはずです」とマキンタイヤーは述べている。「2030年代、2040年代や2050年代になればF-22は今日の第四世代機の立場になるでしょうね」
  5. とはいえ想定中の脅威が2019年から2020年に現実のになれば、空軍はF-22の性能改修を模索することになろう。ただしその内容は秘匿情報だ。
  6. 「その後数年すればラプターの供用年数が相当になるため暫定的に中間改修と呼ぶものが必要になるでしょうね」
  7. 中間改修でコンピューターを交換し、エイビオニクスでレーダーやアンテナを更新するのだろう。
  8. 「2025年から2030年の間のどこかで搭載システムがその先も維持できるか検討せざるをえなくなるでしょうね」「現時点はまだ検討の初期段階にすぎませんが」とマキンタイヤーは述べる。

性能改修策の内容
  1. 空軍は近未来の脅威にもラプターを対応させるべく資金を投入している。インクリメント3.2BとしてレイセオンAIM-9XサイドワインダーやAIM-120D(AMRAAM)の運用を可能としさらにその他改修をめざす運用テストが今夏に始まり、2019年度の実戦投入をめざす。ソフトウェアではアップデート6を同時に実用化しラプターの情報暗号化が改良されるとマキンタイヤーは解説している。
  2. アップデート6でもう一つ大きな意義があるのがTACLink-16でF-22にリンク-16送信機能を2021年までに追加することだ。空軍は無指向性のリンク-16の搭載を一貫して拒否してきたが、ここにきてラプターに送信機能追加を決めた。その理由としてステルス機の運用実績を積んで作戦上の知見が増えてきたことがある。
  3. 「戦術上でF-22がリンク-16送信してもほぼ常時心配の必要がないと分かってきました」とマッキンタイヤ―は述べる。「同機の知識が増えており運用にあたる賢明な男女が戦術を編み出し初期に心配されてたいリンク-16送信の懸念は根拠がないとわかったのです」
  4. 空軍は新型データリンクのラプターへの導入も検討してきた。たとえばF-35の多機能高性能データリンク(MADL)や海軍の高速広帯域方式の戦術目標情報ネットワーク技術(TTNT)だが、によればこの分野での知見が十分ではないとしつつも空軍がF-15Cが搭載するタロンHATEデータリンクポッドでラプターから情報再配信を信頼できない理由があるという。
  5. 「ごく少数のF-15でしか利用できない性能なのです」とマッキンタイヤーは説明する。「利用可能なF-15が少ないためF-22が集める戦術情報の共有が不可能なのです」
  6. だがTACLink-16には単なるデータリンク機能の追加以上の内容がある。ラプターの機内エイビオニクスベイは三つあり一つは未使用のままなので空軍はここにオープンミッションシステムズ(OMS)の搭載をF-22の今後の性能改修の目玉として検討している。
  7. 「OMSで将来のF-22性能近代化がすべて実現します」とマッキンタイヤ―は言う。「簡単に言うとiPhoneにアプリを追加するようなものです」
  8. TACLinkに続くのがTACMANつまりTactical Mandatesでペンタゴンが求めるモード5の敵味方識別機能の向上だ。「2022年以降になるがTACLink-16とTACMANが使えるようになると威力はすごいはず」(マッキンタイヤー)
  9. ラプターパイロットにはもう一つ朗報がある。F-22でもヘルメット搭載型目標指定装備helmet–mounted cueing systems (HMCS) が使えるようになり、AIM-9Xの性能をフルに使えるようになる。HMCSの開発導入は来年2018年には始まり、2021年に使用可能となる予定だ。空軍はどの型のHMCSにするか決めていないが来年中に選定の運びとマッキンタイヤーは述べた。
  10. “The key enabler is the OMS,” McIntyre said.
  11. 「カギはOMS」とマッキンタイヤーは述べる。
  12. HMCSの追加によりラプターは当初ロッキードが契約を交付された際の高性能戦術戦闘機構想で想定した性能の機体がやっと生まれる。■
Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.


2017年7月1日土曜日

USSフィッツジェラルドの現況と今後の修理見通し


本件、マスコミは米海軍に非があるとなんとか印象操作したいようですが、海軍はまず艦の修理が可能なのか、同予算を確保するのかと技術的な対応が進んでいるようです。JAG海軍法務部による審判がどんな結論を出すかも注目されますが、長期戦になりそうですね。

 Navy struggles with approach to fix crippled destroyer Fitzgerald, as investigation continues

損傷受けた駆逐艦フィッツジェラルドの修理方法検討に集中する米海軍、他方で調査も進む
By: David B. Larter, June 30, 2017 (Photo Credit: MC1 Peter Burghart)

WASHINGTON — 日本沖合で衝突事故に遭遇した米海軍駆逐艦フィッツジェラルドは乗員7名を喪失し、艦体にはトレーラートラックが入るほどの穴が開いた。同艦の復帰作業は並大抵ではない。
フィッツジェラルドの損傷の現況
  1. ACXクリスタルのバルバスバウにより艦の喫水線下には12x17フィート大の穴があき、三区画が急速浸水した。乗組員に脱出の余裕は1分程度しかなく浸水で眠りを覚まされた者もあった。
  2. 同艦に衝突警報音を作動させた形跡がないが、鳴らしていれば衝突前に乗組員を起こすことができていたかもしれない。ただし詳細は海軍による調査を待つしかない。
  3. 衝突で艦橋と右舷SPY-1レーダーアレイが大きく損傷し、主機関室と通信装備室が浸水し、損害額は数百万ドル相当と言われる。
  4. 事故原因の追及とは別に海軍は複雑な技術課題に取り組む必要がある。つまり損傷した同艦を浸水からどう守るのか。損傷の正確な評価から修理可能なのか判断し、どこで修理するかを決める必要がある。
  5. 海軍技術陣が浸水箇所の排水はほぼ完了し、艦体の穴に継ぎをあてる作業中と第七艦隊広報官クレイ・ドスが伝えてきた。
  6. 「USSフィッツジェラルドは来月にも横須賀海軍施設内の乾ドックに入れ修理する。弾薬類は6月25日に撤去ずみ。さらに排水、燃料除去さらに応急措置として艦体に継ぎをあてる準備中。ドック内で技術評価を開始の後米本土で本格修理を行う」
  7. 当初から海軍は同艦修理に前向きで、事故直後に第七艦隊司令官ジョセフ・オーコイン中将も報道陣に修理は長期化するとの見通しを語っている。「一年未満で済めばいいほうだろう。USSフィッツジェラルドは必ず復帰します」
どこでどう修理するのか  
  1. 第一段階は艦を安定させ海から出すことだ。この工程は7月6日から8日に完了すると海軍は見ている。その後艦体の完全調査を行う。
  2. 衝突時に艦橋構造にゆがみが入り、SPY-1レーダーのアライメント問題が発生しているとの懸念がある。補正修理に巨額費用が掛かる可能性があるが評価はまだ未完了だ。
  3. 艦を海から出すだけでも相当の作業だと1988年に蝕雷したフリゲート艦サミュエル・B・ロバーツのゴ―ダン・ヴァン・フック退役大佐が述べている。「そもそも乾ドック入りの予定が各艦で決まっています。艦を支えるべくキール下に置くブロックを準備します。ただ艦体に損傷があったり穴があれば艦設計で想定外の応力荷重が発生し、うまく扱わないとキールが曲がったり、外板が損傷することがあるのです」
  4. つまりフィッツジェラルドの乾ドック入り予定を変更し損傷を受けた艦体を考慮する必要があるということだ。初期調査では同艦のキールは大丈夫と見られているが、キールが損傷すれば別途巨額費用が発生する。フリゲート艦ロバーツの場合はキールが折れていたが、海軍は大修理を実施している。
  5. 修理費用は補正予算から確保するだろうとロバート・ナッター退役大将は見ている。ナッターは駆逐艦コールがイエメン入港時に襲撃され修理が必要となった際の艦隊司令官だった。「海軍が予算を確保するとすれば海外緊急作戦用予算が妥当だろう」
  6. 海軍がコール修理に2.5億ドルを必要とした当時は補正予算をあてにした。ジョン・ワーナー上院議員(当時)(共、ヴァージニア)が法案を作り海軍に修理費用を確保させたとナッターは回想する。
  7. 乾ドック内で海軍は艦体を入念に調査し、修理費用を積算する。コールでは2.5億ドルでF-35ほぼ2.5機と同額の費用がかかった。
  8. フィッツを超重量級運搬船で本国回送するのが可能性が高いと語るのはブライアン・クラーク元潜水艦勤務士官で現在は戦略予算評価センターの研究員だ。「海外で修理は不可能でしょう。現時点では自力で本国へ回送して修理できるか大型船で運搬すべきかを判断しようとするはずです。その結果、民間造船所で長期にわたる修理がはじまるはずです」
  9. クラークはジェネラルダイナミクスのNASSCOサンディエゴが修理場所として最適と見ている。
  10. コールの場合は建造場所のインガルス造船(ミシシッピ州パスカグーラ)に大型運搬船ブルー・マーリンにより回航された。インガルスはコールの損傷部分を切断し区画を新造し艦に戻した。2002年の広報資料によると鋼鉄550トン分と主機関二基を交換している。
フィッツジェラルドの乗組員は今どうなっているのか
  1. フィッツジェラルドの乗組員は徐々に通常勤務に戻りつつあると第七艦隊広報官ドスは述べている。
  2. 「乗組員は通常勤務にゆっくりと戻っており、当直ほか乾ドック入りに備えている。技術科は燃料除去に取り組んでいる。基地施設全体がフィッツジェラルド乗組員および家族の支援にあたっており、通常勤務復帰は癒しの重要な過程であることを強調しておく」■

★電子戦能力整備が今後急成長分野になる。専用電子戦機材開発も検討中



Air Force photo
空軍最後の電子戦専用機材EF-111Aレイヴンは1998年に退役している。
ステルス命だった空軍がやっと現実の厳しさに気付いてこれまでの努力の不在を一気に埋めようと必死になっているのでしょうか。電子戦の技術が相当進展し、装備の小型化も進んでいますが電力、容量を考えると737サイズは必要ではないでしょうか。空軍としては次期主力戦闘機PCAの派生型にして投資効率を高めたいでしょうね。各軍共同研究しても結局はそれぞれの仕様に落ち着くのではないでしょうか。ここでもF-35の悪夢は繰り返したくない思惑があるようです。
電子戦は「成長分野」、各軍共用EW機材開発の検討が進行中

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 23, 2017 at 3:22 PM
ARLINGTON: 二十年間も放置されたままだった電子戦での対応がゆっくりだが良い方向に向かっているとEW担当国防副長官が評している。予算増に加え、(非公表の)新戦略案が国防長官官房で準備されており、各軍トップから一様に関心が高まる中、将来のジャミング機材で共同検討が続いている。
  1. ウィリアム・コンレイは「一か月、二か月いただければ」もう少し詳しくお話しできると現在進行中の統合空中電子攻撃の代替策検討について空軍協会で語っている。
Sydney J. Freedberg Jr.
William Conley
  1. この件の背景に触れよう。電子戦とは敵の無線周波数(RF)を探知し、欺瞞し、妨害する科学技術と言える。また無線通信網からレーダーまですべてがRFを使っていることからEWは近代戦の成否を握っているといえよう。冷戦終結後のロシアがソ連時代のEW機材を確保したままだったのに対し米陸軍と空軍は装備を大幅に減らした。特に空軍は最後の高性能ジャミング機EF-111レイヴンを1998年に用途廃止した。EC-130Hが少数残っているが、EWは海軍に任せている。空軍はステルス機のF-22とF-35を重視し、探知されないので海軍のEW機材の手助けは不要だとまで四つ星将官が記者に2014年に語っていた。
  2. 敵側が電子面の実力を整備する中、空軍はPEA侵攻型電子攻撃と呼ぶ構想を検討中だ。PEAには専用の有人機を想定しており、かつてのEF-111を思わせる。今後登場するPCA侵攻型制空戦闘機を原型の専用機材にするか、無人機にするか、あるいは各種機材に機能を分散させるのかを検討する。情報の多くは非公開だ。
  1. 既存のEA-18GやEC-130Hは敵装備を相当の距離からジャミングできるがステルスF-22やF-35の電子戦能力は近距離に限られる。
  2. 空軍が明確に示しているのが「スタンドイン」ジャマー機材で敵の強固な防空網を突破する狙いがある。この代替策がスタンドオフ方式のジャマー機でミッションを比較的安全な距離から行うもので、海軍のEA-18Gグラウラーがその例だ。
  3. だがコンリーはスタンドオフとスタンドインの違いが誇張される傾向があるとみる。「個人的には『これはスタンドインだ、これはスタンドオフだ』と区別することは避けたい」とし、細かく分類するよりそれぞれの機能をよく理解するべきで、そのあとで実戦部隊が両方を柔軟に使い新しい効果を生むべきだという。
  4. そこで各軍ばらばらに対応するのではなく、ペンタゴンが共用(各軍の壁を壊して)代替策検討を電子戦機材で開始しているのだ。その結果生まれるのは単一巨大事業による各軍共通の電子戦機ではなく共通戦闘機を作ろうとしたF-35事例とは違うとコンレイは強調している。
米陸軍NERO事業では海軍のジャマー装備を改修し、グレイイーグル無人機に搭載している。
  1. コンレイは明確に述べていないが、もし空軍が独自仕様の侵攻型電子攻撃機を作りたければ作れることになる。海軍、海兵隊、陸軍とともに共通の全軍対応アプローチの一部になっていればよいことになる。
  2. PEAは2030年代以降の供用開始になるが、空軍が関心を示していること自体が大きな転換点だ。コンレイは各軍トップが電子戦の位置づけを重要視するようになったという。「電子戦能力のおかげで部隊が生き残れることに感謝している」
  3. いいかえると軍上層部はネットワーク、センサー、通信の防衛含む電子戦能力なしでは残存はままならないと理解している。
CSBA graphic
中国の武器の有効範囲 (CSBA graphic)
電子環境での戦闘
  1. スマート兵器は一時はアメリカが独占していた。今やロシア、中国、イラン、北朝鮮等が精密誘導ミサイル、標的へ誘導するセンサー、指令を与えるネットワークを運用している。
  2. ペンタゴンが使う新しい形の脅威の呼称は「接近組織領域拒否」A2/ADだが、一言で言えば多層構造の防衛体制で陸上配備ミサイル、高性能航空機、潜水艦、機雷他で米軍を近づけず介入させないことだ。だがA2/ADはすべてセンサーに依存し、探知、通信、調整を行って攻撃が可能となる。そこでセンサーや通信機能はすべて無線周波数を利用しており、電子戦の格好の標的になるとコンレイは強調する。
  3. 「A2/ADとは基本的に電子電磁の世界での戦闘です。A2/ADのバブルをいかに出し抜くか、いかに小さくできるでしょうか」とコンレイは続ける。ステルス機は一つの手段だ。「探知されないように特徴をなるべく多く取り除く手です。逆にノイズを上げても同じ効果が生まれて探知されにくくなります。意味のないデータを大量に送って分別分類に時間がかかるようにする手もあります」
今日の米軍の戦闘方法は無線ネットワークに依存している。各装備をネットワークで結ぶのは実は簡単ではないとコンレイは強調し、ネットワークが攻撃を受ければ一層困難になる。
  1. 未来の戦闘構想のひとつにマルチドメイン作戦があり、電子戦への依存度は一層高まる。「マルチドメイン」とはあらゆる環境で作戦中の米軍をネットワークで結ぶことを意味する。陸上、海上、空、宇宙、そしてサイバー空間だ。そして各作戦をシームレスに調整し敵をすべての方面からの攻撃で圧倒することだ。この実施には無線周波数のネットワークが不可欠だ。
  2. 「マルチドメイン戦には信頼性の高い通信が必要です」とコンレイは言う。ハッキング、ジャミングの能力がある敵のためこちら側で使えなくなる帯域が出るかもしれないが、目標は必要なデータを確実に送信し、必要とされる相手に時間通りかつ改ざんされずに届けることだ。
  3. その目標に到達するためには資金時間両方が必要だ。2017年度予算には50億ドルが国防総省全体で準備され「さらに増えますよ」とコンレイは言う。(省内の電子戦執行委員会がこの動向を指導している)
  4. さらにEW予算から大規模な影響が生まれるとコンレイは主張する。まず民生部門からの流用で高機能構成部品が安価に利用できるようになっており、軍専用仕様の高価な開発の必要がなくなってきた。次に小規模で安価なEW機能改修が航空機、艦船、地上車両で可能となり、システム全体の残存性が高まる。「数百万ドルの投資が数十億ドル数兆ドル単位の投資に大きな影響を生んでくれる」(コンレイ)
  5. 道のりは長いとコンレイは説明する。「電子戦に関しては25年間放置状態でした。これからの25年間しっかり育てていく出発点にいま立っていうるのです」■