2013年5月18日土曜日

最終テストを開始したX-47B---現場からの報告

X-47B Heads For Final Tests
aviationweek.com  Ares A Defense Technology Blog Posted by Bill Sweetman 7:20 AM on May 16, 2013

ノースロップ・グラマンX-47Bは数日後にタッチアンドゴー方式で空母ジョージ・ブッシュへの着艦を実施する見込みで、それに先立つ火曜日に実初のカタパルト発進を施した際に同席していたので現地で見聞したことを以下お伝えしたい。

同機は予想より早く発艦前準備を完了し、カタバルトの端までの移動はごく短時間で完了していた。このテスト用にわざわざ開発した遠隔操作用の器具は無用の長物になっていた。
とはいうものの関係者の見方はすでにこの後に来るUclass用の技術という観点だった。開発チームは原理原則の有効性を証明したと感じている。つまり、無人機も有人機と同じ命令に従って空母艦上で取り扱い可能だということだ。
.
X-47Bのアプローチは実に安定しており、二回目の通過では大気の乱れで若干ローリングしていたが、甲板上空50フィートで翼を左右に振って見せた。
こ の振りは予定外だったが以下の可能性がある。機体自体で自動的に行った、ミッション操作員によるもの、パドルすなわち着艦信号士官によるもの、あるいは管 制塔のPri-Flyすなわち主任飛行制御管制官によるもの、である。ミッション操作員もパイロットと同様に「ボールを読む」(着陸姿勢の表示灯の数を読 む)ことができ、着陸装置のライトは同機がこれから着陸する意思があることを示す。

海 軍士官は海軍と空軍の違いを明確に理解しており、空軍が遠隔パイロットで操縦される航空機の活用を主張する一方で海軍の「無人航空システム」は操作員が飛 行させるのであり、パイロットによる操縦ではないとしている。海軍としてもパイロット資格を持つ人員を一度にUAVで交代させるつもりはなく、ここで も 空軍との違いが明白だ。(プレデター/リーパーは米空軍ではF-16に次ぐ機体数になっている。)操縦桿とラダーでUAVを飛ばすのはエアバス関係者 がボーイング777の操縦桿についていったことを引用すると馬にハンドルをつけるようなものだ。「パイロット」はちょっと間違った言葉の使い方ではない か。

パイロットといえば海軍がX-47Bの自動着陸技術を有人機に応用しようというのは正しい判断だ。この恩恵は機体疲労の軽減に加え航空団の訓練時間短縮にもつながり、安全性が高まる効果は大きいといえる。

コメント  歴史的な現場に立ち会うことが許されるのはAviation Week関係者ならではの特権ですね。うらやましい限りです。UAVが今後発展して敵機撃墜するようになると空軍内部でエースパイロットが本土の安全な コンソールに座る操作員から発生し、議論を呼ぶのでしょうね。(もう呼んでいる?) 一方、海軍はもともとtailhookersと自称し空軍とは違う文 化をもっていることもあり、まちがってもUAVの操作員はパイロットAviatorとは呼ばないことで一致しているのだと思いますが、ここもやがて議論を 避けて通れなくなる事態が来るのではないかと思います。

追記 すでにタッチアンドゴー実証も始まっているようです。(以下写真はUS Navy websiteより)



2013年5月17日金曜日

RAF向けRC-135リヴェットジョイント一号機の写真が初公開

U.K. Rivet Joint - First "Official" Picture
aviaitonweek.com Ares
 Posted by Tony Osborne 3:34 PM on May 14, 2013
USAF Photographers have snapped the first RC-135 Rivet Joint destined for the U.K. Royal Air Force.
米空軍カメラマンが撮影した英国空軍向けのRC-135リヴェットジョイント一号機の写真
Image Credit: USAF via RAF Waddington

機体番号ZZ664がL-3社のグリーンヴィル事業所(テキサス州)のハンガーを前にしている。動悸は4月にロールアウトしている。Aviation WeekはこのRC-135の写真を初めて掲載している。同機はRAFによりエアシーカーAirseekerと呼称される。

RAFはRC-135を三機発注しており、英国はRC-135V/Wシギント機の初の海外顧客となる。各機は1964年に就役したボーイングKC-135ストラトタンカーを改修する。

同機が配属されるRAFワディントン基地の関係者によればエアシーカー一号機は2013年末までに第51飛行隊に編入されるという。

同飛行隊の隊員は機種転換訓練をオファット空軍基地(ネブラスカ州)で受けており、すでに訓練を修了した英国乗員は米空軍のリベットジョイントで実際のミッションに同乗参加している。

コメント 中古改造機とはいえ、立派なリヴェットジョイントを購入するのはISR機材の重要性を英国が認識している証拠なのでしょう。また米国も売却を承認しているのは情報の共有化で二国間合意ができているからでしょう。


2013年5月16日木曜日

中国が開発中の全翼機UAVの写真がインターネットに流出


X-47Bが空母から無人発艦した快挙をお伝えした直後に中国からまた怪しい機体の写真が出てきました。航空技術の優位性はまだ西側にあるとはいえ、差はどんどん縮まる方向にあるようです。

PICTURE: New Chinese advances in tailless UAV designs revealed


By:   Stephen Trimble Washington DC
Flightglobal, 15 May 2013
Source:

中 国のインターネットフォーラムに写真が掲載された無尾翼無人ステルス機が初飛行に備えているように見える。中国軍事装備に目を光らせるアナリストは同 機をLijian(鋭い剣)無人戦闘航空機(UCAV)の実証機だとする。同機はジェット練習機メーカーのHongdu供都航空とShenyang瀋陽航空(二大戦闘機メーカーのひとつ)の共同開発だという。

写真でみる同機の外寸と形状はボーイングのファントムレイ、ダッソーのニューロン、ロッキード・マーティンのRQ-170、ノースロップグラマンX-47Bと類似している。

た だしLijianの設計にはステルス性が十分あるとは思えない。多分アフターバーナー用のノズルが大きく、ジェットエンジンは機体後部に被覆せずにむき出 しでこれではレーダー探知の絶好の的だ。同様なことは中国から出てきたステルス機と説明される気体全般に言えることで、成都J-20や瀋陽J-31でも例 外ではない。

反面で写真を見ると中国航空機設計で大きな進展をしていることが明らかだ。Lijianは全翼機形態で無尾翼構造となっており、中国が空力特性と飛行制御で最大の難関に取り組んでいることが見えてくる。

一方でこの機体形状では制御が困難な空力効果も生んでしまうのだ。その例が「ピッチダイブ」と呼ばれる現象で低速度で機体が突然制御を失い上下逆転したまま回復できなくなることだ。

実は中国は無尾翼全翼機の設計に長年にわたりとりくんでいる。瀋陽からは2007年に学術論文「全翼機形状の偵察用UCAV1への応用」が発表されており、その結論は無尾翼設計は空気力学上で「最適な選択」であるとしている。

2011年には瀋陽大学が無人機の「大祭り」を開催し、研究者が縮小サイズのUAVで賞金をかけた飛行競争を行っている。その中に無線操縦の機体で翼幅2メートルの全翼機がありLijianと形状が似ているものがあった。■



2013年5月15日水曜日

航空母艦から無人機の発進に成功した米海軍は航空史に1ページを加えました

U.S. Navy Makes Aviation History With Carrier Drone Launch

By Reuters
aviationweek.com May 14, 2013
Credit: US Navy

米海軍が5月14日に航空史を書き換えた。無人ジェット機を航空母艦から発進させることに成功し、今後の無人機の軍事利用に大きな一歩となった。中国やイランなどを意識していることは間違いない。
  1. X-47Bステルス無人機はUSSジョージH.W.ブッシュからヴァージニア沖合いで発艦し、メリーランド州の海軍基地に予定通り着陸した。
  2. 「5月14日は記念日になった」と大西洋海軍航空部隊司令官テッド・ブランチ少将Rear Admiral Ted Branchはコメント。「従来の海軍航空兵力に一線を画す出来事がX-47Bの発艦で実現した」
  3. 同 機はステルス性に加えF-35の二倍近い航続距離を有し、今後登場する無人機とともに中国やイランが開発中の中距離対艦ミサイルへ有効な対抗手段になりう る、と国防アナリストたちはみている。ミサイルに加え接近阻止領域拒否構想により米海軍空母部隊は海岸線近くで作戦できなくなる状況の可能性があり、有人 機は空中給油ないとミッションが実施できなくなり、それだけ脆弱性が生まれる。
  4. そこで2,000海里の飛行距離があるX-47のような無人機があれば海軍は長距離攻撃・偵察能力を発揮できる。
  5. 「戦略上大きな意味が出てきます」と見るのは戦略国際研究所の上級国防アナリストのアンソニー・コーズマンAnthony Cordesman, a senior defense analyst at the Center for Strategic and International Studiesで、同機は「真の意味での長距離ステルス航空機システムだ」とする。
  6. 「太平洋への再バランスが進む中で海軍はこれまで以上の航続距離を求めています」と見るのはランド研究所主任研究員ブリン・アルカイアBrien Alkire, a senior researcher at RAND’s Project Air Forceだ。「無人機システムなら実現できることで、今後は十分なスタンドオフ距離から作戦が実施できることになります」
  7. 今回のX-47Bはノースロップ・グラマンが製作した2機のひとつで、精密誘導爆弾2発が搭載できる。火曜日は通常の有人機と同様に空母のカタパルトから発艦した。
  8. 2週間の艦上テストに続き着艦テストを実施する予定で、同機のテイルフックが甲板上のワイヤーを捕らえ、減速し艦上で停止させる。
  9. 発艦は大きな一歩となったが、国防アナリスト陣は次の段階として、海軍がX-47Bの実証内容から作戦用の無人機を開発するのを注目している。
  10. 「X-47Bはすごい」と戦略予算評価センターシンクタンクのマーク・ガンジンガー国防アナリストMark Gunzinger, a defense analyst at the Center for Strategic and Budgetary Assessmentsは言う。「無人艦載航空機へ一歩踏み出しました。でも本当にすごいことはこれからでしょう。この性能を作戦で使いこなせるかが課題でしょうね」
  11. 今後登場する無人機には全範囲周波数帯で有効なステルス性能full-spectrum broadband stealthが加わり、レーダー探知を逃れるはず、とアナリスト陣は見る。ステルス性能が無人機の最大の防御手段だ。
  12. 米軍の無人機にはアフガニスタンやパキスタンの辺境地帯に投入されているプレデターやリーパーがあるが、敵の防空体制突破に有効ではなくステルス性もない。
  13. 空母運用で長距離、全天候飛行可能な機体として設計されたX-47Bは大幅な自律飛行が可能となっており、遠隔操縦されている現在の無人機とは一線を画す存在だ。
  14. このことが米軍が無人機の作戦利用に過度に依存しているのではないか、自律的なロボットの利用が今後拡大するとの懸念を生んでいる。
  15. すでに人権団体Human Rights Watchが「殺人ロボット」へ反対姿勢を示す報告書の中でX-47Bは完全自律型兵器開発への一歩との見解を示している。
  16. 今後開発する機体は無人艦載航空偵察攻撃システムUnmanned Carrier Launched Airborne Surveillance and Strike System (UCLASS)の名称でX-47Bの知見をもとにした作戦用の機体となる。
今月中にも海軍から設計提案の初期内容の要求が出ると見られ、ロッキード・マーティンボーイングジェネラルアトミックスも参入するだろう。■

2013年5月14日火曜日

多数の機種を有するローテクUAS大国イランがステルス技術をものにする可能性はあるのか

Iran Ramps Up UAS Development Programme

                   
                        UAS Vision  May 13, 2013                    
                                            



イランが最新のUASを「ハマセー」Hamaseh=勇壮なるもの の名称で発表した。同機は古典的な尾部が二つに分かれた構造でIAIのスカウト無人機、TadiranのMastifの1980年代の設計を踏襲している。
  1. 発 表は5月9日のことで、同機は107mmロケット二基と電子装備と思われるペイロードを搭載していた。おそらくレーダーだろう。イランによると同機は敵の 探査を逃れることがステルス性により可能、とのことだが、見たところ着陸装置は固定式であり、主翼の外板でハードポイントを強化しているなど、西側基準で 言うステルス性を実現しているとは思えない。イラン説明では同機は偵察と戦闘ミッション目的で設計されたという。
  2. 技術成熟度はさておき、同機の設計を見るとイランのUAS技術の成熟度が高まっていることがわかり、同国は現在40種のUASがあり、そのうち30種が何らかの形で生産されている。
  3. Another UAS unveiled in 2012 was Shahed 129 followed another Israeli design – the Hermes 450. In April 2013 Tehran unveiled four new programmes – Azem-2, Mohajer B, Hazem 3 and Sarir H110, dubbed as a ‘long-endurance UAS’. Sharir 110 was first shown on a march in Tehran, on April 10, 2013. As other recently unveiled Iranian designs, it follows the design of the Israeli Hunter (Developed by IAI), which has seen operational use with the US Army in Iraq and Afghanistan over the past decade.2012年にはシャヘド129Shahed 129が発表されているが、これもイスラエルのハーミーズ450の設計を踏襲している。2013年4月にはさらに4機種が発表されており、アゼム-2  Azem-2、モハジェルB  Mohajer B、ハゼム3Hazem 3、サリールSarirH110の各機種である。シャリールSharir 110は長距離飛行UASと呼ばれテヘランで2013年4月に初飛行している。これもイスラエルのハンターHunter無人機の設計を踏襲している。な お、ハンターは米陸軍がイラク、アフガニスタンで10年近く運用している。
  4. H- 110サリールは双発UASで長距離飛行ミッションを想定した設計だ。シャリール110も尾翼は二つで推進式のプロペラ動力機で、主翼パイロンに外部兵装 を搭載して展示してある。(SA-7クラスの空対空ミサイル) イランは同機にステルス性があると説明するが、その設計では疑わしい。同機はイスラエルの ハンターUASに類似している。
  5. イランは無人機システムの運用上の技術・戦術・手順techniques, tactics and procedures (TTP)を開発する中で機体開発も進めている。無人機が軍事演習すべてに動員されており、イランは対無人機作戦でも訓練をしている。
  6. . ここでアフガニスタンから発進した米軍RQ-170センティネルをイランが2011年に「拿捕」した事件がからむ。同機はイラン東部を偵察していたといわ れる。イラン電子戦部隊が同機の航法システムを妨害し無傷のままイラン国内に着陸させたとしている。そこでRQ-170の機体からリバースエンジニアリン グでイランが探知されにくくする技術特に電磁シールド技術を入手した可能性はあるし、素材やトポロジーの利用方法から低探知製の新型機に応用しているかも しれない。ただしステルスの全面応用には複雑な加工方法、特殊素材、空力制御が必要で現在のイランの実力では無理と見られる。その証拠にイランからはまだ ステルス機の形状をしたUASは出ていない。
  7. イランはイスラエル上空の偵察ミッションをレバノンのヒズボラを利用して2006年から実施しており、ヒズボラは2011年にアバビル Ababil UASをイスラエル攻撃用に使っている。ただしいずれの場合もイスラエル空軍ジェット機が迎撃している。
  8. ア バビルではステルス性が限定されるため、イランは以後の新型機では被探知性の軽減を課題にしてきた。その一環で最近の特記すべき成果は2012年10月に シェヘド129がレバノンから飛来し南部イスラエル上空の偵察ミッションに成功したことで、この際は30分間経過してから迎撃された。イラン筋はこれがイ スラエル上空侵入の初めての事例ではないというものの、その根拠は示していない。イスラエル軍もこの事例から教訓を得て、2013年4月の事例ではイラン 無人機はイスラエル沿岸に到達する前に迎撃されている。



2013年5月13日月曜日

F/A-18生産を2020年まで維持しようとするボーイングは商魂たくましく拡販に走っています

Boeing Aims To Keep Building F/A-18 Jets Through 2020

By Andrea Shalal-Esa/Reuters

aviationweek.com May 10, 2013
Credit: U.S. Air Force photo/Capt. Shannon Collins

.ボーイングはスーパーホーネットおよびその電子攻撃機版の生産を2020年まで継続する意向だ。ただし、海外販売が200機超となり、米海軍向け追加販売が150機となることを条件としている。
  1. 同社副社長(F/A-18 ・EA-18担当)マイケル・ギボンズMichael Gibbonsが議会関係者にシミュレーター、展示物、記念品を満載したトレーラーで同機販売に熱を入れている。
  2. 同副社長の役割は2014年度予算内でEA-18G21機分の予算を守り、スーパーホーネットの優位性を強調することであり、ボーイングは同機の改良によりロッキード・マーティンの第五世代機F-35への優位性を確保しようとしている。
  3. .F/A-18 はボーイングが生産する唯一の戦闘機であり、同社はF-35の生産遅延と費用超過につけこんで、F/A-18 の販売を増やそうとしている。ただし、F/A-18 生産が縮小となることで販売拡大はいっそう緊急性を帯びてきた。
  4. 「ボーイングにとって今年が分かれ目でしょう。」と語るのは国防コンサルタントのジム・マカリースJim McAleeseでスーパーホーネット調達の予定が海軍にないことから同社は拡販に必死になっているのだという。
  5. ボーイング支持派の議員からF/A-18の調達を海軍に求める予算案が繰り返し出ており、海軍はもっと戦闘機が必要でF-35の配備までのつなぎが必要だという。
  6. ギボンズからは海軍がF-35の二飛行隊を就役させるかわりにスーパーホーネット二飛行隊を配備することの優位性を議会関係者に理解させようとしている。
  7. 「当 地では議会関係者の皆さんが航空問題に詳しくない方も含めスーパーホーネットがなぜ次世代機になれるのか、なぜ購入可能価格の選択肢になるのか、を特に予 算状況が厳しい環境でご理解いただこうとしています」とし、新しいタッチスクリーン式のコックピットディスプレイを議会関係者に試してもらったという。
  8. 海 軍はスーパーホーネットの単座E型と副座F型を2000年から使用中。ボーイングは同機を原型ホーネットの「改良版」として前回の国防予算削減の際に予算 確保に走ったが、専門家に言わせればスーパーホーネットは実質的に別機体だとし、主翼が拡大し、機体延長で燃料搭載量を増やし強力なエンジンに換装してい るからだ。
  9. 海軍との契約終了は2015年中ごろだが、スーパーホーネットおよびグラウラーの生産はオーストラリアがグラウラー追加導入を発表したことで2016年までは続きそうだ。オーストラリア発注は確定というものの、ボーイングの期待数の半分しかなかった。
  10. そこでボーイングが売り込み先で有望と見ているのがブラジル、マレーシア、中東諸国(同社は国名の特定を拒否)で、ボーイングがこの数年間にデモ飛行を精力的に行っている。アナリストの中にはクウェートほか数カ国と販売契約締結を今年上半期に成約しそうだという。
  11. さらにF-35導入を見直そうという各国に対してF/A-18データを提供している。カナダ(35機導入希望)、デンマーク(30機希望)が該当。
  12. ギ ボンズとしては合計で200機を越える海外受注を期待してブラジルの35機整備では十分訴求力ありと見ている。ブラジルの決定は第3四半期と見られる。こ の数年間のボーイングはブラジルで存在感を増しており、ブラジルの航空機メーカーエンブラエルSAほかの企業と提携関係を樹立している。
  13. ボー イングからブラジルほかの国に持ちかけているのは8から9百万ドル規模のスーパーホーネット性能改修でタッチスクリーンコックピットディスプレーの大型 化、ミサイル追跡機能、推力20%増のエンジン、新設計燃料タンク、機体をレーダー探知しにくくする機内搭載兵装ポッドをまとめて提供しようというもの だ。
  14. 主 サプライヤーであるノースロップ・グラマンはボーイングと共同で自社予算で原型機を製造中で、レーダー探知性能が本当に下がることを実証する。この機は性 能向上型スーパーホーネットAdvanced Super Hornet と呼称され、「スーパーデューパーホーネット」と揶揄する向きもあり、今年夏あるいは初秋に海軍試験場に持ち込むとギブソンは言う。
  15. .ボーイングは海軍向けに75ないし100機の追加販売をもくろみ、運用コストが現役機体の中では最小と強調している。そうなるとスーパーホーネット組立てラインを2020年あるいはその先まで維持できる見ている。
  16. ボー イングは同機の時間当たり運用コストは$16,000でF-35よりはるかに低いとし、調達費用もずっと低いという。ロッキードとペンタゴンからはF- 35の生産価格はこれから下がってくると主張し、提供する性能の水準が高いこととして電子戦・ジャミング能力やレーダーに探知されにくい特徴があると強調 している。「ボーイングは海軍がカ艦載型F-35が高価過ぎて導入をあきらめることを期待しているのでしょう」とロッキードとつながりが強いコンサルタン トであるローレン・トンプソンLoren Thompsonは見ている。


英空軍の給油ミッションを実施する民間会社エアタンカーは欧州の給油機不足解消の切り札になるのか

AirTanker Aims To Solve European Tanker Shortage

By Tony Osborne
aviationweek.com May 06, 2013
Credit: Crown Copyright


英空軍(RAF)の空中給油・輸送機部隊の運用を実施している民間企業エアタンカーAirTankerが英国以外での売り上げ確保の模索を始めた。
  1. 同社が期待をかけるのはヨーロッパで恒常的に給油機が不足しているためで、同社保有のA330-200ヴォイジャー給油輸送機の余剰機材を軍用仕様のまま他国にリースすることを考えている。
  2. 「これまでは委託運用中心だったが、今後は自社で営業をかけていく」と同社CEOフィル・ブルンデルPhil Blundellは語る。「当社機材を最大限活用する方法を検討しています」
  3. 同社はヴォイジャー14機を購入し、RAFの旧式VC-10およびロッキードトライスター給油輸送機と交代させる。平時にはヴォイジャー全機は必要ではない。9機あれば十分である。残りの5機は有事の追加投入機材用として想定される。
  4. そこで予備機材の軍用装備を取り外し、チャーター航空会社にリースすることが可能だが、軍用仕様のまま他国にウェットリースしたほうが営業上は有利と見ている。
  5. 「英国防省には予備機の経費負担がなくなるのが利点です。必要となればいつでも予備機を追加投入できますので、固定費負担を減らしたまま給油能力を確保できます」(ブルンデル)
  6. そのほかの売り上げ策として他国のA330の安全点検補修チェックの実施があり、同社は2014年上半期中にC点検資格を取得する予定。
  7. 英 国防省はヴォイジャー中核機材9機の飛行時間を欧州諸国、NATO加盟国に提供できないか検討中という。この案は欧州防衛庁European Defense Agency (EDA)も賛同しており、RAFヴォイジャーをNATOを通じ提供し、機材利用にはC-130の飛行時間を利用したとみなして支払いが発生する。つま り、A国が給油機をB国に1時間貸し出したとすると、B国はC-130 換算で3飛行時間分の借りができることになる。このように機材を共同利用することで英国には固定費負担が軽減できる効果が生まれると同社は説明する。
  8. 「英 国およびRAFはヴォイジャーで欧州各国の空中給油・輸送のニーズを解決することができるとともに、英国製国防装備の優秀性を示すことができます。EDA が基礎作業をしてくれました。政策上も政治上もこの実施方針は明確になりました。同時にマリではからずも露呈したように空中給油能力の不足がある一方で、 米国がアジアに戦略重点を移す中で当社の事業にははずみがつきます」(ブルンデル)
  9. た だし課題も残る。エアタンカーのヴォイジャー各機はRAFの第一線戦闘機へ空中給油をまだ実施していない。給油作業に必要な英国軍事航空公団 Military Aviation Authority (MAA)の認可を得ていないため、作戦機材の乗員の空中給油訓練が実施できないので、それまではRAFはVC-10・トライスターを引き続き給油任務に 投入することになる。ヴォイジャーからの給油を最初に受ける機材はパナヴィア・トーネードGR4となり、タイフーンがその後に続くものと見られる。ただ し、給油機共有が実現するとしてもNATOのどの機種を給油対象とするのか、どの国が実際に支払いをするのかは未定だ。
  10. RAF のユーロファイター・タイフーンを今年三月にマレーシアの国際航空展示会に派遣した際は、イタリア空軍のKC-767 が二機で支援をしている。イタリア空軍のユーロファイター機がKC-767より給油を受けた実績があるため、この際の給油許可が出ている。VC-10やト ライスターでは機材が予想外の故障を起こしかねないため、派遣部隊の司令官は旧式給油機の使用を好まなかった。
  11. 給油機不足は実際にフランス空軍がマリ介入作戦で経験しており、フランス、イタリア両政府はラファエル、ミラージュ2000両機のKC-767からの給油許可を急いで取得したが、実際は数回のソーティ実施後に下りている。
  12. 他 方エアタンカー社はヴォイジャー各機の防衛装備の拡充に乗り出した。各機には赤外線対抗装置二基が装備されており、アフガン戦域では十分とされてきたが、 脅威内容が変わってきたため三基装着が必要と判断されている。予算31百万ドルでこの改装が行われており、完成すれば英国からアフガニスタンへ直行し、機 材の空輸を支援することができるようになる。
  13. 同社が保有中のヴォイジャーは4機で、うち3機が多用途給油輸送機として製造され、残る一機は旅客機仕様から給油機に改造される。5号機、6号機が今年中に納入される。■

コメント: RAFは空中給油・輸送ミッションそのものを民間委託しようとしているのですね。英国以上に財政が厳しい日本でもこれから防衛業務の民間委託というコンセプトが本当に実現するかもしれませんね。でも、周辺国へ余剰機材を利用させることはできないでしょうね。


2013年5月12日日曜日

次期米陸軍ヘリへの採用を期待するテキサスの新興企業AVX

AVX Presses Case For Coaxial-Rotor JMR Demonstrator

By Graham Warwick



aviationweek.com May 06, 2013
Credit: AVX Aircraft


新興小企業が大手を差し置いて新型回転翼機の実証事業契約を勝ち取れるだろうか。ベルボーイングシコルスキーを相手にAVXエアクラフトAVX Aircraft は可能と信じている。
  1. テキサス州フォートワースが本社の同社は共用多用途機Joint Multi-Role (JMR) 開発で米陸軍は同社を選定し、高速回転翼機実証二機種のひとつとすべきと主張する。実証機は2017年に初飛行予定。
  2. 選 定の意味は大きい。JMR技術実証機はその後に続く次世代垂直離着陸機Future Vertical Lift (FVL) の先行と位置づけられ、シコルスキーUH-60ブラックホークとボーイングAH-64アパッチ合計数千機にかわり2030年代から就役となるからだ。
  3. 規 模の大きさからボーイングとシコルスキーは共同事業体をJMR、FVL双方で組み、シコルスキーX2高速同軸ローター機を原型とした複合ヘリコプター compound helicopterを提案する。EADSノースアメリカもユーロコプターX3ハイブリッドヘリコプターを原型にした提案で参入の動きを見せている。
  4. AVXの設計案(上図参照)では同軸ローターにダクテッドファンと小型翼を組み合わせている。ただし契約獲得を狙う小企業は同社だけではない。パイアセッキエアクラフトPiasecki Aircraftからは主翼つき複合ヘリコプターにベクター推力ダクトつきプロペラーの機体の提案が飛行ずみX-49Aスピードホーク技術を元に出ている。
  5. .AVX 社はベルの元従業員が発足させたもので、同軸ローター技術、ダクテッドファン技術が基盤だ。同社からはベルOH-58Dカイオワウォリアー武装偵察ヘリの 性能向上改修の提案があったが、なんといってもブレイクスルーしたのはベル、ボーイング、シコルスキーを尻目に同社が陸軍からJMRとFVLの概念研究契 約を勝ち取ったことだ。
  6. 同 軸ローター技術でホバリング効率が向上し、テイルローターの出力損失がなくなる、とAVX社長兼主任技師のトロイ・ガッフィーTroy Gaffeyは説明する。ベルの技術部門長をしていた。ダクテッドファンで推進力が生まれるので、ローターは揚力を生むだけでよく、必要な出力も大幅に縮 小できる。陸軍は速度230ノットを希望しており、エンジン出力の三分の二をファンにまわし、残りをローターが使う。
  7. ロー ターを傾け推力を生む必要がなく、ブレイド荷重を低下し振動を最低でも50%減らすことができる。「機首を少し上げれば抗力が減り同出力でより高速になり ます」とガッフィーは言う。「機体構成のつぼは空力特性です」 ダクテッドファンは小さく軽くできるし、巡航性能は優秀だという。
  8. 最高飛行速度で揚力の6割はローターから生まれ、残りの4割は小型前進翼と後部のダクテッドファンとスタブウィングが生む。ただし230ノット飛行ではローターが抗力の半分を生むので、それを減らすべくAVXは改良フェアリングの効果を検証中だ。
  9. 直 径56フィートのローターが生む高揚力で外部積載量は大きいとガッフィーは語る。提案書では同機は機体重量は27,000 lb. で兵員12名、貨物13,000 lb.を運ぶ。乗員は4名。これに対しUH-60Mは22,000 lb.で、9,000 lbを外部輸送できる。貨物輸送量からはむしろチヌークに近い、とガッフィーは言う。
  10. 200 kt. で巡航しペイロード4,300-lb.には3,100-shpのエンジンが必要となる。だが目標は230 kt.なので4,600 shp以上の出力が必要となる。
  11. そ の他の複合ヘリコプター機種も同じ問題に直面している。「230 kt. で問題になるのは出力水準です。大型エンジンはコスト高で燃料も多く必要としますが、その反面輸送力の余力が大きくなります」とガッフィーは言う。もし陸 軍がスピードは高くつくことを認めてくれれば、AVXもダクテッドファンを取り外す。「なくなればスピードは170-kt.ぐらいになります」
  12. AVX は生産のため多くのサプライヤー各社を集めたが、陸軍が新参会社をこれだけ重要なプログラムに選定するだろうか。ガッフィーはすべては陸軍の指示書にある とおりで、JMR入札者はFLVの開発リスクを減らすためにも実証機を飛行させる「切実なニーズが」あると証明すべしという点である。
  13. 「ティルトローター機ではXV-15があってV-22があるのに、なぜベルはV-280を飛ばす必要があるんでしょうか。X2でも同じでしょう。同機はすでに飛行済みで性能を証明済みです。X3に至ってはユーロコプターはまだ同機を飛行させていません」(ガッフィー)
  14. 「当社では同軸ローターとダクテッドファンは効率性を実証する必要があります。大手各社はFVL構想が生きている間は自社の機体を飛行させているでしょう。そこで競争を活性化させるためにも小規模な当社は陸軍が見放さないと考えています」■

2013年5月11日土曜日

ペンタゴンの中国警戒②宇宙空間 衛星攻撃も覚悟する米国

Pentagon Cites New Drive To Develop Anti-satellite Weapons

By Reuters
aviationweeek.com May 08, 2013
Credit: USAF
アシュトン・カーター国防副長官Deputy Defense Secretary Ashton Carterから懸案の国家安全保障に不可欠な衛星群の防護策づくりに米軍が着手したこと、潜在敵国の宇宙作戦実施能力への対抗策の検討に乗り出したと発言が出た。
  1. 「わが国の宇宙計画をとりまとめ衛星への脅威に対応すべく各界の最良の知識を動員します。必要であれば宇宙機を用いずに実施します」とナショナルプレスクラブで発言。
  2. カーターが言っているのは敵の脅威に対して軍用・情報収集衛星群の生存性を確保する方法、衛星群が利用できなくなった場合の作戦運用方法である。
  3. 2014年度予算に関係支出が入っており、「わが軍へ不利な状況を生む相手の宇宙利用を拒否する能力」も支出が認められているという。副長官は具体的に何を意味するのかは説明していない。
  4. 国防総省はほぼすべての軍事機能が米国の衛星群で支えられていると強調してきたが、重要な通信機能、目標捕捉、気象データ、敵ミサイルの発射の警報が提供されている。
  5. ペンタゴンが公表した中国の軍事力開発の年次報告書では中国がコンピュータ・スパイ活動で技術を入手し近代化をねらっているとするが、中国からは根拠がない、と一蹴されている。
  6. 同報告書では中国の宇宙空間での能力拡充を取り上げ、「多方面でプログラムを同時に進めており、有事に敵の宇宙配備アセットの使用を制限するか防止させる能力の向上をめざしている」と記述している。
  7. 中国の軍事戦略立案者は宇宙空間を自国の目的に利用するが敵には利用させない事が鍵と見ている。報告書では中国の軍事分析から「有事の際に敵の衛星ほかセンサーを破壊あるいは捕獲する事が重要だ」との記述を引用している。
  8. 米国は中国の衛星攻撃能力開発を憂慮しており、実際に中国は2007年に老朽衛星を標的にミサイルを発射し莫大な数のデブリを宇宙空間に飛散させた。
  9. 米国の最重要軍事情報衛星への妨害能力を拡大中との情報報告が昨年に出てから中国の動向にいっそう注意を向けている。
  10. 同報告の内容に詳しい筋からは中国が高軌道で米国衛星群の破壊能力を有しているとの信頼すべき情報があると語っている。その手段には衛星、ミサイル、地上発射の妨害策があるという。低軌道ではすでに対衛星手段のテストが実施されているとのこと。■