2017年9月22日金曜日

★「先制戦争」は期待通りの成果は上げられるのか、北朝鮮軍は準備している



湾岸戦争と朝鮮半島では事情が違うので直接比較できないとは思いつつ、一部軍事力の実態を知らない層が簡単に攻撃を口にし始めている一方で各地の戦闘を体験した元第一線の軍人が安易な先制攻撃に反対しているのは興味深い事実ですね。


How North Korea Plans to Survive a U.S. Attack

北朝鮮は米攻撃に耐える準備をしているのか
September 20, 2017


  1. 先週金曜日に国家安全保障担当補佐官H・R・マクマスターが報道陣に対し北朝鮮で「軍事オプションがある」と明らかに他の政府高官と違う発言を自信ありげに漏らしている。今週火曜日午後、国連本部でトランプ大統領はさらに踏み込んだ発言をしており、一定の条件になれば「北朝鮮を完全破壊する」しか選択肢がなくなると発言した。だが大統領・安全保障担当補佐官ともに正しくない。平壌に「先制戦争」(これはマクマスターの造語)をしかければ緊張状態は壊滅的な米国の損失につながる。コスト効果比が高い軍事オプションなど存在せず、アメリカの安全を危険に押しやるだけだ。
  2. いわゆる先制軍事攻撃が成功しないばかりか米国国民や同盟国を危険にさらす可能性があることは軍事専門家以外でも簡単にわかるはずだが、実際はもっと悪い。秘話ふたつと北朝鮮軍事力の評価から「先制」戦のむなしさがわかるはずだ。
  3. 筆者はマクマスターの脇で1991年の砂漠の嵐作戦で戦った。こちらの地上強襲作戦の前に米空軍他同盟軍の機体がクウェートを占領するイラク軍を徹底的に攻撃し、平均すると10時間に一回のペースが42日間続いた。敵戦車が第一目標だった。砂漠のイラク装甲部隊は文字どおり身を隠す場所がなかった。その存在は空からは丸見えで防空体制は存在しなかった。
  4. それでも地上戦で敵軍に接近すると敵戦車他装甲車両の80パーセントは残存していることがわかった。身を隠す場所のない部隊でも空襲を生き残り、しかも空爆はほぼ完ぺきな条件で行ったのだ。まわりに何もない砂漠での話である。
  5. 2011年9月、筆者は米前方作戦基地にいた。アフガニスタン東部のクナル地方でタリバン戦闘員の攻撃にさらされていた。タリバンは山岳地に位置を占めこちらの基地を見下ろしていた。米軍も反撃し重機関銃、105ミリ野砲で30分近く景気よく攻撃したが、敵を黙らせることができなかった。
  6. 最後に米軍戦闘機が山上の敵に爆弾を落とし、大爆発で敵部隊を壊滅させた。険しいアフガニスタンの山地はタリバン戦闘員に米軍の猛攻に耐える条件を与えた。戦闘機が飛来してやっと撃退できたのだ。
  7. ここまでの意味は明白である。もし42日間のミサイル、空爆でも敵装甲部隊を壊滅できず簡単な衣服を身に着けた戦闘員が山地で重火砲の攻撃に耐えられるのなら、北朝鮮の数万門の火砲、移動ミサイル発射機、さらに核ミサイルサイロが隠蔽しており長期間の攻撃にも耐えられるのではないか。
  8. 北朝鮮の独裁者金正恩が米攻撃の報を聞けばどんな反応を示すかは想像に難くない。1991年のサダム・フセインは戦略面で大失敗をした。米軍のミサイルや爆弾が自軍部隊に降り注ぐまで一か月を無駄に過ごしたのだ。金が同じ誤りを繰り返さないのは明らかだろう。代わりに選択肢の一つを実行に移すはずだ。
  9. 金は大量の火砲攻撃をソウルに向けるだろう。これで韓国人数万人が死亡する。だがそこで攻撃を止めて米国が攻撃を止めなければソウルが灰になるり死傷者は数十万名に上ることになると伝えてくる。金正恩の選択で最も危険なのがソウルに核兵器を投下することで日本にも打ち込めば死傷者は百万単位になり、米国が戦闘をやめなければさらに多くのミサイルを発射してくるだろう。
  10. そうなるとトランプ大統領が想定外の決断に迫られるかもしれない。戦闘を継続して数百万名が死ぬままにするのか、金正恩の要求通り攻撃を停止するかだ。どちらにせよ米国の権益が著しく低下するのは間違いない。
  11. 米軍が集中攻撃すれば金正恩はソウル攻撃もままならぬようになるはずと考える向きもあろう。これにはこう答えたい。長年にわたり北朝鮮は米軍機の攻撃力を学び通常火砲部隊の相当数を山岳側部に隠している。そこから引き出して発射地点へ移動し、また戻すのだ。
  12. またミサイルサイロも相当数が山岳地にあり、米軍もまだ位置をつかんでいない。筆者は1990年代中頃にソウルに駐留していたが、朝鮮半島の山岳地の険しさは直接体験している。また韓国の地下退避壕も何度か視察しており、外部攻撃に事実上難攻不落の存在になっていることも知っている。
  13. サイロの地点が不明なのに加えて、北朝鮮には移動式発射車両も多数あり、これも地下の退避場所に隠れて、肝心な時に地上へ出てきて発射するのだ。数千機が飛び回ってもサダム・フセインが移動式発射台から39発の弾道ミサイルを発射するのを食い止められなかった砂漠の嵐作戦の事実が対策の難しさを物語っている。
  14. 北朝鮮への先制戦争オプションは民間人犠牲者を数十万名あるいは百万名まで甘受しないかぎり実施は難しそうだ。だがトランプ政権は北朝鮮が米軍隊員、市民あるいは同盟国を攻撃したら、あるいはもし政権が攻撃の準備に入った兆候を見つけたら、北朝鮮は大々的な攻撃を覚悟すべきだと伝えられるし、伝えるべきだ。その際は米軍事力の行使は説明がつくし、相当の仕事をするだろう。
  15. 目的は戦争勃発を食い止めることであり、米国・同盟国の一般市民の声明を守ることだ。さらに経済外交上の圧力を北朝鮮にかけ続けて最終的に核兵器整備を断念させることにあるはずだ。外交対応に軍事抑止力を組み合わせることがこの結果を生むはずだ。「予防」攻撃という誤った名称の作戦は壊滅的な失敗につながりかねない。■
Daniel L. Davis is a senior fellow for Defense Priorities and a former lieutenant colonel in the U.S. Army who retired in 2015 after twenty-one years, including four combat deployments. Follow him @DanielLDavis1.
Image: REUTERS​

2017年9月21日木曜日

★謎の機体 後編 その正体は....



F-117記事の後編です。墜落機はSu-27Pの模様です。いったいどこから米空軍は入手したのでしょうか。ウクライナかもしれません。事故がなければわからなかったかもしれませんね。

New Details on Mysterious Crash of Lt. Col. Eric “Doc” Schultz Near Area 51 Emerge

エリア51近くで墜落したエリック・「ドク」・シュルツ中佐の謎の機体の詳細が浮上
Sep 12 2017 - 74 Comments

By Tom Demerly

Unnamed Sources in Published Report Suggest Pilot May Have Been Flying Russian Aircraft.



AviationWeek.comの2017年9月11日付け記事であらたな情報があり米空軍エリック・シュルツ中佐(コールサイン「ドック」)がネリスAFBから100マイル北西のネヴァダ試験訓練空域で墜落をした際の謎の機種が分かってきた。

空軍のメディア向け発表がシュルツ中佐が9月5日に墜落した機種名を明らかにしなかったため関心を呼んでいた。また報道機関発表が遅れたことも別の関心を呼び、A-10墜落との誤報まで流れた。

エリック・「ドック」・シュルツ中佐の資料写真 (USAF Photo)
AviationWeek.comのガイ・ノリス記者が9月11日に書いたのは「各種筋からシュルツは墜落当時レッド・ハッツ飛行隊の指揮官だったらしい。レッド・ハッツはAFTC実験航空団第三分遣隊で第413フライトテスト飛行隊が2004年解隊され生まれた番号のない部隊のようだ。同飛行隊はロシア開発の機材多数を運用し、MiG-29のほかスホイSu-27P含む各種機材を運用している」

ノリスがAviationWeek.comでSU-27Pの写真数点を初掲載したが2017年1月6日フィル・ドレークがグルームレイク(ネヴァダ)そばのティカブーピークTikaboo Peakで2016年11月8日に撮影したものだ。

撮影者フィル・ドレークはAviationist.comで「カメラを向けるとフランカーとF-16がドッグファイトしていた。高度3万から2万フィートで真正面からの迎撃練習のようだった。Su-27Pは高度の操縦性を誇るフランカー単座型でF-16の背後に回っていた。両機はその後高度を上げてグルームレイクの制限空域に戻っていったがその間驚きの目で見ていた」と述べていた。

ガイ・ノリスのAviationWeek.com記事でも「空軍発表の大まかな地点からも事故が発生したのはグルームレイクとトノパ試射場空域の中間地点と思われ、ともに空軍テストセンター(AFTC)第三分遣隊の管理かにある。同地区は極秘『ブラック』機材のテスト評価に使われており、レッド・ハッツ飛行隊が海外機材を使い、通常の第一線空軍機材に対して戦術評価や訓練に従事することもある」

第447テスト評価飛行隊は敵勢力の機材、戦術を評価するのが任務で、この公表写真でパイロットが整列している。同隊はエリック・シュルツ中佐が今回墜落した地点で運用されていたことが知られている。 (Photo: USAF) 

エリック・シュルツ中佐の墜落事故に関して空軍から追加情報が出ておらず、ただ空軍参謀総長ディビッド・L・ゴールドフェイン大将のツィッターをMilitary.comが「事故機がF-35ではなかったことは確実に言える」とつぶやいたのを伝えているだけだ。
フィル・ドレークが撮影したテスト場を示す地図 (Map: DailyMail.com)

空軍がシュルツ中佐事故の追加情報を出すか不明だ。中佐が敵勢力の機材を使ったテスト評価や訓練という極秘事業に従事していたのなら今後も同事業が続くこともあり、追加情報は絶対出てこないはずだ。さらに今回の事故機が米国製以外の機材なら空軍は敵軍を模した戦術を使う訓練方法を変える必要に迫られるかもしれない。■
Top image credit: Phil Drake


給油機等にもステルス性能を模索する米空軍


USAF explores cloaking device for tankers

大型輸送機に透明化装置の導入を模索する米空軍
20 SEPTEMBER, 2017
SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
BY: LEIGH GIANGRECO
WASHINGTON DC

米空軍は来月にも給油機、情報収集監視偵察機で顕著な残存性不足対策の検討内容を発表すると航空機動軍団(AMC)の司令が言明した。
重要航空機材に関する研究で既存の給油機、ボーイングE-3(AWACS)、ノースロップ・グラマンE-8C(JSTARS)の各機で残存性でギャップが顕著と判明している。
AMC司令官カールトン・エヴァ―ハート大将Gen Carlton Everhartは以前からUSAFの次世代KC-Z給油機で「透明化」能力が必要と論じており、レーダー反射を操作して敵の攻撃を避ける構想だ。このためにはレーダーの放射性エネルギーを拡散させ給油機・輸送機の外形を見えなくする必要がある。
空軍協会の年次総会壇上でエヴァ―ハート大将は「実はそんなに簡単なことではない。一つでも電子が漏れれば敵に正体がばれる」
エヴァ―ハートはUSAFが情報開示請求を出していわゆる透明化技術関連情報を求めるかは明らかにしなかったが、総会に出席した業界関係者とコンセプトを話し合っている。
他方で空軍ライフサイクル管理センター長からは航空戦闘軍団が防御用レーザーを航空機動軍団の機材に搭載する検討に入っていることが明らかにされた。レーザーも透明化もともに必要であり、AMCは先に実用化された技術を導入したいとエヴァ―ハートも述べている。■

★スカンクワークスのPVで話題を呼ぶ機体が登場、第六世代戦闘機コンセプトか



中国やロシアは過去の延長線にしがみついて「高性能機」を作っていくのでしょう。ロシアは途中で資金不足で脱落すると思いますが。中国が「究極の」戦闘機を実現したとき、相手になる米空軍の戦闘機はもはや戦闘機の形をしておらず、技術も別次元になっている...と考えていますがどうでしょうか。米空軍の組織そのものもそうですが、支配する思考がどう変わるか、民間企業がすでに先を走っているとしたらいかに早く両者が共同で画期的な「戦闘航空機」を実現するか。このレースの結果が出てのは20年先?いやもっと早いかもしれません。ところでスカンクワークスのコンパクト核融合技術はどうなったのでしょうかね。

YOUTUBE SCREENGRAB

No, That YF-23 Like Rendering Of The Skunk Works' Next Gen Fighter Isn't Newスカンクワークスの次世代戦闘機はYF-23そっくりだが新型構想ではない

The concept may be ironic, but it isn't new.

BY TYLER ROGOWAYSEPTEMBER 18, 2017


ロッキードのスカンクワークスが発表したプロモーショナルビデオを巡り盛り上がりが見られる。ビデオは米空軍創立70周年を祝賀して公開されたものだが中で第六世代戦闘機のコンセプトが写っており、ノースロップの不採用戦闘機Y-23ブラックウィドウ/高性能戦術戦闘機に酷似しているのだ。問題はこのコンセプトは今になって生まれたものではなく、4年前のスカンクワークス公表の映像にも表れており、筆者はYF-23とは別の機体だと強調していた。メッセージには全然奇異な点がない。「航空優勢の将来が25年前の競争相手の設計で蘇る」
SCREECAN VIA YOUTUBE

数年前に流出したのが以下の図だ。
LOCKHEED MARTIN

このコンセプトはロッキード・マーティンがこの数年公表しているものでもある。
今回発表されたビデオは「スカンクワークス、75年間のイノヴェーションに向かう」とタイトルがつき、ふたたび同じコンセプトが出ている。
予言しておく。有人戦闘機はもう実現しない。開発は資源の無駄であり、同時に我が国は深刻なほど不利な立場になるがその逆はない。この主張に不満な方は下を読んでもらいたい。読んでいただければ見方が変わるのではないか。

もし本当に第六世代戦闘機が生まれるのなら、またF-35でさえまだ完全に戦力化していないのに実現するだけの予算があるのだとしたら、著者が長年主張してきた機能はどうしても必要だ。長い航続距離、大きなペイロード、広範囲の低視認性、高性能センサーとネットワーク機能でとくに戦場管理と無人機統制能力に加え高速巡航速度の長時間持続だ。言い換えると無尾翼で製造には至らなかったFB-22を大型化したコンセプトとなる。指向性エネルギー装備の運用も必要で少なくとも機体防御用に必要だ。操縦性やこれまでの戦術戦闘機の概念である短い戦闘半径、ドッグファイト、空中給油機への依存はもはや過去のものである。
ノースロップ・グラマンの次世代航空優勢(NGAD)コンセプトは新しい概念を有人戦術戦闘機に大幅に盛り込んだ存在だ。同社のYF-23には競合相手のYF-22よりも先進性が高かった。だがF-22が高等戦術戦闘機の競作に勝ち残ったのであり、理由はいろいろあるのだろうが詳細は今も極秘扱いのままだ。
NORTHROP GRUMMAN
Northrop Grumman NGAD concept.

わかっている理由にはF-22試作機の完成度が高いこととシステム統合のレベルが圧倒的に高かったことがある。つまり開発リスクが低くできた。またF-22の操縦性が圧倒的に高いのも当時の戦闘機の概念である操縦性重視という価値観に合致していた。だがブラック・ウィドウは高速、ステルスで勝るが操縦性が劣っていた。両社が売り込みをかけていたUSAF幹部は多くが戦闘機パイロット出身で、F-15を意識した競合相手の提案が採用されたのは理解できないことではなかった。
いきなり話は今日に飛び、ノースロップ・グラマンはYF-23の操縦性でさえ今日の有人戦闘機として不要だと判断したようだ。ボーイングも同様に理解している。だが正しいからと言って売れるとは限らない。
USAF
YF-23 Black Widow.

ロッキードがYF-23に酷似した次世代戦闘機の構想案を前面に打ち出し従来の戦闘機像からの違いを前面に打ち出している。こうしておけば戦闘機パイロットが支配するUSAFの組織内価値観にも戦闘機らしい姿を示して安心させる効果があるのだろう。一方で別のコンセプトで攻撃迎撃機のようなものも見られる。
前回のATF競作で戦闘機らしい姿をした機体が採用された教訓が生きているのだろう。ではければコンセプトをともに生かしておくことでロッキードは現実的に採用されやすい機体を温存できるが、将来の戦場の状況などは二の次ということにならないか。
今回発表されたビデオではノースロップ・グラマンのNGAD構想と真っ向勝負を挑むコンセプトも姿を見せている。
YOUTUBE SCREENCAP.
注意してみてもらいたいが、スカンクワークのビデオでこのイメージはほんのわずか姿を現すだけだ。ノースロップ・グラマンのNGADととても良く似ている。
そこでふたたびYF-23に見える機体設計だが、ロッキードの第六世代戦闘機コンセプトの実体のないプレイスホルダーなのでではないか。だがその可能性は低いようだ。というのは同じ機体が同社の公式サイトに長年使われているからであり、そのうちに第六世代戦闘機が本当に実現するかもしれない。それが良いことなのかわからないが。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com


2017年9月20日水曜日

再び、F-117ナイトホークはネヴァダで何をしているのか


今回は前編としてまずF-117の登場です。同機の話題は前にもご紹介していますが退役したと思われていたもののどっこい砂漠地方で現役扱いなのですね。では墜落した機体は何だったのか、後編をお楽しみに。

Retired But Still Flying, the F-117 Nighthawk May Soon Fade to Black 退役したものの飛行状態を保つF-117ナイトホークだが全機用途廃止が視野に入ってきた。


第49整備隊がF-117ナイトホークをホローマン空軍基地(ニューメキシコ)で整備している。March 13, 2014. このF-117はホローマン基地の展示施設にて静態保存中で機体は2008年に用途廃止された。退役したがF-117は「飛行可能保存機」としてネヴァダで訓練に供用されている。 (U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Leah Ferrante/Released)
 POSTED BY: ORIANA PAWLYK SEPTEMBER 11, 2017

  1. F-117ナイトホークのネヴァダ砂漠での目撃がここ数年増えており、「退役」機がフライトラインに並ぶとはどういうことなのか疑問が増えている。
  2. 専門用語では「飛行可能保存機」の扱いの同機は空軍機材としてトノパ(ネヴァダ)のテスト試験場に配備されている。
  3. ただし2017年度国防予算認可法によれば空軍は毎年4機のペースでF-117を用途廃止することになっており全廃にもっていく。
  4. 「飛行可能保存機」は極秘扱いを受けないため航空愛好家がこのステルス機が飛行する様子を2014年に初めて目撃し、2016年にも同様に訓練フライトに連れ出された様子を目にしている。
  5. 議会は2007年2008年に当時52機残っていたF-117を現役扱いから外す権限を与えたが、機体整備を続けさせハイエンド戦が勃発した際に必要となった場合に備えるよう求めていた。
  6. だが重要目標を探知されずに攻撃できる同機はあと数年で本当に闇の存在になるかもしれない。「2017年に一機を廃棄する予定で今後は毎年4機ずつ処分する」と同上関係者は述べている。
  7. 「非軍用機」への移行と存存機数の減少は国防総省の41-60.21「国防資材処分マニュアル」に定められている通りだ。
  8. 同機が何をしているのか、DoDがどうしようとしているのかによっては、たとえば博物館展示にするというのもあるが、マニュアルでの処分方法が変わってくる。「墓場にもっていくこともあれば、そうならないときもある」と同上関係者は述べる。言っているのはデイヴィス・モンタン空軍基地(アリゾナ)のことで退役機材が集まる場所だ。
  9. F-117の初の実戦は1989年12月19日のパナマ侵攻「正しい道義」作戦でその後何回もレーダー波をかいくぐってきた。
  10. F-117が実戦部隊に配備された1980年代より以前に9年間にわたり秘密扱いだった。公試中に数機が墜落もしている。
  11. 先週にネヴァダテスト訓練空域で「極秘」機材の墜落でパイロットが死亡しており、ナイトホークの役割に関心が高まっている。
  12. エリック・シュルツ中佐(44)が機体墜落による負傷で死亡した。墜落地点はネリス空軍基地から約100マイル地点だ。
  13. 空軍参謀総長デイビッド・ゴールドフェイン大将は事故機がF-35共用打撃戦闘機だったとの観測を一蹴した。「F-35ではなかったことははっきり言える」とMilitary.comの取材に答えている。
  14. 事故機の機種はいまだに公表されていない。■

米空軍は今週創立70周年、しかし組織に相当のストレスが溜まっている様子


さすがビジネス誌なので機材装備ではなく一番大切な人材についてメスを入れています。詳しくは記事を見てもらいたいのですが、巨大組織でもあり毎日作戦を実施していることもあり、拙速の変更は避けようとしているようですね。しかし効果が出るのもそれだけ遅くなりますのでそれまでの運用が大変です。皆さんならどんなアドバイスをしますか。

'We are a service that is too small': The Air Force is under strain and looking at some major shakeups

「組織が小さすぎる」米空軍は厳しい緊張にさらされ抜本的組織改革を検討中
us air force night第36空輸飛行隊のトーマス・バーナード大尉がC-130ハーキュリーズパイロットとして暗視装置付きゴーグルで関東平野上空で訓練中。October 14, 2015. US Air Force/Osakabe Yasuo
  1. 米空軍が各地で組織の限界を試される状況にここ数年直面している。
  2. 中東の武力衝突、ヨーロッパ・アジアでの緊張の高まりに加え予算問題は空軍をさらにやせ細らせる課題の一部に過ぎない。
  3. 米空軍は9月18日に創立70周年を迎えたばかりだが、新規隊員募集、訓練、配備と人員面管理面での合理化に迫られている。
  4. 「これだけの仕事があるのに組織が小さすぎる」と空軍長官ヘザー・ウィルソンHeather Wilsonが8月末にAir Froce Timesに語っている。「即応体制の問題が国内で深刻になっているし、来年も予算抑制の継続決議が続けば予算は昨年と同額、あるいは強制削減措置でもっと悪い事態になるかも...そうなれば破滅的だ。回復に何年もかかる」
  5. 政府会計検査院によれば空軍部隊で十分な即応体制を維持できているのは半数以下しかない。組織ではなんといってもパイロット不足が一番深刻な問題だ。
  6. 空軍は2016年度にパイロットの門戸を広げたが、2017年度でも必要とされる20,300名のパイロットが1,555名不足し、うち950名が戦闘機パイロットと見られる。また整備要員も3,400名不足している。
  7. 空軍参謀早朝デイヴィッド・ゴールドフェイン大将Air Force Chief of Staff Gen. David Goldfeinおよびウィルソンの前任者デボラ・リー・ジェイムズDeborah Lee Jamesは人員不足を「静かなる危機状況」と2016年7月に評していた。
Air Force ドイツで降下訓練をする上等空兵ジャスティン・ゴードン、2013年7月U.S. Air Force
  1. そこで状況を解決すべくパイロットを退役させないため、空軍が考えているのは俸給とボーナス支給額の増額、いったん退役したパイロットに現役復帰を求め、支援要員を増やしてパイロットに事務作業をさせなくてもよくすること、年間のパイロット養成規模をふやすこと、さらに現役パイロットに異動に際して意見を言わせることだ。
  2. すでに「レッド・エア」訓練部隊の一部を外部委託しており、民間会社パイロットが敵機の役をしている。またモスボール保管中のF-16を訓練機材として有人・無人運用すべく改装中だ。
  3. ただ空軍で厳しい勤務状況を強いられるのはパイロットだけではない。
  4. 空軍特殊作戦軍団AFSOCは16年間に及ぶ苦闘に耐えている。どの時点でもおよそ1,200名のAFSOC要員が約40カ国に展開中とAFSOC司令官ブラッド・ウェッブ中将 Lt. Gen. Brad WebbがAir Force Timesに語っている。同軍団の総人員は将校下士官14,461名に過ぎず、任務展開は「隊員と家族の明らかに負担となっている」とウェッブ中将は語っている。
  5. 「15年間で10数回も海外展開した隊員が多数いる。この国でここまでの勤務は今まで一回もなかった」とウェッブ中将は述べ、同軍団が海外配備の頻度がこれ以上増えないよう国防長官から猶予を求めているという。
Air Force special operations第320特殊戦術部隊の隊員が射撃訓練前に状況説明を受けている。 November 19, 2015, at Camp Hansen, Japan. US Air Force photo/Senior Airman John Linzmeier
  1. 一般空軍隊員でも需要は高いままだ。2017年はとくに任務展開のテンポが高く、今後もこの状態が続くとの予想がある。
  2. 「2017年度の訓練や演習の頻度は2018年度も続く見込みで頻度は適正と言える」とトッド・ウォルターズ大将Gen. Tod Wolters(米空軍ヨーロッパ・アフリカ司令官)が9月8日に語っている。
  3. ヨーロッパ駐留中の空軍人員30千名以上は十分な規模とウォルターズ大将は見ている。パイロット不足と故障時間が増える中、「現時点でこの方面の人員規模は適正で、短期展開で当地にくる人員もここに含む」と大将は語っている。
Air Force B-1Bランサーの排気口カバーを外すケヴィン・コロン上級軍曹、ネヴァダ州ネリス空軍基地にて。May 21, 2013. U.S. Air Force
  1. また空軍は下士官も昇進で将校にさせることで人員不足に対応しようとしている。
  2. 今月だけで下士官2,001名が補充昇進の対象になり、主に臨時任務が延長された、あるいは緊急作戦に動員された下士官が対象だ。
  3. 12月には空軍は全将校に大尉までの昇進の機会を提供する。資格が満足でき、昇進の推薦があり、欠点なしの勤務実績があれば昇進は確実となる。
  4. ここまで大盤振る舞いになっているのは現場将校がもっと必要になっているからで、少佐、中佐、大佐と言えども例外ではない。空軍の現状の第一線将校の充足率は92%でその他支援にあたる将校の充足率は74%にとどまっている。
  5. 「将校評価制度はここ30年間大きな課題はなかったが、今や軍の構造、任務、要求内容、実績で貴重な将校に反映されつつある」とジーナ・グロッソ中将Lt. Gen. Gina Grosso(空軍参謀次長、人員・組織・各種支援担当)が昇進制度変更の公告で述べている。
  6. 新昇進制度は空軍が事務作業の負担を隊員から減らそうとする中で実現した。また各隊員の私生活にも負担が増えている。
  7. 「各隊員にはワークライフバランスの実現を奨励しています」とウェッブ大将も言う。「空軍特殊部隊は各軍の特殊部隊と共に成果を上げていることを誇りに思うが、大変な任務の裏で回復力が必要だとも認識している」
  8. 空軍隊員は「すごいことを実現している」と最上級空軍曹長カレス・ライトChief Master Sgt. Kaleth WrightもAir Force Timesに語っている。だが隊員は同時に人員不足、予算・資材不足、任務実施の高い負担、追加業務が高止まりなっていることへの対処を迫られており、欲求不満とストレスが高まる一方だ。
  9. 「こちらから世界に静かにしてほしい、不安定な状況をやめてほしいと言えませんよね」とライトは語り、「これができないので一番いいのは空軍をもっと効率の良い組織にして威力を増大させ、徐々に厳しい状況から脱することではないでしょうか」
  10. ライトによれば空軍は業務評価の廃止も検討しており、一部部隊でメンタルヘルスと回復力の改善に向けた試みが進んでいるという。今年に入り自殺した空軍隊員は62名に上り、このままならここ数年の年間100名のままになりそうだ。
air force cockpitB-1Bランサーのパイロット、ジェイムズ・シルバ少佐とスティーブン・マイヤース中佐が最新改修を終えたばかりのB-1Bのフライトを終了してテキサス州ダイエス空軍基地に帰投してきた。January 21, 2014. US Air Force/Staff Sgt. Richard Ebensberger
  1. メンタルヘルスに加え業務能力向上の取り組みでも空軍は広範囲に人事情報技術制度の見直しも開始したとグロッソは語る。
  2. 空軍の人事業務では申請が200種類あり、111種類ものばらばらの制度が古いものは1990年代から生きている。これを合理化し普通の隊員でも人事関連業務をこなせるようにできないか。たとえば給与小切手の処理だけで毎月5千人が従事している。
  3. グロッソは空軍が二年から三年かけて人事評価制度を大幅刷新する検討に入っているとも述べている。「これは拙速は避けたい内容です」とAir Force Timesに語っている。「正しい作業が求められている」
  4. 空軍への作戦要望が近い将来に減少する見込みはない。イラク、シリアではISISに対して数々の勝利をおさめたが、現地の友邦国部隊から求められる支援は増えるばかりだ。ここにアフガニスタンでの空軍任務の拡大の可能性が生まれる中で東欧と北西アジアでの緊張が高まる状況に米軍は直面している。
  5. 「今後も空軍の重要性が減ることはない」とゴールドフェイン参謀総長はDefense Newsに以下語っている。「航空優勢はアメリカが生まれついて獲得した権利ではない。何らかの計画を立て、訓練し、実際に戦って初めて実現できるものだ。地上部隊の隊員でも空軍隊員でもジェットの音が頭上に聞こえれば空を見上げるものはない。こちらの機体だとわかっているからでこの維持は空軍の道義的責任と言ってよい」■

2017年9月18日月曜日

★拡大する日印共同演習、2018年よりマラバール演習にP-1参加が決まる



インドは今後も日本との関係が深くなりますが、一般社会ではインドの実態、重要性はほとんど認識されていません。メディアはやはり都合の悪いことには報道しない自由を行使するのでしょうか。日印の接近を快く思わないのはあの国ですからね

Maiden Indo-Japan joint exercise in 2018

印日共同演習が2018年から拡大へ
DH News Service, New Delhi, Sep 15 2017, 2:15 IST


  1. インド、日本両国の防衛部隊が2018年から合同演習を充実させることがわかった。
  2. インド陸軍と陸上自衛隊は対テロ作戦を主眼とする演習を初開催し、インド陸軍の経験値を活用する。両国の空軍も機材を相互派遣する。

  1. 三ヵ国海軍演習のマラバールでは2018年に海上自衛隊がP-1哨戒機を初参加させる。

  1. 演習の詳細内容は今年両国部隊が開催する企画会議で決まるという。

  1. その他の演習題目に国連平和維持活動、人道援助、災害救難も加わりそうだ。

  1. 両国海軍部隊にはすでに協力関係の実績があるが、ナレンドラ・モディ首相と安倍晋三首相のトップ会談後の共同声明ではインド洋から太平洋にかけての海洋認識探知力の重要性を重視している。今年7月にベンガル湾で展開された同演習の規模拡大と内容の深化を両首相は評価している。

  1. 2017年から日本はマラバール演習に常時参加国になり、米印二か国海軍演習の性格が変更されている。

  1. 友好親善関係の増大を受けて日本も対潜戦、機雷処理でインド海軍に訓練参加の門戸を開くことになり、2018年スタートしそうだ。■

2017年9月15日金曜日

☆謎の機体好きにはたまらないノースロップ・グラマン重役の執務室模型の正体は?


すっかり先端機、高度技術機というとノースロップの名前が先に立つようになりましたね、それだけ今まで同社がブラックの事業に従事してきた実績があるためでしょうか。


This Northrop Grumman Exec Has Some Very Interesting Airplane Models On His Desk

ノースロップ・グラマン重役の執務室で謎の機体を発見

For a guy that has likely seen it all when it comes to classified aircraft projects, the planes that adorn his desk are well worth checking out.

極秘機材の開発に従事した当の本人だけに、垣間見える機材はチェックの価値がある



US-POLITICS-DEFENSE-ANNIVERSARY-B2FREDERIC J. BROWN—AFP/GETTY IMAGES
 BY TYLER ROGOWAYSEPTEMBER 3, 2017
クリス・ヘルナンデスChris Hernandezはノースロップ・グラマンの研究技術エンジニアリング部門担当副社長として驚異の成果を目のあたりにしてしてきた。LAタイムズがうまくまとめた記事を先週発表しており、本人の写真では模型飛行機多数のが写っている中に興味をそそるモデルがあった。
ヘルナンデスが携わった事業そのものが航空宇宙産業の過去三十年間の進展そのものだ。ノースロップ・グラマンのウェブサイトでは本人の経歴を以下まとめている。
「クリス・ヘルナンデスは研究技術エンジニアリング部門担当の副社長をノースロップ・グラマン・エアロスペースシステムズで務めている。軍用機、自律運用や宇宙システム、さらに次世代ソリューションで世界各国に分布する顧客を支援することで自由を守り、人類の好奇心をさらに進めるrうている。
ヘルナンデスは航空宇宙システムズ内の技術部門をまとめ、同部門の広範囲な製品群や事業の設計開発に必要な作業やツールを統括している。同時にNG Nextと呼ぶ同部門の基礎研究ならびに応用技術研究部門を統括している。これは将来の技術開発とともに成長し競争力をつけることで差別化を目指す航空宇宙システムズ部門にとって重要な組織である。
本人はNG Next副社長も務めた。その前には先端システムズ部門副社長で将来装備の高性能システムソリューションの実現に尽力した。例として次世代制空戦闘機、低視認性および低視認機対応システムズ、長距離攻撃ISRシステムズ、高性能兵器および次世代貨物輸送システムズがある。本人は最高技術責任者として航空宇宙システムズ内の旧高度技術プログラムおよび技術事業領域の技術開発担当副社長も務めた。
そのほか旧統合システムズ領域で技術開発事業統括担当副社長、地上監視戦闘管理航空システムズ領域で副社長兼次長、B-2爆撃機事業で副社長兼技術主幹、多機材搭載レーダー技術導入事業で副社長兼事業主幹を務めている。ノースロップ・グラマン入社(1987年)の前はロックウェル・インターナショナルコーポレーションでNASAのスペースシャトル他高性能宇宙打ち上げ機コンセプト実現に従事した。

すごい人物だ。そんな本人が自分の机の上に飾ざっている模型に注目だ。そこでFlightglobal.comのアメリカ支局長スティーブン・トリンブルStephen Trimbleがこんな指摘をしている。
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Hey, @northropgrumman. Cool story about SVP for R&T Chris Hernandez, but how about you ID the model in upper-right? http://www.latimes.com/business/la-fi-himi-hernandez-20170903-htmlstory.html …
右上のモデルがわかるかな?

LAタイムズ記事の写真の高解像度版もあり、記事は読む価値がある。

写真で見える機体は以下のようだ
  • 無尾翼ティルトローター機のようなもの
  • E-10 MC2A
  • E-7ウェッジテイルとMQ-4Cトライトン、多分オーストラリア向け
  • RQ-4グローバルホーク
  • MQ-8B ファイヤースカウト
  • バット
  • プロテウス
  • 不明機
  • F-117か
  • ノースロップ・グラマンの第六世代戦闘機コンセプト
  • B-2 スピリット
ノースロップ・グラマンの特徴の全翼機形状の「不明機」が興味を引く。RQ-180といわれるエリア51で2010年代に代わるこ炉開発された機体で米空軍が極秘のうちに飛行させている機体なのか。高高度飛行可能で敵地奥深く侵入可能な無人機は米情報収集用機材とネットワーク機能のエコシステムをつなぐミッシングリンクなのか。機体形状は広い周波数帯で低視認性(ステルス)であり、これがノースロップ・グラマンがB-21レイダーの受注で決め手となった。また次世代爆撃機の実証機が2000年代後半に実際に飛行していたとする有力な兆候がある。本当に存在するのであればこれがその実機なのか。
一番左のティルトローター機も謎だ。有人機のようにも見える。垂直尾翼が見当たらずステルス機の特徴もあるようだ。
スティーブン・トリンブルによればヘルナンデス本人から数年前にこの模型を直接見せてもらったという。当時はノースロップ・グラマンが無人TERN設計案をDARPAに提示しており初期段階だった。ただ機体は想像図の度に異なっており、下に示したものはよく似ているが機体形状がより曲線的になっており、逆V字型尾翼が特徴的だ。
NORTHROP GRUMMAN

ただし模型があっても実機が飛行している証拠にはならないし、謎の機体は現行機に進化する途中の存在なのかもしれないし、開発の袋小路に入った機体なのかもしれない。FB-23模型の写真は今でも軍事航空愛好家の中で流通しており、「もしもの世界」としてこんな機体が実際に飛んでいたらと興味を引き付けている。今回もそのような例にすぎないのかもしれない。
Contact the author: Tyler@thedrive.com