2018年11月25日日曜日

イラン侵攻に米軍が踏み切ればこうなる



What If America Invaded Iran? Why a War Would Not Be Easy.

米軍がイラン侵攻したらどうなるか。一筋縄でいかない戦いになる

Invading Iran and dictating terms to an occupied Tehran would be one way to achieve regime change. However, the United States would struggle to directly overthrow the Islamic Republic regime through force of arms.
イランを侵攻しテヘランを占領すれば政権変更の一つの方法だろう。しかし米国は武力によるイスラム共和国体制の放逐に相当苦労するはずだ。
November 5, 2018  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: IranMiddle EastWarTechnologyRegime Change
ランプ政権はイランが合同総合行動計画Joint Comprehensive Plan of Action (JCPOA)を遵守していないと断定する動きのようだ。ただしイランに違反証拠はない。JCPOAにかねてから批判的な向きは今回の動きは正しいと支援している。米政策が目指すのはイスラム共和国の終焉であり、テヘランの現政権の放逐である。現政権が存続を続けると二国間あるいは多国間合意でいくら制約を課しても中東の秩序を揺るがす動きが止まらず、公然非公然に軍事手段の行使もためらわなくなる。米国でこの立場をとるのが民主主義防衛財団のマーク・デュボウィッツやトム・コットン上院議員等である。イラン政権の変更を求める動きは中東にもあり、特にイスラエルとサウジアラビアに強い。
公平を記せばこうした主張をする向きでも軍事作戦でイスラム共和国打倒を求める声は皆無に近く、そのような作戦を展開して成功の代償を負担してもいいとの声は少ない。とはいえ政権転覆を目指す戦いがどんな様相を示すかを考えて見る価値はありそうだ。ブッシュ政権がイラクの政権転覆を政策目標に定めて開戦につながったのは疑う余地がない。トランプ政権も同様に政権転覆を志向すれば開戦は遅かれ早かれ避けられないのではないか。
イラン侵攻は可能か
イランに侵攻しテヘランを占領する以外に政権変更の実現手段はないようだ。しかし米国がイスラム共和国を力で転覆させようとすれば相当苦労することになる。米国には地域内にイラン侵攻用の兵力を整備する基地がない。このため米軍部隊はイランの弾道ミサイル攻撃の前に脆弱となり損害多数を覚悟せねばならない。さらに戦闘終了後のイラン占領問題は簡単に解決できない。
封鎖作戦、侵攻作戦
政権転覆を求める向きによるJCPOA批判の中心はイラン制裁が最終的にイスラム共和国崩壊につながる考え方そのものだ。政権転覆をめざす軍事行動はイランの経済基盤を崩す効果を生み、同国民衆が不満を募らせ反革命運動に走ると期待したいところだ。侵攻しなくても米国は軍事経済両面の封鎖で現政権の崩壊を引き起こせる。その場合、空爆や海上からの巡航ミサイル攻撃のほか特殊部隊を展開させるはずだ。
経済封鎖はイランのみならず世界各地にも影響を与える。だがこの作戦に同調する同盟国は皆無に近く、実施の場合は重要技術内容の輸出入をとめる物理的手段が必要となろう。
作戦の初期段階ではイラン国内の軍事施設が標的となり、とくに空軍基地、海軍基地、弾道ミサイル基地を狙うはずだ。攻撃は相当の損害を与え、同時にイラン防空体制も攻撃する。イランの海軍・空軍は大損害を受け、ミサイル部隊多数が損壊するだろう。湾岸地区の米同盟国が基地を提供するはずでサウジアラビアも当然ここに含まれるが、長期にわたる対イラン作戦を支援するかは大きな疑問だ。
イラン軍や統治機構を狙う攻撃は相当の損害を与えるだろうが、米国の目標はイラン政権への国民支持を低下させることだ。このため米国はイラン経済を狙い石油施設や輸送インフラを狙うはずだ。これでイラン経済は少なくとも短期的に大打撃を受け、イスラム共和国のみならず貿易相手国にも影響が生まれる。ただし民間を標的にすれば米政策および武力紛争関連法に抵触する。米国としてはイランの経済インフラを標的とする理由は妥当と説明するはずで、イランが国家統制で経済を運営し輸送も軍用に利用していると指摘するだろう。米軍はISISでも石油インフラを空爆での破壊に成功している。これがISIS石油関連事業の崩壊に繋がり、同時に輸送トラック等の輸送手段も崩壊した。イラン侵攻でテヘランを占領すれば政権変更につながるだろう。だが米国は軍事力を持ってしてもイスラム共和国体制の崩壊には苦労させられるだろう。
作戦はイラン国内の反政府勢力の大々的支援と調整しての実施となるだろう。その一派にイラン人民ムジャヒディンがある。そのため武器供与、情報収集、抵抗勢力向け訓練のほか、新規戦力の募集も必要となりクルド人が有望だろう。だが地上部隊編成には長い時間がかかる。一定規模の地上部隊がなければイラン地上兵力の壊滅は不可能だ。さらにイラン陸軍、革命防衛隊の相当部分が市街地に配備され国内騒乱や市民の反乱を防ぐ役割を果たすだろう。
イランの反応は
米軍攻撃を受けてイランには多様な選択肢が可能だ。イランはイラク、アフガニスタンを不安定化させる動きを強化すべく代理勢力や武器輸出を利用するだろう。同様に域内の代理勢力に米軍基地、艦船を攻撃させつつ米同盟国の軍事経済インフラも攻撃するだろう。ただしミサイル部隊は時間経過で消耗するはずだ。可能性が高いのはイランがなにもせずに国際世論が米国に反対の論調となることで、これで米国が攻撃を実施できなくなるとの考えに基づき待つことだ。
結論
政権転覆が成功する可能性は低く、問題を解決するどころか逆に悪化させそうだ。
第一に攻撃でイランの国民感情が激昂し現政権支持を強める効果が短期的に発生する。攻撃を受けた現政権に社会経済の締め付けを強める口実が生まれる。こうした締め付けは長い目で見て失敗するが。
二番目に米国が政権転覆を狙う作戦を展開しても国際的支援は期待できない。サウジアラビアやイスラエルはじめ同盟国は戦闘長期化の際の費用負担に恐怖を感じるだろう。ロシア、中国が支持するとは到底考えられず、むしろテヘランへの圧力緩和を求める動きに走る可能性がある。ヨーロッパ各国では国民の反対が根強く、本来なら理解してくれるはずのフランス、英国の指導層もワシントンと距離を取るだろう。
三番目に軍事介入がどう止まるかが不明だ。イランを軍事的に封じ込める米国には国際支援がつかず、逆にイランは各国の同情を集める動きを加速するだろう。イラン指導層はこの動きを理解しているようだ。イスラム共和国が崩壊しないと米国は敗北を認めるか、あるいはもっと危険なエスカレーションに走るかもしれない。
良い面では作戦が失敗に終わりテヘランの現政権の転覆ができなくてもイランの軍事・経済・科学の基盤に大きな損害が長期的に発生し、イランの軍事的野望は後退するだろう。この結果、中東内の米同盟各国へ最大の影響が生まれるだろう。
政権変更がうまく機能しても成功の可能性は高くない。戦闘でイランは深刻な被害を受けるが、イスラム共和国打倒は成功しても米国にとって数十年を要する目標となろう。■
Robert Farley , a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government.

サウジアラビアをめぐる不可解な背景に西側がメスを今ひとつ入れられない理由が中東の複雑な力関係、特にイランの存在です。日本にはとても理解し難い力のバランスですが、宗教よりも地政学の問題でしょう。日本にとってもエネルギー安全保障の観点からも簡単にどちらかを糾弾できないのがつらいところです。米国がイランをここまで警戒するのは日本が北朝鮮に神経をとがらせるのと同じでしょうか。

中国空軍J-10の増強に要注意



Forget China's J-20 Stealth Fighter: The J-10 Is One Tough Jet J-20ステルス戦闘機に目を向ける間にJ-10の存在に注意が必要、相手にしたくない戦闘機だ

Much like the U.S. Air Force with its mix of stealthy and non-stealthy fighters, the Chinese air force is developing a two-tier fighter fleet. Alongside a handful of radar-evading J-20s, Beijing is acquiring hundreds of more-conventional J-10s.
中国の戦闘機部隊が急速に増えているとはいえ、米国から見れば小規模かつ近代機材の比重は低い戦力だ。2018年時点の米軍には戦闘機2,800機があり、F-16だけで900機があり、F-22.F-35のステルス機も数百機となっている
November 22, 2018  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaMilitaryJ-10J-20Air Force


型J-20ステルス戦闘機に注目が集まりがちだが中国空軍は少しばかり性能が劣る戦闘機J-10の増勢に励んでいる。
米空軍がステルス機、非ステルス機の組み合わせを図るのと同様、中国空軍も二層構造で戦力整備中だ。レーダー波吸収機能があるJ-20は小規模調達だが通常型J-10は数百機規模で調達中だ。
単発単座のJ-10は成都航空工業の製品で初飛行は1998年、実戦配備開始は2003年だった。水平尾翼なしのデルタ翼、カナード翼が特徴の同機(全長51フィート)は失敗に終わったイスラエル戦闘機ラヴィと酷似するが、中国がイスラエル設計をコピーした証拠はない。.
J-10は性能、ミッション双方で米空軍F-16に似ており、空対空、空対地双方のミッションをこなせる。
2018年版のペンタゴン発表の中国軍事力報告書では最新型J-10Cを「高性能第四世代戦闘機で、最新兵装を搭載している」と評している。
2017年末時点で中国空軍J-10は260機近くあり、中国軍用機の15パーセント、米国防総省が近代的と区分する軍用機では半数近くを占める。
J-10の増勢で演習や領空警備への投入が増えている。2018年秋にJ-10はその他中国軍用機と演習に投入され、中国空軍はこの演習を「総合的戦闘能力に向けた大切な一歩」と評していた。
2017年7月にはミサイルを搭載したJ-10の一機が東シナ海の国際空域飛行中の米海軍EP-3に異常接近し、米関係者は同機の飛行を「危険行為」と評した。
中国はJ-20はじめ新型機開発と並行しJ-10の改良を重ねている。2018年11月初め開催された珠海航空ショーでは推力偏向エンジンを搭載したJ-10Bが極限までの機動性を示していた。
新型J-10Cは2018年から第一線に配備されているといわれ、空気取り入れ口が変更され、あきらかにレーダー探知性を改善している。また電子スキャンアレイレーダーを搭載し、出力・信頼性ともに改良している。
中国の戦闘機部隊が急速に増えているとはいえ、米国から見れば小規模かつ近代機材の比重は低い戦力だ。2018年時点の米軍には戦闘機2,800機があり、F-16だけで900機があり、F-22.F-35のステルス機も数百機となっている。■
David Axe edits  War Is Boring  . He is the author of the new graphic novels MACHETE SQUAD and THE STAN.

2018年11月24日土曜日

歴史に残る機体20 ロッキードP-38ライトニング


Hitler Hated This: Why Nazi Germany Feared the P-38 Lightning ナチ・ドイツがP-38ライトニングを恐れた理由

The hero of World War II? 第二次大戦で戦功を上げた機体といえるのか
November 22, 2018  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: P-38 LightningWorld War IIU.S. Air ForceNazi GermanyImperial Japan

1937年に米陸軍航空隊が新型迎撃機の提案要求で時速360マイルで短時間で高高度上昇可能な性能を求めた。ケリー・ジョンソンは当時は小企業で軍用機で実績のないロッキードの設計者で双発機でなければ要求は実現できないと計算をはじいた。
ジョンソンの提案内容は他社と全く異なっていた。アリソンV-1710水冷エンジン双発のYP-38では長い2つの胴体が尾翼でつながり、パイロットは中央部のポッドに座り武装は50口径機関銃4門と20ミリ・イスパノ機関砲1門だった。ターボ過給器が各エンジン上部につき高い上昇性能を実現し、実用高度限界を引き上げ、プロペラは逆回転でトルクを打ち消した。
P-38は高速飛行可能で時速395マイルを出し、航続距離も1,100マイルと長かった。しかし、機体構造が新奇のため欠点もあり、とくに急角度高速降下に陥ることで悪名を轟かせ実際に犠牲者もでている。エンジンは取扱がむずかしくパイロットは高度の訓練が必要だったが実際にそこまで技量を上げていたものは少ない。コックピットの温度調整が悪く、高高度で凍結し熱帯では酷暑に悩まされた。
こうした欠点のため英空軍はライトニング発注を取り消し、真珠湾攻撃後に参戦した米国が採用した。米戦闘機の中で唯一戦中通じて生産され計1万機が完成している。
P-38の単価は120千ドルで単発戦闘機の二倍だった。だがP-38の長距離飛行性能とペイロードが大きいこと(爆弾、ロケット弾を3千ポンドまで搭載した)から開戦当初当時の単発機でこなせないミッションを担当した。
1942年9月、アラスカ州アリューシャン列島でライトニング2機が初の撃墜実績をあげた。H6K水上機(97大艇)だった。その5日後にアイスランド駐留のライトニングが初のドイツ機を撃墜した。Fw-200コンドル海上哨戒機だった。その年の冬にライトニング部隊は北アフリカのドイツ軍補給線に打撃を与え、ゲベルシュワンツ・トイファル(双胴の悪魔)とのあだ名を得た。機首搭載の兵装は正確かつ威力が高く当時の米戦闘機が搭載した主力搭載兵器より効果が高かった。
P-38は低空では敏捷性が高いものの高高度で動きが鈍く、B-17爆撃機援護では機動性で優れるMe-109やFw-190戦闘機の前に損耗率が高かった。第七空軍はライトニングを地中海地方で多用し、ルーマニア、ブルガリア空爆にも参加させた。少数の機体が捕獲されイタリア、ドイツのパイロットが操縦し連合軍爆撃機を襲った。
1944年までにジョンソンはライトニング機体構造の欠陥を把握し解決策を講じていた。動力つきエルロンや急降下フラップで飛行中のロック状態発生と急降下は避けられるようになった。大戦末期には無塗装のP-38J型L型が改良策を施され追加燃料タンク、加熱式飛行服を導入し、エンジンは1,475馬力(「あご」式の冷却器が特徴)に拡大し最高速度も420マイルに伸びた。
2,000ポンドの兵装運用能力を活かし、ライトニングは戦闘爆撃機として爆弾や5インチ高速ロケット弾の威力を発揮した。ノルマンディー上陸作戦では黒白の侵攻部隊識別標識をつけフランス北西部上空を飛行し、ドイツ軍司令部、レーダー基地、鉄道、車両を破壊した。
だがドイツ戦闘機との一騎打ちではライトニングは不利で、単発機のマスタングやサンダーボルト並みの評価はもらえなかった。太平洋戦争ではライトニングは米陸軍戦闘機中で最高性能の機材で熱帯気候でもエンジンは高信頼性があり、機銃掃射は正確かつ無慈悲に軽装甲の日本軍用機を葬っていた。
米戦闘機パイロットで最大の撃墜記録を達成したパイロット二名、リチャード・ボング(40機)、トーマス・マクガイヤ(38機)はともにライトニングを操縦した。両名は戦中に死亡しており、マクガイアはフィリピンでのドッグファイトで地上に激突し、ボングはF-80ジェット戦闘機の離陸に失敗した。
チャールズ・リンドバーグも大西洋横断飛行から17年経過していたがライトニングに乗り、フランス作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(星の王子様)の乗機F-5Bは地中海で1944年墜落した。ロビン・オールズ大佐はその後朝鮮、ベトナムで戦果を上げたが、大戦中はライトニングで16機を撃墜している。
だがなんといってもP-38で語り継がれる最大の戦果は1943年4月18日のことで、米情報部が日本海軍の司令官山本五十六大将がブーゲンビルに展開する部隊を視察する情報をつかみ展開された作戦だ。P-38Gの16機編隊がガダルカナルを離陸し、往復1,000マイルを飛び山本大将が登場するG4Mベティー(一式陸攻)を待ち伏せし撃墜した。山本大将の遺体が見つかったが軍刀を片手につかんだままだった。
改造型にはF-4、F-5写真偵察機700機のほか、パスファインダー用ライトニングでは機首にガラスをつけ航法士が腹ばいになり爆撃隊を標的に誘導した。1945年に黒塗り複座のP-38M夜間戦闘機が機首にAN/APS-6レーダー(有効距離5マイル)を搭載し日本軍の夜襲爆撃機を迎撃した。
第二次大戦の終結で迅速に退役したもののライトニングはフランス、イタリアの各空軍でその後も供用され、中国国民党軍(うち一機がソ連製MiG-15の最初の撃墜機となった)やグアテマラではCIAが支援するクーデター軍の艦船一隻を沈めている。
欠点はあったがP-38は初期の「重」戦闘機としては稀な成功作となり、速力、航続距離、火力を誇ったのは現代の多任務戦闘機たるF-15やSu-27に通じるものがある。ケリー・ジョンソンの設計内容は時を越えた丈夫さと魅力があり、1992年にはグリーンランドに50年前に墜落したP-38が82メートルの氷の下から発掘され、機体は2007年に飛行可能状態に復元された。機体は当然ながらGlacier Girlの名前がついた。(Gracierは氷河の意味)■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring .
Photos: Wikepedia

P-38には大きな魅力がありますが、日本人にとっては軍神山本提督を抹殺した卑怯な米軍のイメージしかないのでしょうか。しかしF-35がなぜライトニングIIになのか。共通する要素が見当たりませんが、ロッキード・マーティンとしては成功作にしたいとの思いがあったのでしょうか。

★YF-23はなぜ神格化されるのか

The YF-23 Stealth Fighter Won’t Save Us 

YF-23では救われなかったはず

Stop mythologizing Northrop Grumman's old airplane

ノースロップ・グラマン製同機の神格化やめよう

The YF-23 Stealth Fighter Won’t Save Us

1994年、NASAドライデン施設に到着したYF-23 NASA photo


WIB AIR November 16, 2018 David Axe


1994年以降飛んでいないステルス戦闘機実証型がここにきて存在感を強めている。
だがYF-23が再び脚光を浴びるのは米国の国防力を弱めかねない有害な神秘思考が裏にあるからだろう。
YF-23はノースロップ・グラマンが空軍の高性能戦術戦闘機競作で提案したF-15後継機を狙う機材だった。
ノースロップは尾翼二枚、双発の実証機を二機製造し、ロッキード・マーティンのYF-22実証機と競合し、1990年から1991年にかけ評価に臨んだ。1991年8月に空軍はYF-22を採択。ロッキード・マーティンはYF-22からF-22を開発し、2005年に実戦配備が始まった。
ノースロップはYF-23両機をNASAに寄贈し、その後機材は博物館入りした。両機がドライデン飛行研究センター(カリフォーニア州)まで飛行移動した1994年が最後のフライトだった。
それから二十年余たち、YF-23は「あのときもしも」の分野で人気を集める存在になっている。「専門家の中にはノースロップのYF-23の方が優れていたと主張する向きが多い」とカイル・ミゾカミがPopular Mechanics記事に書いている。「F-23になっていればどんな姿だっただろうか」とデイヴ・マジュンダーがNational Interestで問いかけている。
YF-23の仮想記事で究極の存在がThe War Zoneのタイラー・ロゴウェイがデジタルアーティストのアダム・バーチとともに実戦仕様の「F-23A」想像図を見事なアートとして紹介した記事だ。
マジュンダー、ミゾカミ、ロゴウェイともにプロだ。筆者の同僚であり友人でもある。非難するつもりはない。ただYF-23を求める声づくりに寄与しているだけだ。
YF-23 and YF-22. U.S. Air Force photo


YF-23の神格化は上記三名の責任ではない。むしろ米国文化に広く根付き、とくに軍事関係者で見られる危険思想の象徴だ。
この技術なら国が助かる。あの技術では役立たない。間違った技術を開発してしまったからだ、というのだ。「技術から思考が生まれる。技術が思考になる」と空軍を大佐で退役したウィリアム・アスターが書いている。
F-22はあきれるほど高価であるが高い効果を発揮している。同機は数千回といかずとも数百回の実戦フライトをこなし、シリアのイスラム国戦闘員を攻撃した。ロバート・ゲイツ元国防長官が2009年に下した187機でのF-22生産終了の決定に今でも疑問を抱く向きがある。空軍はもっと多くの機数を希望していた。
だがF-22でテロ活動に終止符を打てない。周辺地区に進出したロシアが過去の戦争の記憶を呼び起こすのも止められない。中国の経済拡大や軍事拡張主義も止められない。米軍のイラク侵攻の破滅的結果を逆行させることもできないし、20年にわたるアフガニスタンでの米軍作戦行動を終わらせることもできない。
これだけのハイテク、これだけの時間、熱意と予算をかけて米国が開発したF-22でも解決策になっていない。
そうなるとF-22が正しい選択肢だったのか疑問が出るのは当然だろう。おそらく、F-23でもF-22と同じだったはずだ。では空軍が別のステルス戦闘機を採用していたらどうなっていただろうか。米国の軍事力がもっと強大だったらどうなっていたか。もっと安全な環境だったらどうなっていたか。世界全体が今とちがう姿になっていらどうなっていたか。
アスターはさらにこう述べている。「米国人は技術を万能薬と見る傾向がある」 自然と歴史が証明するように技術は万能の解決策ではない。地球は温暖化にむかい、他者を隔てる壁を作っており、人間の世の中で意思決定を動かすのは恐怖だ。米国人はある技術を批判し、別の選択肢を求めようとする。
長く地上にとどまったままの試作機に過去の歴史を見つめ同機が採用され現在よりマシな世界になっていたはずと想像したところで、あるいは世界がもっとマシな姿になっていたはずと想像してなんになるのか。
YF-23も解決策になっていなかったはずだ。■


下は記事で言及しているCGの無断借用です。F-22よりもF-23に魅力を感じる向きが多いのでしょうか....




2018年11月23日金曜日

次期大統領選用ヘリコプターVH-92のテストは順調に進んでいる模様

Next Presidential Helicopter Passes First Test Landing at White House 次期大統領専用ヘリコプターがホワイトハウス着陸テストに合格

November 20, 2018 1:41 PM

シコースキーVH-92Aが2018年9月22日にホワイトハウスに着陸した。同機は次期大統領専用ヘリコプターとなり旧式化したVH-3DやVH-60Nと交代する。Naval Air Systems Command photo.


期大統領専用ヘリコプターのシコースキーVH-92Aがホワイトハウスへの着陸テストに成功したと海軍航空システムズ本部がUSNI Newsに伝えてきた。
 

9月22日、VH-92はナショナル・モール上空から進入しホワイトハウスの芝生に初めて着陸した。大統領専用ヘリコプター更新事業としてシコースキーは2014年に12億ドル契約を交付され、まず6機を製造し、オプションで別に17機を海軍が購入できる。ロッキード・マーティンがその後シコースキーを買収している。
.
10年以上前の2005年にロッキード・マーティンは当時のライバルたるシコースキーを破り次世代大統領専用ヘリコプター調達の契約を獲得していた。しかし、遅延と予算超過のためVH-71事業は中止となり、あらたな候補探しが始まったのだった。

ワシントン記念塔を背景にホワイトハウスに着陸するシコースキーVH-92A。9月のテスト中に撮影。Naval Air Systems Command photo.


第二回目調達でシコースキーのVH-92A案が採用された。S-92が原型で、11カ国で国家元首輸送に用いられる実績が物を言った格好だ。VH-92導入で同じくシコースキー製のVH-3D、VH-60Nが更新される。運用は海兵隊が担当する。

今回着陸したのはNAVAIRに納入された初号機で、初期作戦能力獲得は2020年末となるが、機体製造は2023年までに完了するとNAVAIRが述べている。

VH-92Aテストの模様はVertiflite Magazine 11月/12月合併号が真っ先に伝えているので参照されたい。■

2018年11月22日木曜日

イスラエルがF-15改良型導入を決めた>F-35整備と並行し補完戦力の実現を図る

IAF to supplement F-35 stealth jets with upgraded F-15 IA イスラエル空軍がF-35の補完用に改良型F-15IAを調達へ

In addition to continuing purchasing F-35 multirole stealth fighters, IAF decides to upgrade its dependable F-15 fleet with improved model capable of carrying 13 tons of explosives with advanced avionics.
F-35導入しつつIAFはF-15改修型で兵装搭載量を13トンに引き上げ、高性能エイビオニクスも導入

Alex Fishman|Published:  11.19.18 , 17:12

F-15 IA (Photo: Boeing)
F-15 IA (Photo: Boeing)


スラエル空軍(IAF)から新型 F-15 IA を選定したとの公式発表があった。  

導入は政府が承認済みで初号機は早ければ2023年イスラエルに到着する。一方でIAFはステルス攻撃機の調達も継続する。

F-15IAの性能は既存F-15をしのぐといわれる。IAFはF-15を1998年から稼働中。

新型F-15は航続距離が伸び、生存性が高くなり、エイビオニクスの性能を向上させている。兵装搭載量は13トンと他機種の追随を許さない。

F-15 IA は空対空戦で ミサイル11本を運用し、対地攻撃用に大型スマート爆弾28発を搭載する。

新型機はIAFが運用中の装備全種類を搭載可能でイスラエルが独自に開発したミサイル、レーザー兵器、電子光学装備他を含む。
F-15 IA (Photo: Yoav Zitun)
F-15 IA (Photo: Yoav Zitun)

今回導入の機体はボーイングがカタール、サウジアラビア両国の空軍向けに開発したもので、当初は米空軍での採用も狙っていた。IAFは米空軍通じて調達し、イスラエル単独で調達させない形になっている。
これはF-35ステルス機の開発継続を米国としては優先させているためだ。

USAFが新造 F-15 IA への関心を昨年示したことでイスラエルも導入交渉が可能となった。米国はイスラエルに同機を供給する条件としてF-35調達の継続を求めてきたとみられる。
F-15 IA (Photo: Boeing)
F-15 IA (Photo: Boeing)

IAFは新型F-15導入でF-35ステルス機調達を中止することはないと強調するが、新型機は既存戦力を補完し、イスラエルが想定するイランからガザまでの標的攻撃能力が高まることは事実だ。

IDFの発表資料ではIAFがF-35の三番目飛行隊の調達を年間3機程度でゆっくりとすすめるとわかる。第三飛行隊の編成には10年ほどかかり、その時点でIAFにはF-35が最低75機そろうことになる。

退任が近づく国防相アヴィグドール・リーベルマンへ提出された同文書は大臣決済待ちだ。今後十年間でIDFの米製装備調達は総額380億ドルで政府に提出済みでこれも承認待ちの状態だ。■


ついこの前までボーイングの戦闘機ラインは今にも閉鎖されるそうな状態でしたがここに来て盛り返してきましたね。これもF-35のおかげなのでしょうか。コストパフォーマンスを重視してF-15/F-16発展型を導入するのか、(未実証の)高性能未来志向機材を導入するのか各国もなやましいところですが、イスラエルはいち早くミックス策を選択したわけですね。では、日本は? やはりミックス運用が一番戦力を大きくできる気がします。特に新型イーグルが「ミサイルトラック」になりますので、F-35とE-2Dをセンサー機材として一緒に使うのがベストではないでしょうか。