2019年9月21日土曜日

日本が核抑止力を整備すればこうなる----必要に迫られれば日本の核武装は検討せざるを得ない

日本が中国に対抗して核戦力を整備するとしたら最適の選択はどれか。

Forget North Korea: Imagine if Japan Built Nuclear Weapons...

Another nuclear weapons power in Asia?
September 20, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaMilitaryTechnologyWorldJapanChina
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本の核武装は中国さらに北朝鮮の悪夢となる。アジア本土から離れた位置にある日本が核兵器を配備すれば中国の安全保障環境は今より複雑となり、ついては核運用原則の変更を迫られ、核兵器増強に走らざるをえなくなる。
まず、はっきりさせておきたい。現在の日本に核兵器整備の意向は皆無である。むしろ日本は唯一の被爆国という立場のためか核へ強い嫌悪感がある。大幅な方向転換となれば同国の安全保障環境が大きく変わる場合だろう。
中国としても日本を挑発して核武装に向かわせてもなんの利益にもならない。中国は自国が核兵器の先制攻撃を受けない限り、核兵器は戦闘に投入しないと日本に伝えている。したがって日本に核兵器がない以上、もし中国は言葉のとおりなら日本に杞憂すべき事態はなくなる。ただし、「もし」と「なら」が肝心なことばだ。
核兵器への嫌悪と危急の事態でないことは別にして、世界第三位の経済規模の日本に核武装できないはずがない。
では日本が核抑止力整備に乗り出せばどんな姿になるか。これまでの核兵器三本柱の地上配備弾道ミサイル、戦略爆撃機、弾道ミサイル潜水艦で検討してみたい。日本の置かれた条件で残存性があるのだろうか。ここでは議論のため、日本がこの内一本を集中整備するとしよう。
また核弾頭数は300個と仮定する。日本の人口密度が高いことから主要都市数個が破壊されれば人口の相当部分に損害が生まれる。ロシアや中国を相手に同等の損害を与える能力が日本に必要となる。

地上配備ミサイル 
日本には小規模の地上配備ミサイルを整備する選択肢があり、各ミサイルに弾頭1ないし3を搭載すればよい。ミサイルは強化サイロに格納すれば米ミニットマンIIIと同じになるが、ロシアのRS-24ヤルスのような移動式にする手もある。日本のICBMは小型でよく北米まで届く飛翔距離や燃料搭載量は不要だ。中国全土、ロシアのヨーロッパ部、中東まで射程に押さえれば十分だ。
最終的に日本には中距離弾道ミサイル100本あれば十分だろう。各弾頭は100キロトンとする。ミサイルは北海道東部の硬化サイロに格納するか、移動発射台で運用する。
ただし残存性は三案中で最低だ。日本が中国に近いため、中国が核攻撃を加えてくれば「警告とともに発射」する方針を採用しないかぎりミサイルの残存がおぼつかない。日本の早期警戒でハード、ソフトの誤作動が発生すれば攻撃を受けていると判断し、偶発核戦争の可能性が高まりかねない。
.地理条件からも地上配備の利点は少ない。日本の人口密度が高いことから100本ものミサイルサイロを置く場所の確保が困難で、攻撃を受ければ恐ろしい付随被害が生まれる。移動式発射台で日本各地を移動できるだろうか。専用道路を建設するほうが現実的だ。これでも現在位置を予測されかねない。あるいは日本の鉄道網を利用するかだ。

戦略爆撃機
日本にはステルス爆撃機部隊を整備し巡航ミサイルや落下式核爆弾を運用する選択肢もある。爆撃機は核侵入攻撃ミッションを実施し、敵核兵器や指揮命令施設等の標的を破壊する。核爆撃機があれば日本は飛行中に攻撃対象の変更を指定でき柔軟な運用が可能となる。あるいは任務途中で帰還を命じることもできる。
.各24機の3個飛行隊で十分だ。機体はFB-111と同じ大きさでよい。各機が短距離攻撃ミサイル4本を搭載し、それぞれ100キロトンなら合計72機で核兵器288本を運用できる。
しかし地理条件で爆撃機整備は非現実的だ。爆撃機基地が奇襲攻撃されれば緊急発進の前に機材が消える。給油機が必要となれば、給油機基地の攻撃で爆撃機はまともに運用できなくなる。更に防空技術の進展で爆撃機は危険なほど脆弱になりかねない。
かつての米戦略航空軍団と同様に爆撃機の常時空中待機も可能だが、多額の予算とともに地上に十分な数の機材(給油機も含む)が常時必要となり、現実でその実施は不可能だろう。

弾道ミサイル潜水艦
これが最も有望な選択肢だ。弾道ミサイル潜水艦の残存性が一番高い。常時一隻をパトロールにだせばよい。日本の「ブーマー」は進路を東にとり中央太平洋の安全な海域に待機する。中国やロシアが対潜機材を展開しようとすれば日本を通過する必要がある。
日本は潜水艦技術、ミサイル、弾頭について米国の支援を受けることも可能だろう。英国で前例がある。海を防壁に使う抑止力策なら米国も援助を惜しまないはずだ。場合によっては日本がオハイオ級後継艦建造を資金負担することも考えられる。特にミサイル技術だ。
水中配備案で日本は中国、フランス、英国に続き、弾道ミサイル潜水艦5隻を建造し、各16発の核ミサイルを搭載するだろう。ミサイルは100キロトン弾頭4発を搭載する。一隻がパトロールにでると弾頭64個を運用することになる。
弱点もある。危機状況では弾道ミサイル潜水艦との連絡が困難だ。また5隻中2隻が常時パトロールしても使える弾頭は128個しかない。
現状で日本の核武装を歓迎する向きはない。だが日本も追い詰められれば核武装に走る可能性があることを全員が認識すべきだ。実現までは遠い道のりとはいえ、中国やロシアとの関係が悪化すれば状況はさらに厳しくなる。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami. This first appeared in October 2015 and is being reposted due to reader interest. 

2019年9月20日金曜日

F-15EX導入はロシア、中国相手では歯が立たず賢明な選択にならないのではないか



How Russia Could Easily Crush America's New F-15EX Fighter Jet

Terrible.
by David Axe 
September 19, 2019  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-15 EXF-15F-32RussiaRussian Air ForceU.S. Air Force

Key point: ロシアはF-15EXを200マイル先で探知する能力がある。

ーイングの新規製造F-15EXイーグル戦闘機を導入しロッキード・マーティンF-35ステルス戦闘機の補完で使いたいとのペンタゴン提案に議論がまだ続いている。議会関係者が軍の要望を検討する中、Air Force誌が両機の比較をまとめた。

価格はおよそ80百万ドルと大差ないものの類似点はそこまでだ。F-35はステルス機だがF-15はより高高度を高速ではるか先まで飛び、より多くの兵装を搭載できる。


だが同誌の分析ではロシア製S-400防空システムはF-35は20マイルでないと探知できないがF-15EXは200マイル先で探知してしまうという。

F-35の兵装搭載量は22千ポンドで高度上限は50千フィート、トップスピードのマッハ1.6で行動半径は670マイルだが、F-15EXは29.5千ポンドを積み、高度60千フィートで戦闘行動半径は1.1千マイル、最高速度はマッハ2.5だ。F-35の運行経費は時間あたり35千ドルだが、F-15EXは27千ドルだ。

新造イーグルの利点は既存のF-15飛行隊が迅速かつ安価に機種転換できることとの説明がある。

「USAFの説明ではF-15EXは既存機種の扱いとなる。部品の7割までがF-15CやE型と互換性があり、事実上すべての地上施設、シミュレーター他支援機材がそのまま使える。

「機体価格はF-35とほぼ同じだがF-15飛行隊がF-15EXへの機種転換を数週間で完了できるのに対し、F-35ではパイロット、整備要員、支援装備の転換に数ヶ月を要す」と同誌はまとめた。
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国防総省は空軍に対しF-15EX計8機を2020年度予算要求に盛り込むよう求めている。合計で12億ドルとなる。

空軍はこれと別に136機のF-15EXを2020年代中頃までに調達するといわれている。新造イーグルは1980年代製のF-15Cを運用する9個飛行隊に導入され、米国上空で防空任務につく。

F-15EXが搭載するセンサー類・エイビオニクスはF-15Cの性能を凌駕し、旧型より兵装搭載量も多い。金属疲労の進行で旧型F-15Cは「2030年まで持たない」と空軍少将デイビッド・クラムが同誌に語っている。

しかしながらF-15EXに批判的な筋にはロッキード事業に相当依存する選挙区出身の議員も顔を揃えている。空軍は2020年度にF-35をロッキードから48機調達したいとする。これまで毎年80機から100機を導入してきた空軍は例年通りの調達規模としたいのだが予算がないという。

空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドフェイン大将はDefense Newsに対し、F-15EX調達でF-35の1,700機調達に影響はないと述べていた。「両機種は補完性があり、それぞれが相手をもり立てる」

だがステルス性がないF-15では「国家防衛戦略で最大の懸念となる脅威環境で生存は期待できない」とデイヴィッド・デプチュラ退役空軍中将で以前はF-15パイロットで今はミッチェル研究所を主宰し、2019年2月11日にForbesの論説欄に寄稿している。

「中国、ロシアが急速に軍事力を整備し米国の戦略的優位性を脅かしている」とデプチュラは続け、「国防総省内に費用対効果だけを旗印に旧型機の調達を主張する声がある。だがこの機体は1960年代の原設計で1970年代に生産開始された機体だ。博物館行きと言って良い機体を導入して21世紀の軍事対決に臨むのは決定的な間違いではないか」

「空軍はF-15EX導入に頑なな態度だがF-35の調達規模1,763機が減るわけではない。しかるに空軍の予算要求はこれと別の考えのようだ」と専門家も論評している。「2020年度予算要求で空軍はF-35調達を今後5年間で24機減らすとしている」■

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This first appeared in April 2019.
Image: Boeing.


コメント: この論争の決着は次の戦場がどこになるか次第でしょう。技術の進展で戦闘機サイズのステルス機では早晩限界を露呈するでしょうが、一方F-15では新装備の捕捉性能に追随できなくなるのも事実です。ただし、中国、ロシア以外が相手となれば話は大きく変わります。みなさんはどう思いますか。それにしてもデプチュラ元中将は自身の過去と無関係に見事なまでのロジックで意見を主張していますね。さて、日本はこの動きをどう見るべきでしょうか

2019年9月19日木曜日

忠実なるウィングマンXQ-58Aヴァルキリーの開発現況について



Payload tests for XQ-58A set for early 2020

19 SEPTEMBER, 2019
 SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
 BY: GARRETT REIM
 WASHINGTON DC
https://www.flightglobal.com/news/articles/payload-tests-for-xq-58a-set-for-early-2020-460947/

レイトスKratos Defense & Security Solutionsは通信および自律運用ペイロードを自社開発のXQ-58Aヴァルキリー無人機(UAV)に搭載する契約が2019年9月末までに成立すると期待している。
   忠実なるウィングマンとなる同機は米空軍研究本部(AFRL)と共同開発で2020年第1四半期にテストを開始する予定。今回のペイロードはAFRL事業ではなく、別の米国防関係機関による契約案件と同社社長スティーブ・フェンドレーが説明。
   同社はXQ-58Aを3機製造しており、全機が飛行可能とフェンドレーが述べている。一号機は2019年3月の初飛行以来2回飛行しており、米空軍が運用している。残る2機は同社が保有し、うち1機は年内に飛行の予定。
   「同機が機能することは判明している。今度はセンサー他システムを搭載し、航空機としての機能を試したい」「装備はウェポンベイに搭載する。ベイが機体前方に二箇所あり、全てを統合する」(フェンドレー)
   ヴァルキリーの前方はモジュラー構造のノーズコーンと機首の構造でプラグアンドプレイ方式のインターフェースを採用し、センサー類のハードウェアを簡単に入れ替えられると社長は説明。
   今後の可能性だが、とフェンドレーは前置きし、最近になり公開されたレイセオンのペレグリンPeregrine(従来の半分のサイズの中距離空対空ミサイル)をXQ-58Aで運用する構想があるという。ロッキード・マーティンのクーダCudaも空対空ミサイルの候補だという。
   同機のウェポインベイは小口径爆弾4発が入る大きさだがペレグリン空対空ミサイルなら2本収容可能とフェンドレーは述べた。XQ-58Aが空対空ミサイルで武装すれば有人機を援護するウィングマンの役目が実現し、ロッキード・マーティンF-35ライトニングIIやボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットとの運用が想定される。■

今回の襲撃を阻止できなかった防空システムは新時代に対応できていない


Did U.S. Missile Defenses Fail During Saudi Oil Attack?

サウジ石油施設への攻撃は米ミサイル防衛の失策か

by David Axe 
September 17, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: OilSaudiArabiaIranMilitaryTechnology

2019年9月14日、サウジアラビアの主要原油施設に大被害を与えたミサイル攻撃の実態は一般には謎のままだ。
イエメンのフーシ反乱勢力はサウジと首長国の連合軍と2015年以来交戦中で、今回の攻撃を実施したと名乗り出た。サウジのアラムコの施設二箇所が攻撃を受けたがフーシが単独で長距離精密誘導攻撃を実施できるのか明確な答えがみつかっていない。
攻撃に長距離無人機が投入され、小火器や誘導弾を発射した可能性は残る。アラムコ施設はサウジとイエメンの国境線から約800マイルの距離だ。イラン強硬派の革命防衛隊がフーシに兵器を供与していることが判明しており、無人機や弾道ミサイル部品も含まれている。
一つ明確なことがある。高性能とされてきたサウジアラビアの防空体制が限界を示したことである。サウジは巨額予算を投入し米製ペイトリオット地対空ミサイル部隊六個とレーダー装備を整備してきた。ペイトリオットは今回の襲撃の前に何ら機能していない。
サウジアラビアのペイトリオットが迎撃に失敗したのは今回が初めてではない。2018年3月25日に首都リヤドを狙ったロケットには、少なくとも5発のペイトリオットが迎撃に失敗、作動不良あるいはその他の原因で故障している。
フーシはサウジアラビアへ7発のロケットを発射した。サウジ軍はペイトリオット性能向上版PAC-2を発射し、フーシのロケットを空中で破壊しようとした。サウジ軍発表ではペイトリオット7発が迎撃に成功したとある。
だがアマチュア映像がウェブ上で公開され、ペイトリオットの多くが空中で爆発するか、コースを外れる様子が暴露された。ここから1991年の湾岸戦争で米軍が発射したペイトリオットや2003年のイラク侵攻の記憶を呼び起こされたものも多い
サウジアラビア政府もミサイル防衛の改良に気づいているようだ。「サウジアラビアがS-400高性能防空装備の取得を交渉している。トルコがロシアから調達したのと同じ装備だ」とマーク・チャンピオンがブルームバーグに以下寄稿している
ロシア製装備は実戦で効果をほとんど証明していないものの技術上は米ペイトリオットより優れている。射程は400キロで、ペイトリオットの160キロより長い。ペイトリオットの二倍以上の飛行速度で飛ぶ標的を捕捉し再装填は5分で足りるが、ペイトリオット部隊では一時間が必要だ。
ロシアはS-400に一回り小型のパンツィールS1を組み合わせで低空を飛翔する短距離ミサイルへの対応を中心とし、大型弾道ミサイルは視野に入れていない。ロシアはシリア北西部にS-400を展開し、無人機にはパンツィールで対応している。
「理想的にはサウジは多層防衛体制が必要で、短距離局地防衛装備としてドイツのスカイヒエルドあるいはロシアのパンツィールで小型脅威に迅速対応すればよい。ペイトリオットで対応するのは費用対効果で意味がない」とジャスティン・ブロンク英王立合同軍研究所主任研究員が述べている。
従来型の防空体制が各所で小型かつ安価な無人機がさらに安価になってきた精密兵器を発射する現実への対応に苦慮している。
「防空の実際を理解できている人が皆無に近いのが冷酷な現実で、防衛部門の専門家とて例外でない、航空分野の進展がどこまでで、技術統合がどこまで深化しているかは事実であり魔法ではないのだ」とタイラー・ロゴウェイがThe War Zoneに寄稿している。「地上のセンサーに主に依存する考え方が大きな制約となっている」
我々は誰もが地球上のほぼ全地点の高解像度衛星画像を見られる時代に生きている。冷戦終結後にここまで進展するとは考えにくかった。一個人が手にするスマートフォンやラップトップコンピュータで一国の情報機関の有する情報すべて見ることができる時代であり、しかも無料で手に入る。
GPSはもっと革命的な機能だ。正確な位置がわかることからホビーとしての無人機業界が爆発的な成長を遂げ、今やGPSを使う無人機操縦があたりまえとなり、世界各地で手に入る。邪悪な考えを持つ勢力が情報を得て、精密攻撃を企てるのは無理もない。従来に比べればただ同然の負担で手に入る。
今回発生したような襲撃はどこからでも実施できるのであり、精密誘導攻撃や無人機への考え方を切り替える必要がある。さらに今回のような事件から非常に高価な軍事装備を近くに配備すべきと短絡的に考えてはならない。世界各国で歩調を合わせ、規制を整備しながら情報を大量に共有すべきだ。今後、こうした攻撃を皆無にする最善の策は発生の前に手を打つことだ」

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

2019年9月18日水曜日

T-Xは今日からT-7Aレッドホークになりました


Air Force announces newest Red Tail: ‘T-7A Red Hawk’
Secretary of the Air Force Public Affairs / Published September 16, 2019

NATIONAL HARBOR, Md. (AFNS) --
空軍の新型高等練習機T-Xに制式名称がついた。T-7Aレッドホークである。空軍長官代理マシュー・ドノバンが空軍協会主催の航空宇宙サイバー会議で916日発表した。
 壇上には「タスカギーエアメン」の一人チャールズ・マギー大佐が寄り添った。第二次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争を戦い抜き400個もの勲章を授与されたパイロットだ。
会場では同機の紹介ビデオの上映に続きドノバン長官代行は「みなさん、これが最新のレッドテイルです」と、T-7Aレッドホークの4分の一モデルを披露した。機体の尾翼は赤く塗装されていた。

 「レッドホークという名称はタスカギーエアメンとその代名詞赤く塗装した尾翼に敬意を払うものです」とドノバンは述べ、「同時にカーティスP-40ウォーホークにも敬意を示しています。同機は1938年に完成し、初のアフリカ系アメリカ人専用部隊として陸軍航空軍が編成した第99飛行隊の機材となりました
「タスカギーエアメンはその後リパブリックP-47サンダーボルト、ノースアメリカンP-51マスタングの尾翼をともに赤く塗装しました」
 T-7Aレッドホークはボーイング製で第5世代戦闘機パイロット養成に使い、高G機動飛行、情報センサー制御、高迎え角飛行、夜間運用ならびに空対空戦や対地攻撃の訓練に供される。

 「T-7Aは次世代機の基礎となる機材だ」とドノバンは述べ、「レッドホークにより次世代のパイロット養成に必要な高性能訓練が可能となる。データリンク、レーダーシミュレーション、スマート兵装、防御管理装備の他合成訓練の実行能力が手に入る」

高性能技術や性能とともにT-7Aには高性能シミュレーターもありシステムソフトウェアのアップデートはより早く、簡単に行える。機体設計はアクセスパネルが開き、整備要員の手が届きやすい構造となっている。

 T-7Aの特徴として尾翼を二枚持ち、主翼前縁部の基部は低速での取り回しを考慮し、第5世代機パイロット養成にはぴったりだ。エンジンは単発ながら現行のT-38Cタロンの双発エンジン合計より大きな出力を出す。     
T-38からF-35への距離は昼夜の違いほど大きい」と空軍参謀総長ディヴィッド・ゴールドフェイン大将は述べている。「しかしT-7Aの登場で距離は遥かに縮まる。ここが重要なポイントで同機で訓練を受けたパイロットは高性能機材に早く習熟できるからであり、脅威の進展に合わせパイロット養成も迅速に進める必要がある」
総額92億ドルの契約がボーイングに20189月に交付され、T-7Aを計351機、シミュレーター46基のほか関連地上装備を納入据え付ける内容だ。空軍教育訓練本部が共用中の機齢57年になるT-38Cタロンと交代する。
最初のT-7Aおよびシミュレーターがテキサスのサンアントニオ-ランドルフ共用基地に2023年に配備予定だ。その後養成過程の全基地がT-38Cから機種転換していく。基地にはコロンバス空軍基地(ミシシッピ)、ラフリンAFB,シェパードAFB(ともにテキサス)、ヴァンスAFB(オクラホマ)がある。■


2019年9月17日火曜日

イランへ臨戦態勢、しかしイランは米海軍艦艇を撃破する能力がある


Locked and Loaded: Could Iran Sink the U.S. Navy If War Breaks Out?
イランにはミサイル多数がある。それで艦船を沈められるのか Could they start sinking warships? 
September 15, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: IranMilitaryTechnologyWorldMissiles

2009年、中国が移動式中距離弾道ミサイルDF-21Dを開発し900マイル先の艦船撃破を狙っていると明らかになった。この技術は当時出現したばかりだったが、米原子力空母の残存性が議論になった。というのはDF-21Dが空母運用の攻撃機材の戦闘半径より外から狙い撃ちできるためだった。このことから米海軍は対弾道ミサイル機能を駆逐艦、巡洋艦にSM-3ミサイルとして装備することを迫られた。
弾道ミサイルは弧を描く弾道で飛翔距離と速度を最大限に確保する。大気圏外に一旦移動してから考えられないほどの速力で標的に向かうこともある。DF-21はマッハ10までになる。ただし、10年前は対艦弾道ミサイルそのものが存在しておらず(ソ連が開発を試みたものの実用化できなかった)、というのも都市破壊用の弾道ミサイルはともかく移動中の小型標的を正確に狙う技術が未確立だったためだ。
とはいえ、わずか二年後にイランも対艦弾道ミサイル開発に成功したと発表してきた。イランは自国軍事技術を誇張したり虚偽の作り話をすることが多いが、2013年に流出した映像にはミサイルテストが成功した様子が写っていた。また2014年には米情報分析で同ミサイルの配備が確認されている。このミサイルにはハリジファルスKhalij Fars(「ペルシア湾」)の名称がつき、イラン国産開発短距離弾道ミサイルファテFateh-110の派生型だ。トラック搭載型のファテ-110は固形燃料を使用しているため短時間で発射可能だ。液体燃料ミサイルでは発射準備に数日かかる。
ペルシア湾の名称をつけたミサイルは電子光学赤外線シーカーで重量1,433ポンドの弾頭を移動する海軍艦船二名中させることができるというが、イランがシーカー部分を隠した写真しか公表していないため事実は確認不可能だ。イラン国内記事では2013年のテストでミサイルは移動中の艦艇目標に誤差8メートルで命中したとある。2014年のCSIS評価ではハリジ・ファルスミサイルの誤差は平均数十メートルで、革命防衛隊にすでに配備済みとある。
ただしファリジ・ファルスの射程はDF-21の四分の一程度の190マイルから220マイル程度であり、飛翔速度もさほど高くないマッハ3程度である。であれば、ファリジ・ファルスの迎撃は比較的容易だ。
中国のASBMでも同様だがファリジ・ファルスでも観測機材が別途必要で初期段階の目標方位を慣性誘導装置に送る必要がある。(GPS誘導も導入している可能性がある) 米水上艦艇の移動速度は30ノット程度なので空母はミサイルの「標的ボックス」内に入ると電子光学誘導によりミサイルの降下段階では進路変更しても限界があるだろう。空母部隊の艦艇は同ミサイルの発射状況を把握でき、退避行動で標的ボックス外に出ようとするだろう。そうなるとイランも複数のミサイルを発射し標的にしようとするはずだ。
ただし、ペルシア湾とは実は狭い海域でホルムズ海峡の35マイルが一番狭い部分で最大でも220マイルしかない。そうなると移動発射台を攻撃範囲に対応して多数配備することは困難ではない。ミサイルの最大速度が毎分38マイルのため早期警戒に使える時間も限られ、迎撃ミサイルの対応も困難になる。
広い太平洋と違い、ペルシア湾内で艦船の位置をつきとめ標的情報を得るのは容易になる。イラン海軍および革命防衛隊海軍は各種の偵察機材を運用しており、モーターボートから半潜水式舟艇、米製CH-53SH-3ヘリコプター、無人機、バヴァール-2ホバークラフト、地上配備探知レーダーを投入するはずだ。
2014年にイランは高速(マッハ4)の対放射線仕様のハリジファルスをホルムズ-1-2として陸上、海上運用型として展開しており、おそらく世界初の対レーダー弾道ミサイルである。対放射線ミサイルは艦艇が有する強力なレーダーという利点を逆に不利な条件にしてしまう。レーダー誘導からホーミングするためだ。そこで艦艇はレーダーを切り、ロックを解除するがその他の脅威に身をさらすことになる。
ホルムズミサイルは長距離のゾルファガーと同じ発射装置を共有できる。これにより対艦ミサイル部隊は短時間で多数の発射が可能となり防衛体制を飽和できる。さらに1991年の湾岸線の教訓から航空優勢状態が確立していてもトラック搭載弾道ミサイルの位置を突き止めることは恐ろしく困難であることがわかっている。
20188月にイランはファテモビン{輝かしき制服者)をファテ-110の派生型として赤外線シーカーを最終段階の誘導方式に使うと発表し、レーダー探知を逃れると主張したが、外観上それを裏付ける兆候は見られない。モビンのシーカーは明らかに対艦と対地攻撃両用だ。
201810月には革命防衛隊航空宇宙軍の司令官アミール・アリ・ハジゼダからイランが射程700キロの新型ASBMを開発したと主張した。これだとオマン湾も射程に入る。米水上艦艇にはイージス防空システムから大きな効果を受けており、ハリジファルスより高性能のミサイルにも対応可能だ。さらに米空母は常に支援用艦艇と同時に運用される。
ただし革命防衛隊の短距離ASBMはペルシア湾内の一部方面に展開しているのでその位置を探知する機会は多数生まれる。さらにASBM攻撃は水面ギリギリを飛翔する対艦巡航ミサイルとことなる飛翔経路を取ることで、多数のミサイルを同時発射する飽和攻撃で、各種ミサイルを取り混ぜて発射すれば防衛側を圧倒する可能性もある。
ペルシア湾内を通行する民間商用船舶の存在が重要であることから、イランはASBM改良に注力しながら世界にその能力を喧伝して通常兵器による抑止効果を保ちつつサウジアラビア、イスラエル、米国との緊張を高めていくのだろう。
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring. This first appeared earlier in the year.