2021年6月24日木曜日

主張 深刻な食糧不足に陥った北朝鮮。金正恩が危機状況を認めたが、政権維持が念頭で、国民は耐えて犠牲を出すしかないのか。

 

 こんな国家が21世紀にまだ残っていることが悲劇としか言いようがありません。

政権が自壊しても国民、ましてや周辺国を巻き込んでもらいたくないものです。

いろいろな矛盾が一気に表出しそうですね。


 

朝鮮の国内安定度はどこまで損なわれているのか。食料供給が不安定になっているのは天候が原因なのか。

 

北朝鮮で食料不足が再び深刻になってきた。同国政府もこの事実を認めている。前回の食糧危機は1990年代末に発生し、当時の最高指導者金正日は事実を認めようとせず、百万人近くの国民が飢餓におちいった。現在の指導者金正恩が事実を認めているのがせめてもの救いだ。つまり、金正恩は対処しようとしており、改革者ではないものの、少なくとも現在の経済状況に気を配っているのであり、国民から距離を置き、無関心を貫いた父親と異なる。

 

今回の食料不足を招いたのは天候条件と25年経過してまた同じ言い訳が聞こえてくる。だが隣国の南朝鮮には食料不足はない。実は真の理由は政治で、北朝鮮に悪政と汚職が蔓延していることだ。

 

制裁措置も原因と指弾されるが、農業への制裁の影響はごくわずかだ。制裁が効果を上げているのはエリート層のためのぜいたく品であり、デュアルユースとなる工業製品であり、現政権が望めば人道援助の恩恵を受けることができる。食糧援助も援助品が必要な層に届く保証があり、軍や政権関係者に渡らないのであれば同国に届く。これは1990年代末と同じ条件であり、今年話題になりそうだ。

 

政治的な問題が生まれる。外国人が助けたくても現政権が受け取らない姿勢だ。今回の危機は金正恩が改革者なのか試す機会になる。改革派なら、外部支援は白紙小切手ではないことに気づくはずだし、適正に活用するには実行の仕組みが必要だ。

 

コロナウィルスで中国国境を閉鎖したことが主因であることはまちがいない。北朝鮮の汚職にまみれた「社会主義」農業は低生産性と不十分さで知られる。1990年代末の飢餓状況を繰り返さないためにも現政権は中国からの食糧密輸を頼りにしていた。北朝鮮民が国境を越え中国東北部に向かう無謀な試みが前回の飢餓発生時から見られる。だが現政権は越境の動きを本格的に摘発していないのは、農作物密輸が政権維持に役立っており、国民の不満を抑え食品供給の維持につながっているからだろう。

 

飢餓は暴動や蜂起の原因になりうる。餓死寸前になれば怖いものなどない。国民に十分な食料を供給できない政権は自ら変革するか、外国の援助に頼るか、それとも国民の蜂起のリスクを覚悟する必要がある。事実、毛沢東も飢餓が現実となると大躍進運動を弱めざるを得なくなった。だが北朝鮮を支配する金一族が政治上の改革を長年にわたり拒否してきたのは、パンドラの箱を開けることになり、南北統一含む事態への進展を恐れているためだ。そこで、「社会主義」と言いつつ汚職と非効率がまかり通る現状を維持する必要があり、外国の援助を忌み嫌うのは責任を問われるからだ。中国からの「おこぼれ」が国民に食料を供給し、不満を抑える使い勝手の良い選択肢となる。

 

だがコロナウィルスのためこの非公式の裏口が今は閉まっており、内部矛盾が高まってきた。集団農業が低効率なことはよく知られており、北朝鮮では汚職まん延が状況を悪化させている。前回の飢餓発生時は大量飢餓を放置する政治リスクを単純に選択した。それでも国内で暴力の連鎖が発生しなかったのは驚きだ。このことから現政権が安定度を増していることがわかる。1990年代末に国民の1割が飢餓に苦しんでも何も起こらなかった。

 

だが二十年にわたり中国経由の密輸を許したことは現政権が1990年代末の状態が危険だったことを承知しているからだろう。金正恩が現在の地位に就いた際に「耐乏」状態はもう発生させないと公約した。公約そのものは国民への配慮だったというより大量飢餓が発生すれば政権維持が困難になる本人の認識の反映だったはずだ。

 

では今回の現政権は安定しているといえるか。再度食糧危機が北朝鮮国内で発生すれば国民は反乱を起こすだろうか。おそらくその可能性はない。現政権はもっと厳しい局面を25年前に乗り切っており、今回は別と考える理由がない。北朝鮮は金神話を本当に信じているのか、あるいは手向かう勢力を容赦なく処分する現政権の前で北朝鮮国民は長年にわたり疲れ切っているのか。北朝鮮の75年の歴史で国民の反乱は一回も発生していない。

 

とはいえ、金正恩が今回は現状を率直に認める発言をしたことは逆に危機状況の深刻さをうかがわせる。前指導者の決定的な経済運営の誤りで経済成長達成が権力維持の根拠となった。国内で反抗運動が発生するとしたら、経済が理由だろう。また食料供給の混乱が飢餓につながれば、北朝鮮は中国への扉を再開し、コロナウィルスのリスクをあえて選択するのではないか。■

 

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Just How Stable Is North Korea?

June 22, 2021  Topic: North Korea  Region: Asia  Blog Brand: Korea Watch  Tags: North KoreaKim Jong UnFoodSanctionsCoronavirus

by Robert E. Kelly

 

Robert E. Kelly is a professor of international relations in the Department of Political Science and Diplomacy at Pusan National University.

Image: Reuters


2021年6月23日水曜日

イスラエルの空中レーザーが無人機編隊の迎撃撃破実験に成功。さらにロケット攻撃への対応も狙い、防空体制の費用対効果の画期的変化を実現する。

 

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イスラエルの空中レーザー開発は防空手段の多層化の一部として、特にローエンド無人機による襲撃の阻止に比重を置いている。

 

 

日のイスラエル国防省発表では空中高出力レーザー兵器により無人機複数の迎撃に成功したとある。同装備の実証機会になり

「イスラエル国の防空能力に戦略的な変化」が生まれたと自画自賛し、同国がめざす多層構造の防空体制で重要な機能が実現した。今回の新型高出力レーザーはこれまでもUAV相手にテストされてきたが、発表文ではロケット攻撃を相手にも投入するとある。

 

実証はイスラエル空軍(IAF)の「ヤナト」ミサイルテスト部隊、イスラエル国防調査開発局(DDR&D)、エルビットシステムズ社が実施した。同時に発表された報道発表では無人機(UAV)数機を新型レーザー装備で試射場上空で破壊したとある。ネット公開された映像ではセスナ208キャラバンの機体左側の窓後方に装備が搭載されているのがわかる。レーザー兵器の性能で判明している内容は皆無に近いが、DDR&Dの研究開発部長ヤニフ・ロテム准将は各無人機を1km以上離れたまま捕捉できたと記している。

 

ISRAEL MINISTRY OF DEFENSE VIA YOUTUBE

 

レーザーを空中から発射すると地上配備型レーザーに比べ利点が数々ある。航空機に搭載することで発射地点を迅速に変更できるからだ。これによりUAVの脅威に柔軟に対応できながら、広範な範囲での防御が可能となる。

 

大気のゆがみの影響も地上配備型より減らせる。レーザーのような指向性エナジー兵器にへの制約として、雲、煙など大気の状態に左右されることがある。また装備の寸法、重量、容量、電源も各種脅威への対応で制約条件となる。

 

イスラエルの新型装備では「長距離脅威対象を高高度で天候条件に左右されず効果的に迎撃」可能といsているが、イスラエル国防省はレーザー装備が一定の天候条件では機能しないことを認めている。とはいえ、レーザー装備にはその他運動エナジー装備に対し有利な点がある。一回当たりの対応コストは低くなる。ただし、調達コストや研究開発コストは別だ。

 

低コストがけん引役となりイスラエルは空中発射型レーザー装備の開発を目指した。国防相ベニー・ガンツは今回の実証について「費用対効果と合わせ防衛能力の両面で大きな意味がある」とし、「今後はより長い有効長の防衛層を加え各種脅威に備えることでイスラエル国の安全保障に役立てながら、対応費用の節減に努めたい」と述べた。

 

今回の実証でイスラエルの高出力レーザーはUAV数機を撃墜したにとどまっているが、開発元の発表では同システムはイスラエルに重要な対ロケット防衛にも応用できるとある。エルビットシステムズの情報監視標的捕捉偵察(ISTAR) 部門長オレン・サバグは「高出力レーザーで低コストで人口稠密地から離れた発射地点に近い部分でのロケット迎撃含む敵無人装備に対応でき、イスラエルの防空能力は画期的に変貌する」と述べている。

 

ISRAEL MINISTRY OF DEFENSE

標的となったUAV機体上にレーザースポットが見られる。この後で同機は墜落した。

 

イスラエル国防省は詳細不明ながらエルビットシステムズが開発中の空中発射型レーザー装備の開発で「技術面での突破口」が開けたと昨年発表していた。この装備では迎撃コストは一回一ドルとし、「アイアンドーム迎撃ミサイルの数万ドル」との対照を強調していた。イスラエルはレーザーを今後無人機や地上配備装備として導入する。

 

イスラエルの新型高出力レーザーは既存のミサイル防衛ネットワークを補完する位置づけで、アイアンドームのほか、ペイトリオット、デイヴィッズスリング、アローといった地対空ミサイル装備のほか、有人戦闘機、ヘリコプターといった多層構造に加わる。ローエンド脅威対象への多層防空体制の必要性はパレスチナ戦闘員組織が発射するロケット大量攻撃でアイアンドームの性能が試され、飽和攻撃への対応として指摘されている。

 

アイアンドームで発射するタミール迎撃ミサイルはロケット弾や短距離砲弾に加え無人機迎撃も可能とされるが、どこまで有効なのかは不明だ。最近の交戦でIDFはガザから発進した無人機を撃破したと発表しているが、度の防御手段が使われたのかは不明のままだ。

 

戦闘員集団はイスラエル攻撃に無人機投入を増やしており、こうしたローエンド脅威は本来ロケットやミサイルの予測可能な弾道飛翔への対応を想定した防衛体制には対応が課題となっている。ローエンド無人機がにわか仕立ての攻撃手段となり、世界各地の安全保障問題で新たな脅威として浮上していること、さらに小型無人機を多数運用してインフラ施設や重要目標に投入すれば大きな脅威となることは実証済みだ。

 

イスラエルがガザやレバノン国境で今回登場した装備品をさらに発展させたレーザーを空中配備し有事に対無人機の防衛網を設置することを狙っているのがわかる。空中で待機する無人機に同様の能力が付与されるだろう。

 

もう一つ注目すべきはレーザーの発射回数に制限がないことがある。ただし、その前提は電源が確保されていることだ。既存装備の例としてアイアンドームは飽和攻撃の前に圧倒されてしまう。また、レーザーは照射一回で一つの標的に対応するが、高出力レーザーの充電時間により次回発射までの間隔があいてしまう。

 

イスラエルの高出力空中レーザーでUAV対応が可能なことが実証され、あらためて無人機の脅威への対応能能力が防空体制で必要なことが浮き彫りにされた。空中レーザー自体は米空軍がすでに1980年代から開発し、ある程度の成功も確認されていたが、イスラエルは対無人機レーザーを機体に搭載し、実際に稼働させた初の国となった。イスラエル空軍による実証成功を見て、世界各地の空軍部隊にも少なからぬ影響があらわれそうだ。

 

ISRAEL MOD

イスラエルの高出力レーザーで機能喪失したUAV

 

ただし今回投入されたレーザー装備の型式、実際の出力、稼働中の制約条件などは不明だ。テスト設定として制約があったはずだが、今後どのように変化するのか。また今回はどのように運用されたのか。レーザー発射機に専用センサーが搭載され捕捉照準したのか、それとも別の装備で機能を提供したのか。また、実用化の際はどの機種に搭載されるのか。

 

米空軍ではAC-130ガンシップで初の実戦空中レーザーを搭載する予定だが、同装備には空対地任務が期待されている。一方で、さらに野心的な計画があり、ポッド搭載レーザー防御手段を戦闘機に導入するとある。すべてその通りなら結構なのだが、イスラエルが示している対無人機防御を機体から実現するアプローチには興味をひきたてるものがある。米国にも公開されていない事業があるかもしれず、同様の装備が開発中の可能性がある。

 

まだ課題は残るが、IAFの研究部門がどう解決して空中レーザー装備を実用化するかに関心が集まるはずだ。■

 

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Israel Has Shot Down Drones With An Airborne High-Power Laser

 

BY BRETT TINGLEY JUNE 21, 2021



2021年6月22日火曜日

ここまでやるのか。黒海でロシアがAIS情報を改ざんし、英蘭艦艇による主権侵害を訴えようとしていた。


 

USNI News Illustration

 

NATO艦艇の航路データが捏造され、黒海のロシア海軍基地付近にあるとされたが、本当は180マイル離れた場所を航行していたことをUSNI Newsがつかんだ。

 

英海軍の45型ダーリング級駆逐艦HMSディフェンダーはオランダ海軍のデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲートHNLMSエヴァーツェンと6月18日ウクライナのオデッサアに寄港したが、ロシア艦艇が両艦を黒海で監視していたことが米海軍が公表した6月17日付の写真でわかる。

 

自動識別システム(AIS)は各船舶の信号発進で海上交通の安全を図る目的で使用されるが、英蘭海軍の二隻はオデッサを6月18日真夜中前に出港した。データではそのままセヴァストポリへ直行しており、港湾入り口から2カイリ地点へ移動したことになっている。同港はロシア黒海艦隊の母港であり、戦略的な場所だ。

 

AIS情報があるものの、実は二隻はオデッサを離れていなかった明白な証拠がある。ライブウェブカメラの映像では両艦はオデッサを出港していない。このことは地元メディアも認めている。オデッサで両艦がその時間に出港する姿を見たものは皆無だ。ウェブカメラはYouTubeのOdessa Onlineで見ることができる。天気サイトのWindy.comのスクリーンショットでも二隻がオデッサに同日夜は停泊したままだったとわかる。

 

NATO艦艇二隻をロシア海軍の主要基地の湾口にいるようにみせかけて、挑発行為とし、主権侵害と主張したかったのだろう。だが国際社会は英米両国に加えオランダもクリミアをロシア領土と認めていない。

 

英海軍駆逐艦HMSディフェンダー、米駆逐艦USSラブーン、オランダのフリゲート艦HNLMSエヴァーツェンの三隻がが黒海を航行する中、ロシア艦艇が遠方で監視しているのがわかる。(写真後方) June 17, 2021. US Navy Photo

 

 

このような偽装工作を行った理由は不明だが、オープンソース情報の信ぴょう性へ疑いが生まれている。AISもその一種であり、軍のみならず報道機関も多用している。今回はAISによる航路追跡データが操作された証拠がある。NATOにコメントを求めたが応答はなく、航路データそのものはオランダの海軍関係ニュースサイトMarineschepen.nlが偽物であると確認している。

 

AIS情報を収集するMarineTraffic.comもオデッサ付近の受信局チョルモモルスクでAISに情報と同じ内容を得ている。その他のAIS受信局も同様にフェイクの位置情報を示した。HMSディフェンダーはIMO 4907878の識別番号で示され、HNLMSエヴァーツェンはMMSI 244942000オランダ海軍艦艇とされている。そもそも虚偽のAISデータが提示された方法は不明だ。

 

ディフェンダー、エヴァーツェンはともにHMSクイーンエリザベス(R08)を中心とするCSG21空母打撃群の一部で、CSG21の本体は地中海に残り、この二隻が一時的に黒海へ送られ、航行の自由作戦とともに同盟国との演習を展開した。両艦はトルコ、ウクライナ両国を訪問し、演習はルーマニア、ジョージアと展開した。米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦USSラブーン(DDG-58)も両艦に加わった。■

 


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Positions of Two NATO Ships Were Falsified Near Russian Black Sea Naval Base - USNI News


By: H I Sutton

June 21, 2021 2:36 PM

 

イラン唯一の原子力発電所が稼働停止中。原因は?今回は原記事ふたつから情報を深堀します

今年は原子力発電所関連のニュースが多くなっています。発生しているが中国やイランといった「その筋」の国だけに一層心配な内容です。今回はイランで、まず、AP通信配信の記事を見てみましょう。


Bushehr nuclear power plant

In this Oct. 26, 2010 file photo, a worker rides a bicycle in front of the reactor building of the Bushehr nuclear power plant, just outside the southern city of Bushehr. (AP Photo/Mehr News Agency, Majid Asgaripour)



ラン唯一の原発の原子炉が緊急停止中と国営テレビが伝えており、理由説明はないままだ。


国営電力会社タバニールの関係者が6月20日放映のテレビ番組でブーシェフル原子炉は19日から運転を停止しており、「三、四日」このままの状態になると明らかにした。ただ、詳細には触れず、今後停電が発生するかもしれないと述べた。


イラン南部にあるブーシェフル原発で緊急停止の報道は今回が初めてだ。同発電所は2011年にロシアの支援で稼働開始した。同原子炉の使用済み核燃料はロシアへ返還する措置を非拡散対策としてイランは求められている。


タバニール社は同日早く、声明を発表し、ブーシェフル原子力発電所は補修工事に入ったとだけ明らかにし、工事は金曜日まで続くとした。


今年3月にイランの原子力関係者マームド・ジャファリから同発電所は米国による金融制裁措置のため必要な部品、装置がロシアから確保できず、操業を停止する可能性があるとの発言が出ていた。


ブーシェルフはロシアで生産のウラニウムを燃料としており、イラン国産燃料は使わない。また、国際原子力エナジー機関が監視対象としている。IAEAは同発電所に関する報道について承知しているがコメントは差し控えるとした。


同発電所建設は1970年代中ごろ、イランがパーレビ国王の治世下で始まり、1979年にイスラム革命が発生すると、イランイラク戦争で何度も標的となった。その後ロシアが完成させた。


同発電所は活断層に近い場所に立地しており、大地震に耐える構造というが、何度も大きな揺れが発生している。ただし、ここ数日で深刻な地震が発生したとの報道はない。


イランと主要国間で2015年合意に基づきイラン核開発に制限を課す交渉で進展があったとの発言が外交団トップから20日に出た中で今回の報道が入った。


欧州連合は20日、ウィーンでロシア、中国、ドイツ、フランス、英国、イランの六か国会議の最終会合を開催した。


参加各国は課題となっている米国の復帰問題の解決を目指している。ドナルド・トランプ大統領が2018年に米国を一方的に同枠組みから脱退させた。トランプは同時に制裁措置を再開し、強化させイランを協議の席に戻らせ、さらなる譲歩を引き出そうとした。


イランでは18日の大統領選挙で、強硬派の新大統領が当選したばかりだ。外交筋は新大統領エブラヒム・ライシの登場で核合意形成への道が一筋縄でいかなくなるとの懸念している。■



Iran’s Sole Nuclear Power Plant Undergoes Emergency Shutdown

21 Jun 2021

Associated Press





いまいち内容が薄い記事でしたので、The DriveのMilitary Zoneに出た記事を見てみます。こちらはより多面的な内容になっています。



A view of the then still under construction Bushehr Nuclear Power Plant in 2010.

AP PHOTO/VAHID SALEMI

ラン当局は内容不詳の「技術上の問題」のため、同国唯一の原子力発電所ブーシェルフの稼働が止まっていると説明している。

イラン原子力エナジー機構(AEOI)は同発電所に関し声明文を6月20日発表し、その前に同国の国営発電企業の関係者が国営テレビで同発電所が前日から操業を停止中と発言したのを受けてのことだった。テレビ出演で同関係者は「緊急的」措置と述べるにとどめ、詳細は語らなかった。

AEOI声明文ではブーシェルフ発電所は前日にエナジー省向け通告をしてから一時的に稼働停止し、現在は配電網にも接続されていないとある。

ブーシェルフ発電所では2011年に臨界に達し、その二年後に電力供給を開始した。原子炉は1基のみで定格1000メガワットである。2014年にイランはロシアと同じく1000メガワット級原子炉2基を敷地内に構築する合意に署名し、さらに国内に原発を追加する可能性が生まれた。ブーシェルフでは2016年に二号機の建設がはじまったが、 3年経過しても工事は初期段階のままとなっている。イラン当局は同国の発電容量のうち8-10パーセントを原子力で賄うのが目標としている。

 

GOOGLE MAPS

ブーシェルフ発電所の位置を示す地図。

GOOGLE EARTH

ブーシェルフ発電所の衛星写真。2021年1月撮影。

 

イランの電力供給は主に天然ガス、石油dあが、ブーシェルフは相当の電力供給源になっており、タナビル公社は今回の原発運転停止に呼応し国民に節電を呼び掛けている。状況を悪化させているのが「気温上昇予想」の中での「電力供給減」となることと現地テレビPressTVが伝えている。

ブーシェルフ運転停止は整備問題あるいは事故により発生したとの証拠がないことに注意すべきだ。AEOIのNo.2マームド・ジャファリは制裁のため交換部品や機器類をロシアから入手できなくなっており、このままでは近い将来に運転を縮小せざるを得なくなると3月に警告していた。

実はブーシェルフが完全停止するのは今回が初めてではない。2020年4月にも定期点検と燃料交換のため完全停止している。核非拡散の点で、同発電所がイラン核開発を支援しているとの疑惑を弱めるためロシアが燃料棒を供給し、使用済み燃料棒もそのままロシアへ送り返すこととしている。

同時に関係者が今回の運転停止措置を「緊急」措置だと述べていることから疑惑と安全上懸念が生まれている。ブーシェルフは活断層付近に立地しており、2013年の地震で損傷したとの観測がある。その後、イランは発電機の修理が必要と認め、建屋で「長い亀裂」が走っているのが見つかったとしたが、地震との関連性を否定した。ただし、今回の措置に先立ち、現地で地震は観測されていない。

加えて、イスラエルが秘密工作をイラン国内で展開しているとの報道はたびたび出ており、イラン民間商船や海軍艦艇も海上で妨害を受けているとある。イスラエルの狙いはイランの核開発の妨害以外に制裁で苦境にあるイラン石油産業にさらなる打撃を与えることにある。

イスラエルが国家としてあるいは代理となる勢力を通じてナタンツ原子力施設で2020年7月に発生した核物質の遠心分離工場で発生した爆発火災事故を引き起こしたと広く信じられている。それから四カ月たち、今度はイランの原子力科学者モーセン・ファクリザデが市中で暗殺され、その際は遠隔操作機関銃が駐車中の車両に見つかったといわれる。

ナタンツでは4月に停電が発生しており、その後の報道ではイスラエルのサイバー攻撃が原因とある。イランは妨害工作だとし、「核テロ活動」と非難した。その後の報道を見ると、突然の停電で遠心分離機に相当の被害が発生したようだ。2010年にイスラエルは米国の支援を受け、ナタンツのコンピュータ網をスタックスネットと呼ばれるコンピュータウィルスに感染させ、遠心分離作業に物理的な被害を発生させたといわれる。

今回のブーシェルフ稼働停止もイラン、イスラエル間の政治体制の大きな変化の中で発生した。イランでは強硬派のエブラヒム・ライシが大統領選挙で当選し、米国政府は選挙そのものを公平で自由なものとは認めていない。また今月初めにイスラエルでは新たな連立政権が誕生し、12年にわたるベンジャミン・ネタニエフ政権と交代したばかりだ。

イスラエル新首相ベネットは「ライシの当選は世界主要国にとって核合意体制の復帰前に現実に気づく最後の機会であり、交渉相手がだれかをあらためて認識すべきだ」と多国間取り決めに言及して発言している。ドナルド・トランプ大統領は2018年に交渉から米国を離脱させたが、現ジョー・バイデン大統領は間接的ながらイランとの交渉を続けており、復帰を狙っている。バイデン政権は当初の発言と異なり、イラン向け制裁を部分的に廃し、外交交渉のきっかけを模索している。

「残酷な手段を平気で用いる勢力に大量破壊兵器の入手を許してはならない。イスラエルの姿勢はこの点で変わっていない」(ベネット首相)

これに対しライシはバイデンとの直接会談は否定し、イランの弾道ミサイルは中東各地並びに世界の代理勢力を支援しているものであり、交渉の対象にするつもりはないと断言している。その内容はイランのこれまでの政策と変わるものはないが、新大統領でイランをさらに過激な方向へ向かう可能性がある。

ブーシェルフに話を戻すと、今回の稼働停止が単純に部品不足や小規模な故障のためだったとしても、イランは同発電所の安全な稼働の実現には相当の困難に直面するだろう。燃料棒破損で放射性ガスが増える事態が中国で発生しているのも同様の懸念を生んでいる。核関連事故は原子力研究・運転で長い実績を有する国でも発生しているが、安全運転に必要な部品機器類の輸入に制限があるイランのような状況は他国にはない。

ブーシェルフで何が起こっているのかについても新情報が出てくる可能性がある。イラン国内の問題なのか、外部が絡んでいるのかは今後判明するだろう。■

Iranians Blame "Technical Fault" For Emergency Shutdown At Country's Only Nuclear Power Plant

The still largely unexplained decision to cease operations at the Bushehr Nuclear Power Plant can only prompt questions and concerns.

BY JOSEPH TREVITHICK JUNE 21, 2021


 

2021年6月21日月曜日

NGADでやっとここまでわかってきた。戦闘機型では短距離版、長距離版で異なる機材が生まれる。さらにF-16後継機になれば、F-35Aの立場が微妙になりそう。

 

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  • NGAD concept

U.S. AIR FORCE

 

 

ここがポイント:NGAD戦闘機型は対地攻撃もこなしつつ、長距離型、短距離型の別機材として整備される。

 

空軍が実現を急ぐ次世代制空機は多用な機体構成となりその中で戦闘機型を中心に据え、多任務の実行を狙い、空中の脅威以外に対地攻撃にも対応する。空軍はインド太平洋向けに長距離仕様、ヨーロッパ戦域向きに短距離仕様の機材も同時に活用する予定だ。これが極秘扱のNGADで浮上した最新情報で、少なくとも一機の試作機がテスト飛行を開始している。

 

下院軍事委員会が開いた空軍の2022年度予算要求案に関する公聴会で情報が明るみに出た。出席したのは空軍参謀総長チャールズ・Q・ブラウンJr大将と空軍航空戦闘軍団司令のマーク・D・ケリー大将だった。

 

ブラウン大将はNGADで中心になる戦闘機仕様の機体は「各種システムのシステム」で制空任務につく想定と述べた。それだと空軍が求めるF-22ラプター・ステルス戦闘機の後継機イメージに符合する。ラプターは退役が決まり、2030年代から姿を消す予定だ。だが、空軍トップは新型戦闘機にも「マルチロール」機能が求められ、とくに対地攻撃能力が必要としている。

 

これはハイエンド制空任務に特化している現在のF-22のミッション内容と対照的だ。ラプターも対地攻撃弾を中東で運用した実績があるが、NGADでは接近阻止領域拒否(A2/AD)環境での戦闘運用も必要となり、対地攻撃と制空任務をこなせる機体にすることが理にかなっている。中でも高性能地対空ミサイルの破壊が重大になる。

 

ただし、空軍はF-22後継機には現行機より高い性能を求めている。航続距離の拡大だ。ラプターの弱点は戦闘行動半径で、対中国戦で問題となる。F-35でも航続距離不足は問題視されているものの、F-22よりは長い。中国のような互角戦力の相手との交戦を既存機材で行えば、給油機が不可欠となるが、給油機は脆弱で、USAFはこのことを認識している。そこで、NGADがF-22より相当長い航続距離を実現するのは当然だろう。

 

あわせて、ブラウン大将からはNGAD戦闘機型の兵装搭載量はF-22より相当増えるとの発言も出た。機内兵装庫を拡大し、小型弾薬類を搭載しつつ、忠実なるウィングマンとなる無人機編隊に兵装を重装備させることになる。内部兵装庫を活用すればレーダー断面積を減らしたままF-22はAIM-120を6本、あるいはAMRAAM2本とGBU-32共用直接攻撃弾(JDAM)(1,000ポンド)2発、またはAMRAAM2本と小直径爆弾(SDB)8発を搭載し、さらに短距離用サイドワインダーミサイルを機体側部に搭載する。NGADでは搭載量がこれ以上になる。

 

ケリー大将は空軍はNGAD戦闘機型を二機種で運用する案を検討中とし、ひとつは長距離重装備でインド太平洋でのミッション運用に最適化した機体とし、もうひとつは短距離型でヨーロッパでの運用に最適化するとした。

 

この発想には一長一短があり、考えてみる価値がある。「欧州型」NGADは小型とし購入価格、運用経費を抑えつつ、運用支援インフラも対応させていく。NGADが二型式になると、運用支援の兵たん活動で良い影響も悪い影響も発生する。二型式といっても共通性を高くすることが効果を生むのはF-35で証明済みが、必ずしもその通りにならない。モジュラー化に焦点をあてて課題を積極的に解決できるはずだが、機体のサブシステムが同一ならリスクを軽減し、共通性を増やせる。

 

空軍がNGADの「ローエンド」版を作り、センサーやステルス性能を劣化させるとは考えにくいが、可能性がないわけではない。もっともあり得るシナリオは高度モジュラー化を採用した設計で「一つの原設計から二型式を創る」効果が生まれそうだ。これが可能とするには主翼形状を別とし、胴体部分は共通化することだ。胴体はプラグで延長可能とする。モジュラー化をさらに進めると、拡大版あるいは縮小版の機体が可能となる。ただし、悪い側面としては各方面の戦闘で使い物にならない機材を生んでしまうことだ。インド太平洋地区司令官がヨーロッパに特化した機体で需要が満たせるだろうか。NGADが短時間で仕様を変更できる設計になっていれば話は別だ。

 

この発想はいわゆる「デジタルセンチュリーシリーズ」と重なるものがある。これを考案した当時の空軍次官補ウィル・ローパーは新型機を迅速開発し、5年おきに新型機を登場させる発想だ。この実現には困難がついて回ると思われるものの、NGADにも応用できる構想で、ケリー大将の発言が裏付けていると受け止められる。

 

NGADで新しく浮上した詳細からブラウン大将の構想がよりよく理解できる。ブラウンは酷使されているF-16多数の更新用に完全新型戦闘機の採用を提唱していた。空軍の将来機材構成検討のひとつとしてF-16に代わる「完全新型設計」があり、F-35Aの1,763機調達案を止めてもこれを実現すべきという意見がある。NGAD短距離版をもとに別の機体を作る案も現実味を帯びてきた。

 

そうなるとNGADをラプター後継機としてハイエンド交戦用に投入する以外に、対地攻撃もこなす短距離低ペイロード版をヨーロッパに投入する構想が理解可能となる。

 

同時に輸出も視野に入るはずだが、NGAD標準型の場合、話はややこしくなる。F-22を日本へ輸出する案で議会が高度技術の共有に抵抗を示し、関係者はいらいらさせられた。F-22/F-35ハイブリッド提案が日本向けにあったが、NGAD戦闘機型で二機種が生まれれば別の機会が生まれるはずだ。

 

「NGAD軽量版」がF-16後継機になれば、NGAD開発のみならず関連する各種システムでも効果が生まれる。兵装、通信体系、センサーシステム、また併用する無人機がここに含まれる。

 

そうなるとF-35の地位がさらに不安定となる。F-35を大量調達しコストを下げる狙いも完全新設計のF-16後継機の前に実現が怪しくなる。NGAD派生型となれば性能水準が下がるものの機体価格は低くなり、海外向けにも訴求力が生まれる。同時に対地攻撃もこなしながら厳しい空域での制空任務がNGADで可能となれば、もともとF-35で想定した任務をこなすことになり、F-35事業にまたもや難関が発生しそうだ。少なくとも米空軍内部では。

 

ただし、NGADで判明している内容がごくわずかであり、F-16後継機も同様で情報は皆無に近いままだ。NGADの詳細が次第に明らかになってくるだろうが、驚かされる内容が判明してもおかしくない。■


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BY THOMAS NEWDICK JUNE 17, 2021