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主張 深刻な食糧不足に陥った北朝鮮。金正恩が危機状況を認めたが、政権維持が念頭で、国民は耐えて犠牲を出すしかないのか。

 

 こんな国家が21世紀にまだ残っていることが悲劇としか言いようがありません。

政権が自壊しても国民、ましてや周辺国を巻き込んでもらいたくないものです。

いろいろな矛盾が一気に表出しそうですね。


 

朝鮮の国内安定度はどこまで損なわれているのか。食料供給が不安定になっているのは天候が原因なのか。

 

北朝鮮で食料不足が再び深刻になってきた。同国政府もこの事実を認めている。前回の食糧危機は1990年代末に発生し、当時の最高指導者金正日は事実を認めようとせず、百万人近くの国民が飢餓におちいった。現在の指導者金正恩が事実を認めているのがせめてもの救いだ。つまり、金正恩は対処しようとしており、改革者ではないものの、少なくとも現在の経済状況に気を配っているのであり、国民から距離を置き、無関心を貫いた父親と異なる。

 

今回の食料不足を招いたのは天候条件と25年経過してまた同じ言い訳が聞こえてくる。だが隣国の南朝鮮には食料不足はない。実は真の理由は政治で、北朝鮮に悪政と汚職が蔓延していることだ。

 

制裁措置も原因と指弾されるが、農業への制裁の影響はごくわずかだ。制裁が効果を上げているのはエリート層のためのぜいたく品であり、デュアルユースとなる工業製品であり、現政権が望めば人道援助の恩恵を受けることができる。食糧援助も援助品が必要な層に届く保証があり、軍や政権関係者に渡らないのであれば同国に届く。これは1990年代末と同じ条件であり、今年話題になりそうだ。

 

政治的な問題が生まれる。外国人が助けたくても現政権が受け取らない姿勢だ。今回の危機は金正恩が改革者なのか試す機会になる。改革派なら、外部支援は白紙小切手ではないことに気づくはずだし、適正に活用するには実行の仕組みが必要だ。

 

コロナウィルスで中国国境を閉鎖したことが主因であることはまちがいない。北朝鮮の汚職にまみれた「社会主義」農業は低生産性と不十分さで知られる。1990年代末の飢餓状況を繰り返さないためにも現政権は中国からの食糧密輸を頼りにしていた。北朝鮮民が国境を越え中国東北部に向かう無謀な試みが前回の飢餓発生時から見られる。だが現政権は越境の動きを本格的に摘発していないのは、農作物密輸が政権維持に役立っており、国民の不満を抑え食品供給の維持につながっているからだろう。

 

飢餓は暴動や蜂起の原因になりうる。餓死寸前になれば怖いものなどない。国民に十分な食料を供給できない政権は自ら変革するか、外国の援助に頼るか、それとも国民の蜂起のリスクを覚悟する必要がある。事実、毛沢東も飢餓が現実となると大躍進運動を弱めざるを得なくなった。だが北朝鮮を支配する金一族が政治上の改革を長年にわたり拒否してきたのは、パンドラの箱を開けることになり、南北統一含む事態への進展を恐れているためだ。そこで、「社会主義」と言いつつ汚職と非効率がまかり通る現状を維持する必要があり、外国の援助を忌み嫌うのは責任を問われるからだ。中国からの「おこぼれ」が国民に食料を供給し、不満を抑える使い勝手の良い選択肢となる。

 

だがコロナウィルスのためこの非公式の裏口が今は閉まっており、内部矛盾が高まってきた。集団農業が低効率なことはよく知られており、北朝鮮では汚職まん延が状況を悪化させている。前回の飢餓発生時は大量飢餓を放置する政治リスクを単純に選択した。それでも国内で暴力の連鎖が発生しなかったのは驚きだ。このことから現政権が安定度を増していることがわかる。1990年代末に国民の1割が飢餓に苦しんでも何も起こらなかった。

 

だが二十年にわたり中国経由の密輸を許したことは現政権が1990年代末の状態が危険だったことを承知しているからだろう。金正恩が現在の地位に就いた際に「耐乏」状態はもう発生させないと公約した。公約そのものは国民への配慮だったというより大量飢餓が発生すれば政権維持が困難になる本人の認識の反映だったはずだ。

 

では今回の現政権は安定しているといえるか。再度食糧危機が北朝鮮国内で発生すれば国民は反乱を起こすだろうか。おそらくその可能性はない。現政権はもっと厳しい局面を25年前に乗り切っており、今回は別と考える理由がない。北朝鮮は金神話を本当に信じているのか、あるいは手向かう勢力を容赦なく処分する現政権の前で北朝鮮国民は長年にわたり疲れ切っているのか。北朝鮮の75年の歴史で国民の反乱は一回も発生していない。

 

とはいえ、金正恩が今回は現状を率直に認める発言をしたことは逆に危機状況の深刻さをうかがわせる。前指導者の決定的な経済運営の誤りで経済成長達成が権力維持の根拠となった。国内で反抗運動が発生するとしたら、経済が理由だろう。また食料供給の混乱が飢餓につながれば、北朝鮮は中国への扉を再開し、コロナウィルスのリスクをあえて選択するのではないか。■

 

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Just How Stable Is North Korea?

June 22, 2021  Topic: North Korea  Region: Asia  Blog Brand: Korea Watch  Tags: North KoreaKim Jong UnFoodSanctionsCoronavirus

by Robert E. Kelly

 

Robert E. Kelly is a professor of international relations in the Department of Political Science and Diplomacy at Pusan National University.

Image: Reuters


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