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MQ-25スティングレイが初の空中給油に成功。艦載無人給油機の実用化に大きな一歩となった。IOC獲得を2025年目標とし、タンカー任務以外にも期待が広がる。

 MQ-25 refueling

Boeing 

 

ーイングMQ-25スティングレイのテスト機T1が初の無人給油機として有人機への空中給油に成功した。MQ-25を空母航空団(CVW)に加えようとする米海軍に大きな一歩となった。

 

海軍航空システムズ本部(NAVAIR)とボーイングが本日発表した内容ではT1テスト機はF/A-18Fスーパーホーネットへの空中給油に2021年6月4日に成功したとある。MQ-25はイリノイ州マスクータのミッドアメリカ空港を離陸し、主翼下の空中給油タンクAerial Refueling Store (ARS) からスーパーホーネットへの給油に成功した。

 

BOEING

6月4日、MQ-25のT1がF/A-18Fへ空中給油に成功した。

 

戦闘機が給油前に無人機に20フィートまで接近した。給油機は曳航するバスケット状のドローグをスーパーホーネットの標準型給油受け口に接続した。両機は実際の給油時の速度、高度を維持したとボーイングは発表。

 

「今回のフライトは空母運用につながる基礎となり、有人機無人機チーム構想の能力を拡げる」と無人航空攻撃兵器の事業評価室長ブライアン・コーリ海軍少将が述べている。「MQ-25により将来の空母航空戦力の飛行距離、飛行時間が大幅に伸びる。空母の搭載機材を増やす野と同じ効果が生まれる」

 

「今回の歴史的な達成はボーイング=海軍チームがめざすMQ-25による空中給油能力の実用化に大きな意味がある」とボーイング・ディフェンス・スペース&セキュリティ社長兼CEOリーアン・キャレットもコメントを発表した。「近い将来に無人装備を防衛作戦に安全かつ確実に統合する際にチームの作業が推進役となっている」

 

「無人給油機により攻撃機材が給油機任務から解放され、空母航空団は飛行距離を伸ばし、柔軟かつ高い機能を発揮できるようになる」と海軍無人空母航空機材事業室の主査チャド・リード大佐も述べている。「MQ-25がF/A-18への空中給油に成功したことでMQ-25が空母搭載への道を着実に歩んでいることが証明された」

 

初の有人機向け空中給油作業で各種データが収集できた。両機間でどんな空気力学が発生するのか、また誘導制御システムの信頼性についてだ。こうしたデータが集まり、テストチームは無人機側の飛行制御ソフトウェアに必要な改良を検討する。

 

6月4日の実証は史上初の無人給油機による有人機向け空中給油となったが、空中給油に無人機を使う発想は以前からあるものだ。

 

2015年にノースロップグラマンは海軍とともに完全自律式の空中給油に成功した。この際はX-47B無人戦闘航空システム実証機 (UCAS-D)がボーイング707改装タンカーから給油を受け、初の無人機への空中給油となった。

 

U.S. NAVY

X-47Bは初の自律空中給油の実証に2015年4月22日成功した。チェサピーク湾上空だった。 

 

これに先立ち、2012年にはDARPAの高高度空中給油開発事業で完全自律空中給油を無人機間で実証している。この際は改装したRQ-4グローバルホーク2機を接近飛行させ、プローブ-ドローグ方式で接続させた。

 

今回のMQ-25による初の空中給油の前に同機のデジタルモデルによる空中給油シミュレーションが相当回数にわたり実施されていた。

 

NAVAIRは「T1のテストは今後数カ月にわたり続け、飛行性能の限界を徐々に伸ばし、エンジンもテストし、空母艦上での取り回し実証も今年後半に行う」としている。初めて搭同機を載する空母もUSSジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)と決まった。

 

MQ-25はARSポッドを搭載したままで飛行を昨年12月から始め、T1はこれまでミッドアメリカセントルイス空港を本拠地として飛行を続けてきた。同機の初飛行も同空港で2019年9月に行われた。ARSの製造はコバム社が行い、同社はF/A-18スーパーホーネット用の給油用ポッドを流用している。

 

米海軍の最新予算要求文書では「MQ-25スティングレイによりCVWミッションの有効飛行距離が伸び、現在痛感されている空母打撃群(CSG)のISR能力不足を部分的にせよ解消し、将来のCVW給油機不足を補うことが可能となり、攻撃戦闘機不足を緩和しつつ、F/A-18E/Fの機体寿命を維持する効果が期待できる」とある。

 

MQ-25では給油ミッション以外に情報集監視偵察(ISR)任務も行わせるとしている。また、これ以外の可能性もある。

 

とはいえ、MQ-25で期待される性能内容は以前あった無人空母運用航空偵察攻撃機(UCLASS)構想より現実的な範囲におさまっている。UCLASSはステルス無人機として高度な防空体制を突破し、攻撃任務と合わせISRミッションも行う想定だった。この点で、MQ-25実証機はUCLASSの焼き直しであり、ステルス機能を保持しているが、機体上部に設けられた空気取り入れ口機構など高度な内容も実現している。

 

他方でMQ-25のT1は専用テスト機として今後のスティングレイの完成形ではない。まず技術生産開発(EMD)用に4機が2018年契約に基づき完成する。昨年はさらに3機の改修契約を海軍はボーイングに交付している。タンカー/ISR任務に加え、各機で海軍は初の空母搭載無人機を使い「海上運用のC4I無人機技術の実証を試み、多任務UAS実現に道を開き今後の脅威に対応させたい」としている。

 

数か年かけてボーイングはEDM機材を納入し、セントルイスでテスト作業を続ける。機材はその後パタクセントリヴァー海軍航空基地(メリーランド)に移り、残りの飛行テストに供される。テストはレイクハースト(ニュージャージー)やエグリン空軍基地(フロリダ)でも展開される。

 

ただし、MQ-25事業に遅延が発生している。海軍は設計と機体強度の適正化のため設計作業が中断したこと、製造工程で見つかった品質問題(詳細不明)に加えCOVID-19大流行の影響が製造、引き渡しに発生したと述べている。このためEDM一号機の引き渡し時期がはっきりしない。とはいえ、同機の飛行テストは2022年度に始まる予定だ。

 

海軍はMQ-25を72機導入する計画としており、2025年度に初期作戦能力獲得を目指し、まずE-2部隊でスティングレイと共同運用訓練を行う。

 

ともあれ、今回MQ-25実証機で初の空中給油に成功したことは重要な一歩となり、海軍は初の艦載無人機の実現に近づいた。■


追補

 

米海軍の報道機関向け発表で6月4日の歴史的フライトの詳細が以下明らかになった。T1ととんだF/A-18Fは海軍テスト評価飛行隊23(VX-23)の機体だった。

 

フライトは4.5時間におよび、F/A-18Eが無人機に接近し、標準的な目視観察位置につき、ホース、ドローグの様子を点検した。スーパーホーネットが接続前位置につくと地上のMQ-25操作員がF/A-18に無線交信し、バスケットが稼働した。戦闘機側が無人機に接近し、後流の影響を調査した。テストパイロットによれば無人機から戦闘機への影響は無視できる範囲であり、安定度はかなり高かったという。

 

F/A-18はいったん後退し、T1がホース、ドローグを展開すると、スーパーホーネットがその様子をチェックした。無人機主翼下から展開するドローグの見易さもその一つで、これまでは戦闘機中心線下にポッドがあるためだ。一回目のコンタクトは燃料を通過させず、その後実際に燃料を投入したコンタクトを高度10千フィートで実施した。

 

T1の主翼タンクとARSには燃料配管がないため、今回の給油ポッドには500ポンドしか搭載されていなかった。合計325ポンドの燃料を移送し、次に高度15千フィートで別の給油を試み、今回は燃料を流さず接続だけした。

 

海軍の説明では今後六カ月にわたりT1で空母運用実証を行い、給油対象機材にE-2を加えるという。T1を停泊中の空母に搭載し、艦上での取り回しを実証する。同機にはカタパルト発艦、拘束回収の装備は搭載していない。本来、MQ-25は空母運用想定にもかかわらずT1にこの装備がない点に関心を覚える。

 

EMD機材一号機は2022年秋の引き渡しになる。外観上はT1と大きく異なる機体にはならない。エンジンもロールスロイスAE3007Nターボファンで共通だ。

 

EMD-1の製造はセントルイスで進行中で、EMD機材は7機と静止試験用2機が発注されている。初期作戦能力獲得は2025年早々に予定されている。■

 


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