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単純な質問、F-22ラプター生産再開はありえるのか。答え、米空軍の将来像にラプターの存在は想定がない。空の王者の座もあと数年で消える運命とは.....

 




空軍には制空戦闘機が二型式ある。F-22ラプターとF-15イーグルだ。だが製造再開の対象にイーグルが選択され、より高性能なラプターは対象外とされた。そこで疑問が生まれる。F-15新型機が調達できるのなら、F-22生産を再開をすべきではないのか。


F-22ラプターは今も世界最強の制空戦闘機である。中国のJ-20Bはこれから現れても、ロシアのSu-57はまだ性能で及ばない。F-22が最高峰であることに変わりない。とはいえ、同機をいまさら生産再開するのが正しい選択とは言えない。


F-22とF-35の任務は全く違う


F-35打撃戦闘機は技術面で最先端の戦闘機と広く認知されているが、もとはF-16ファイティングファルコンの多任務ぶりを継承する機体として想定され、空対地任務を中心に置いた機体だ。先に出たF-22はF-15イーグルの後継機としてドッグファイターをめざした。




F-22、F-35はともに第五世代戦闘機としてステルス性能を前面に出したミッション実現をめざし、空対空、空対地戦闘を共にこなす想定とした。それぞれ、航空戦闘の異なる局面を本領とし、期待された任務も異なっていた。F-35の引き渡しは今も続いている点でF-22と異なるが、国防上層部の発言を聞くと、JSFの将来に疑問があるようだ。F-35はこれからも運用を続けるのはまちがいないが、F-35がF-16に交代する空軍の当初構想は実現がどんどん遠のいている。



F-22の生産中止は対テロ戦でステルス機が不要となったため


空軍は当初F-22を750機調達し、21世紀の迎撃戦闘機をステルスで統一する構想だった。だが米国は対テロ、対戦闘員の作戦にどっぷりとつかり、技術面で劣る敵勢力と対決したため、高性能ドッグファイターの出番がなくなった。各方面の戦費を賄うためF-22事業は2011年12月に186機の引き渡しで終了された。ほぼ10年が経過し、F-22は高性能で知られるものの、機数があまりにも少なく希少品扱いだ。


new f-22

(U.S. Air Force photo by Lt. Sam Eckholm)



というわけで当初はF-15にとって代わるはずだったラプターだが、あまりにも機数が少なく懸念を呼んでいる。186機中作戦投入可能となったのは130機ほどしかない。さらに現在は戦闘投入可能なF-22は百機を割り込んでいるようだ。また、補充用の新規製造分がないため、世界最高水準のドッグファイターの退役も近づきつつある。


では米空軍の将来はどうなるのか。参謀総長チャールズ・CQ・ブラウン大将が説明しているように、そこにはラプターは含まれない。だがアメリカには世界最高の制空戦闘機が必要なことに変わりなく、F-15EXイーグルIIは確かに強力だが、ステルス性能はないため中国やロシア相手の戦闘では生存があやうい。NGADが姿を現すまで数年かかり、制空ミッションはハイエンド戦に対応可能な機種がないままで進めざるを得ない。


F-22の生産施設やサプライチェーンはF-35が使用中


F-22の生産再開は言うのは簡単だが、事実はF-22を生産再開しようとすると新型機の開発より費用が高くなる可能性がある。ロッキード・マーティンはF-22の製造インフラの大部分をF-35用に転用してしまっており、ラプター製造ラインを再開するわけにはいかない。


Lockheed Martin



事実、ロッキード・マーティンがF-22を生産再開しようとすれば、ゼロからすべて構築しなおす必要があった。米空軍がF-22導入をあきらめ、新規製造とはいえ旧設計のF-15EX調達に走った理由だ。


ボーイングの新規製造F-15は第四世代戦闘機でステルス機能はないものの、空軍は同機調達を決めたが機体単価はF-35より高い。なぜなのか。理由はいろいろあるが、重要なのは運行経費でF-15はF-35、F-22より相当低い水準にある。さらに生産成果がすぐに手に入ることだ。ボーイングは米同盟国向けの高性能版F-15製造を手掛けており、米国向け新規機体製造ライン追加も比較的低経費で実現可能となった。


一方でF-22生産ラインは姿を消して10年ちかくになる。議会向け2017年の報告ではF-22生産を再開し、194機調達すると500億ドルに上るとの試算となっていた。一機あたり206から216百万ドルとなり、F-35の現在の単価が80百万ドル、F-15EXで約88百万ドルなので大きな差がある。


ではF-22の新規生産は完全に不可能なのだろうか。もちろんそうではない。予算があればなんでもできる。だが、費用高騰の試算から疑問が生じる。実行して意味があるのだろうか。その答えは明確にNoだ。米空軍は比較的小規模な90億ドルを次世代制空戦闘機事業に投入しており、F-22後継機を2019年から2025年までの6年間で実現しようとしている。


新型NGADが予定通りの供用開始となれば、F-22退役前に両方が飛ぶことになる。そうなれば、ラプターの空の王座はまもなく終わりを迎えることになるが、新型機が米国に現れてからになりそうだ。■


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SANDBOXX NEWS


 

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Why can't America build any new F-22 Raptors?


Alex Hollings | June 26, 2021

 

Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.


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