THAAD Missile Battery. Missile Defense Agency Photo
米国はグアム防衛のためハイブリッドシステムの導入を迫られそうだ。グアムの地形の複雑さとミサイル脅威の想定が多岐にわたる背景があるとミサイル防衛庁長官が述べた。
ジョン・ヒル海軍中将は山地が多いグアムの地形を「挑戦しがいがある」とし、弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速ミサイルからの防衛に言及した。
6月22日ヒル中将は戦略国際研究所イベントで最終判断について「聞いて驚く人はいないだろう」と述べた。
ヒル中将は「イージスの地下展開あるいは移動展開」がグアム島で想定されるとし、「レーダーと兵装を分離する新しい技術」で飛来するミサイル撃破が可能だと述べた。
「イージスアショア(ルーマニアで稼働中、ポーランドで建設中)では不十分かもしれない」
イージスアショアではアーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦と同じレーダーと垂直発射管システム(VLS)を地上基地に配備する。ヒル中将はイージスシステムは中国やロシアの極超音速ミサイル対応にも改良済みと述べた。
ヒル中将はミサイル防衛庁のグアム防衛構想はペンタゴンが検討中とし、完了後に議会へ送付すると明らかにした。また、グアム防衛で中心となる軍の選択は未決定とも述べた。
陸軍は終末高高度広域防衛(THAAD)システムは2014年にグアムに展開し、北朝鮮の長距離弾道ミサイル試験に対応した。グアムには大規模な艦船修理施設、海兵隊・空軍の大規模プレゼンス、陸軍分遣隊がある。
グアムで最も効果が高い装備を検討し、北朝鮮や中国のミサイル攻撃からグアムで可能な限り広範囲な防衛を実現するのが目標だとヒル中将は述べた。
前インド太平洋軍長官フィル・デイヴィッドソン海軍大将はイージスアショアのグアム展開で現在投入中の駆逐艦三隻の任務を解くのが望ましいと3月に発言していた。
「人員、装備等の防衛体制の進化はグアムから始めるべきだ。高性能かつ高度に適応でき実証済み装備としてイージスがあり、グアムのような固定地点に配備すれば常時360度の統合防空ミサイル防衛能力を第二列島線で実現できる」(デイヴィッドソン)
USNI Newsの質問に対しヒル中将はディエゴガルシア(英領)にも将来的に統合アプローチが導入されるかもしれないとし、グアム同様に地形条件のため防衛が難しい場所と述べた。
ディエゴガルシアには海軍の大型支援施設とあわせ空軍基地があり、B-52運用に供している。
米本土のミサイル防衛でも同様に統合方式が可能かについて、ヒル中将は「グアムはごく小規模の事例」と答えた。北方軍司令グレン・ヴァンヘック空軍大将と同様にヒル中将も「センサー網の整備は今すぐ必要」と強調した。
ヒル中将は「互角の実力を有する敵国が戦略巡航ミサイル攻撃を実行する事態を覚悟する必要がある」と述べ、ロシア爆撃機に巡航ミサイルをロシア領内から発射し米国を攻撃する能力があるとのヴァンヘック大将の先週の証言内容に触れた。
ヒル中将は冒頭で戦闘司令官には探知、統制、交戦に資する「全ドメイン認識が必要だ」と述べ、敵が発射した脅威を識別する能力が必須とした。
将来を展望しヒル中将はMDAの予算要求89億ドルの8割を研究開発試験評価にあてると説明した。長官就任三年目のヒル中将は優先事項として極超音速弾道ミサイル追尾宇宙センサー(HBTSS)とスタンダードミサイル6があると述べた。
そのあとに控えるのが次世代迎撃ミサイルで、ヒル中将は滑空方式迎撃手段を三番目の優先事項に加え、満額予算の承認を議会に期待すると述べた。
現在の脅威は弾道ミサイル、巡航ミサイル、航空機、無人装備と多岐にわたる。抑止と防衛のため「脅威全体を俯瞰する必要があり、単純な時代は終わった」とヒル中将は述べた。■
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