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混迷深まるオーストラリア潜水艦調達。フランスと契約問題でもめ、アタック級実戦化は2050年代予想で、現有コリンズ級機改修、216型購入などつなぎ案の実施を迫られる

 

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Collins class Royal Australian Navy

AUSTRALIAN DEPARTMENT OF DEFENSE

 

ここがポイント:フランス案の新型潜水艦の戦力化は2054年になるため、オーストラリアは苦慮し既存艦の改修案を検討中。

 

 

ーストラリア海軍は通常動力型アタック級潜水艦12隻の建造を待つ間に46億ドルを投じ現有コリンズ級の供用を続けると同国国防省が発表した。アタック級一号艦の就役は2035年以降で全隻の完全運用が実現するのが2054年以降になる見込みのためだ。

 

オーストラリア国防相ピーター・ダットンがコリンズ級6隻の供用期間延長(LOTE)構想を伝えたDefense Connect記事内容を認めた。旧式化してきたコリンズ級へ相当な規模の予算支出となる。コリンズ級は1990年代中ごろに供用開始し、アタック級の遅延が今回の背景にある。アタック級は当初2030年代初旬に就役する予定だった。

 

コリンズ級はスウェーデンのコクムズが設計し、同社は現在Saabの傘下にある。通常型潜水艦としては大型で排水量3,500トン全長254フィートである。アタック級を第一線に投入するまでコリンズ級の作戦投入を続ける。

 

「これからの脅威に現実的に対応する中で潜水艦戦力はリスク軽減策の大きな柱であり、事業を正しく進める必要がある」とダットン国防相はThe Australian紙に語った。「供用期間延長が必要なのは間違いない」

 

LOTEは艦齢30年になったコリンズ級から開始し、工期を2年間に想定する。Defence Connectは建造元のASC社がアデレードで実施するとしており、Saabが支援する。最初の改修は2026年する。

 

ダットン国防相は改修事業が「日程的に厳しいのは疑いない」と認めている。SEA 1000構想としても知られるアタック級は大幅に野心的な内容で、実現可能性で疑問が残ったままだ。

 

2016年にフランスのナヴァルグループ(当時はDCNS)がSEA1000事業を受注し、コリンズ級の後継艦建造が決まった。ナヴァルグループのアタック級はショートフィン・バラキューダブロック1Aを原型とし、大気非依存型推進方式を採用するとみられ、AN/BYG-1 潜水艦ペイロード管制システムも搭載する。アタック級の建造費は当時から高額だったが、いまや690億ドルに上昇しているが、当時は400億ド未満とされていた。

 

DCNS

オーストラリア海軍向けアタック級潜水艦の想像図

 

建造費以外にも南オーストラリアのオズボーン海軍造船所の作業比率問題があり、さらに技術分担の課題もSEA 1000事業に障害となっている。当初の合意内容では契約金額ベースで最低60パーセントを地元産業界が担当することになっていた。

 

事業がここまでの高費用になった理由は正確にわかっておらず、透明性が欠如したままの財務状況がオーストラリア、フランス間の対立の理由になっている。ただし、690億ドルには研究開発費用、戦闘システムの統合作業、国内生産施設の建設、支援施設の整備が含まれることがわかっている。これを念頭にすると建造単価80億ドルは誤解を与える。一方で、フランスの説明ではバラキューダ級6隻は100億ドルで建造している。

 

今年初めにオーストラリア政府がナヴァルグループ向け契約全部の破棄の検討に入ったとの報道があった。代替策としてコリンズ級を原型とした新規装備をナヴァルグループのオーストラリア法人で建造する案が出ている。

 

一方でドイツで建造する艦を取得する案を政府が検討中との記事が出てきた。ティッセン・クルップの216型になりそうで、同艦はSEA 1000入札で候補となっていた。これをアタック級が本格稼働するまでのつなぎとする構想だ。一見すると莫大な支出になりそうだが216型はフランス案の建造単価の半額程度なので実現可能性は十分にある。ただし、コリンズ級の改修より相当高くなる。

 

ダットン国防相は「ナヴァルグループとの取り決めで問題があった」ことを認めながら、契約義務は満たされていると述べた。にもかかわらず、遅延の発生で新規建造艦の稼働開始が遅れ、つなぎ策が緊急に必要となったとした。

 

いずれにせよ、コリンズ級の老朽化を見れば、オーストラリアは後継艦が必要なのは明らかだ。アタック級の建造単価は目が飛び出るほど高額になるが、オーストラリア海軍は近代戦における潜水艦の意義を認識しており、太平洋におけるオーストラリアの立場からも明白だ。中国が海軍力を急速に拡充する中で、とくに高速化と探知困難化している潜水艦部隊へ対応が必要なのだ。

 

コリンズ級改修をしつつ一方でアタック級の建造を待つのはリスクが高い。とはいえナヴァルグループは事業立て直しの機会が与えられたことになる。同時に現地造船部門は新型艦の建造が本格化するまで既存艦改修で業務が確保できる。ナヴァルグループの設計案での建造を前提としてきたが、代替案も複数出ており、今後どんな変更が生まれてもおかしくない。■

 

 


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Australia To Upgrade All Its Aging Submarines Amid Chronic Delays To Its New French Design

BY THOMAS NEWDICK JUNE 11, 2021

THE WAR ZONE

 


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