2014年7月11日金曜日

F-35のエアタトゥー出展中止、来週のファーンボロショーも微妙


F-35s Will Not Fly At Air Tattoo; Farnborough Appearance In Jeopardy

Jul 10, 2014Tony Osborne | AWIN First
F-35が予定されていたRIAT(ロイヤルインターナショナルエアタトゥー)航空ショーでの国際デビューをできなくなったことが主催者から発表された。
  1. 主催者によれば7月10日にこの決定がロッキード・マーティン、米英の国防省と協議して決まったという。会期中(7月11日―13日)の同機飛行展示はなくまった。
  2. 米海兵隊仕様のF-35B3機と英軍仕様のF-35B1機は現時点で米国を出発していない。.
  3. 7月3日にペンタゴンからF-35全機の飛行停止措置が発表されており、4機は大西洋横断飛行ができなくなっていた。
  4. ファーンボロ航空ショーでの展示はまだ可能性が排除されていないが、ますます困難になっている。また機体展示がなくなったため、エアタトゥー会場で予定されていた英国防相フィリップ・ハモンドの訓示も中止となった。
  5. 中止決定と並行しF-35開発室長クリストファー・ボグデン中将がフェアフォード基地で報道陣に背景説明をしている。中将は各機を英国へ飛来させる可能性に期待している。
  6. 「現時点で耐空証明認証機関から証拠提出を求められており、現在それに対応中。昼夜連続で安全な飛行が再開できるように努めている。米国と英国の各機体はパックス・リバーに駐機中で最後のぎりぎりまで飛.
  7. 飛行停止措置はF-35Aでエグリン空軍基地から離陸前に火災事故が発生したため。ペンタゴンから7月3日付で100機を超える全機の飛行停止命令が発出された。
  8. 「新型軍用機の開発で遅延が発生するのは珍しくありませんが、エアタトゥーはロッキード・マーティン、米海兵隊、米国防総省、英国防省と一緒にショー出展のためフェアフォードまで同機を移動させようと努力してきました。残念ながら今回は時間切れです」(ショーのCEOティム・プリンス)
  9. 英国防省はパイロットと機体の安全を最優先に考えていると発表。「ライトニングIIがエアタトゥーにあわせ英国に飛来できないのは残念ですが、エンジン異常問題の原因調査が完了するまで大西洋横断飛行を延期するとの今回の決定を全面的に支持します」■
コメント:いろいろな意味で不運と言うか、期待通りにトラブルを起こしてくれるF-35ですが、史上最大の防衛装備での期待外れ、にならないことを祈るばかりです。プロジェクトマネジメント上も教科書事例になるのではないでしょうか。エンジン問題など個別には論評がありますが、全体を見る視点での分析はまだないようですね。ここまでくれば(予定より大幅遅れ)あわてて「デビュー」することにあたふたしなくてもいい気がします。


速報 米空軍が次期ステルス爆撃機の提案を依頼



Air Force Releases Request for Proposal for Secretive Long Range Bomber

By: Dave Majumdar
Published: July 10, 2014 11:45 AM
Updated: July 10, 2014 11:45 AM
An artists conception of Boeing and Lockheed Martin's 2009 bid for the Next Generation Bomber (NGB). Boeing Photo
ボーイングとロッキード・マーティン共同提案の次世代爆撃機(NGB)の想像図(2009年) Boeing Photo

秘密のベールに覆われたステルス長距離打撃爆撃機(LRS-B)の提案依頼書 (RFP) を米空軍が7月9日に発出していたと明らかになった。
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  1. RFPは2015年春までに新型爆撃機開発の契約会社を「競争選定」で選ぶ作業の第一歩になる。

  1. 「LRS-Bは空軍の機材近代化の中でも最優先事項です。同機は状況に適合可能な高性能システムとなり、成熟技術を基に生まれます」と空軍長官デボラ・リー・ジェイムスDeborah Lee James はUSNI Newsが10日に入手した文書で発言している。「この国家安全保障上で重要な機体の実現に業界が尽力することを期待します」

  1. 同機開発は2011年から秘匿扱いとなっており、今回も空軍は提案書締切がいつなのか、その他の情報は一切明らかにしていない。
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  1. 空軍の調達想定は80機から100機で単価550百万ドル。
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  1. LRS-Bについてわかっていることはごくわずかで、超長距離飛行可能な亜音速機で広範囲ステルス性能を備え、低周波レーダー/高周波レーダーともに探知を無効にできる、だけが判明している。

  1. 同機にはゆくゆくは核兵器運搬も認証されるもとみられ、長距離打撃機ファミリーをシステム構成するが、そもそも強固に防衛された敵領空に単独進入する想定はない。
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  1. LRS-Bは「有人操縦が選択可能」な爆撃機として想定されていたが、空軍によれば当初は有人機になるという。

  1. ノースロップ・グラマンボーイング/ロッキード・マーティン・チームが競合する見込みだ。■

2014年7月10日木曜日

ロッキードCEOに国防事業、宇宙事業について聞く


Lockheed CEO On Defense And Space Endeavors

Jul 7, 2014Joe Anselmo and Amy Butler | Aviation Week & Space Technology
開発に13年を費やしているロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機にもついに国際デビューが近づいてきた。ロイヤルインターナショナルエアタトゥーとファーンボロ航空ショーで飛行展示を予定し、ショーに合わせ大西洋横断出張する前にロッキード・マーティンCEO兼社長マリリン・ヒューソンをAW&ST編集長ジョセフ・アンセルモとペンタゴン担当上級編集者エイミー・バトラーがワシントン郊外で取材し同社の近況と課題について尋ねた。
F-35の経験で得られた教訓は多数ある中でもっとも重要な教訓はなにか。
ヒューソン: まったくの新型機開発で複雑な要素がたくさんあり、三軍に8か国も加わり、開発意外でも性能などで他に例がない事業である。過去の事業とまったく違う。教訓として連絡を強化し、要求内容を完全理解し、各工程をしっかりとこなしていくことだ。もう一つ重要な教訓は良い仕事だ。複雑な開発過程をこなし、増産し、維持し、全体通していい仕事をすることだ。
教訓をロッキード・マーティンは将来の事業にどう反映させるのか。
各事業担当は組織的な訓練を受けており、顧客に焦点を合わせ次のような疑問に答えられるよう強化している。「顧客に耳を傾けているか、また正しく対応しているか。顧客の目的を正しく理解しているか」 ただしこれは当社事業では当たり前のことだ。そこにあえて優先順位を付ける。顧客とはオープンで透明性のある意思疎通が重要と考えるし、ちゃんと聴いて顧客の要求にこたえ、顧客のニーズにあわせることが肝要だ
あなたのCEO就任前にペンタゴンの調達トップのアシュトン・カーターがロッキードの出す結果が一定の基準以下なら同社のJSF責任者は更迭されるべきだと発言している。部下の責任者たちの功績をどう評価し、F-35他事業に応用できる教訓が得られたと考えているのか。
おっしゃる意味での教訓についてはお話しできない。事業は2010年に再構成されてからうまく動いてきた。当社の事業責任者には要求内容の完全理解を求め、顧客と密接に動くことで各変動要因つまり性能、費用、日程、品質、技術面それぞれで対応させてきた。その代償として当社は契約金、奨励金等を受け取っているが、目的に対してはこれらは二次的な成果にすぎない。
あなたがCEOに就任してからロッキード・マーティン株価は85%も上昇しており、ダウジョーンズ工業株価平均より3倍も大きな変化を指名している。国防関連が不況に入る中、この結果をどう説明するのか。
当社担当チームの成果だ。当社の売り上げは減少しているが、予想した程度までの悪化ではない。ひと株あたり収益、利益率は増加しており、その主な原因は事業単位の業績内容だ。現在当社が実施中の事業は6,000件になり、好業績で過去最高を更新している。製品群は強力で投資拡大を続けている。当社の経営陣は業績の上下を経験してきたので、不況期をどう乗り切るのか、好調時をさらに利用する方法を熟知している。ひとことでいえば、適正価格を重視し、事業構造を正しく維持することだ。
現在の国防ビジネス下降は周期的なものか、それとも費用面で圧力が強いため構造的にビジネスが低調になっているのか。
今回の下降局面はこれまでと違っている。1980年代末から1990年代初めの不況時にはレーガン軍拡が終了にさしかかっていたが、この国は国防にすでに大規模投資をしていた。そこで「平和の配当」が生まれたが、2008年発生の世界規模での金融システムメルトダウンと言う構造的な問題もまだ存在していなかった。現在はというと、二つの戦役が終了し、需要が後退している。しかし世界規模の緊張は解消しておらず、むしろ拡大している。予算圧力と合わせると環境がこれまでと違っていることになる。
国防高等研究プロジェクト庁(Darpa)長官アラティ・プラバカーArati Prabhakarが大規模兵器システムの調達にかかる時間と費用に失望し、商用技術を国防製品開発に流用していないことも遺憾に感じている。このとおりなら国防体制が危うくならないか。
今の段階で投資を怠ると回復できない格差が生まれる。そこで国家として技術の主導権を維持し、新しい次元の性能に投資していく必要がある。一休みして、そのあとで追いつくのは不可能だ。研究開発への投資を維持する必要がある。これこそ当社の生命線だ。当社の顧客は技術開発や革新的技術の成果を求めて当社にやってくるのであり、そこで停滞は許されない。同じことが国家安全保障にも言えるだろう。
プラバカー長官は投資以外にも言及しており、システムがあまりにも低速で、柔軟性が欠け、システム開発そのものがあまりにも高額になっていると指摘しているが。
長官がみんなと一緒になって工程を改善できる立場だといいのに。Darpaは本当にいい仕事をして、インキュベーター式にハードルの高い問題や時短的に結果を出す課題の解決を助けている。当社のスカンクワークスは別のモデルだ。各社からどうやったらそんなにはやくイノベーションができるのかとよく聞かれる。
ロッキード・マーティンがIRAD(独立型研究開発)に投資を拡大しているというが、総売り上げ比率ではこれまでの標準を下回っているのでは。昨年実績ではわずか1.5%だった。
これまでの標準以下だとは思っていない。IRADだけでなくR&D支出全体を見てもらいたい。各開発案件の初期段階には相当の投資をしており、これが開発費用の相当を占め、縮小しているとは思わない。
IRADを活用して近い将来にビジネスの機会が生まれるのか、あるいは政府に自主的な提案ができるのか
今はまだお話しできない案件に注力しているところ。これは近い将来に当社の事業拡大につながるとみている。長期的には極超音速、指向性エネルギー、自律型ロボット工学、高機能素材としてのナノテクノロジー、3-Dプリント技術や高度加工技術を重視している。それぞれが業界地図を変える可能性がある技術。
米海軍のUclass(無人艦載監視攻撃機)の要求性能を見るとステルス性が軽視されているようだが、このままならロッキード・マーティンは入札を見送るか。
要求性能全般を見て判断する。スカンクワークの設計で大きな成果を上げており、米政府が求める内容にあわせることはできるだろう。すでに事業にとりくんでいるが、精査し当社ができることを決める必要がある。入札への対応にはこまかい手順を確立している。勝算があれば当然入札する。
ロシアからRD-180ロケットの対米販売を停止すると通告があった。もし新型エンジンが数年後に実用化されないとアトラスV打ち上げ機がたちゆかなくなる。そのなかでロッキード・マーティンとしてはUnited Launch Alliance (ULA) 合弁事業にボーイングとともに引き続き参画することに意味はあるのか
アトラスの在庫は2年分あるし、デルタIVもあり、数年先というご質問であればこれが答えだ。その先に打ち上げ事業が維持できなくなるかは誰にもわからない。別のエンジンが実用化される公算があるかと言えば、たぶんある、と言えるが、米政府が新型エンジンに投資をすれば当社も支援したい。

ではデルタIV以降についてロッキードは検討を始めているのか。スペースXが市場をかき回す要因にならないか。価格体系も変化しはじみており、顧客の要望も同様に変化しているのではないか。
スペースXが認可を受ければ、当社としても当然対抗する準備に入る。当社の実績はULA通じ打ち上げ成功83回、当社単体でのアトラスで115回ほどある。将来の競争がどうなるかは絶えず検討している。当社の提示価格は十分に競争力があると思うが、相手方の価格帯がどうなるか見てみたい。その一方で当社の仕事はお値打ちな価格で打ち上げを提供することで、これがULAの仕事にもなる。
前任者のボブ・スティーブンスはサイバーを「開拓分野」“Wild West”だと言っていた。そこで現在のロッキード・マーティンはサイバーで十分な収入を得る目標はどこまでできているのか。
現時点でサイバーは年商10億ドル規模の事業で、今後もサイバー安全保障関連は延ばしていく。これは国内と国外の双方で。各国政府多数をこの分野で支援しているし、民間大企業についても同様。総売り上げ450億ドルの当社としては小規模になるが、サイバー安全保障は多くの事業に関連するものであることが要注意だ。
プーチン大統領のウクライナ対応で東ヨーロッパはロッキード・マーティンにとって魅力あふれる市場になってきたか。
ミサイル防衛他で関心が高まっている。ポーランドでは50億ドルで防空システム構築をしようとしており、当社は期待している。当社の提案はMEADS(中規模防空システムズ)でドイツ、イタリア、ポーランドの関係者と意見交換して、それぞれMEADSへの関心が高く、高性能かつ全方位対応能力で各国ニーズにこたえられることが分かった。またNATOとの共同運用能力があり、NATO標準と指定採用される可能性もある。その他当社製品への引き合いもある。世界いたるとところで当社製品への需要があり、ぜひ当社製品を採用していただきたい。■

マリリン・ヒューソン (60)略歴

アラバマ大で経営管理学修士号
ロッキード・マーティンに1983年上級生産技術職として入社。以後19回の昇進を経て、2013年1月1日より同社トップへ。

2014年7月8日火曜日

日豪が潜水艦建造で協力関係を強化 総理はオーストラリア訪問中


Japan and Australia to Cooperate on New Submarine Design

By: Sam LaGrone
Published: July 7, 2014 11:53 AM
Updated: July 7, 2014 11:54 AM
Japanese Soryu-class class submarine. JSDF Photo
Japanese Soryu-class class submarine. JSDF Photo

日本とオーストラリアは7月8日火曜日にも潜水艦開発の二国間協力に合意する見通しで、日本は中国の台頭を横目に見ながら自国軍事技術の輸出につながると期待する。
  1. 憲法解釈の見直しも受け、日本とオーストラリアは「海洋流体力学研究」で共同合意し、新型潜水艦の建造につながる情報共有を進める。オーストラリア海軍Royal Australian Navy (RAN)はコリンズ級ディーゼル攻撃型潜水艦(SSK)を6隻運用中。かねてからRANは高性能潜水艦でこの六隻を更新しようとしていた。
  2. オーストラリアからはそうりゅう型SSKに関心が寄せられている。そうりゅう型は世界最大級かつ高性能SSKで排水量は4,200トンで非大気依存推進力air-independent propulsion (AIP) を有し、潜水したままこれまでよりも長距離を航行できる。
  3. そこで豪国防相デイビッド・ジョンストン David Johnston が6月に実際にそうりゅう型を視察している。
  4. 防衛協力(防衛装備品・技術の院展に関する合意)が成立すれば三菱重工業はじめとする企業には自社製品を海外半版する道が開ける。
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  1. 合意内容が実施されれば防衛装備・技術の共同事業も可能となり、二国間で技術移転、共同開発が可能になると、安部晋三総理はオーストラリア新聞に寄稿している。
  2. 日豪間の協力が緊密になると西太平洋各国ではこれまでも報道され、論説の中心は中国がこれにどう反応するかだった。
  3. 6月に中国外務省報道官華春瑩Hua Chunying から「中国はアジア太平洋諸国と常に友好的協力関係を第三国の権益を損なわない形で維持しており、共同で地域内の安定と繁栄を維持する所信である」と発表している。.
  4. 在オーストラリア中国大使館はこの発言を繰り返し引用し、オーストリアン紙に中国は貿易と防衛でつながりを強化すると発表してきた。
Royal Australian Navy Collins-class submarine HMAS Sheean (SSG-77) near the Sydney Opera House. RAN Photo
Royal Australian Navy Collins-class submarine HMAS Sheean (SSG-77) near the Sydney Opera House. RAN Photo

  1. 日豪協力により中国が反発するとの専門家意見もある。
  2. 「潜水艦技術で日豪関係が緊密化すると中国が日豪同盟を阻害する動きに出る可能性がある。オーストラリアにとっても30年他って日本がどうなるのかは未知数だ」(オーストラリア国立大教授ヒュー・ホワイトHugh White、戦略研究論)
  3. 今回の協力が実現したのは日本の憲法解釈の変更によるものが大きい。米国により作られた1947年憲法では自国に対する明白な侵略があった場合のみ防衛行動が可能とされてきた。7月1日の閣議決定で決まった新しい解釈では集団的な自衛行動が可能となる。
  4. 7月6日日曜日には安部総理は法制整備を専門に統括する閣僚級ポストの創設を検討していると Jane’s Defence Weekly.が伝えている。「例として、自衛隊法改正により防衛装備を米軍車両が偵察行動にあたる際に使用する、あるいは平時の共同訓練で使用するようにすることがあります」
  5. 「中国政府は日本が中国脅威論を誇大に宣伝することに反対する」と中国外務省報道官 洪磊Hong Lei はAP通信に語っており、7月の閣議決定は「日本が平和的な発展に真剣に取り組む意思があるのか疑念を持たざるを得ない」としていた。■

2014年7月6日日曜日

イラク情勢に注目が必要 イラク軍は反攻しても失地回復は不可能との米国防トップの見方


Dempsey: Iraqi Forces Will ‘Probably Not’ Be Able to Retake Lost Territory Alone

By: Sam LaGrone
Published: July 3, 2014 1:41 PM
Updated: July 3, 2014 3:05 PM
An undated photo of Iraqi Security Forces
An undated photo of Iraqi Security Forces


米統合参謀本部議長からイラク治安維持隊Iraqi Security Forces (ISF)によるバグダッド防衛は可能だが、イラク・シリアイスラム国家が占拠中の各地点の奪還は不可能との見通しが明らかになった。

  1. 「イラク軍が反攻に出て失地を回復できるかどうか。これは大規模な作戦になります」とマーティン・デンプシー大将はペンタゴン内の記者会見で話している。

  1. 「おそらく単独では不可能だろうが、だからといって当方から動的な支援をすぐに提供することにはならない。ただし、これは既定の方針ではありません」

  1. 同議長によればISFはイラク北部で再編成中だが、ISIS部隊の前に後退していた。「ISFは戦力を強化している。バグダッドは防衛できるだろうが、攻勢に回のは困難だろう。物資補給がネックだ」

  1. 物資補給はISISにも課題で、現在占拠中の地区から南進しバグダッド包囲網を形成する狙いがあるとみられる。

  1. 「反乱分子は現在はスンニ派と協力して急速に進軍している」「現在は広い範囲に広がっており、占領地区の統制にかかりきりになっている間、補給線・連絡回廊も伸びきっている」

  1. ただし米国が国内治安回復ならびにイラクへの義務をどう果たすのかはまだ見えてきていない。

  1. デンプシー議長とチャック・ヘイゲル国防長官からは米国の義務はアメリカ国民の生命と財産の保護であり、イラク軍へは助言を与えることとの認識が示されている。
  2. 「約200名の軍事顧問団が現地入りしており、イラクと合同作戦本部をバグダッドで立ち上げている。第二本部はエルビルにおき、すでに初期作戦能力を獲得している」(ヘイゲル長官)

  1. 軍事顧問団は戦闘に参加していないが、今後の関与方針は未定のままだ。

  1. デンプシー議長はISISを地域内安全保障上の懸念事項とし、世界規模にまで脅威が発展する可能性があると指摘する。その場合、合衆国の戦闘介入まで事態がエスカレートする可能性を排除していない。

  1. 「仮に検討結果で介入の価値が認められ、アメリカの安全保障上も有益と分かれば顧問団に今と違う役割を与えることになる。まず長官と協議の上、大統領に選択肢を提示するが、まだそこまでの展開になっていない」(デンプシー議長)

  1. ただし、同議長は軍事行動を実行するためには「信頼に足るイラク政府が発足し、全国民が参画する状況になっていることが前提条件だが、これが成立しないとイラクの将来は暗いものになる」(デンプシー議長)■

日曜日はのんびりと 初の映画批評に挑戦 「ドローンズ」


Drones – Film Review

Posted in News on June 30, 2014 by The Editor, UAS Vision

drones
「ドローンズ」“Drones”はリアルタイムで進行するスリラー映画で、架空の危機的状況に無人機を操作する空軍要員2名が対応する様子を描く。数千マイル彼方の監視ビデオでテロリストを発見することで二人の意見が対立する。
  1. ボタンを押して対象者を抹殺すべきか、民間人の巻き添えには目をつぶるのか。舞台劇として書かれた脚本をテレビ中心に活躍するリック・ローゼンタルが映画化した。ただし作品は二人を中心にした室内を部隊としたアクション映画に仕上がっている。6月27日に一部劇場で公開された後、ネット上で公開される。
  2. スー・ローソン中尉(エロイズ・マムフォード)は飛行課程を終了したが、眼球障害で一時的に地上勤務に付いている。うだるような暑さのネヴァダ州にある基地内のトレーラーでの一日目に一緒に勤務につくのは経験が豊かな部下ボウルズ(マット・オリアリー)で一見退屈な中東の寒村の監視が仕事だ。実はそこが行方をさがしているテロリストの家族が住む場所である。ローソンは一見無害に見える光景からテロリストがこっそりと訪問しようとしていると推測する。
  3. ボウルズは野郎を抹殺したくてうずうずしている。それは二人の上司も同じだ。実行すれば9・11後良いニュースが少ない中で米軍が勝利の瞬間を迎えられる。しかしローソンは訪問者が本当に探しているテロリストなのか疑い始める。もうしそうだとしても本人が米情報機関が言うようなアルカイダの一員なのだろうか。どちらにせよ、もし無人機が攻撃を実施すれば女子供含む民間人十数名が巻き添えで命を失うことになる。
  4. 良心に揺れるローソンは引き金を引きたくて仕方のないボウルズとの間に緊張が高まる。これだけで正味70分の本篇のドラマには十分なのだが、脚本はその他多くの出来事を盛り込み過ぎており、ローソンと攻撃対象のつながりや、米側のふたりの喧嘩まで描かれている。「ボーン」シリーズのような込み入った筋はやり過ぎの観がある。
  5. また主役二人の関係も問題があり、脚本、演技の両方に問題があるのだろう。)上司を演じるフィップ・ハブリーとウィリアム・ラスは通信モニターで声だけの演技をうまくこなしている) ローソンはボウルズが女性で大将を父に持つ彼女をからかうことでキレてしまうが、すぐに「冷酷だが戦略的な意思決定ができない」普通の女性モデルにおちついてしまう。軍人の家庭で育ち自らのキャリアを意識する主人公が自称「高校をぎりぎり卒業出来他ホットショットのパンク野郎」にやすやす苛立たされる必要があるのか。
  6. 映画の前半ではだまされやすい話を前面に出し過ぎで、主人公のその後に良心の呵責にさいなまれる場面を台無しにしている。オリアリーはインディー系の作品“Fat Kid Rules the World” や“Natural Selection” (ナチュラルセレクション)で好演しており今回もはじめに登場してから大きく印象を変える役をうまくこなしている。
  7. 途中で挿入されるネヴァダ砂漠の風景や場所不特定の(アフガニスタン?)の地方風景が衛星経由で閉所恐怖症になりがちな映画の進行が回避される効果を上げている。それにせよ、ローセンタルは息子のノア、編集のミシェル・M・ウィッテンと一緒に適度の緊張を維持しており、コディ・ウェストハイマーの不安を掻き立てる音楽も効果を上げている。■

映画批評はなかなか訳出がむずかしいですね。本作もケーブルTVなどでこっそり放映されるのではないでしょうか。無人機のオペレーションを学ぶ映画ではなさそうですね。


2014年7月5日土曜日

☆ 事故原因の焦点はF135エンジン第三段タービンへ



Investigators Eye Third-Stage Turbine As F-35 Remains Grounded

Jul 4, 2014Amy Butler | AWIN First

F-35Aの火災事故で調査はF135エンジンの第三段タービンに中心を合わせている。
  1. 6月23日の火災事故は現地時間午前9時15分に発生し、それをうけて各基地司令から「安全待機」が出た後で深刻な「飛行停止」措置が国防総省から7月3日に出た。
  2. 契約企業施設内の試験用エンジン含む「全エンジンを運転できない」と米空軍のクリストファー・ボグデン中将が Aviation Week 取材に7月3日に語っている。中将は事故原因、調査内容共にコメントしていない。
  3. F-35各型で共通のエンジンF-135で第三段タービンは低圧タービン部分で二段目に位置している。
  4. 低圧部分で以前も問題が起こり2013年2月から3月にかけ全機飛行停止措置になった。これはテスト用機材AF-2の第三段低圧タービンブレイドで0.6インチの亀裂が見つかったためだった。プラットの関係者からは製造上の不良であり、疲労が原因ではないとの見解が出ていた。
  5. 同年12月には地上テスト用F135が「爆発」している。同エンジンはプラットの社内施設で設計寿命の77%相当を運転したところだった。この原因はファンの亀裂だった。事故当時はエンジンは通常モードで運転中だった。ファンはブレイドをつけたディスク「ブリスク」複数で構成され、機械加工されたもの。第一段のブリスクが中空になっておりいつ亀裂してもおかしくない状況だった。実は機体重量を軽くするため中空にされていたののだが、現在は再び一体成形となり、エンジン重量は6 lb. 増えた。
  6. プラットは爆発事件の前にエンジン設計を見直しており、ブリスクも中空構造を取りやめていた。ボグダン中将によれば開発室も再設計内容を検討し、コンプレッサー部分に限定された問題だと理解し、問題が広がる前に改修したほうが得策とした。「中空構造のブレイドは製造工程が複雑で費用もかかる。その部分のエンジン設計が複雑になっていた。ブレイドにストレスがかかったためとわかり、解析モデルに情報を反映させ設計を変更した」(ボグデン中将)
  7. 2007年、2008年とテストエンジンで問題が連続して発生したことでも設計が変更されている。
  8. 今回の発火事故はA区分事故とされ、深刻なものだ。大西洋横断飛行をしてファーンボロ航空ショー、ロイヤルインタナショナルエアタトゥーでF-35Bが展示されることになっている。空軍、海軍、英国の各耐空証明発行機関は各方面から大西洋温暖飛行の認可が可能か検討中だが、現時点では未定。海兵隊は実現させようと必死だ。
  9. なお、第三段が調査の中心になったことについて開発室およびプラット・アンド・ホイットニーは論評を避けている。
  10. プラットは空軍事故調査委員会と共同で原因の調査中だが、事故調査中のためコメントできないとしている。■


F-35全機飛行停止措置へ ファーンボロ航空ショー展示は微妙



F-35という機体はどこまで想定外の事態を発生させてくれるのでしょうか。本当にこんな機体に西側が防衛手段として期待していいのでしょうか。それとも巨大すぎて倒せない事例として歴史に残り、各国は旧型機を延命化しつつ、第六世代機に期待をつなげばいいのでしょうか。色々考えさせられる週末になりましたね。

Pentagon Grounds F-35 Fleet, U.K. Air Show Planning Continues

Jul 4, 2014Tony Osborne | AWIN First
ペンタゴンは6月23日の発火事件を受け、F-35の各型すべての飛行を停止する決定を正式に発表し、海軍および空軍の耐空証明管理部門を通じ命令が発せられた。
  1. これはエグリン空軍基地(フロリダ州)で発生した空軍のF-35A事故の初期原因調査結果を反映したもの。
  2. これまではF-35を運用する各基地司令官が飛行停止の判断をまかされていたが、今回は国防総省通達が優先され、各軍は全機の飛行を停止せざるを得ない。そうなると海兵隊のF-35B3機と英空軍F-35B1機が大西洋を横断飛行し、ロイヤルインタナショナルエアタトゥー(RAFフェアフォード基地)とファンボロ国際航空ショーで来週国際デビューする予定だったがこれも通達対象となる。
  3. 国防総省は7月3日に声明文が発表しており、報道官ジョン・カービー海軍少将は「事件の根本原因は継続調査中。エンジンの追加点検を命じており、飛行再開は点検結果と技術データ解析結果次第」と伝えている。「今回の決定は国防総省上層部が承認している」と付け加えている。
  4. 同少将は英国で展示予定のF-35隊の準備作業は継続しているが最終決定は来週に持ち越されたとも発表。.
  5. 予定ではユマ海兵隊航空基地から海兵隊仕様の3機をパタクセントリバー海軍航空基地でエグリン基地から飛来する英国仕様の一機と合流させ英国まで飛行させることになっていたが、今回の飛行停止ならびに英国軍用航空当局が現在メリーランド州を通過中のハリケーンを理由に移動を認めていないためフライトプランに影響が出ている。
  6. 各機はフェフォード基地に6月29日に到着予定だったが、日程の先送りが続いている。英国到着が実現していれば英海軍の新型空母HMSクィーン・エリザベスの命名式(7月4日)当日にフライパスさせる目論見もあった。これは実現できなくなった。
  7. 英国遠征には多くの課題が横たわっているが現在も7月11日に迫ったインタナショナルエアタトゥーでの国際デビューが期待されている。■


オリジナル読者からのコメント二点

①P&Wは代替エンジン案が潰れてよかったと感じているはず。自社製エンジンのせいで全体計画が危険になっても責任を追求されない。それどころか政府からの支払いを堂々と受けることができる。しかも二回に渡り。一度はエンジン設計開発で、二回目は改修で。
②JSFはアメリカ製なので英国の友人たちにアメリカ流の言い方を紹介したい。英海軍はF-35Bに「すべてを賭けている"They're betting the farm" のだ。新造空母二隻は英海軍の誇りであり、4,000億ドル以上13年を賭けて開発中でも軍用機として最低限の要求性能となる実戦投入がまだできないJSFを頼らざるを得ない。
 JSFの飛行停止措置はこれまで8回あったが、いずれも技術的な欠陥が原因だが、LM社は全て順調のはずと保障していた。
JSF開発を振り返ると開発の重要日程をたえず順守していないことがわかる。そのため英国へ飛行する予定の4機が今回もし大西洋横断を実施できなくてもおどろくべきほどのことではない。
 おわかりのようにJSFの支持者ではないが、自身では米軍事航空産業のためにもLM者がF-35Bが約束通りの機能を実現して英国海軍が新型空母からの運用を開始できるよう祈るばかりである。なぜなら現時点では他に選択肢がないので。

2014年7月3日木曜日

中国は今後のリムパックにも参加する公算大


China Invited Back for Future RIMPAC Exercises

By: Sam LaGrone
Published: July 2, 2014 12:58 PM
Updated: July 2, 2014 12:58 PM

中国人民解放軍海軍 People’s Liberation Army Navy (PLAN) は今後のリムパック演習にも参加することを許された、と中国の国営報道が7月1日に報道している。
  1. 米第三艦隊司令官ケネス・フロイド中将からPLANのZhao Xiaogang 提督に招待が伝えられたと、人民解放軍報道は伝えている。
  2. 第三艦隊関係者からUSNI Newsに対してこの動きは異例のことではなく、「リムパック参加各国は次回演習への参加を呼び掛けられるのが通例」とのこと。
  3. そもそも今回のリムパック2014には中国が参加したが、招待は国防長官(当時)レオン・パネッタから2012年に受けたもの。
  4. 今回中国は4隻を派遣した。駆逐艦海口 Haikou (171)病院船 Peace Ark、フリゲート岳陽Yueyang (575)、給油艦千島湖Qiandaohu (886)の各艦で人道災害援助訓練と砲術演習に参加している。
  5. 米中間の軍関係の緊張緩和により、PLANが次回リムパック以外の演習にも参加するようになるだろう。
  6. 今回のリムパックでは中国は中国メディアは招へいの事実を米中関係改善の印と受け止めている。
  7. 「中国政府が招へいを拒否する可能性は低く、今後のリムパックでは中国が今回以上の役割を果たすのではないか」とJane’s Navy Internationalは論評している。■

イラクが受領したSu-25はイランから供給されていた可能性が浮上


IISS Report: Iraq's Latest Su-25s Come From Iran

Jul. 2, 2014 - 02:12PM   |  
By AWAD MUSTAFA   |   Comments
KYRGYZSTAN-RUSSIA-DEFENCE
Two Su-25 aircraft are parked in Kant, Kyrgyzstan. (VYACHESLAV OSELEDKO/ / AFP/Getty Images)

イラク空軍が受領したロシア製Su-25フロッグフット近接航空支援用攻撃戦闘機はイランから納品されていたと判明した。
  1. 国際戦略研究所International Institute of Strategic Studies (IISS)のジョセフ・デンプシーJoseph Dempseyが公開情報から今回搬入された機体の登録番号がイラン革命防衛隊が運用していた機体と同一であるとの証拠を入手。さらにデンプシーによるとイラク国防省発表のビデオ映像では機体に主翼取付式燃料タンクがついている。ロシア製の機体は一度分解されてからイランに輸送されている。
  2. 「これまでロシアから供給されたSu-25に加えて追加機を7月1日に受領したとイラク国防省が発表している。最新のSu-25の供給元については公式発表がないが、IISSアナリストは隣国イランから輸送されたと結論付けた」(デンプシー)
  3. デンプシーによればイランは最近になりISIL(イラク・レバントのイスラム国家)の反乱分子との戦闘への支援を約束しているという。
  4. イランがどこまでの支援を提供し、イラク政府がどこまで受け入れるかは公になっていないが、今回の機体搬入はイランによる直接軍事援助の第一陣の可能性がある。
  5. デンプシーによればイランのSu-25には6ケタの連続番号がついており、最後の二けた番号が機首に書かれているという。番号全部は見えないながら、ビデオで確認できた三機には51,56,58と二けた番号が確認できた。
  6. さらに三機の迷彩塗装はイラン運用の機体に使われているものと同一で、他国では使われていない模様だという。
  7. 「もともとの使用国が分からなくなるようにしており、肝心の箇所には上塗りをしている」(デンプシーによる分析) 「また今回の三機の機体状況は外観上は良好のようだ。ロシアから供給された機体は反対に保管所から引き出されたものだ」
  8. 各機はイランパイロットが操縦してイラクへ引き渡された模様だが、逆に今の時点でどこの部門が運用を担当しているのか不明だという。
  9. イラクでのSu-25機数が増えているが、イラクが外部援助なく各機を十分に運用できるとは思えない
  10. 昨年12月に米軍事関係者高官からディフェンスニューズへイランがジェット戦闘機一個飛行隊を対立の種となっているアブムサ島から撤退させているとの情報が入っていた。同高官によればSu-25が10機引き上げられ、本土に戻ったとのことであった。.
  11. なお、イランの革命防衛隊の飛行部門ではSu-25は主力戦力の扱いだと近東政策研究所(ワシントンDC)は説明している。■

コメント イランが地域安全保障を考えてイラク国家崩壊を防ぐためいよいよ直接の軍事支援を介していることがこれであきらかになりました。米国とイランも共通利害により今回は協調路線のようですので、以前の投稿に会ったようにイラクに時間を稼ぎ、その間に挙国一致体制を作らせ、なんとかイスラム過激国家の誕生だけは防ぎたい、というのが思惑なのでしょうか。原油供給もからみ日本としても当面イラク情勢に注意が必要ですね

2014年7月2日水曜日

韓国の空中給油機選定にボーイング、エアバス、イスラエルが参入


Airbus, Boeing and Israeli Firm Bid for South Korea Air Tanker Deal

Jul. 1, 2014 - 02:58PM   |  
By AGENCE FRANCE-PRESSE   |   Comments

韓国はエアバス、ボーイング、イスラエル航空宇宙工業(IAI)各社の空中給油機提案を検討中と本日発表した。調達規模は13.8億ドルと見られる。
韓国国防調達庁Defense Acquisition Program Administration (DAPA)が三社の入札を受理し、11月末までに一社に絞り込む。
エアバスからはA330原型の多用途タンカー輸送機(MRTT)、ボーイングからはKC-46、IAIはB767-300ER改装案が出ている。
調達機数は発表されていないが、業界筋によれば4機という。
エアバスMRTTはオーストラリア、英国、アラブ首長国連邦で就航中で、シンガポールが3月に14億ドル相当の発注をしている。
一方、ボーイングはエアバス選定を覆して2011年に300億ドル相当の受注に成功している。KC-46の引き渡し開始は2017年予想。
韓国空軍の装備品調達では同盟関係を反映し、米国製が圧倒的に優位になっている。■

開幕前 今年のファーンボロ航空ショーの見どころ(軍事)---活気を取り戻すアメリカ、精細を欠くロシア


U.S. Returns To Farnborough Air Show, Russia Retreats

The F-35 is in, but Sukhoi is sitting out appearance at Farnborough gathering
Jun 30, 2014Jen DiMascio, Amy Butler and Maxim Pyadushkin | Aviation Week & Space Technology

ファーンボロ航空ショーに国際政治・安全保障j情勢が影を差している。米国およびその同盟各国はアフガニスタンからの兵力撤退を反映して活気を取り戻しているが、ウクライナ問題による新たな制裁措置を受けているロシアは今回は軍用機の出展を断念する。
  1. 7月4日には空母クィーン・エリザベスがスコットランドで進水し、直後にF-35共用打撃戦闘機が国際デビューするのがロイヤルインターナショナルエアタトゥー(RIAT)(会場イングランドのフェアフォード空軍基地)で、その後ファーンボロで公開される。
  2. ユーロファイター・タイフーンを英国が海外販売目指す中、F-35は目立たない形に追いやられていたのが2012年。ロシアのスホイSu-35が昨年のパリ航空ショーでは注目を集めた。今度はJSFが脚光を集める番で、F-35B短距離陸垂直着陸型がRIAT会場に垂直着陸する予定だ。また会場には各国の空軍トップ31名が集まり同機を見守る。F-35の展示飛行は5回で短距離陸、高速・低速上空通過、ホバリングを実演するが垂直着陸はしない。
  3. 計10か国がF-35導入予定だが、うち数か国はまだ躊躇中。カナダ政府はこの二年間で検討した結果、同機調達を履行する見込み。シンガポールはF-16後継機としてF-35を有望視している。ベルギーはJSF計画室含む5か国に情報開示請求をしている。ただし出展がそのまま商談成立につながるとみる金融投資アナリストは少数派だ。
  4. JSF以外に出展される戦闘機にはサーブ・グリペンNG、ユーロファイター・タイフーン、ダッソー・ラファール、ボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットがある。このうちスーパーホーネットでは米議会が生産ラインを2015年まで温存させようとしているが、投資アナリストには確実な海外受注がないと無理とみている。.
  5. JSF以外に米国からの軍関係者出席が期待される。2年前の前回では国防支出の縮小を受けて米軍関係者は海外出張が許されず、進行中の戦闘に集中するよう求められていた。出席する米側大物関係者には空軍長官デボラ・リー・ジェイムズ、国防総省の調達責任者フランク・ケンドール、海軍の調達責任者ショーン・スタックリーがあり、RIATの世界空軍首脳会議には空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が出席する。
  6. 予算環境は米国、欧州それぞれ依然として厳しく、メーカー各社は好調な海外営業に力を入れる。エアバスはA400M輸送機の拡販に注力しており、同機は昨年のパリ航空ショーで展示飛行している。
  7. テキストロンは自社開発スコーピオン軽量攻撃・情報収集監視偵察機をRIATとファーンボロ両方で展示する。同機は昨年12月に初飛行しており、テスト41回累計77時間飛行している。
  8. ヨーロッパでは空中給油機が不足しており、現在は合計10機種42機が就役しているが、エアバス、ボーイング両社が商機をうかがう。航空ショーをきっかけに近い将来の受注を狙うが、当面は米空軍向け18機のKC-46A引き渡しを2017年に実現させることがボーイングの狙いだ。
  9. 米空軍向け練習機350機の調達予定にくわえ、世界各国の需要を期待する各社にとってファーンボロは商談の機会になる。アレニアのM-346マスターはファーンボロで飛行を実施するが、韓国航空宇宙工業のT-50など他の機種は未定だ。
  10. 英国のトラニス無人戦闘航空機(UCAV)のテスト飛行が実施中だが、英仏間でUCAV共同開発の進展がショー会期中に覚書調印で実現することが期待される。両国ではBAEシステムズとダッソーで共同事業を検討中だ。
  11. ウクライナ情勢を背景にロシア周辺国で国防支出増の動きがある。チェコ共和国、ラトヴィア、リトアニア、ポーランド、スウェーデン、トルコ、ルーマニアである。
  12. 一方ウクライナ問題を受けロシアが制裁対象となる中で、ロシア製軍用機は出展されない見込みだ。Su-35戦闘機、カモフKa-52攻撃ヘリが飛行展示で注目を集めた昨年のパリショーとは様変わりだ。
  13. ロシアンヘリコプターズ社Russian Helicopters(各社合併で誕生した回転翼機メーカー)によれば縮尺モデルだけは展示するという。同社はロステック Rostec (国営企業で国防、航空宇宙分野を統制)の傘下にあり、CEOのセルゲイ・チェメツォフSergey Chemezov はウクライナ関連で米国の制裁対象人物のひとり。ただし米財務省は今年4月段階ではロステック自体は制裁の対象に入れておらず、ファーンボロではロステックおよび関連企業がロシアパビリオンの中心に入る。
  14. ロステック傘下のユナイテッドエンジンズコーポレーションUnited Engines Corp. (UEC) はAI-222-25ターボジェットエンジン(ヤコブレフYak-130ジェット練習機に搭載)を展示する。同エンジンはロシアのMMPPサリュートとウクライナのモトール・シーチ Motor Sich の共同開発だが、UECはウクライナ抜きで生産しようとしている。UECからは117Sエンジン(Su-35用)、SaM146(SSJ 100用)、開発中のPD-14(MS-21ナロウボディ旅客機用)の縮尺モデルも展示される。■