2018年5月14日月曜日

F-22、F-35が発進回収可能な無人機運用の母機となり空中空母となる日が来る

現時点のUASは遠隔操縦機であり、自律操縦機ではないため、言葉の使い分けが要注意です。空軍ではパイロットが最上位の文化のため戦闘機については無人化は当面実現しないのでは。B-36を空中空母にして護衛戦闘機を運用する構想は1950年代にありましたが、回収技術がどうしても確立できずスクラップになっています。今回の技術が本当に実現すれば60年以上たって空中空母が生まれそうですね。



F-22s & F-35s Will Launch Recoverable Gremlins Attack Drones F-22とF-35からグレムリン攻撃無人機の発進回収が可能となる

DARPAのグレムリン事業ではC-130からグレムリン4機を発進回収する
By Kris Osborn - Warrior Maven
空軍のF-22とF-35で回収可能の攻撃型無人機をコックピットから操作操縦することが可能となり、敵防空網突破や長距離ISRの他、兵装運用も可能となる。
急速に進歩する技術によりDARPAのグレムリン事業で自律航法が現実のものになりそうで、とりあえず来年に飛行中のC-130から無人機を四機発進させ、回収も行う。
あと数年で回収可能無人機が実用化されるとミッションの選択肢が広がり、長距離運用、改良型センサーペイロード、高性能兵装を搭載したうえ空中指揮統制が可能となる。
「第五世代機のF-35やF-22での脅威対処を目指し、高リスク空域でグレムリンを運用する道を模索する」とDARPAは声明を発表。
ここ数年にわたり消耗品扱いの無人機では空中発進させる技術、地上操縦指示が不要な無人機が実用化されている。これに対してグレムリンでは母機が発進回収できる点が違う。
事業はフェイズ3に進んでおり、DARPA資料ではDynetics社と新規実証開発で合意ができており、同社がC-130から空中発進・回収を行う。
「DARPAは無人航空機複数の空中発進・回収の実証に向けて進んでおり、2019年が一つの目標だ。第三フェイズは最終段階で目標は低コストで再使用可能UASつまり『グレムリン』の空中回収の実証」とDARPAは発表している。
技術のカギは高度の自律航法でこれにより広範囲のミッションに可能性が出る。そのひとつに長距離攻撃能力があり、空中発射式無人機は目標地点にそれだけ近く移動距離を短縮できる。空中発射式の回収可能無人機に高性能センサーペイロードを搭載しISRや攻撃ミッションにあたらせればもっと意味が出てくる。
ユマ実証実験場でのフライトテストでは母機からの分離と回収を安全に出来ることが確認されている。
「これまでのフライトテストでグレムリン4機を30分間で回収する目標は十分達成可能と判明している」とDARPA戦術技術室の主幹スコット・ウィアズバノウスキが文書で回答してきた。
グレムリン一機には150ポンドまで各種センサーを搭載できるとDARPA文書に説明がある。
この技術が成熟化すれば技術陣は次の課題も増えるとDynetics技術陣がWarrior Mavenに語っている。飛行中のC-130に無人機を安全に回収するのは前例がない高度技術的課題だ。
「この問題のカギはソフトウェアの冗長性で機材をC-130のそばまで持ってきてから操縦を安定化させることなんです」とDyneticsでグレムリンの技術副主任のティム・キーターが取材で語っている。安定してから無人機はC-130貨物庫に安全に格納されるのだという。
「このため精密航法が不可欠で機体も十分な強度が必要です」(キーター)
今後実施される無人機の空中回収実証の準備としてDyneticsは模擬母機から安全に空中分離を行っている。
無人機の自律運用技術で進歩がもうひとつある。人員1名で無人機複数を制御し指揮統制する機能の実現だ。空軍参謀本部の主任科学者をつとめたグレゴリー・ザカリアスが取材に答えてくれた。
現時点では人員複数で無人機一機を制御しているが、アルゴリズムの改良で無人機運用に必要な人員数は大幅に減る。ザカリアスによれば将来は一人で無人機10機ないし100機を制御できるようになるという。
改良アルゴリズムによりプレデターやリーパーが戦闘機のあとを追い、地上要員による飛行経路制御なしで自律飛行できるようになる。
地上の自動装備のアルゴリズムでは予期できない動きやその他移動物体への対応が必要だが、空中からの飛行制御ならはるかに簡単で実現の可能性も高い。
地上と比べれば空中の障害物ははるかに少ないので無人機のプログラミングは単純で「ウェイポイント」と呼ぶ事前設定地点へ移動させれてばよい。
米陸軍は無人有人両用技術をヘリコプター用に進歩させており、アパッチ、カイオワ双方で乗員がコックピットからUASの飛行経路を制御できる。陸軍によれば同技術はアフガニスタンですでに成果を上げている。
空軍上層部は次世代爆撃機となるB-21レイダーは有人無人ともに運用可能となると発言している。
2013年9月に空軍はボーイングと無人F-16を初の超音速飛行に成功し、基地に帰還させている。
無人機技術の進展は確かに早いが、科学技術陣や兵装開発関係者の多くの見方はパイロットは依然として必要とし、想定外の事態が発生した際のヒトの頭脳の対応速度がその理由だ。
UASでは地上制御要員の指示に反応するまで通常ずれが二秒あり、戦闘機では有人機パイロットが必要と言うのが空軍関係者の主張だ。

したがって輸送機や爆撃機のように高度の機体操縦性が必要ない機材が自律飛行実現で先行し、戦闘機は依然として有人操縦の効果が大きいというのが空軍の説明だ。■
ご参考 Dynetics社によるコンセプトビデオ

2018年5月13日日曜日

アラスカ付近までベア編隊を飛ばすロシアの狙い

US F-22s intercept Russian strategic bombers flying in international airspace near Alaska アラスカ近くの国際空域を飛行中のロシア戦略爆撃機を米軍F-22が迎撃


Bill Gertz,

f22F-22 Raptors fly in formation over New York, August 21, 2012.US Air Force
  • ロシアTu-95「ベア」爆撃機二機がアラスカに接近しF-22が迎撃した
  • 核攻撃能力を有する同爆撃機は米加領空には侵入していないと軍当局が発表
  • 米国を狙ったロシアの恫喝の一部とみる専門家もいる



シア戦略爆撃機二機がアラスカの防空識別圏に侵入したため米F-22編隊がこれを迎撃した。5月11日金曜日のことで米北方軍司令部が発表した。
Tu-95ベア爆撃機二機はべーリング海上空に設定の防空識別圏に金曜日早朝に侵入してきたと北方軍および米加共同北米防空司令部(NORAD)広報官スコット・ミラー海軍大佐が発表。
「東部標準時10 a.m.ごろアラスカ配備のNORAD所属F-22戦闘機二機がロシアTu-95ベア長距離爆撃機機二機を目視で確認した。ロシア機は房区識別圏内でアラスカ西海岸沖合からアリューシャン列島北部を飛行していた」と大佐はワシントン・フリー・ビーコンに伝えてきた。
ロシア機は米加いずれの領空も侵犯していないと大佐は付け加えている。
また今回の迎撃で異常な動きは見られるz、F-22隊と爆撃機編隊で交信も発生していないという。
核運用可能な爆撃機は国際空域を飛行し「国際規範に従って飛行した」という。
「NORADは今後も空の上の動きを注視していく」(ミラー大佐)
ただし大佐はロシア爆撃機のミッションに関してこれ以上の詳細には触れていない。今回はロシアが米国を狙って行う力の誇示の最新事案となった。
「プーチンのロシアは核の恫喝を行い、爆撃機に無駄に燃料を消費させ、その他空中給油や整備作業を行わせてまで長距離飛行させこの一環としているのです」とペンタゴンで戦略兵器分野の専門家だったマーク・シュナイダーが解説する。「核兵器で脅しをかけるのロシアの得意分野です」
Tupolev_Tu 95 russian bear bomberA Tu-95 Bear bomber.Wikimedia Commons
一年以上前になるがやはりベア爆撃機二機がアラスカのADIZ内を飛行しており、この際はSu-35フランカー戦闘機編隊も随行していた。
アラスカにはペンタゴンも戦略ミサイル防衛拠点をフォート・グリーリーに置いている。
フォート・グリーリーには地上配備迎撃(GBI)ミサイル44発が配備されICBMに対応する。その他カリフォーニア州ヴァンデンバーグ空軍基地にも同じ装備が展開している。
ウラジミール・プーチン大統領の反米姿勢で米ミサイル防衛をやり玉に挙げているのは、ロシア軍ミサイルへの対抗手段と受け止めているからだ。
ペンタゴンの説明では米ミサイル防衛体制の対象はロシアではなく、北朝鮮のICBMや今後登場するイランの長距離ミサイルだ。
ベア爆撃機にはKH-55空中発射式巡航ミサイルや最新かつ最強のKH-101・102(通常弾頭・核弾頭)が搭載される。
2012年6月にロシアは大規模戦略核部隊の演習でアラスカの米ミサイル迎撃基地への模擬攻撃をしている。
前出のシュナイダーは近年のロシア爆撃機には戦闘機の護衛がつくときとつかないときがあると述べている。「それはともかく、プーチンが2007年から始めている『戦闘哨戒飛行』は訓練ではなく核の恫喝が目的でしょう」
「KH-55、KH-101,KH-102といった巡航ミサイルは射程距離数千キロで、何もわざわざ迎撃を受ける地点まで接近させる必要はないはずです」

ロシア軍がADIZ内飛行に踏み切るのは接近しなければ『恫喝効果』が生まれないからでしょう」(シュナイダー)■

2018年5月11日金曜日

USSジョージ・ワシントンが横須賀に戻ってくる

あれあれ、いつの間にMQ-25はボーイング案が採択されたのでしょうか。これは記事のフライングですね。ボーイング案が最有力なのでしょうか。とまれ、日本にもなじみの深いGWがまた横須賀に(まだ先ですが)戻ってくるわけですか。中国をにらんで艦載機の運用能力を引き上げるスティングレイをまっさきに同艦に導入すれば相当の力の入れ方ですね。


USS George Washington may return to Japan with ability to host first carrier-based combat drones 

USSジョージ・ワシントンが初の空母運用無人機運用能力を付与され日本へ復帰する



USSジョージ・ワシントン乗員が飛行甲板に整列しヴァージニア州ノーフォークの新母港に到着した。 Dec. 17, 2016.
BRYAN MAI/U.S. NAVY


By CAITLIN DOORNBOS | STARS AND STRIPESPublished: May 9, 2018

YOKOSUKA NAVAL BASE, Japan — USSジョージ・ワシントンが新型無人機運用改修を受けたのち唯一の前方配備空母に復帰する可能性が2019会計年度国家防衛予算認可法案に盛り込まれている。

同艦は7年にわたり横須賀を母港としたが2015年にUSSロナルド・レーガンと交代し現在はヴァージニア州で工期4か年の大修理を昨年から工事中だ。

下院軍事員会委員長による同法案の要約では海軍にMQ-25Aスティングレイ戦闘無人機をジョージ・ワシントンで運用可能とするよう求め、「唯一の前方配備空母に初の空母配備無人戦闘航空機の搭載を確実にする」ことを述べている。同法案では同時に「海軍には(USSジョージ・ワシントンの)核燃料交換・大修理で今後導入されるMQ-25無人機の空母運用を可能とするべく予算を確保すること」を求めている。

議員筋もジョージ・ワシントンが「(核燃料交換・大修理後)日本へ復帰し、現在の前方配備艦USSロナルド・レーガンが米本土へ回航される」ことを認めていると米海軍協会が先週報じていた。

海軍報道官はStars and Stripes に対してこのような案はまだ正式決定ではないと述べている。「米海軍の長期計画部門では常時幹線、機材、装備の有効活用状況を把握している」とメアリケイト・ウォルシュ大尉(国防総省海軍情報室)が述べている。「海軍は即応体制の状況を見ながら最強の戦力の実現を目指している。各空母の母港割り当ては適当な時期に発表します」

ボーイング設計案のMQ-25は空中給油能力を提供しF/A-18スーパーホーネット、EA-18Gグラウラー、F-35Cの各機の飛行距離を延ばすのがねらいだ。

米海軍の2019年度予算要求ではMQ-25スティングレイの開発に719百万ドルを求めており、2023年にまず4機調達し、2026年の初期作戦能力実現を目指す。

現時点でロナルド・レーガンは横須賀を母港としており、2018年は予定通り日本から運航される。■

Flickr - Official U.S. Navy Imagery - USS George Washington is underway in the U.S. 7th Fleet area of responsibility.

By Official Navy Page from United States of America MCSN Declan Barnes/U.S. Navy [Public domain], via Wikimedia Commons

2018年5月9日水曜日

中国初の国内建造空母はなぜ海上公試が遅れているのか

なんでわざわざ一号艦と同じ艦容のスキージャンプ空母を作ったのかが解せませんが、中国としては技術を自分のものにするためにも国産にこだわり建造では中身がわかっている一号艦を参考にしたのでしょう。空母は今後建造されてもカタパルト技術が実用化しない限りスキージャンプでは機体搭載ペイロードも限られ、かつ機材のソーティー密度も低いため二級の戦力でしょう。ただし中国の狙いが全世界への艦隊派遣ではなく自国海域の死守であれば米空母打撃群へのけん制装備であれば以外に安上がりな存在なのかも知れません。

Sea trial of China’s new carrier ‘may not be smooth sailing’ 中国の新造空母の海上公試は「順調にはいかないかも」

A Z-18 transport helicopter is seen landing on the Chinese aircraft carrier in this photo taken on May 5, 2018. Photo: Global Times
Z-18輸送ヘリコプターが中国空母に茶kン関する様子が目撃された。 May 5, 2018. Photo: Global Times
By ASIA TIMES STAFF MAY 8, 2018 5:07 PM (UTC+8)
送ヘリ一機が中国初の国産空母から離発艦する様子が先週末目撃されており、艦名がまだついていない同艦は大連造船所に投錨したままで海上公試が近づくとの観測を打ち消している。
3f16fea2-cc74-43bc-9e61-73d333d9e306
214471e0-6dd5-47a6-a685-2676d17e57db
Z-18ヘリコプターが空母艦上で目撃された Photos: Global Times, Weibo
環球時報含む中国国営メディアが昌河Changhe Z-18ヘリコプター(原型はフランス製SA321シュペルフルロン)が離発艦を先週土曜日に繰り返したと伝えている。同様の離発艦訓練が日曜日、月曜日にも繰り返されたとの報道がある。
訓練中のヘリコプター画像が中国ソーシャルメディアにその後拡散している。
空母艦上とヘリコプター機内の誘導システムは良好に作動して陸上からの人員貨物の搬送は良好に行われたと環球時報が短く報じている。
同紙では北京在住軍事専門家 Li Jieの言として新型Z-18は今後実施となる海上公試で緊急事態が発生した場合にも投入されるとある。
Z-18のペイロードは4トンで27名搭乗可能。  
一方で遼寧省海洋当局は渤海海峡から黄海北部にかけて侵入禁止区域を設定しており、今週金曜日まで有効とある。
a31eb107816997bf6b0535b63168636e_w
中国のツイッター、ウェイボで拡散した同艦の艦橋、甲板の照明点灯の風景  Photo: Weibo
大連の現地報道では造船所を見下ろす丘の上に軍事愛好家や海外報道陣が詰めかけ中国初の空母が初海上公試に向かう光景をとらえようとしているとあるが、公試は二週間以上も先送りされたままだ。
ただしLiは注意喚起しており、当初の海上公試では「問題が生じる可能性がる。空母一隻には7億8億の部品を使っているため」という。
同艦が初の海上公試から戻り事後点検や整備に入るのか、また次回以降の公試まで時間がどれくらいかかるかが海外専門家が見守る同艦の作戦能力や建造の品質を図る目安となる。
航行禁止区域に指定された渤海から黄海にかけての海域は広くPLAが用意周到な準備をしていることがわかる。
火曜日午後に習近平主席が党の中央軍事委員会トップとして大連市入りしたとの噂が流れており、水曜日ないし木曜日に空母の海上公試を視察するのではとの観測が香港のサウスチャイナモーニングポスト紙に出ている。習主席が大連を訪問しているかについては公式発表は一切ない。
中国国内のニュースポータルSinaでは同艦が4月23日に艦の傾斜テストを行ったとあり、クレーンや機関車多数が飛行甲板の各所に姿を現したと報じている。
その他の画像では艦が薄く黒煙をあげており、推進系統のテストをしたらしい。
EETj-fzyqqiq1644891
エンジン始動で薄い煙が出ている  Photo: Handout
ec3l-fzyqqiq1644860
ロシア空母アドミラル・クズネツォフが濃い煙に包まれている Photo: Handout

ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフで見られる光景と対照的だ。PLAの遼寧と今回の新造空母はロシア艦と同じ級であり、エンジンが旧式のため始動すると汚い煙幕に包まれることがあり、軍事ファンの冷笑を買っている。専門家には中国技術陣はロシア譲りの蒸気ボイラーに手を加えたとみるむきもある。
Sina報道では別に国産二号艦が上海で建造中だが推進方式はガスタービンエンジンになり、三号艦は原子力推進となると述べている。

現在建造中の空母はPLA海軍が信頼性に十分満足できてから引き渡しとなると見られ、公試は今年いっぱい続くとの見方が強い。■

2018年5月8日火曜日

今度はタイフーン戦闘機ほぼ全機が稼働できない状態。大丈夫か、ドイツの国防体制


ヨーロッパで経済がうまく行っている最右翼のドイツがこの状態ではNATOも機能しませんね。国防費のGNP比引き上げを執拗に迫るトランプ政権にたいしてドイツの新たな連立政権は自壊してしまうかもしれません。ここでも左翼が足を引っ張るということでしょうか。日本も他山の石とすべきでしょう。

Germany has a 'massive problem' that has reportedly knocked almost all of its Eurofighter Typhoon fighter jets out of commission ドイツの「大規模問題」でユーロファイター・タイフーン戦闘機ほぼ全機が供用不能状態に

May. 4, 2018, 6:23 PM
German Air Force Eurofighter Typhoon takes-off during the air policing scramble in Amari air base, Estonia, March 2, 2017. REUTERS/Ints Kalninsエストニア・アマリ基地を離陸するドイツのユーロファイター・タイフーン March 2, 2017.Thomson Reuters
  • ドイツ軍のユーロファイター・タイフーンの大部分が戦闘投入不可能の状態と伝えられる
  • ドイツ軍装備が稼働できなくなる事例はこの他にも発生している
  • ドイツ国防軍にはこの問題が付きまとっており、同国政府では国防予算増額で問題解決すべきかの議論が巻き起こっている



ドイツ空軍が解決を迫られる「大規模問題」のため128機あるユーロファイター・タイフーン戦闘機のうち戦闘投入可能なのは4機しかないとドイツのスピーゲルが5月2日に伝えている。
ドイツ技術陣は同機搭載のDASS防衛システム(防御用の警告装備)で冷却液が主翼端ポッドから漏れているのが見つかったことを危惧している。ポッドにはセンサーが内蔵されており、このの問題は半年前にはじめて見つかっていた。
問題の核心は特定部品「グリースニップル」で冷却機能そのものを司るものだ。技術陣は不良ポッドを交換したとスピーゲルが伝えているが、同部分のメーカーはオーナーが変わり、再認証が必要なため供給が間に合わないのだという。
この装備がないと同機はミッション実施が不可能だ。記事によればタイフーンでミッション出撃可能なのは10機しかないという。
ドイツ空軍のユーロファイター稼働率問題に輪をかけているのが空戦ミサイルの不足だ。このため空対空戦に投入可能なのは4機しかないとスピーゲルは報道している。
German air force Eurofighter Typhoonドイツ空軍所属ユーロファイター・タイフーンがアラスカのエイルソン空軍基地をタキシーしている。June 11, 2012.Tech Sgt. Michael Holzworth
この記事がドイツ国内の論争に火をつけた。
国防相報道官ホルガー・ニューマン大佐は自衛装備用の部品問題はあるものの空軍は要求に応じた行動は可能と述べるとともに部品問題は早期解決できるとしている。
「あと数週間数か月でこの問題は制御可能となるよう希望している」と大佐は述べながらユーロファイターで何機が稼働状態にあるのか言及を拒んだ。国防省からは供給問題で戦闘機の稼働状況に悪影響が生まれるとだけ発言があり、それ以上の説明はない。
この問題に詳しい筋によればルフトヴァッフェで稼働状態にあるユーロファイターは10機しかないとの記事を否定しつつ、各地で供用中の機体が少なくとも14機あると説明。
Germany German troops soldiers Bundeswehrドイツ陸軍部隊が空軍のエアバスA400M機にヤーゲル空軍基地で搭乗中。December 10, 2015.REUTERS/Fabian Bimmer
同機の即応状態についてのドイツ政府説明も誤解を招くものとスピーゲルにある。
ルフトヴァッフェはユーロファイター全機を飛行可能と判定しており、自衛装備が機能しない機体もここに含めていると記事は指摘。
各機は訓練用途には投入可能だがNATO作戦へは投入不可能だ。東ヨーロッパ上空の警備活動が最近展開されている。
ドイツは自国装備のユーロファイター82機をNATOの高度即応部隊(HRF)ならびに低速応部隊(FLR)に登録している。
各部隊はNATO指揮下に入る部隊でこのうちHRFの戦闘機は戦闘開始日から90日間稼働可能となる。FLRは91日から180日にかけ稼働する概念だ。
だがスピーゲルによれば現時点で作戦要請がないためドイツは現状でもNATOの求める義務を果たしていると言い訳できるとある。
「現時点ではミッションがないため装備の大部分が即応態勢にあると言える」と内部筋がスピーゲルに語っている。
装備品の不足とハードウェア問題
ドイツ軍の即応体制をめぐる問題はユーロファイターだけではない。別の機種でも問題が発生している
German air force Tornado fighter jet Ursula von der Leyenドイツ国防相ウルスラ・フォン・デアレイエンがトーネード戦闘機の前に立った。ドイツ-デンマーク国境近くのヤーゲル空軍基地を2016年8月17日に訪問した。REUTERS/Fabian Bimmer
スピーゲルが目にした報告書ではトーネード戦闘機がNATO作戦に加わることができないとあり、NATO制式敵味方識別装置の不足のためだという。
その他ドイツ空軍へ16機納入されたA400M輸送機のうち稼働可能機材な2月時点で5機しかなかった。海軍では6隻の潜水艦のうち戦闘可能な艦は一隻もなかった。フリゲート艦15隻で完全に戦闘可能なのは9隻のみだ。陸軍では戦車244両のうち稼働可能は95両しかない。
原因にドイツの国防予算が冷戦終結後に一貫して削減されてきたことがある。
ドイツ政府は2011年に非対称戦対応に本腰を入れるため部隊を削減した。以後ドイツ軍は規模縮小し、将校21千名分が欠員のままでこれも即応態勢に影を落としている。ロシアのウクライナ介入で通常戦に関心が集まり、この傾向に歯止めがかかったがそれでも廃棄した装備品の再補充が完了していない。

「ドイツは孤立する」

Germany German army soldiers troops Bundeswehr Angela Merkelドイツ軍隊員を訪問したアンヘラ・メルケル首相December 7, 2015.REUTERS/Fabian Bimmer

ドイツ国防予算は新たに誕生したアンヘラ・メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の保守連立政権で真っ先に論争の種となった。
CDUの連立相手社会民主党(SDP)出身の蔵相オラフ・ショルツが提出した2018年度の国防予算では国防省要求の半額しか予算計上しておらず、かわりに国内対策や負債追加防止策に予算を増やしている。
これに対し国防相ウルスラ・フォン・デアレイエンおよび開発相ゲール・ミューラーは書面で予算案に抗議している。フォン・デレイエン国防相はこれまでの海外展開に主眼を置く姿勢からドイツ軍の中心を国内海外の治安安全保障に移したいとの意向だ。
予算めぐる意見の衝突はCDUとSDP間の国防戦略観の違いを反映している。

「ドイツは国内問題に気をとられ孤立しつつある。SPD内の左翼がこの動きの原因だ」とドイツ外交協議会のアナリスト、クリスチャン・モーリングでDefense Newsにこう語ってくれた。■

2018年5月7日月曜日

動き始めたB-52エンジン換装

エンジン換装とは簡単にいかないのか、完全に新エンジンに変わるのがこれから16年後というのはいかにも長期間にわたる事業ですね。それだけ統合が大変なのか、いったん主翼に手を付けるとあちこち機体をいじることになるのか。とはいえエンジン換装したB-52がさらに供用期間を延ばすことになれば大きな見ものですね。

Aerospace Daily & Defense Report

USAF Nuke Chief Not Expecting Easy B-52 Engine Upgrade B-52エンジン換装作業を楽観視していないUSAF核戦力部門長

May 1, 2018James Drew | Aerospace Daily & Defense Report

米空軍ジャック・ワインステイン中将によればB-52Hのエンジン換装に「慎重ながら楽観視」しているという。: U.S. Air Force

空軍がボーイングB-52Hのエンジン換装に向かう中、空軍上層部はこれが簡単な作業ではないことを十分認識している。
ボーイングから1960年、61年に納入されたストラトフォートレスはほぼ60年間にわたり核戦略爆撃機の中心の座についてきた。エンジンカウリングで亀裂が見つかり主翼内の配線をし直す作業で驚くような現象が多々見つかるはずだ。
「古屋を大改修すると壁の後ろにアスペストが見つかることがよくあるでしょう」と語るのはジャック・ワインステイン中将 Lt. Gen. Jack Weinstein(戦略抑止力・核兵器担当空軍参謀次長)だ。「エンジン換装が簡単に進むと断言するつもりはありません。換装方法の選定や最良の方法の模索など仕事は多いです」
ここ数年間にわたり空軍はエンジンメーカー各社と連絡しB-52Hが搭載するプラットアンドホイットニーTF33-103八基換装の可能性を探ってきた。一時はエンジン四発案を検討したが非現実的と判明した。
そこでTF33-103を同じ八発の新型で信頼性が高く燃料消費が優れたビジネスジェット用エンジンを民生部門から調達する。この案は技術的には可能だが機体と兵装は再認証が必要となる。
これは理論上は有望だがエンジン換装は言うは易く行うは難しだ。空軍でこれまで最大規模のエンジン換装はKC-135Rストラトタンカー(CFMインターナショナルCFM-56)とロッキード・マーティンC-5Mスーパーギャラクシー(ジェネラルエレクトリックCF6)だった。ボーイングが415機のストラトタンカーに新エンジンを搭載し、ロッキードは52機のエンジン換装を行った。
ノースロップ・グラマンB-21「レイダー」ステルス爆撃機が実戦配備される2020年代から30年代までB-52は爆撃機の主力機種の座に留まる。空軍は同機は2050年代まで現役のままにできると見ている。
GEエイヴィエーションからはTF33にかわり同社のパスポートあるいはCF34ターボファンへの換装提案があり、ロールスロイスはBR700ファミリーのうちガルフストリームG650ビジネスジェット搭載のBR725を提示するはずだ。
プラットアンドホイットニーの説明ではTF33の維持とあわせて部品改修によりエンジンの効率・信頼性・整備性の向上が可能とある。同社はTF33は「2030年代以降は運用不能」との空軍見解を否定している。
だが空軍がTF33の稼働期間延長を決めたが同社からは新型PW815(ガルフストリームG600に搭載)を提示するだろう。ジェネラルアトミックス・エアロノーティカルシステムズもPW815を米海軍向けMQ-25スティングレイ競作で採用しており、軍用型式証明取得まで半分来ている。
「なぜ稼働期間延長しない決定をしたのか。民生産業を見ればエンジンは無期限に稼働しており、信頼性も抜群だ。双発機で太平洋や大西洋上空を飛べるのもエンジンの信頼性が理由だ」とワインステイン中将がワシントンンのミッチェル空軍力研究所で5月1日に講演している。「B-52のエンジン換装ともなると簡単にはいかない。作業量が多いのです」
「B-52エンジン換装は長年にわたり検討している。慎重ながら楽観視できるのは立派な助っ人がいるからです。調達部門の重鎮ウィル・ローパーはきわめて有能ですし、この事業に配置した人員も才能豊かです」
空軍はボーイングあるいは別の主契約企業とエンジン換装を進めるようだ。合計650基のエンジンが必要となり、在籍中B-52の76機のエンジン全部を交換する。まずフライトテスト用二機分に20基が必要となる。

空軍の大日程ではまず10機のエンジン換装を2026年度に開始することとしており、同年にB-21レイダーも稼働開始する。残るB-52の64機には2028年から2034年にかけ換装作業が続く。■