2019年3月12日火曜日

XQ-58A、忠実なるウィングマン....UCAVの進歩はすごいが 解決すべき課題は残る

3月にUCAV開発の2機種がほぼ同時に姿を表したのは意図的なのでしょうか。本ブログでもF-35との関連に関心を示す向きも現れていますが、今回の機体はまだ実証機であり、すぐにでも戦闘投入できるわけではないようです。ともあれ、無人機の世界の進歩は早く、そのため本ブログでも新型機についてはなるべく早くご紹介するようにしています。

A Mini F-35?: Don't Go Crazy Over the Air Force's Stealth XQ-58A Valkyrie ミニF-35? 空軍のステルスXQ-58Aヴァルキリー登場に単純に興奮できない理由

It might look cool, but . . . 一見クールに見えるが、...
March 8, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarAir Force


ボットウィングマンとはすばらしい。
米空軍の新型無人機の初飛行が話題になっている。同機は有人機に随行し戦闘に加わる想定で航空戦の新時代への期待が高まっている。
XQ-58Aヴァウキリーの写真を見るとたしかに何か違うものを感じる。現行のMQ-9リーパーは間の抜けた形状の機体で機首も肥大化し、旧式プロペラ推進で巡航速度はセスナ機と大差ない。これに対してXQ-58AはF-35ステルス機の小型版のように見え双尾翼とカーブのついた機体、ジェット推進で音速近くまで飛行できる。
XQ-58Aはクレイトス無人機システムズが設計し、3月5日にユマ試験場のあるアリゾナ州で初飛行したばかりだ。「滑走路の条件から自由で運用の設計で76分の初飛行を想定通りこなした」と空軍発表にある。計5回のフライトを予定し、空軍研究実験本部の低コスト消耗品扱い航空機技術(LCAAT)事業として安価かつ使い捨て無人機ながら戦闘航空機からの指揮される共同作戦仕様となっている。
米空軍から詳細仕様の発表はないがXQ-58Aは航続距離が長く、「亜音速で高い速度域」だという。「滑走路非依存」で非整地滑走路や前方基地からの運用を想定している。クレイトスに2016年交付された低コスト消耗攻撃無人航空システム実証の40.8百万ドル契約にヒントがありそうだ。契約では最高速度マッハ0.9、500ポンドのペイロードで戦闘行動半径1,500マイル、GBU-39小口径爆弾二発搭載、機体単価2百万ドルを量産時に達成することとある。(F-35は100百万ドルほど)
ここから従来の低性能無人機ではなく真の無人戦闘航空機UCAVだとわかる。別の言い方をすれば本格的ロボット軍用機だ。
皮肉にもオーストラリアが米国より先を進んでいるかも知れない。忠実なるウィングマン事業で同国はボーイングと共同でUCAVを開発中だ。直近の展示会でボーイングはオーストラリアで設計した航空戦闘チーム装備の概念図を示した。
XQ-58A同様にオーストラリア構想もステルス戦闘機とよく似ている。ボーイングは試作機三型式を全長38フィートとF-35の三分の二の大きさで2,000マイルを飛ぶ機体賭して開発する。このUCAVは第二次大戦後にオーストラリア国内設計で初の機体となり、オーストラリア空軍での稼働を想定し、米国含む同盟国への輸出も目論む。
「忠実なるウィングマンは有人機のF-35A、F/A-18Fスーパーホーネット、E/A-18Gグラウラー、E-7Aウェッジテイル早期警戒統制機やKC-30A給油機と飛び戦力増強効果を実現する」とオーストラリア戦略政策研究所の上席アナリスト、マルコム・デイヴィスが解説している。「主任務は兵力投射で有人機の前に危険な空域に突入することだ。またウェッジテイルなどの支援機材を敵の長距離対空攻撃から守る任務も想定する」
対空攻撃とは敵航空基地や指揮命令施設を攻撃し航空戦力の根幹をねらうことだ。忠実なるウィングマンでこの阻止を想定するのなら、爆弾搭載に加えドッグファイターにもなることになる。
だがロボ軍用機時代の開幕を祝う前に課題も残る。
例えばXQ-58Aも忠実なるウィングマンも亜音速機だ。有人戦闘機も燃料を大量消費する超音速飛行を連続で行えないが、必要ならアフターバーナーに点火しさらに高速へ加速できる。有人機が無人機と同時に作戦運用する際に無人機の速度が低い、操縦特性が違うとどうなるか。
XQ-58Aも忠実なるウィングマンも地上施設あるいは有人機が操縦する想定だが、忠実なるウィングマンでは自律運航(XQ-58Aの次の課題だろう)も可能なはずだ。だがこのために乗り越える障害がある。たとえば通信の安定確保や有人機パイロットが自機操縦しながら注意力をうばわれずに無人機を統制する機能だ。
こうしたことからUCAVにはAIの搭載が望ましい。ただし自律運航ロボットのアキレス腱は不測の事態への対処に困難をきたすことで、戦闘とは常に不測の事態の連続なのだ。■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook .
Image: Wikimedia Commons

2019年3月11日月曜日

カシミール空戦でMiG-21を繰り出したインド空軍の事情がわかった

世界最大の民主主義国家と自慢するインドの主張に米国人が苛立つのを知っていますが、行政手続きが複雑でとにかく時間がかかるインドが有事には不利になりかねません。今回の軍事衝突は今の所小康状態のようですが、こうした自国のまずい点を自分で直す気があるのか、をインドは試されそうですね。カシミール付近は目立つ軍事施設構築でパキスタンを刺激することもあり、構築が遅れているのでしょうか。


 

Sukhois hobbled by lack of blast pens near LoC

スホイ戦闘機の展開を妨げたのは強化掩蔽施設がLoC付近になかったためだった
NEW DELHI, MARCH 10, 2019 21:24 IST
UPDATED: MARCH 10, 2019 21:24 IST




ンド空軍(IAF)で強化シェルター「ブラストペン」建造が遅れているためパキスタン機との空中戦にSu-30戦闘機が出撃できなかったと判明した。機体導入から20年立つが建造が完了していないことを国防筋が認めた。

「行政手続きが遅れSu-30MKI用のブラストペンを国境管理線(LoC)近くで整備できていない。内閣安全保障委員会(CCS)の認可は2017年末にやっと出た」と同上筋は述べている。このため同機はLoC付近に前方配備できず、パキスタン空軍(PAF)機がインド軍事施設攻撃のため国境を超えてきた際にスクランブル出撃できなかったとの説明で、これでまっさきにMiG-21が投入された理由がわかった。

「構築には三四年かかる」とするが構築する施設数、総費用について同上筋は口を閉ざした。

2月27日朝、20機超のPAF機がLoCを超えH4誘導爆弾投下を試みたが、MiG-21バイソン8機編隊が迎撃した。ミラージュ2000やSu-30MKIは周辺基地から出撃したが、MiG-21部隊が一番近くにあり、PAF機に即座に対応した。交戦でF-16一機を撃墜したが、インド空軍もMiG-21を一機喪失した。
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IAFがSu-30の第一陣をロシアから受領したのは1996年のことで計272機を導入し、うち240機が稼働中だ。だがロシアトノ契約にはブラストペン構築は含まれておらず、IAFが独自に構築を進めざるを得なかった。

議会の国防常設委員会はシェルター建設の遅れを2016年に指摘していた。「供用中の空軍機材向け強化シェルターがない」


ブラストペンは敵の空襲やミサイル攻撃から機体を守るのが目的でパキスタンとの軍事衝突(1965年)ではIAFは機体を外に展開し数機を喪失した。1971年戦ではこの教訓を活かした。■

インドがロシア原子力潜水艦をリース導入

なるほどリースと言う手がありましたか。日本も防衛装備販売が進んでいませんがリース提供にしてはどうでしょう。米国でも予算難で正規空母一隻の早期退役案がでていますが、日本がリースして日本の指揮命令下ながら運航は米側に任せるというのはどうでしょう。あるいは通常型潜水艦を日本が建造し、ハードのみ米海軍にリース提供するというのは?


India signs $3 billion contract with Russia for lease of a nuclear submarine

インドがロシア原子力潜水艦一隻を30億ドルでリース導入


By: Vivek Raghuvanshi    




インドは原子力攻撃型潜水艦INS チャクラをロシアからリースで導入した。 2014年のTROPEX 演習にて。. (Indian Navy)



ンドは3月7日にアクラ-1級原子力推進攻撃潜水艦一隻をロシアから10年間のリース契約に調印した。費用は30億ドル。
価格等の条件をめぐり二年間の交渉の末調印となったもので、ロシアはインド海軍にアクラ-1級潜水艦をチャクラChakraIIIとして2025年までに引き渡す。
ロシア原子量潜水艦のインド海軍向けリース提供は三隻目となる。インド海軍高官によればインド仕様の通信装置、ソナー装備への変更、予備部品の提供、訓練施設も含まれる。
INSチャクラIIIに長距離核ミサイルは搭載しない。国際条約もあるが抑止パトロール任務は想定しないためだ。武装は通常型対地、対艦ミサイルと魚雷になる。
インド海軍はロシア建造の原子力攻撃型潜水艦INSチャクラを運用中で同艦は2012年に10億ドルで10年間リースで導入し、三年間延長になる見込みだ。インド海軍初の原子力潜水艦はソ連時代のチャーリー級で1988年から1991年まで供用した。
インド海軍では現地生産の原子力潜水艦INSアリハントArihantも運用中で、核弾道ミサイルを搭載する。二号艦INSアリリガートAririghatが今年後半に就役予定で別に二隻が建造中だ。■

米MQ-9がポーランド基地からISR任務を開始

ポーランドにリーパーですか。時代が様変わりしましたね。しかしヨーロッパ全部を警戒させるロシアは今のままでは大変なことになりますが対丈夫なのでしょうか。リーパーと言うと攻撃ミッションが頭に浮かぶのですがISR任務の非武装タイプもあるのですね。


MQ-9 Reaper Drone Operations Begin at Polish Air Base

MQ-9リーパーがポーランドで作戦運用開始


A remotely piloted MQ-9 Reaper taxis toward the runway shortly after a ribbon-cutting ceremony at Miroslawiec Air Base, Poland, March 1, 2019. (U.S. Air Force photo/Preston Cherry)


遠隔操縦無人機MQ-9リーパーがミロスラヴィエッツ基地での運行開始式典のあと滑走路をタキシー中。March 1, 2019. (U.S. Air Force photo/Preston Cherry)


6 Mar 2019
Military.com | By Oriana Pawlyk


MQ-9リーパー無人機が情報収集監視偵察任務をポーランドから本格的に開始した。


第52遠征作戦群第二分遣隊がMQ-9運用をポーランド北西部のミロスラヴィエッツMiroslawiec航空基地から先週開始し、同基地は情報収集監視偵察(ISR)任務の運用拠点になった。同群は第52戦闘機航空団もドイツのシュパングダーレムSpangdahlem航空基地に配置している。


「当基地の遠隔操縦機材は契約企業および米軍人員が運用しています」とグレッグ・センメル准将(在欧アフリカ米空軍部隊USAFE司令官付き)が述べている。「柔軟対応により新規ミッションも可能で米軍人員がいることで各種ミッションを実行できる」


契約企業との共同運行で非武装の同機を離着陸させISRミッションをこなしていると空軍は発表。USAFEは同基地のリーパー配備数は公表していない。


米軍関係者はポーランド空軍と連携しMQ-9を運用し国際安全保障に資する偵察監視活動を強化しているという。


ポーランドからのMQ-9運用で米国は海外ISR能力を拡充できる。MQ-9はギリシャのラリッサ航空基地からアフリカを対象のISR活動を昨年開始している。


ロシアの行動に注意喚起する米国は情報収集活動を強化している。


今週火曜日、陸軍大将カーティス・スカパロッティは上院軍事委員会公聴会でISR機能の強化は効果を上げており、ロシアのウクライナ東部占拠が6年目になりバルト海諸国に同じ結果を恐れる動きがあると指摘。


「情報収集監視偵察機能がロシアの脅威が高まる中で重要になっている」と述べ、「ISRはもっとほしい」と秘密審議で議員には詳細を伝えるとした。


在欧米軍についてスカパロッティ大将は「ヨーロッパにおける抑止効果は国家防衛戦略の文脈では不十分」とした。


国防総省はMQ-1プレデターを全機リーパーに昨年交替させ、3月にプレデターは用途廃止した。これによりMQ-9は世界各地で多用な任務の最前線にたっている。■
-- Oriana Pawlyk can be reached at oriana.pawlyk@military.com. Follow her on Twitter at @Oriana0214.

2019年3月10日日曜日

F-35かF-15Xかの議論にミッチェル研究所の結論は...F-35増産に絞るべき

デプチュラ中将が所長を務める空軍協会のミッチェル研究所による論考です。F-15Xをゴリ押ししたのは国防総省であり空軍には不要の存在との主張ですが、さすがに空軍の現場感覚を残すデプチュラ中将らしい論調ですが、予算案はすでにできあがっており空軍省では期待できず、議会に待ったをかけてもらいたいとの主張ですね。逆に言えばF-15Xはそこまで実現が近づいているということでしょうか。


Mitchell Weighs In: More F-35s or New, Old F-15s?

ミッチェル研究所の見解 F-35増産かF-15新規生産機か

Fifth gen or fourth gen? F-35A or F-15X. Stealth, sensors and fusion or lots of missiles? Lockheed or Boeing? See what the Mitchell Institute says. 

第5世代課題4世代か。F-35AそれともF-15X。ステルス、センサー融合機能か大量ミサイル搭載能力か。ロッキード、それとボーイングか。ミッチェル研究所の答えを御覧ください。


By DAVID DEPTULA and DOUG BIRKEYon March 04, 2019 at 4:41 PM

388戦闘航空団の第四戦闘機隊のF-35Aがレッドフラッグ2019でネリス空軍基地を飛び立つ。 Feb. 6.
空軍はもっと多くの戦闘機を必要とする。機材不足のまま稼働期間が増えている米空軍の戦闘機部隊は投資を先送りしてきた商品のようなものだ。調達を早期取り消しした2009年決定でF-22は必要機数の半分以下となりF-35生産は予定通りになっておらず、1970年代製のF-15C合計234機で耐用年数の終わりが2020年代にやってくる。世界各地で脅威が広がる中で対応不能は許されない。2020年度国防予算案の公表が近づく中、議会が今後の方向性に大きな役目を果たす。
議論の一つにF-35増産がある。
逆の議論が2020年度予算案に盛り込まれた。国防長官官房が空軍に働きかけF-15Xを既存機種の新規生産分として予算要求させている。
F-35の増産か、F-15Xを導入するのかとの議論から細かい論点が生まれ、何れの選択肢にも効果が期待できるが、パトリック・シャナハン国防長官代行はF-35を低評価する発言をしていると伝えられ、同機は「性能向上の余地が多い」とまで言ったという。
対照的にF-35を実際に操縦した空軍関係者は戦闘を一変させる存在だと述べる。ひとりは「今まで不可能だったことがF-35で当たり前のことになった」とまで述べている。
論議の最終結果が見えないが、議会は国防総省(DOD)と共に空軍が正しい道をたどり2018年版国家防衛戦略を実現できるよう導くべきだ。米国の航空優勢に挑戦すべく開発中の敵機に勝てる性能を有する機材を導入して米航空戦力の近代化をすすめ、また装備調達で多数の重要案件がある中で調達予算の効率よい執行も求められる。その意味でF-35の調達増加が最善の策であり、新規生産ながら旧式のF-15に予算追加するより優れている。

予算の現実
F-15X導入を支持する国防関係者にはF-15XはF-35と対抗する存在でないとし、F-35導入に影響は生じないと繰り返し主張している。その言い分に誠意が感じられるものの予算の厳しい現実ではF-35と小規模とはいえF-15新規生産の双方を調達する余地はない。国の借金が増え、金利が上昇する中で米国にこれ以上の国防予算の負担余地はないとの声がある。トランプ大統領もこの懸念を示し、下院軍事委員会のアダム・スミス委員長は国防費増額に反対で2020年度予算で減額を求めてくる可能性がある。
2020年の大統領選挙の結果次第で新政権が誕生すれば国防予算の大幅削減もありうる。その場合は空軍は予算減の中で装備更新をする事態に陥りかねない。反動として事業打ち切りやF-35調達数の削減など有害な効果が生まれかねない。F-15XとF-35の予算獲得合戦となれば、後者は典型的な死のスパイラルに陥り、機数が減れば単価が上昇し調達がさらにカットされる。この場合は米空軍が高いリスクを負う。同時にF-35で戦力増強を狙う空軍以外の組織や同盟国にも影響は必至だ。
空軍の調達予算に新規事業を追加する余地はない。今でさえF-35、B-21、KC-46、T-X、UH-1後継機、新型核ICBM、宇宙サイバー装備と重要案件でいっぱいだ。

F-15

F-15X整備案の詳細は不明のままだが調達対象機種の追加になれば予算全体でリスクが数年にわたり現れるのは必至だ。作戦実行で意味のある機数のF-15Xとなれば100機は必要だが、F-15Cの現有機材と一対一の更改となれば234機のF-15Xになる。報道にある2020年に8機、以後20機ずつの調達だとF-15X導入は10年以上かかるがその間の国防予算が相当厳しくなることは容易に想像できる。
報道どおり空軍がF-15X導入予算は別枠で確保できてもシャナハン以降のDoDトップが変更する可能性は残る。歴史を紐解けば過去にも「保証付き」の取扱が短期のうちに覆された事例はある。ロバート・ゲイツ国防長官がF-22生産を終了させ空軍の要求機数の半数の調達になったのはF-35があるのでリスクを下げれると長官が判断したためだった。
F-35はF-22より10年ないし15年新しい機材で多様な兵装を搭載できる。F-22のほぼ半額で大量生産による量産効果も期待できる。今後5年間で500機導入を予定し、全体では2,400機超の調達となる。2020年には米国の有人機は各種合わせ2,500機となる見込みだがうち1,100機が第5世代戦闘機のF-35とF-22になる....
ゲイツの楽観的な見通しは実現しなかった。2020年まで10ヶ月を切ったが、空軍にはF-22が186機、F-35が175機未満しかない。ゲイツ長官の誤った判斷、その後の長官各位による優先順位の変更、状況の変化、さらにF-35生産の遅れが重なり米国の航空優勢能力は危険水域になり、世界各地の司令官が望ましい戦力との差に悩んでいる。
機材更新が予定通り行えなかったため空軍に残ったのは機材数が少ない割に高い維持費がかかる事態で、各機種専用の支援体制が必要となる一方で経費そのものの改善に手をつけてこなかったためこうなった。そこにF-15Xの小規模部隊を加えれば問題は悪化するだけだ。F-15Xは旧型機の設計を継承するがF-15CやF-15E用のサブシステムは使えない。機体には新設計装備がつくため変更点が多い。そもそもエンジンが異なる。F-22の小規模部隊、相互互換性のないF-15各型、F-35が共存すれば不必要な維持費がかかる。供用期間中の経費を下げるためには機材の大量導入が必要で、初期型を早期退役させ、近代化改修を少しずつ進める必要もある。
F-15Xの第一陣を空軍が導入すれば作戦上意味を生む機数になるまで調達が続くはずだ。シャナハンの後継者が違う見方をして調達を中止させるかもしれない。反対にF-35調達を絞り他事業への影響が出ないようにするかも知れない。新規生産ラインでそのような柔軟対応はできない。

航空機材の進化
F-16のエレファントウォーク。韓国群山基地にて。
F-35批判には軍用機開発の歴史を振り返ることで見えるものがある。現在の各機種は険しい道をたどって今の実績をつかんだものばかりだ。F-16が供用開始したころを回想しパイロットが次のように述べている。「初期のF-16は墜落が多かった。ネリスで44日間で4機喪失した。編隊長は一ヶ月続ければ幸運だった。当時のジョークだが新型機を導入したら1エーカーの土地を滑走路端に確保しておけ、と言っていた」初期トラブルが多発したのはF-16だけではない。B-52、F-4、F-15、A-10、B-1、C-17他で皆経験している。歴史から見ればF-35は非常に上手く行っている方だ。昨年、F-35Bで一機喪失事案が発生したのが唯一の事故というのは従来の機材調達の実績と対照的だ。
運航コストは技術の成熟とともに性能拡大で下がるのが常だ。F-35の総合費用評価がこの点を見落としている。分析では何年も前の初期データを将来に当てはめることが多すぎる。最初にロールオフしたF-35と現在の機体では根本的な違いがあり、後者ではこれまでの知見が活用されている。この傾向により機体の性能は向上していくのだ。
現時点のF-35の機数が少ないことから相当数の機体は初期生産分でデータがゆがんでいるといえる。正確な評価には初期生産機材の比率を小さくする必要がある。これはF-35に限った問題ではなく、F-22でもデータのゆがみが発生したがF-35への懐疑的な見方で特に注意が必要だ。また初期生産型のF-15やF-16を空軍が実戦運用しなかった理由がある。訓練や評価用に使い、新型が稼働開始すると早々に退役させている。空軍はこの教訓を再度思い出すべきで、空軍を管轄する議会も同様だ。

情報時代の戦闘とは
F-35が必要とされる理由にF-15Xにない性能がある。将来を見据えれば空での勝利にはパイロットのデータ収集・合成能力、行動につながる情報への変換能力、僚機とのリアルタイム協力を適時適地に実施する能力が必須だ。軍事戦略でこうした能力を何世紀にわたり夢想してきた。実現できるようになりその規模と範囲が新しい。スマートフォンの登場でコミュニケーションと情報入手が一変したようなものだ。情報収集、処理でパイロットに正しい状況がわかるようになり、戦闘空域全体で味方と協調出来るようになり戦闘を一変させる効果がある。第5世代機で一年未満の経験しかないパイロットが何十年もの経験を有するベテランと同じ効果を引き出せるのだ。
直近2019年2月のレッドフラッグ演習は最高の難易度と現実的なものとなり388作戦群司令のジョシュア・ウッド大佐は初心者F-35パイロットが第4世代機で経験豊かなパイロット以上の働きぶりを見せたと紹介している。
これは第4世代機のF-15、F-16、F/A-18と大きく異なる。こうした機材のパイロットは大量かつ未整理のままの情報の洪水に見舞われるが長年の経験がないと対処できない。空軍パイロットのひとりは次のように述べている。
第4世代戦闘機ではパイロットは機体装備の取扱いをマスターするとミッション訓練に移り装備の活用を完璧に体得する。この訓練で戦闘空間を三次元的に把握する経験を積み効果的な連絡方法を学ぶ。すべてのシステムを使いこなすのにパイロットは数年間を要し、ウィングマンから先任パイロット・編隊先任パイロット、教官パイロットを経て指揮官になる。高度の経験を有する指揮官でもパイロットとして自機センサーを使いこなしつつ時宜にかなった決断を戦闘状況で下す必要がある
だが第5世代機は大きく異なる。F-22パイロットの言葉を聞いてみよう。「第5世代戦闘機で飛行技術を習得すれば、訓練の中心は交戦中の意思決定に移る。戦闘空間はデータ融合で表示されているから」 新旧機の大きな違いはパイロットにできることだ。F-22パイロットによれば「若手ウィングマンでも戦術判斷できるが第4世代機では先任パイロットになるぐらいの経験がないとできない」 第4世代機パイロットが何年も経験を積む内容を第5世代機パイロットが一年で習得できるのだ。
F-15XのシステムはF-15C、E型から継承発展しているが、機体の進化にも限界がある。第5世代機の情報技術で重要部分は一から設計して機体に搭載したものだ。センサーの数、統合、パイロットへの表示、僚機への接続機能のすべてでF-35は優秀さを示す。情報時代の戦いでこの違いは大きい。

ステルスがなければ
F-35とF-15Xの比較ではステルス性能がF-15Xにないことに意味がある。F-15Xが非ステルス機のため作戦範囲に制約が生まれ国家防衛戦略の実現に役立てない。ロシア、中国の防空装備は第4世代機の撃墜を主眼にしていたが、ここに来て米空軍が共用監視攻撃レーダーシステム(JSATRS)の機材更新を断念したことに注意すべきだ。その理由に敵防空能力の向上があり航空戦闘軍団司令官マイク・ホームズ大将も「将来の脅威環境でこの機体では何もできない」とする。スタンドオフ機材のJSTARSでさえ生き残れないのなら、非ステルスのF-15Xが敵地に飛び込む想定は正しいと言えるか。
旧型非ステルス機導入で効率的な予算執行になるという向きが理解していないのはミッション達成に機材がもっと多く必要となる点だ。F-15Xが高度脅威空間で生き残るためには護衛が必要となる。レーダー妨害機能、敵戦闘機の制圧、地対空ミサイルを無効にする機能を果たす各機も必要だ。各機運用にパイロット・支援人員が多数必要で空中給油機も基地機能整備も求められる。F-15Xを攻撃投入すれば全体コストは第5世代機より大幅に増える。
砂漠の嵐作戦でF-117ステルス機は一機で非ステルス機19機分の仕事をこなした。空軍参謀総長は「予算さえあれば、F-35を年間72機調達したいが総合的に見る必要がある。F-15はF-35に絶対になれない。だが機材が必要だ」と述べている。「同じ予算ならF-35より多い数のF-15が手に入る」としているが、F-15Xで同じミッションを実施すると支援機材がたくさん必要となる点を無視している。結論としてF-15XでF-35と同じミッションを高度脅威下で実施すれば費用がもっと高くなる。
「第5世代機が第4世代機をもり立てる」というのは正しいが、逆の意味もある。第4第5世代機の混合運用は第5世代機の利点をわざわざ劣化させることになる。というのは第4世代機の防御に多大の時間を使われるためだ。現時点の第5世代機がF-22の186機、F-35が175機と小規模であるため今でも厳しい状況の部隊運用はさらに苦しくなる。航空優勢確保があらゆるドメインでの軍事作戦成功の必要条件と考えると、空軍だけの課題にとどまらない。統合部隊運用に大きな影響が出る。この解決で必要なのは第5世代機の追加であり、第4世代の新造機材ではない。

空軍の望ましい姿
F-15Xが威力を発揮できるミッションもある。巡航ミサイル迎撃では大量搭載可能なミサイルで対応できるし、大型兵装も搭載し、本土防衛や厳しくない環境なら敵地攻撃も可能だ。F-15X推進派がこうしたミッションをさっそく前面に出しているが、同機がこうした任務を上手くこなせるのは間違いない。ただしこの理屈だと部隊の分断化につながり、F-15Xが投入できるのは脅威度の低い空域のみとなる、あるいは高度脅威の場合は追加護衛支援機材の投入が必要となる。現在の空軍が1947年の創立以来最小規模になっていることを考えると、この形では実際的ではない。空軍には高度脅威空域での作戦投入に必要な機材が不足している。このため空軍長官ヘザー・ウィルソンは386飛行隊体制を求めているのだ。空軍には戦闘構想を実施する余力が残されていない。現時点での要求に答える能力自体が不足しているのだ。
第5世代機は広く薄く展開して各種ミッションに投入されそうだ。F-22で戦闘投入可能機材は123機しかなく、F-35では48機に限られるがこれでは一度に二箇所での有事に対応できない。ミッションのサイクルで出撃する機材、ミッション実施中の機材、帰投する機材にわけるとミッションに投入できるのはわずか数十機の第5世代機になる。
複数方面で同時進行で部隊が必要となったり、太平洋のような広大な地区で有事となれば投入できる機数がさらに減る。機材不足のためF-15Xが前線に駆り出されるだろう。同機には大きなリスクとなり、第5世代機投入が早期に必要となるはずだ。中国は統合防空体制の整備を太平洋で続けており、第一列島線から第二列島線までを範囲に収めようとしている。欧州では相当の部分がロシア防空網の脅威にさらされるシナリオだ。F-15X導入への資金分散はこうした大国に好都合な結果を生む。
また今日の空軍は縮小した規模のため戦争損失からの回復力に限界がある。F-15Xが敵地に侵入すれば損失は更に増える。高性能戦闘機材の大量生産は困難だが本当の制約条件は人員だ。パイロット供給が厳しくなっており平時でも不足を補うのが難しい。パイロット養成制度は硬直しており戦時損耗の補充は期待できない。
さらに事態を複雑にしているのが有事対応案で州軍航空隊、空軍予備役も「総合戦力」の一部と想定している。戦略航空戦闘予備役の存在はこの十年間で消滅し現役機材も予算削減で処分されている。時計を逆回ししてこの状況を脱することなどできない。予備航空戦力を機材、人員あわせ再構築する予算はない。次の本質的な疑問が出てくる。州軍航空隊、空軍予備役のパイロットがミッション実施し無事帰国出来るチャンスを減らしていいのか。戦略道義の双方で予備役等にも第5世代機を供与すべきだ。

未来志向になれ
議会の空軍予算要求精査では、「安物装備で戦って勝った国はない」との英航空界の基礎を作ったサー・フレデリック・ハンドレイ・ペイジの言葉を思い出してもらいたい。「節約の余り敗戦になればこんなに高くつく結果はない。可能な限り低予算で空軍活動をまわすのに一番簡単な方法は機材の標準化だがこれでは戦時に使い物にならない」とも述べている。米国が冷戦終結後に享受した安全環境は終了している。ロシア、中国その他イランや北朝鮮の脅威は現実的のものだ。
米国の中核国益のため戦力構造は現実の脅威から決定しておく必要がある。第5世代機の技術がそこまで重要ではないとする向きがあるがそうだとしたら敵対勢力が第5世代機を開発しているからだ。相手側もF-22やF-35の性能は理解しており、匹敵する機材を作ろうとしている。F-22生産を再開してもおそすぎるし、指導層は同機の早期生産停止の誤りから学ぶものがあるはずだ。国防部門トップは技術にこだわるべきであり技術で今後の脅威に対抗すべきであり、過去の脅威を対象にするべきではない。F-15は例がないほどの成功を前世紀に達成した戦闘機である。しかしいまは次世代技術に資金を投入して先に進むべきときである。F-15が成功作だったことは認める。1960年代1970年代に制空戦闘機に必要な投資をして画期的な戦闘機が誕生した。そのまま長年に渡り同機が活躍しているのは同機の性能が重要なせいもある。
ワシントンDCの国防関連企業が第4第5戦闘機のメリットの議論を続けているが、決定的評価を下すのは実際に機体に乗り危険な任務に赴く人たちである。第5世代技術を経験すれば以後はその信奉者になる。F-35パイロットがこんなことを言っている。「5年やそこら前だったら機体は20機30機の第4世代機で敵の新鋭地対空ミサイルへの対応が大変だった。いまは同じミッションをもっと自信を持って実施できる。F-35数機で足りるし、その他の任務も同時にこなせる」現場の声ほど信頼に足る材料はない。上層部は現場の声に耳を傾けるべきだ。
空軍で実際に生命を賭すのは飛行要員だ。敵地に飛ぶ前にF-15XとF-35を選択できればF-35を即座に選ぶだろう。
国家防衛戦略の目的を実現できない装備を導入する余裕は空軍にない。F-35増産を進めるべきで限られた予算を新造とはいえ過去の課題に対応した旧型戦闘機に投じるべきではない。F-15Xで部分的とはいえ価値が生まれるのは確かだが導入すれば空軍全体の機材更新に悪影響が出る。いまでさえ空軍には装備近代化予算が不足している。そこに機材を追加すれば予算の食いつぶしとなり死のスパイラルにおちいるだけだ。F-15Xを導入してもKC-46、B-21、T-XさらにF-35の調達が減れば何の得にもならない。第5世代機による航空優勢確保への努力を薄める余裕はアメリカにない。
2020年度予算の組み直しには遅すぎる。今や議会が監督権を行使し長官官房の圧力でF-15Xを盛り込んだ予算要求を覆すべきである。空軍上層部が毎年72機のF-35調達を堂々と求めることは正しい。今日、明日の脅威環境から必要となる機材はF-35であり、米国は他国の追随を許さない航空戦力の優位性の実現を未来からの視点で進めるべきだ。過去からの延長ではだめだ。■

David Deptula is a retired lieutenant general who flew F-15 in every rank from lieutenant to lieutenant general. He is currently Dean of the Mitchell Institute for Aerospace Studies. Doug Birkey is executive director of the Mitchell Institute and an expert on military aviation.

米空軍の第六世代戦闘機はこれまでの発想とどこが違うのか、調達トップが説明しています


内容が禅問答みたいですが、頭のいい人の考えている内容はぶっ飛んでいますね。F-35が我々が慣れ親しんでいる戦闘機開発モデルの最後の事例になるかも知れません。根本から考え直し、工程を組み直すことを考えているのでしょうか。同時にコスト負担 cost impositionではソ連を崩壊に導いたスターウォーズの事例も頭の何処かにあるのでしょうか。

Aviation Week & Space Technology

USAF Acquisition Head Urges Radical Shift For Next-Gen Fighter Program 

USAF調達トップは次世代戦闘機開発方法に大幅な変更を切望


Mar 5, 2019Steve Trimble | Aviation Week & Space Technology

2030年以降の想定脅威へ対抗する米空軍新型戦闘機構想として次世代制空戦闘機構想(NGAD)の姿が一般に思い浮かぶだろう。米空軍は第六世代戦闘機としてロッキード・マーティンF-22の延長線上に未来的な形態で無尾翼のスーパードッグファイターの想像図を公開してきた。
だがこのNGAD像は実現しないかもしれない。
2月28日開催されたシンポジウムで空軍調達部門のトップが全く新しい構想を紹介し、これまでの航空機開発の歴史から大きく外れた革新的な姿が浮かび上る。
相手陣営の負担増につながる要求性能
2030年以降の不確実性により単独解決策での対応は困難
これから10年もの期間を費やし新型制空戦闘機一種類を開発するのではなくNGAD新型機数種類の開発、調達、配備をめざす可能性が浮上しており、新型機が二年ごとに登場するかもしれない。すべての要求性能を単一機材に盛り込むのではなく、空軍は今後の技術開発のリスクを分散し、敵勢力が想定できない機能を登場させ驚かせることができる。
この新構想を紹介したのがウィル・ローパー空軍次官補(調達・技術・ロジスティクス担当)でオックスフォードで学んだ理論物理学者だ。
ペンタゴン、空軍の立案部門は将来の制空戦闘機技術の綿密な検討を2015年以来進めているが、ローパーによればNGADは内部検討の域をでていないという。航空優勢2030体制能力協力チーム(ECCT)による二年間の検討作業、さらに二年間で代替手段検討をしてきたが、ローパーは空軍が正しい戦略方向にむかっていると見ていない。
「従来と同じ方向の事業に落ち着いてはいけないと強く信じています」とローパーは空軍協会主催のシンポジウムで記者団に語った。
ローパーが引き継いだ調達手順では高度かつ詳細な分析で作戦環境の検討からはじまる。NGADの場合では少なくとも10年先の世界だ。軍の作戦立案部門が将来の兵装システムの要求性能を分析結果をもとにまとめる。だがローパーにいわせればこの方法は「生ぬるい」という。


空軍調達トップは次世代航空優勢機材事業の進め方はこれまでの手法とは別にしたいと考えている。ボーイングが想像図を出した無尾翼超音速戦闘機コンセプトは従来型の発想だ。Credit: Boeing


「2030年代の脅威の想定そのものが不可能と言う事実を受け入れるべき」とし、「脅威を想定してからシステム設計を始めるのでは冷戦時代の調達方法のままだ。」
将来の脅威では変動要因が多すぎ、不確実すぎ意味ある要求性能を定められず機体設計に反映できないというのだ。そこで将来世界の問題への回答としてローパーは空軍の歴史から学べるという。
「昔の空軍を思い出してもらいたい。『センチュリーシリーズ』の戦闘機各種がありましたね」ローパーは第2世代超音速戦闘機各型に触れ、F-100、F-101、F-102、F-104、F-105が1950年代に登場し、実験と革新の連続だった時代に言及した。ローパーはNGADモデルとしてセンチュリーシリーズを想定している。
「新型機や新型衛星が3-4年ごとに登場したら相当のインパクトになると思いませんか。二年おきだったらどうでしょう」「必要性からでなく、コスト負担でこれを実行すれば敵の想定は根本から狂うことになりませんか」
コスト負担はローパーがよく話題にする用語で、本人が空軍に来たのはわずか一年前のことだ。これまで10年間で本人は学究生活から軍組織の最上位に上り詰めた。2010年にミサイル防衛庁で立案責任者代行として仕事を始め、当時の国防長官で同じく物理学者のアシュトン・カーターから戦略能力整備室(SCO)の初代室長に2012年任命され、5年間をここで過ごした。
「SCOの大きな課題はコスト負担だった」「敵勢力の考え方を変えさせる材料を見せるとする。相手はもっと資金を投入する。これまでは10-1が普通だった。1ドル使って敵に10ドル使わせる。これを空軍で始めたい。次世代航空優勢で敵にコスト負担させて敗退させる」
20年の調達開発工程で高性能装備を装備してきた手法を変えるのは今回がはじめてではないが、予想外の戦闘航空機各種を配備すれば整備補給面で難易度が高くなりそうだ。
ローパーもこうした懸念を認め解決策はあるという。
NGADのモデルにミサイル防衛庁のシステム設計が使えると本人は見ている。MDAでの二年間でローパーは空軍のNGADや高度戦闘管理システムにも適用可能なモデルを作り上げた。「着想から生まれたが実際に上手く行った」という。
ミサイル防衛のシステムはセンサー、迎撃ミサイル、攻撃手段の要素で構成した。
「すべて共同作動しないとミサイル迎撃できないが、全て別々のプログラムで作動する」「どうしたらキルチェーンにできるか。レーダーを見てみよう。設計通り全機能を発揮させる。迎撃ミサイルも攻撃部分も同じだ。だが産業界では現実問題が発生する。想定どおりに行かないことや要求内容の実現に何かを犠牲にすることもある。また予想以上の機能が生まれることも逆に想定以下の結果しか得られない要素も出てくる」
戦闘航空機各種の維持負担の問題から新たな問題が生まれるが解決策はある。デジタル設計手法で各種機材に共通性をもたせれば維持経費を管理できるとローバーは見る。単なる観測に聞こえるというと次のように述べた。
「これが正しいか証明できませんが、デジタル技術を見ると本当になりそうだ」とローバーは詳細に触れず語った。「正しければ、今後の見通しが着き、問題でなくなり、開発用に少数生産が可能となる」
だがこのNGAD像は空軍内部の議論の一つに過ぎないのは明らかだ。ローパーは代替策二案を紹介しそれぞれの欠点を説明した。
「ハイテク試作機多数の製造が正しい選択でしょうか」「競走馬たくさんを走らせゴールに一頭入ればいいと言うのでは量産型が生まれません。あるいは一番馬に賭けますか。使える資金に限りがありますから好きなようにできません」
F-35Aは初期作戦能力獲得を2016年達成したが、契約交付から15年かかった。空軍にはNGADの配備まで11年未満しか残されていない。この緊急性は現実のものだ。2017年 “War on the Rocks” ブログがECCT検討主幹アレックス・グリンケビッチ准将(当時)の2030年以降の航空優勢の確保に関する論文を掲載したが、F-22やF-35でも敵防衛網の内側で活躍できなくなる事態が生まれるという。後継機種が必要だがローパーは拙速の決定は禁物とする。

「選択肢はありますが未来が不確かなですのでヘッジがきく幅広い選択肢があれば安心できます」「ヘッジとは不確かな将来への対策だけでなく相手勢力に余分な負担をかけさせ対応させることでもあり、こちらの動きに対応せざるを得なくなるよう追い込むことも想定します」■